1 あぁ… 嘘だろ… どこ行った⁈ 僕は、先程から同じ道を行ったり来たりを繰り返している。 落とした財布を探してるのだ。 お昼ご飯を買う際、コンビニのレジで財布がないことに気付いた。
2021-12-29 18:48:442 最寄りのコンビニと自宅とは大した距離にない。 その道程で落としたはずなのだが、見つからない。 仕事には間に合いそうにないな。 上司に連絡を入れた。 ○:はぁ…ツイてない… さっきからないないばかり言っている。
2021-12-29 18:48:573 僕の数少ない友人である、諭吉と一葉、英世の行方が心配だ。 どれだけ往復しても見つからないと言うことは、既に誰かに拾われたか… スマホで調べて、1番近くにある交番に駆け込んだ。 ○:す、すいませーん… …って、あれ?
2021-12-29 18:49:064 ○:り、理佐⁈ 理:○○⁈ まさか、こんな所で高校時代の元カノと出くわすなんて… 学生時代は真面目だと思っていたけど、警察官になっているとは。 理:ど、どうしたの?
2021-12-29 18:49:155 そんなに驚かないでくれ。 僕も急なことでビックリしてるんだから。 ○:財布を落としちゃってさ… 理:お財布…どんなやつ? ○:黒の長財布。 理:あ…それなら、1つだけ届いてるよ。
2021-12-29 18:49:256 ○:本当に⁈ 理:これなんだけど… デスクの下から透明な包みにくるまれた財布を取り出す理佐。 ○:これ、僕のだ! 良かったぁ…見つかった!
2021-12-29 18:49:387 理:そう。良かったね。 何ともそっけない。 でも、これが普通の反応か。 仕事中に元カレと出くわせば、良い気分にはならないだろう。 理:一応、本人確認しないと。 ○:え?
2021-12-29 18:49:478 理:何? ○:僕、仕事に行かないといけなくて…時間が無いんだ。 理:それでも、○○のじゃない可能性だってあるでしょ? ○:うーん… 真面目だなぁ… でも、失くした自分が悪いし仕方の無いこと。
2021-12-29 18:49:579 理:財布開けるね? と、お札や小銭やらをトレイの上に並べていく。 理:現金は盗られてない? ○:うん。 小銭の正確な数は把握してないけど、お札の数は合ってるから多分、盗まれてない。
2021-12-29 18:50:1410 理:キャッシュカードは…○○の名義だね。 ○:僕の財布だからね。 理:本人確認出来るものはある? ○:ここに僕がいるけど? 理:そうじゃなくて、免許証とか。 ○:どうしても見せないといけない?
2021-12-29 18:50:3211 理:逆に、やましいことでもあるの? 真面目過ぎる… 僕と理佐はそれなりの間柄なのに… 色々と手順を踏まないといけないなんて、警察も大変だなぁ… 鞄からカードケースを取り出して、免許証を提示した。 理:え…金髪…
2021-12-29 18:50:4712 ○:はぁ… だから、見せたくなかったんだ… 理:高校の時、大学生になったら絶対に染めるんだって言ってたよね。 ○:そうだっけ? そんな些細な会話を良く覚えてるな。 理:ふーん…カッコ良いじゃん。
2021-12-29 18:51:1114 理:住所はここなんだ… ○:…? 理:本人確認は取れたし…あ、これって… ○:ん? 彼女が手に取ったのは、プリクラの写真だった。 僕と理佐が仲睦まじくくっついてる写真。
2021-12-29 18:51:2615 嘘だろ⁈ どうしてそんな物が財布の中に… 高校時代に撮ったものだから、かれこれ5年以上は経ってる。 自分で仕舞っておいて、その存在を完全に忘れていた… 気不味すぎる… 理:○○…まだ私のこと好きなの?
2021-12-29 18:51:3716 試すような、少し憐れむような目線を僕に向ける。 ○:そ、そんな訳ないだろ! 僕は、ムキになって動揺して…もう散々だ。 ○:理佐に対しての未練はないよ。 理:それは残念… ○:え?
