「Dr.は、仕事が趣味を兼ねていて、仕事と私生活の境界も曖昧でしょう?」 と、気の利く秘書が私の自宅兼研究所で同居を始めて、3ヶ月か。 「おい…なし崩し的に同棲だと思われるぞ」 「なし崩し的に、ご近所さんから奥さんと呼ばれています」 私は苦笑した。 「では、私もお前を妻と呼びたいものだ」
2019-12-14 22:02:42#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) 【お題】①感染②空の③なし崩し→①と③使用 pic.twitter.com/FdnduK98Zn
2019-12-14 22:04:32空の星々が目にしみる。 ある日突然即死クラスの感染症が広がって、沢山の人が死んだ。 「流星群だよ。委員長」 「そうね」 クラス委員長の私と隅っこの彼女。私たちは生き延びている。 終焉が近い世界で。私たちは家族や大事な人を亡くしたというのに。 なし崩しに一緒で。 だからこそ、寂しくない。
2019-12-14 22:14:32新居にダブルベッドが届いた翌日に二人揃って発熱するなんて、あんまりだ。空の救急箱に見切りをつけると、私はしずしずとベッドへ戻った。布団の中は熱く、しっとりと汗ばんでいて、目の前には君がいる。「絶対あの家具屋で感染したんだよ」照れ隠しに愚痴をこぼせば、君が笑って私を抱き寄せた。
2019-12-14 22:21:19あの日から貴女が外出していないと聞いた。青空の下でのことだったから、太陽を見る度に罪を思い知らされる気がするのだろう。なし崩しに奪ったのは私だというのに。 とても可哀想だから、今度見舞いに行くとしよう。恋の熱病を、移してしまうかもしれないが。
2019-12-14 22:28:37「今インフルエンザに感染したらあかんのです」仁王立ちの彼女がしかめ面を浮かべた。床に座る私はぴんと手を挙げて問う。「なぜですかせんせー」「正解は君の心の中にある」「せんせー丸投げずるーい」彼女は険しい顔のまま、厳かに続けた。「土曜日に予約してる焼肉屋に行けなくなる」「それだ」
2019-12-14 22:40:28予防接種が嫌いで、毎年何も受けない。注射が嫌いなんじゃなく、自然の免疫力を弱らせたくないんだ。…ので、数年に一度は何かに感染する。それでいい。いつだったかの病み上がりに見舞いに来てくれた彼女は、その後、なし崩しで今でも同居している。そしていわれる。「予防接種、受けてきなさいよ!」
2019-12-14 22:40:34なし崩し、というのは恐ろしいものだ。なあなあで押し切って、自分の手で相手の手をとって、自分の都合のいいように物事を進めていくのだから そして本当に恐ろしいのは、おかしいと思った時にはもう手遅れな事。 あ、ここにハンコね。 「あぅぅ…結婚…だなんてぇ…」 …ほーら、恐ろしいでしょ?
2019-12-14 22:49:30空のお月は何故にああも寒々しいのでしょう? もくもく雲を着込ませども、きらきらお星で賑やかせども、お月の顔は白いままです。お月の身を案じた神様は、少し早く朝が来るように太陽殿に頼みました。しかし太陽殿は寝坊助で、早起きは数ヶ月しか続きません。 これが、世界に冬と夏が出来た理由です。
2019-12-14 22:49:57○星加家・居間(夜) テレビの流星群の予報を見る遥と大輝。 遥「願い事決まらない」 予報士の声「日本海側は曇り空のため、観測は難しいでしょう」 大輝「冬の日本海で晴天は厳しいな」 遥、立ち上がる。 遥「流れ星見に行こ」 大輝「願い事は?」 遥「もちろん『日本中晴れますように』!」
2019-12-14 23:09:13なし崩し的に合意した夜が明け、私は虚脱感に苛まれ、ただ空っぽの心を抱えていた。 でもそれは私だけだった様で。 貴方は優しい微笑みで、朝霧の光の中で私を迎えてくれたから。 「どうしたの」 「風邪引いた」 答えた私が感染したのは、けれど風邪のそれではなくて。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/v0APCyk9sM
2019-12-14 23:14:02なし崩しに君の唇を奪ってしまった、あの日の空の色を今もはっきり覚えている。瞳の中の空は丸く歪んで、鈍く光を放ちながら僕を魅了したのだった。離れてから謝りかけたのを君が止めて、止めたくせに近づけて、僕らはひとつの雲になった。 @140onewrite #深夜の真剣140字60分一本勝負
2019-12-15 00:21:27