2021年4月18日
今まで書いた140字小説(とそのくらい短い小説)と詩のまとめです。
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小泉毬藻 @hacca0505

上空を通過する海鳥が鋭く鳴いた。 海は白く波だっている。 ――嵐が来ます 君は言った。 魚のように黒く澄んだ目が、遠くをじっと見ている。 やがて雨が降り始めた。 ――季節が変わりますね 君は濡れた靴下を脱ぎながら笑った。 逃げ込んだ高架下の砂は未だ、温かかった。 #言葉の添え木 「海辺」 pic.twitter.com/75QAKJO9cK

2021-07-25 00:43:17
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小泉毬藻 @hacca0505

車ごと海へ突っ込もうと出かけた。熱さがべとつく夜だった。 でも海は案外遠く、僕たちは疲れきって路肩で眠った。 目覚めると外は青みがかり、静かな風が渦巻いていた。 身動ぎした時、君の腕に触れた。湿った肌に生を感じる。 海は未だ冷たいかな。と君が呟く。 かもね。と僕はエンジンをかけた。

2021-07-24 21:58:59
小泉毬藻 @hacca0505

#140文字小説 「黒の三角関係」 (リプ欄にタイトルとかタグをつける形式だと予約投稿できないのか……)

2021-06-10 12:39:01
小泉毬藻 @hacca0505

標的の写真を見た時、ひどく胸が軋んだ。 暗黒街に馴染む前、密かに想っていた同僚だった。 「断ったらどうなる」 「他を当たるまでさ」 俺は汗ばむ手で写真を懐に収めた。 「期待しているよ、坊や」 依頼主の声が耳腔をくすぐる。 見ると、かつて自分の目の中に見た、甘い色を宿した目が間近だった。

2021-06-10 12:39:01
温信(harusino) @barocco2355

巨い車輪が回っている。とめどなく雫をふりまいて回っている。その周辺で犬が己の尾を追って回転している。8匹近く。巨大な渦の周りで逆さまに小さな渦が回っている。犬の爪がツツツツツ……とせわしく音を立てる。連なるツツツ音が車輪を回している。車輪回転音は空間を規律正しく刻み続けている。

2021-05-27 19:23:43
温信(harusino) @barocco2355

月は日の光をうけて輝く 然し光の中に居る時 地上から姿を消す 地上から月が消えた時 日と月の狭間に居たら 何が在るだろう 網膜を焼く光 身を融かす熱 真空を割く放電の軋み 7分40秒間の …… 空と地の間に 曇天が延々横たわる 今日は 日も月もみえない #詩 #日記 【蝕】

2021-05-12 17:15:39
温信(harusino) @barocco2355

蛹化した君が孵るのは 月がぐるりと巡った日 僕は毎朝、蒸留水に シオネールを含ませて 脈打つ皮に噴きかける 淡紅の薄皮が 微かに震えて悦んでいる 予定通り君は羽化した 先生に手を引かれ 廊下をソロソロ歩く 白い患者衣を着た君は 花嫁に似ていた 僕は淋しくて 5秒以上 見ていられなかった

2021-05-05 00:40:56
温信(harusino) @barocco2355

みっしりした青空が、四角い建物を両側に備えた道の上に伸びている。 バスを待っていると、青色の羊羹みたいな空だね。と老人に話しかけられた。下向きの皺がはしる顔は正四角形をしている。 やっぱりバスも四角だろうか?と思っていたら、不定形のバスが来た。 そこまではきっちりしていないらしい。

2021-05-03 18:35:54
温信(harusino) @barocco2355

眠りから覚めると波間を漂っていた。 水は温く波は静かで、空には日も月も星も無い。ぼんやり暗い空である。 銀河を突き抜けた時に在る空間はこんな風だろうか。 そう思った時、眼前に深い闇が広がり始めた。 怖くなって振り返る。 遠くに何故か懐かしさを覚える光が見える。 もう引き返せそうにない

