順番めちゃくちゃ
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ナナシ @darkmoon_souji

【メモ】 さて。 ついでだから英語教師こと姫八七海先生についても紹介しておこう。 彼は、俺と佳一が入学したのと同じタイミングで赴任してきた新米教師。 という設定である。 俺たちのクラスの英語教師だったのが一年のとき。 二年は副担任だったので何かと縁がある。

2017-09-25 00:02:57
ナナシ @darkmoon_souji

三年である今年も俺達のクラスを受け持っており、三太のクラスの英語の授業も担当しているようだ。 真面目で明るく生徒からも人気のある優秀な先生だとは思うが、最近キャラがブレまくっているような気がする。 保険医と並んでイケメン教師と言われているのに性格に難ありである。

2017-09-25 00:06:12
ナナシ @darkmoon_souji

普通にしていれば普通なのだが…… 保険医に対してどう接すればいいのかわからず、行き場のない感情が暴走している状態である。 一時期は典型的なツンデレを発症しだしてどうしようかと思ったぜ。 つーかおっさんたちよ。 俺を巻き込むな。

2017-09-25 08:08:25
ナナシ @darkmoon_souji

今もツンデレであるには変わりないが、以前よりは落ち着いたかと思われる。 「全く、仕方のない子だな」なんて言って保険医は嬉しそうにしていたが、おい、姫八先生にぶっ飛ばされる前に俺がその伊達眼鏡叩き割ってやろうか。

2017-09-25 08:15:41
ナナシ @darkmoon_souji

そんなことはさて置き、先程連絡すると言った佳一から音沙汰がない。 三太からも特に連絡がない。 保険医を保健室に戻した後、俺は各学年の英語教師の職員室、通称英語室へと向かった。 幸いにも他の教師はおらず、姫八先生、そして佳一と三太が案の定そこにいた。

2017-09-25 19:50:26
ナナシ @darkmoon_souji

「ああ、慎ちゃん。来てくれたのか」 「お前がおせぇからだよ……って、何してんだ?」 英語教師はボーッと窓の外を見ているが……こいつらは? 「実はな、大参君が授業でわからないところがあるって言うから、先生に聞きにきたんだ」 佳一の説明にコクコクと頷く三太。

2017-09-26 00:48:17
ナナシ @darkmoon_souji

……うん? 俺は首を傾げた。 「……そんなもん、お前が教えればよくないか?」 「それじゃあ意味がないんだよ! 慎ちゃん!」 な、何が? つかデカい声出すなよ…… 「これは大参君の人見知りを直す為でもあるんだ! 俺が教えては意味がない!」 はぁ。よくわからん。 だって姫八先生だろ?

2017-09-26 00:50:11
ナナシ @darkmoon_souji

今更人見知りもくそもないのでは…… 「じゃあ何でお前が一緒にいるんだよ」 「一人じゃ心細くて……」 意味ねぇ。 一人で行ってこそだろ。 ……まぁ、いい。 「で? 肝心の先生は生徒放置でたそがれているのか?」 「んー、俺が思うに……」

2017-09-26 00:53:10
ナナシ @darkmoon_souji

佳一が推測しだす。 「先程の突然のプロポーズと、それに応えてしまった自分とあと伍紙先生が生徒から告白されたという現実を処理しきれなくって混乱していると思われる!」 佳一でなくとも、誰でも予想できることだった。 そんなとこだろうと思った。

2017-09-26 00:56:05
ナナシ @darkmoon_souji

「いつまでも待ってらんねぇし、お前が三太のわからないところ教えるってことでいいんじゃねぇか」 「む……そうするか……」 とはいえ、黙って出て行くのもあれなので俺は英語教師の傍まで近寄っていった。 「先生、気持ちは分かるけどいつまでもそうしている気か?」 「……ああ……うん……」

2017-09-26 08:08:39
ナナシ @darkmoon_souji

上の空である。 聞いちゃいねぇ。 「……あのさ、先生。俺さっきこんなもの撮っちゃったんだけど」 「……?」 俺は彼の前にスマホの画面を向けた。 煙草をくわえ、真剣な顔で考え事をしている保険医。 腹立つが、絵になる。 「これは……」 「盗み撮りしちゃった」

