お題「徹夜」「若気の至り」「おんぼろヒーター」
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荻野千影 @ChikageOgino

車輪と軌条の単調な音 蝋燭のような裸電球の影 熱風が靴だけを暖める 隣の老職人の酒精と 向かいの若い銀行員の寝息と 隙間風が 外套もブラウスもすり抜けて 鼠色を私の肌に彫り込む 昭和九十二年の冬 些細な諍いで仕事を辞め 逃げるように乗った夜行急行で 銀河の底に行きたくて 私は蝋人形を演じる

2018-12-08 22:00:04
水城弥生 @mizukiyayoi8484

おんぼろヒーターを灯しながら彼女と徹夜するクリスマス。「プレゼントはヒーターがよかったんじゃない?」「君とくっついたらヒーターよりあったかいんだもん」ケーキを一口食べ終えた彼女が寄ってくる。「確かにな」そのまま僕の膝を枕にした。「ふにゅう…」そんな暖かい冬の日ももう戻ってこない。

2018-12-08 22:01:45
竜虎 @btbticc_org

大学生になり、初めての一人暮らしをした。夜更かしをしても怒られない。だからつい大好きな小説を徹夜で読み込み、気付けば日が昇っていた。その日の講義の記憶はない。そんなことを何度も繰り返した。若気の至りである。 「こら、寝るなー」 だから教壇に立つ私はつい、苦笑いをしてしまうのである。

2018-12-08 22:01:51
紅月シオン @lunser5

おんぼろヒーターから流れる熱気が眠気を誘う このごろ徹夜が辛くなってきた 昔は若気の至りで乗り切れたものも歳を重ねてからはそれが出来ない つくづく人というのは劣化していくものだ 私はあと何年筆を握り続けられるのだろうか 胸に微かな不安を抱いても手は止めない #深夜の真剣140字60分一本勝負

2018-12-08 22:02:16
RAY/※※※ @growler_ray

貴女が転校してから早1ヶ月。毎月恒例だった校舎のお泊まり会の参加者は誰もいなくて、私は1人、おんぼろヒーターの前で毛布を被って寒さを凌ぐばかりです 降り積もる雪と共に、やがて私の想いも埋もれてしまう。孤独って寂しいのですね、ヒーターの前のはずなのに、貴女がいないと寒くてたまらない

2018-12-08 22:02:21
津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

ぴいぴいと高い音で目が覚める。おんぼろヒーターの換気をしろという警告。深夜三時、徹夜で進めるつもりだった設計図は白紙のままだ。雑事に追われる毎日で、最近じゃ「次回作楽しみにしています」なんて言葉も気が重い。あーあ。若気の至りとはいえ、昔は世界を六日で作ってみたりもしたってのに。

2018-12-08 22:02:34
夢夜 @ruya_reve

本に熱中しすぎて徹夜したことが何度かある。 「お前さ……体壊すよ?」 溜息混じりにそう言う貴方だけど、自分が時々徹夜明けの酷い顔をしていることに気づいているのでしょうか。 貴方の悩みを私にも背負わせてほしい。 「私『は』大丈夫ですから」 ──貴方が独りで苦しむ姿など見ていられない

2018-12-08 22:04:13
夢夜 @ruya_reve

少し疲れたようなお前を見て、また徹夜したんだなと思った。 「お前さ……体壊すよ?」 「私は大丈夫ですから」 本に熱中しすぎて徹夜したとお前は言ってるけど、そんな見え透いた嘘を俺が信じると思う? お前が悩み苦しんで朝を迎えることがあるってこと、俺も眠れない夜を過ごしてるからわかるよ。

2018-12-08 22:04:40
つぶあんぱん @2222anpan

二次会で帰るよ。オールなんて無理。私、もう徹夜が出来るほど若くないんだから。 終電間際の繁華街で、私はそう言って左の耳朶に残る若気の至りに触れる。彼が開けたピアスホールは塞がらないまま。あの日から私の夜は、彼が残したおんぼろヒーターが暖める部屋で彼を想うためにだけある。

2018-12-08 22:10:05
花滝ちかる @chikaru_toka

「子供が出来たの。貴方とは別れるわ」 茫然として、君の背中を見失った僕は、ばかだ。 君が去ったのは、まだ学生の僕を守る為だ。子供も、若気の至りなんて言わせない、僕達が愛し合った証なんだ。 君の家へと走る。君の両親に頭を下げて言うよ。 「娘さんも子供も、僕が幸せにします」 #140字小説

2018-12-08 22:14:36
宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

海から空へと星が昇る夜だと聞いて、徹夜で浜辺に一人出てきたはいいが、寒くて敵わない。ボロい火食いヒーターでもいいから持ってくれば良かったと嘆息していると、君が来た。 星昇り、君も見に来たの? 目当ては半分君だよと言いたかったけど、黙って星昇りを待った。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/2YRskXAjHV

2018-12-08 22:14:58
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春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

俺はぼろぼろになったヒーターの前に屈み込んだ。 若い頃、バカばっかりやってきたせいだろうな。冷たいあんパンとコーヒーが今の俺の全てだ。 ピ…ピ…… やれやれ、ヒーターにまで見限られたか。寝たら次起きれねぇかも…徹夜するか…… 深夜のテレビショッピング、あの笑顔が憎たらしく見えた。

2018-12-08 22:20:34
悠井すみれ @Veilchenfeld

家賃は安ければ安いほど良い、なんて考えは若気の至りの間違いだった。特に冬は隙間風が身に染みる。貧乏学生では中古のおんぼろヒーターが精一杯の暖房器具だし。何より風呂がないのが辛い。でも、徹夜明けで近所の銭湯に行く時とか、色んな人間模様が見られるのは、経験としては悪くない、かも。

2018-12-08 22:23:04
春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

受験勉強の背中、私も二徹三徹してたっけ、若いわねぇ。 「母さんコレ動かない!」 「ここをね」 コンッ。 私はおんぼろのヒーターを叩く。 「ほら、動くでしょ?」 「流石昭和生まれ!」 コンッ! 私は可愛い娘を小突く。 「夜食作るわね」 「ありがと、お母さん」 私の時も温めてくれたわね。

2018-12-08 22:23:04
椎葉@引越先はbioに @Liar_Akira

此の季節の徹夜明けは隙間風が敵。我が身を護るはおんぼろヒーター、些か頼り無いにしろ確かにそいつは僕の味方。然しこうも寒いと若気の至りで引っ掛けた日替りの女と体温を分け合い共に朝を迎えていた過去が頭を掠め、僕を抱く腕を求め体感温度が下がる。誰か隣に居たなら、なんて今の僕には贅沢か。

2018-12-08 22:27:50
akihamada @akihamada2208

徹夜明け、景色の彩度が変わる朝。手を繋ぎ駅に向かう男女にも今日を若気の至りだと振り返る日が来るのだろうか。一人で歩く大通り、右手のショーウィンドウには綺麗な女性と高いヒールの下におんぼろヒーター。そんなところで大人しくしていないで、自分も相手も、全部燃やしてしまえばいいんだよ。

2018-12-08 22:36:33
色糸 @IRO_Iroito_

寒い夜、我が家のおんぼろヒーターが遂に、命の灯火を消した。他に暖房器具はない。 「寒いね」 「散歩でも行って体温めよっか?」 「うん」 コートを着込んでマフラーを巻いて、防寒はバッチリだ。 僕らは玄関扉を開けた。途端に闇が身を包む。闇の中にふたりぼっち。 星空は遠く、月は霞んでいる。

2018-12-08 22:43:14