2021-04-30 01:05:53
小泉毬藻 @hacca0505

#日妖品 縁日で買った硝子のコップが変なのに気づいたのは夏の盛りだった。 日なたに一日置いていたのに痛いほど冷たく、底を拭うと濡れているのだ。 少々不気味だが夏にはイイ。と思って冷凍庫で更に冷やした。 しばらくして取り出すと、コップは黄色く濁っていて、手のひらで解けて消えてしまった。

2021-04-28 21:00:55
小泉毬藻 @hacca0505

「満月は頭部である」 彼女は厳かに言う。 歩道橋の途中に佇む頭上に、満月がある。 「確かにここから見るとそう見えるかも」 下から僕が答えると、彼女はこちらに背を向けて空へ両腕を捧げた。 小さな手の中で光る月は、春のたましいのような気がした。 そのまま彼女は階段を昇り、月と合体した。

2021-04-28 00:12:30
小泉毬藻 @hacca0505

#日妖品 古い友人が送ってきたのは、彼がよく描いていた模様のシャツだった。 手に取ると普通の布より温かい気がした。 翌日は雨で寒かった。 早速シャツを着てみた。 背からうなじへ、何かが這う 慌てて鏡を見ると そこには 何も無かった 数日後、彼の死を知った。 命日は荷物が届いた日だった。

2021-04-23 13:00:08
小泉毬藻 @hacca0505

夜が更け灯りが落ちると、車内は静まり、走行音だけが淡々と響いていた。窓では満ちた月が白く光っている。 ついたらきっと海に行こうね、と僕は目を瞑って言った。 窓際で友人は曖昧な返事をした。 夢現に、窓から忍び込んだ月色の蟹が彼の唇へ潜り込むのを見た気がした。 海へは、独りで行った。

2021-04-18 10:13:33
小泉毬藻 @hacca0505

夜 座っている 猫が膝に乗り 爪を立て しがみつく 地響きに似た 喉の音と共に 私の体は前屈し ついに 猫ごと 折り 畳まれ 人皮と 猫皮の 塊になる そういう夜が 来る気がする #詩

2021-04-16 00:50:21
小泉毬藻 @hacca0505

その街は殺伐としている。 やたら爆発するのだ。人や動物が。街のあちこちに血溜まりがある。 主である男に僕は、動物が嫌いなのかと聞いてみたが黙って鋏を磨くだけだった。 僕は彼を理解できない己の感性が苦しくて、街を出る事にした。 彼は去り際に胡瓜をくれた。 意外と優しげな目をしていた。

2021-04-09 22:44:46
小泉毬藻 @hacca0505

今年初の耳鳴りがした 雨だれが、屋根を叩く日 通奏低音が 体内と 天井を 叩いている あわいを とめどなく日が流れる オルゴールの円筒に すこし似ている ゼロ時を過ぎると 節くれた巨な手が ぜんまいを、ぎこぎこと、 また、巻く #詩 twitter.com/KIYOMIZU45/sta…

2021-04-05 20:57:07
小泉毬藻 @hacca0505

触れられると 噛む (撫でて欲しい) 日暮れの光りに包まれ 噛む 黄色い牙の下 砕ける 気高い憎しみが 明日は来ない 独り 今日に残され 野犬は憎しみを噛んでいる ヒト世界を 傷つけぬよう ヒト世界で 生きるからには

2021-04-02 22:47:13
小泉毬藻 @hacca0505

遅番の帰り、小さな生き物を拾った。猫だと思ったが、よく見るとフクロウみたいだった。 手当てして水とツナ缶と一緒に箱に入れると、オズオズと飲み、食べ始める。 何とか平気そう?と安心して寝ていると、いつの間にかフクロウが傍にいた。 その目は水色で、いくつも光が漂い、宇宙そのものだった。 pic.twitter.com/l1oisdAaJb