2021-12-29 18:52:2817 理:私はまだ… おい…冗談だろ⁈ 理:なーんてね!今の○○の顔、面白かった。 なんだ…彼女は僕の反応を楽しむために思わせぶりな発言を… これだと、高校の時と変わらない。 彼女が僕を攻めて、僕は顔を赤らめて… pic.twitter.com/Bck80O8oLq
2021-12-29 18:52:4418 僕にとって、理佐は初めての彼女だったから全てが新鮮だった。 そんな僕を、彼女はからかって反応を楽しんでいた。 学校では真面目な君、2人でいる時の君。 そのギャップが好きだったんだよなぁ… 受験を理由に別れてしまったけど…
2021-12-29 18:52:4519 理:今は彼女いるの? ○:どうしてそんなことを聞くの? 理:何となく。元カノの…義務? 義務ではない気がする。 ○:仕事に関係ない質問だよね? 理:うっ…
2021-12-29 18:52:5320 真面目な理佐のことだから、これ以上は踏み込んで来ないだろう。 ちなみに、僕には彼女がいない。 理佐と別れて以来、出来てない。 大学時代に金髪に染めたものの、女子ウケが良くなかったのか、垢抜けた女の子とはお近付きになれなかった。
2021-12-29 18:53:1321 大手の会社に就職した今も仕事と時間に追われていて、新しく彼女を探す気力が湧かないのが現状。 ○:理佐の方はどうなのさ。 理:知りたいんだぁ? その顔は…2人きりの時に見せるからかう時の顔。 ○:別に…聞かれたから聞き返しただけ。
2021-12-29 18:53:2222 こんなのは社交辞令であって、今の理佐のことなんて気にならない。 財布に中身を戻してから鞄に仕舞った。 ○:じゃあ…身体に気を付けて… 理:お仕事頑張ってね。
2021-12-29 18:53:3723 良い香りに包まれていた交番を出た。 こうして、元カノとの久々の再会は幕を閉じた… はずだった…
2021-12-29 18:53:4425 仕事に遅れた分、頑張って働いたので身体はもうクタクタ。 コンビニの袋を片手に、部屋の鍵を開けた。 ガチャン! ○:ん…? 鍵を開けたはずなのに、鍵が閉まっている。
2021-12-29 18:54:0026 ○:どう言うこと…? 家を出る時に施錠するのを忘れていたか。 財布を落とすぐらいだし、不用心な今の自分ならやりかねない。 ○:気を付けないとな… ガシャッ!
2021-12-29 18:54:0827 今度こそノブを捻ると、ドアが開いた。 中に足を踏み入れた瞬間、息を呑んだ。 部屋の明かりが点いている。 しかも、良い匂いまでする。 不法侵入⁈ ○:だ、誰かいるの…か…?
2021-12-29 18:54:1628 怖くて声が震える。 忍び足でリビングに向かうと… ○:え…何で理佐が… 理:あっ、おかえり! ○:ただいま!…じゃなくて! 理:今日の晩御飯はお鍋にしたんだ!
2021-12-29 18:54:3729 ○:身体が温まるね…じゃなくて! 理:食べよ? ○:何でいるんだよ! 夢を見てるのか…? 理:何でって…そんなこと聞かないでよ。 ○:いやいやいや…しかもどうやって侵入したの?
2021-12-29 18:54:4930 理:侵入って…非合法みたいな言い方だね? どう考えてもそうでしょ。 理:このマンションの管理人さんから、部屋の鍵を渡してもらったんだぁ。ほら… と、警察手帳を見せられた。 なるほど、これを提示して適当に理由を言えば、鍵をもらえたって訳か。 pic.twitter.com/duu2VWFKUG
2021-12-29 18:54:5731 ○:そっか。それなら合法だね!とはならないから! 理:まぁまぁ。積もる話もあると思うからさ、座って食べよ? 積もりすぎて前が見えないよ… 彼女がよそったお皿を受け取り、鍋を挟んで向かい合う。
2021-12-29 18:55:0632 ○:頂きます… パクッ! ○:あっ、美味い! 優しい出汁の旨味が、疲れた身体に染み渡る。 理:沢山食べてね! 僕は黙々と食べ続けるが、逆に理佐は箸を持とうとすらしない。
2021-12-29 18:55:1233 僕の食べる姿をニコニコ眺めるだけ。 ○:食べないの? 理:私は○○の美味しそうに食べる姿でお腹いっぱい。それに、デザートもあるから空腹を取っておいてるの。 デザートまであるなんて、楽しみだな。 ○:それで?この部屋に入った手段は分かった。 あとは理由を知るだけ。
2021-12-29 18:55:1834 つまりは… ○:動機は何? 理:動機って…○○のことが気になったから…? それで、わざわざ元カレの部屋に⁈ 理:部屋は意外と綺麗だし、私も住もうかな。 ○:やめてくれ…そもそも、僕の部屋がここだと良く分かったね?