2017-09-26 08:20:23
ナナシ @darkmoon_souji

何かに使えるだろうと撮っておいた甲斐があった。 まさかこんなに早く使うことになろうとは思ってもみなかったがな。 「これあげるからさ……元気だしなよ」 「べ、別に元気がないわけじゃないけどっ……有り難くいただきます」 いそいそとスマホを出してくる。 ちゃっかりしてるぜ。

2017-09-26 23:38:04
ナナシ @darkmoon_souji

写真を送り終えると、英語教師は深いため息をついた。 「格好良すぎて腹立つよな……本当……」 俺も似たようなことをぼやいていたけど、この人が言うとまた違うな…… 「慎ちゃん……」 先生に賄賂を渡したみたいになっている俺を、佳一がジトッとした目で見てきた。

2017-09-27 07:47:29
ナナシ @darkmoon_souji

「うるせぇな! 仕方ないだろ!」 文句を言うと、「俺はまだ何も言ってないが……」と、口をもごもごさせた。 「元気出た?」 「うん……は! 違う! 違うから!!」 俺は慌てて否定する英語教師を菩薩のような気分で見た。 「何、その温かい目!」

2017-09-27 21:04:09
ナナシ @darkmoon_souji

いやぁ、別に? ツンデレなとこは相変わらずだなぁって。 「……あ! 見ろよ、先生! あんな所に伍紙先生が!」 棒読みで俺は窓の外を指差した。 さっき保健室に戻したはずなのにもうほっつき歩いているぞ…… 保険医は俺達の姿に気づき、手を振ってくる。 俺も雑に手を振る。

2017-09-28 08:06:59
ナナシ @darkmoon_souji

「ほら! 先生も!」 「な、何で僕が……」 愚図っているので、無理やり手をつかんで振らせようとしたが、抵抗される。 そんなバカなことを攻防を繰り返していると、さっと俺達の隣に人影が現れた。 ふわっと甘い、良い香りが漂う。 「伍紙先生たら、そんなに私が気になるのかしら。うふふ」

2017-09-28 08:21:07
ナナシ @darkmoon_souji

そう言って優雅に保険医に手を振り返したのは、女英語教師、美恵橋。 そのグラマーな体型なせいか、男子からの支持率が圧倒的に高い。 俺も最初は目をひかれていたが、本性を知ってからは何だか興ざめしてしまった。 この女教師、とんだ肉食系女子なのだ。

2017-09-28 21:29:18
ナナシ @darkmoon_souji

そんな肉食系女英語教師の最近の狙いは伍紙保険医。 姫八先生と静かな戦いを繰り広げている。 「何──」 何言ってんだ、このアバズレ。 そんなことを言い出す前に俺は英語教師の口を押さえた。 我を忘れて素がうっかり出るところだった。

2017-09-29 00:12:56
ナナシ @darkmoon_souji

嫌いなのはよくわかるけど、落ち着けよ。な? 窓の外の保険医の方もチラッと見てみたが、予想外の人から手を振られ、顔をひきつらせていた。 「美恵橋先生に手を振ったわけではないと思うんデスケド」 棒読みかつ怒りを抑えながら英語教師は言った。 「あら。姫八先生……いたんですか?」

2017-09-29 00:16:27
ナナシ @darkmoon_souji

まさかの存在事態を問われる。 絶対わざとだろ。 英語教師は今にも暴れ出しそうな勢いだったが、俺が必死に止めた。 助けてくれと佳一と三太にアイコンタクトを送るが、二人はとんでもないと首を横に振った。 役立たずどもめ。 一応保険医にも目線を送るが、いくら何でも遠すぎるという目をされた

2017-09-29 07:41:00
ナナシ @darkmoon_souji

【メモ】 俺たちの通う学校の保健室の先生は、世にも珍しい男性である。 名は、伍紙五葵。 本当は先生じゃないとかそういう話はひとまず置いておいて。 男性というだけでもう珍しいのにこの人自身も何だか変わった人だから困ったものだ。