2018-12-09 08:51:31
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小泉毬藻 @hacca0505

「それで俺の責任を全部切ってくれ」 男は横領と不倫で糾弾されていると言う。 あまりに煩いので、私はお望み通り「万能鋏」をふるってやった。 じゃきん。 翌日世間は、火災で会社が人もろとも焼けたのと、女が住宅に押し入り、殺人を犯して自殺したニュースで持ちきりだった。 男の行方は知らない。

2018-06-07 21:31:08
小泉毬藻 @hacca0505

目を覚まし、妙に体が軽いな、と彼は思った。 外に出ると良い天気だ。太陽は大きく回転し、近づき、暑さを増している。足元の草も良い色だ。 彼が機嫌よく叫ぶと仲間達が答える。みんな刈られてさっぱりしている。 そうか。昨日は毛刈りだった。 彼らの背後の家では、糸車がひたすら回転している。

2018-06-06 23:19:19
小泉毬藻 @hacca0505

「そんな生活で生きてる意味あるの?」 男は私の髪を切りながら言う。 白シャツにジーンズ、ピカついた靴。カッコいいヒゲ。言い回し。全部どこかからの引用だ。 「はぁ、創造的な仕事はいいですよね」 適当に言うと彼は満足げにした。 半年後、久々に近くを通ったらサロンは台湾料理屋になっていた。

2018-06-05 22:35:11
小泉毬藻 @hacca0505

アメフラシ 穀雨が過ぎるころ 磯の波打ち際にたわむれる 子を産みやがて喰われゆく 今はまだ 温い潮水のなか ごろごろして居る #詩 pic.twitter.com/n1kS92axG2

2018-05-27 20:59:49
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小泉毬藻 @hacca0505

「昔、永遠の0って本が流行ってなぁ。0も永遠も同じような事だし、って読まなかったけど。戦闘機の話らしいね」 男は卵焼き器の手入れに余念がない。 「で…これは手入れさえすりゃ永遠に使えるよ!」 気圧され購入してしまった。 戦闘機よりはまぁ使えるか。私には。 永遠 #詩人の本懐 #140字小説

2018-05-26 00:27:57
小泉毬藻 @hacca0505

彼女はイイネが欲しくて犬を飼い始めた。 高級な餌、グッズ、サロン、病院…と画像をアップする度にイイネが増える。犬と遊びに出かけると更に増える。 ある日飼い始めたきっかけがバレて炎上し、焦土に犬だけ残った。 それだけで十分だった。 今日も彼女は散歩に行く。 #140字小説

2018-05-18 22:09:32
小泉毬藻 @hacca0505

「殺すつもりはなかった…でも手遅れだった。彼は知り過ぎたの」 日が沈む海を背に、女は燃え尽きた軸のように見えた。 彼女の企みを悟った私が動くより先に、微笑み乍ら彼女は後ろへ身を任せた。 「さようなら探偵さん。一番恐ろしいのは人の心ね」 #140字小説

2018-05-13 23:32:13
小泉毬藻 @hacca0505

駅から出ると窓口の男が俺をチラリと見、何か言おうとした。無視して俺は歩き出した。 着いた家の窓から外を眺める。ぐるりを山に囲まれたボウルの底にいるかのような町だ。今は雨だから、濡れた空気に山の香と鳥の声が満ち、水底を思わせる。 雨が止むまで、とりあえず眠ることにした。 #140字小説 pic.twitter.com/kPyhPygQzu

2018-05-08 21:53:14
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小泉毬藻 @hacca0505

毎晩電話をかけてくる嘗ての後輩がいる。学校を卒業して10年は経つのに。実のある話はしない。趣味の寺巡りと歴史小説の話ばかりだ。あまりにしつこいので最近は3日に一度応答するようにしている。それでも毎晩かかってくる。他に友人がいないという訳ではないのに。今晩も。オチもない。 #140字小説

2018-05-06 22:40:59