2021-12-29 18:55:2535 理:それは、昼間に身分証で確認したから。 ○:… 開いた口が塞がらなかった。 ○:職権乱用じゃない? 個人情報が、あまりにも華麗に盗まれている。 理:ぜーんぶ○○のためだよ? ○:僕…?
2021-12-29 18:55:3336 あれ… 満腹になったのか、眠くなってきた… 理:ふふ…まだデザートが残ってるのに、寝ちゃうの? 視界が狭まっていく… ○:仕事で疲れてるのかも…けど、デザー…食べ…zzz…
2021-12-29 18:55:3938 眠りから覚めると、僕はベッドの上に手錠で繋がれていた。 ○:え…手錠⁈ 両手が2つの手錠により自由を奪われている。 眠い目を擦ろうにも、叶わない。 ○:あれ…僕は… さっきまでご飯を食べていた。
2021-12-29 18:55:5139 美味しい鍋を…理佐と… ○:そうだ…理佐は…理佐! 理佐の名前を呼ぶと、彼女が寝室に入って来た。 理:おはよ…やっと起きたんだ…ふへへ… ○:理佐…今、どんな状況?
2021-12-29 18:55:5840 理:私が持ってた手錠で、○○を拘束してみたの。 ○:うん?じゃあ、その拘束を解いてくれない? 理:やーだ! ○:だって、意味が分からないし… 理:これで○○を好き放題出来るね? 何をするんですか⁈
2021-12-29 18:56:0441 ○:待ってよ…デザート一緒に食べようよ? 理:ん?デザート? ○:そう、デザート!作ったんでしょ? 理:違うよ?○○が私のデザートなんだよ? ○:は…? 嫌な予感しかしない。
2021-12-29 18:56:2042 今の彼女の顔は、僕を攻める時の顔…とはまた違った表情。 僕の知らない理佐だ… 理:それで、私が○○のデザートになってあげるね? 頭の中がまだぼんやりしてるのか、彼女の発言に理解が追いついていない。
2021-12-29 18:56:2543 理:さっきのお鍋に睡眠薬入れたんだぁ…はぁ… それで急な眠気に襲われたのか… 理:久々に○○と会って、分かっちゃった! ○:分かったって…何を? 理:私、まだ○○が好きなんだって。○○がいないと、私…あっ… 1人で甘い声を出すんじゃない!
2021-12-29 18:56:3144 ○:僕がいなくても、理佐はとても真面目でしっかり働いてたよ? 昼間の凛とした勤務態度は、カッコ良かった。 理:それに…○○も私のこと好きでしょ? ○:え? 理:プリクラの写真持ってたじゃん… ○:あれは、単に忘れてただけと言うか…
2021-12-29 18:56:3845 理:この部屋を見て分かった。他の女の影もないし。 そこまで詮索されてるのか。 理:○○も私にしとこ? ○:でも、この状況は違うよね?真面目な君なら理解出来るはずだよ? 理:はぁ…はぁ…数年ぶりの○○…
2021-12-29 18:56:4346 僕の言ってることは聞こえていないようだ。 理:高校生の時はキスしかしなかったけど、今日はそれ以上のこと…シちゃお? 理佐が仰向けの僕の上に跨る。 僕の胸辺りに手を置いて顔を近付けてきたので、僕は目を瞑った。 柔らかくしっとりした感触が僕の唇に重なる。
2021-12-29 18:56:5247 理:んっ… 震えるような僅かな身じろぎにも漏れ出るうわずった声にも、現実感が抱けない。 やがて別の柔らかい何かが、探るように僕の歯に触れて逃げるように引っ込んだ。 理:ぷはっ…
2021-12-29 18:57:0348 ようやく僕から離れた彼女は、恍惚の表情を浮かべて濡れた唇の端を手の甲で拭いた。 何て言えば良いんだ? 「息は止めなくて良いんだよ」とか…? それだけは絶対に違うな。 平静を装い、彼女と会話をする。
2021-12-29 18:57:0849 ○:高校生の時とは、キスの仕方が変わったね? …って、何てことを口走ってるんだ! 僕のバカ野郎! 理:夜は長いし、色々なやり方があるから全部試そうね? 彼女の行為をエスカレートさせる発言になってしまった。
2021-12-29 18:57:1550 理:じゃあ、もう1回… 垂れた毛先が肌に触れてなんともくすぐったい。 ○:理佐…手錠で拘束されなくても君に応えるよ。 理:はぁ…はぁ… ○:だから、これを外してくれない? 理:だーめ!今の私と○○にあるのは、平等な上下関係。そうでしょ? pic.twitter.com/eSCXDyFLvE
2021-12-29 18:57:23