2017-09-21 23:03:13
ナナシ @darkmoon_souji

保健室の先生といえば、男は美人な女の先生を夢見るが、うちの学校の場合逆の現象が起きてしまっている。 伍紙先生は。 格好いい! クールでミステリアス! というイケメンに必要な要素が全て揃っている。 そして保険医だというのにヘビースモーカーだが、煙草をすっている様がまた格好いい。

2017-09-22 07:23:17
ナナシ @darkmoon_souji

仕草から溢れ出る謎の色気に女子生徒を含め女教師たちまで心奪われている。 赴任当初は仮病を使う女子が多かったとか何とか。 「もう俺も三十越えているのに、困ったものだな……」 なんて、煙草の煙を吐きながら保険医は喫煙所という名の廃れた学校の裏庭でぼやいていた。

2017-09-22 07:27:04
ナナシ @darkmoon_souji

俺たちが入学した頃には既にこの先生はいたので、当時の凄さはわからない。 けど、時々女子から本気の告白をされている姿を見かけるので、やはりその人気は衰えていないのだろうなと思う。 現に今、その告白をされた後だった。

2017-09-22 07:40:33
ナナシ @darkmoon_souji

「相変わらずだな、先生」 たまたま見てしまった俺は、疲れた表情で煙草を吸う保険医に声をかけた。 「相手が生徒でも何でもなければ問題ないんだが……」 ああ、そうか。 言い方一つ間違えれば、ふさぎ込んでしまって保護者が出てこねかねない事態になるもんな。 そりゃあ大変だ。

2017-09-22 08:07:35
ナナシ @darkmoon_souji

「君はこんな俺をからかいにきたのか、相棒君」 「んなわけないだろ。偶然だよ。ネガティブだなぁ」 この人は俺のことを「相棒君」 と呼ぶ。 誰の相棒かって、それはもちろん佳一のだ。 非常に俺としては不服である。 それに対して、佳一のことは「探偵君」と呼んでいる。

2017-09-22 08:15:05
ナナシ @darkmoon_souji

だったら俺は「助手」になるのではないかと疑問に思うがあえて触れないようにしている。 ちなみに三太の呼び名は「後輩君」である。 「はぁ……毎回毎回面倒でしかない……いっそ結婚でもしてしまえば彼女らも諦めてくれるだろうか」 ……誰と? という質問は控えておくことにしよう。

2017-09-22 08:19:13
ナナシ @darkmoon_souji

「それはそれでまた面倒なことになりそうだな」 不倫とか略奪愛と言う言葉を頭に浮かべながら俺が言うと、保険医は眉間に皺を寄せた。 きっと同じ事を思ったのだろう。

2017-09-22 13:33:27
ナナシ @darkmoon_souji

保険医のため息が深くなる。 俺としては非常に羨ましい限りではあるが、モテるというのもなかなか大変だ。 「お。慎ちゃんではないか。おーい!」 すると、聞き覚えのある声が俺の名を呼んだ。 そんな呼び方をするやつは一人しかいない。

2017-09-23 00:01:38
ナナシ @darkmoon_souji

佳一……と三太。 そして我らが英語教師の姫八先生がいた。 三人とも両手で教材を抱えている。 佳一は俺に向かって手を振りたそうだが、何せ両手いっぱいに抱えているもののせいでそれは無理そうだった。 あいつらは先生の手伝いでもしているのだろうか。

2017-09-23 01:22:24
ナナシ @darkmoon_souji

「またあなたって人は……煙草なんて吸って」 呆れたように英語教師は、保険医に言った。 「あ?」 機嫌の悪さがマックスになっていたのか、いつもなら絶対見せない素が出る保険医。 しかし、相手を見てすぐにしまったという表情になる。 他の先生だったらどうするんだよ……

2017-09-23 20:35:39
ナナシ @darkmoon_souji

「……何だって?」 英語教師の目の色が変わった。 「すまん、違うんだ。そんなつもりではなかったんだ」 「そんなつもり、とは?」 人でも殺しそうな目をしている。 邪険に扱われたのがよっぽど気に食わなかったらしい。 「ま……まぁまぁ落ち着けよ、姫八先生」 仕方ないので俺が仲裁に入る。

