友と盃を酌み交わす、その流れる時間は緩やかで時の経過を忘れる程だった。子供の頃は極道ごっこなるものをしていて、お猪口に酒ではなくちょっと良い天然水を入れて兄弟盃と称して酌み交わした。大人になった今でも兄弟の様に仲が良く、よくつるむ。酔い潰れた友を背に負う夜の風は程よく涼しい。
2023-01-21 22:02:07足に傷を負う私は、樹の洞に息を潜め隠れる。血に飢えた魔獣の荒い息が闇に響く。ドッドと鳴る心臓の音さえ消し去りたい。誰か助けて!その時、天の神が盃を傾けたように大雨が降りだした。地を穿つような雨の槍。それは私の匂いを消し、魔獣を追い払ってくれた。#twnovel 私の声は届いたのだろうか?
2023-01-21 22:02:48天然水は疲れ果てた状態で飲むと甘い。かつて言われたそんな嘘を嘘だと理解できるようになったのは、その張本人がどこかへ消え失せてから 思い出の味と言うのか。酒もジュースも、かつてのそれを超えることはなくて、懐かしさに駆られるばかり 涙が落ちる。間違えてとった隣のボトルから、同じ味がした
2023-01-21 22:05:34君の盃に、「水杯だ」なんて言って天然水でも注いでやろう。そうしたら君はきちんと呆れてくれるだろうか。盃を割って君が去って、後にはアホ面の僕だけが正しくひとりになれる。とても良い。へらへらひとりで笑っているのが、一番良い。負い目だらけの僕は、これ以上暴かれたら困ってしまうから。
2023-01-21 22:07:29組員の昭三は、対立組織のヒットマンに狙撃された若頭が路面に倒れている姿に気づいた。若頭は、何か言おうと気力を振り絞っていた。 「しょ、昭三か……」 「この俺と盃を交わしたのを決して忘れないよ」 「あ、ありがとうよ……」 若頭は、自ら致命傷を負うことによりこの世から去ることとなった。
2023-01-21 22:08:56#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite 参加させていただきます!いつもお題ありがとうございます! お題は「盃を、天然水、負う」でした! クールだけど飲んべえで、冷静だけど強引で、彼氏のことは大好きな彼女氏のお話です😌 pic.twitter.com/qonIc1Hq5S
2023-01-21 22:09:38タロットカードの結果に落ち込んでいる君を、月見酒に誘う。「どうにもお酒は苦手なの」「なら天然水に変えようか」「わざわざそんな、何のために」言いかけた君は、盃を覗いてにっこりと笑う。 「逆位置の月ね」 水面には逆さの月が映っている。君の不安はきっと解消されるよ。僕がそう、願うからさ。
2023-01-21 22:11:52…旨い酒は…名水百選にも選ばれ…の天然水が… 常連らしい饒舌な男の声を何となしに耳に入れながら盃を傾ける。成程、確かに旨い。 入店して男の隣に座った彼は満足に飲み食いできず生返事を繰返す。彼らと数席離れて座る私は心の中で御愁傷様と呟き、男が新たに薦める酒に品書きの上で指を滑らせた。
2023-01-21 22:19:20天然水のペットボトルを一本飲み終えた。甘い羊羹が体に染みる。詰め込んだ荷物を消費して、背負う鞄はまた少し軽くなっていた。水を三本飲み終えた頃、山頂に着いた。今日はここで一夜を明かす。テントを張って鞄から日本酒の瓶と美味い肴を取り出す。うっかりこの山で死んだ友人と盃を交わすために。 pic.twitter.com/w62fVmZ7kR
2023-01-21 22:24:33#深夜の真剣140字60分一本勝負( @140onewrite ) 今夜のお題 ①盃を ②天然水 ③負う pic.twitter.com/m4n7aXsF0N
2023-01-21 22:26:31成人した息子と、自宅で盃を交わす。学生時代は反抗期で手がつけられなかったのに、こんな風に飲み交わす日が来るなんて、と嬉しくて、つい飲みすぎた。気がつくと布団の上だった。「父さんを背負う日が来るなんてね」枕元に天然水のペットボトルを置いていった後ろ姿は、俺と同じく嬉しげだった。 pic.twitter.com/RTQARttZla
2023-01-21 22:37:18#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題「負う」「天然水」を使用しました。 #140字小説 #創作BL pic.twitter.com/YzOCJv7bbT
2023-01-21 22:45:43背負うのはわたしだけで十分だろうとかそんなことを言う人だ。 「盃で昔は酒を飲んだ」 共同で買った家のリビングで彼女は酒を飲む。自分は彼女の横顔を眺める。 「飲みすぎでは」 「天然水でも飲んでおけと言うのか」 「ええ」 抑えているが酒好きである彼女をとめる。 飲みすぎないように。抑えた。
2023-01-21 22:55:11「こんなにするの?」「しっ」妻が口元に指を立てる。ただのお盆にしか見えないが、フレンチのコース料理くらいの値段がする。小町通りにある店だった。職人の作った商品がお洒落にディスプレイされている。切子のグラスがある。これで天然水を飲むと疲れが取れるらしい。思わず肩甲骨を回した。
2023-01-21 22:58:07その契りに、まさかそんなものを背負うなんて思いもしなかった。「さあ、盃を交わしましょう」美しい化粧を施された漆塗りの盃は、思ったより大きく飲み干せるかと不安になったが、サラリとした口当たりでスルッと身体に染み込んだ。盃を置くと、「さあ、今日からあなたがこの天然水を護り手です」
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