2017-09-24 00:52:00
ナナシ @darkmoon_souji

「ちょっと考え事してたんだよ、伍紙先生は。な?」 そうそう。と、保険医は激しく俺の言葉に頷く。 子どもにフォローされてんじゃねぇよ……全く…… 「伍紙先生、何かお困りなのか」 これまた余計な口出しをする、佳一め。 「また女子生徒から告られたんだよ」 そしてついそれに答えてしまう俺

2017-09-24 00:59:50
ナナシ @darkmoon_souji

「生徒……から?」 もちろん英語教師は反応する。 「……だからって僕に当たらないでもらえますか」 「……すまない」 頭を抱える保険医。 修羅場にならずに済んだ……かな? 「大変なのはわかりましたけど、いつまでもこんな所にいてないで保健室にもどってください」

2017-09-24 01:03:59
ナナシ @darkmoon_souji

呆れたようにため息をつき、素っ気なくそう言った。 「あと、何度も言ってますけどいい加減煙草をやめたらどうですか。保険の先生がヘビースモーカーだなんてどうかと思いますし、それに、体に悪いし」 「……俺の身体を心配してくれているのか」 「んなわけないでしょ」 鼻で笑う英語教師。

2017-09-24 01:14:09
ナナシ @darkmoon_souji

「あんたの健康なんてどうだっていいんですよ。そうじゃなくて、周囲にいる人間が……」 やいやい言い始める英語教師。 またツンデレが発動されたか……なんて思っていると。 「……姫八君」 保険医がその言葉を遮った。 「まだ喋ってる途中なんですけど」 「結婚しようか」 ……!?

2017-09-24 01:21:04
ナナシ @darkmoon_souji

どうして今プロポーズした…… 本気なのか冗談なのかもわからん…… と言うか俺達の前でやめろよな、本当。 本人もポカンとしてるじゃねぇか。 「……悪い。ふざけすぎ」 「煙草をやめるのなら、考えてやらなくもないです」 「……え」 それだけ言って、英語教師はさっさと立ち去っていった。

2017-09-24 01:23:58
ナナシ @darkmoon_souji

佳一と三太が慌てて英語教師を追いかける。 一緒に帰ろう、慎ちゃん! 後で連絡する! と、佳一は早口で俺にそう言った。 返事をするかわりに俺は片手をあげた。 「……先生、灰が落ちそう」 動揺しすぎて煙草のことを完全に忘れている保険医に俺は注意した。 何であんたが一番驚いてんだ。

2017-09-24 13:59:56
ナナシ @darkmoon_souji

「ああ……」と、保険医は上の空である。 「動揺してんじゃねーよ。あんたが言い出したんだろうが」 見ていられなくて、俺は保険医の背中をひっぱたいた。 ゴホゴホとむせる保険医。 「……すまん」 「俺に謝られても」 「少々驚いてしまってな」 「見ればわかる」

2017-09-24 14:56:58
ナナシ @darkmoon_souji

「うっかり口が滑ってしまったんだ。どうせいつも通り罵倒されるかと思ったんだが……」 「あれがツンデレってやつだよ……」 そうか……と、保険医はそれ以上のことは何も言わなかった。 「ということは、あれはOKってことなのかな?」 「早く保健室に戻った方がいいと思うよ」

2017-09-24 15:13:36
ナナシ @darkmoon_souji

健全な男子高校生に見せつけるなっつーの。 いつまでも立ち上がろうとしない保険医を無理やり立たせ、保健室へ戻らせた。 はぁ。全く。手間のかかる大人どもだ。 完璧なように見えて、どこか抜けている。 それが俺の通う学校の保健室の先生である。 あれ? こんな話をしたかったんだっけ?

2017-09-24 20:39:14
ナナシ @darkmoon_souji

「うおおああああ!? 人前で何考えてんだぁぁぁ!!」 「君のこと」 「……バカなこと言ってないで仕事しろ!!」 「先生たち、仲良しですね」 「仲良しっつーか何つーか……」 だんだん日常茶飯事になってきているのが恐ろしいなとふと思った瞬間だった。

2017-09-20 07:38:33