2022.02.08

🍄じゃむ🍌🍄 西２タ45a @fljyojisan

ちょっと期待してる🐬とわかってるけどちょっと意地悪する🦈のはなし #じゃむのこばなし

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金曜日、ラウンジの仕事仕事を終えて部屋に戻ると既にベッドに横になっている🦈がいた くうくうと眠る顔は昔に比べて精悍になったけれどやはりどこか幼くてかわいい 自分も早く寝てしまおうと寮服を片付けていると、机の上に封筒が置かれていた

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…？ 薄いラベンダーカラーの封筒には、僕の名前。 右上がりの文字は🦈のものだ。 封筒を閉じていたタコのシールを丁寧に剥がして中を見ると、僕が行きたいと言っていた映画のチケットと、カードが1枚

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明日、広場の噴水前に11時に集合。 ドレスコードはないけどおしゃれしてきてね。 どうやらデートのお誘いらしい。 随分と可愛らしいこと。 先程まで軽いため息を吐くくらいには疲れていたのに、そんなのはどこへやら。 本当に🦈は僕を喜ばせるのが上手いのだから。

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カードと封筒を机の中にしまっておく。また宝物が増えてしまった。 🦈と恋人になってから知ったことの一つ。🦈は案外筆まめだ。長さはなくても、折につけてこうして手紙をくれる。それは授業終わりに渡されたり、朝起きた時に机に置かれていたり方法はさまざまで。

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内容はその時思ったことから、気持ちが書かれただけのもの。 白紙の時すらあったけれど、その時は🦈が見つけた綺麗なものが入っていたりして、僕は密かに🦈からの手紙を楽しみにしていた。 デートのお誘いは初めてですね。 小さな箱の中はそんな手紙が詰め込まれている。

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今度、箱を新調しようか。 デートの時にでも一緒に選ぶのもいいかもしれない。 🦈はセンスもいいから。 ひとまずここで我慢してください、なんて呟いて 僕はチケットを無くさないように手帳に挟んでから シャワールームにむかった。 シャワーを浴びている間も、考えるのは明日のデートのことだ

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おしゃれをしてきて、と言われたけれど何を着ようか。 この間新調したドレスシャツでもいいけれど、もう少しラフな恰好でもいいかもしれない 久しぶりにジーンズにパーカーなんていうのもありでは？ いつもの恰好はすこし硬いと言われるし。 それに、この間🦈と色違いで買ったスニーカーを合わせて

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いくつものパターンを考えながらシャワーを浴びていたから少し遅くなってしまった。 最終的な着替えは、明日の朝、🦈のスタイルを見てから考えることにして 今は一刻も早く眠らなくては。 疲れているから、映画が楽しめなかった、なんてごめんだ。 着替えて、出ようとして 手を止める

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明日はデートで、ということは 「夜は…」 そういう、ことをするんだろうか いや、多分するだろうけれど なにせ僕たちの休みが重なることなんて稀だ 明日を逃したら、次はいつになるかわからない 「…まぁ、備えあれば、ですかね」 正直、期待しているから 行動でも示してみようかなと思う

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そう思って、僕が手にしたのは 先日🦈には内緒で購入した下着だった 別に、隠すほどのものでもないのだけれど 期待していることがバレるのがなんとなく、癪で 「…」 手にしたそれを身につけて、パジャマに着替える さて、そろそろ寝なくては 支度に手間取って明日寝坊するなんて笑えない

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眠る前に、🦈の額におやすみのキスをしてから、ベットに潜り込む あぁ、なんだかはじめてのデートの時みたいだ 疲れているけれど、楽しみでなかなか頭は眠ろうとしないのを 目を瞑ることで無理やり押さえ込んだ 翌朝、スマホのアラームで目を覚ました 「おや」

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目覚めてすぐに目に入った🦈のベットはすでにもぬけの空 時計を確認すると、支度をするにも少し早いくらいの時間だった 「…着替え」 昨晩の目論見が外れてしまった まぁ、悩んでも仕方ない 結局僕は新調したドレスシャツに細身のパンツ 春物の軽めのジャケットを合わせることにした

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せっかくのデートなら、新しいものを🦈に見せたかったので シャツを着る前、悩んだ挙句、ウエストあたりに、少しだけ香水をつけた ほんのりとかおる程度の量しかつけていないはずだけど 「…」 あからさま、だろうか いやでも流石に今からシャワーを浴びると待ち合わせに遅刻してしまう

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髪を整え、靴を履き替えようとした時だった 今日履いて行こうと思っていたシューズケースの上に、一枚のカード あえるの、楽しみにしてるね 何もかも見過ごされている感覚が、悔しいような、嬉しいような カードにキスをして、また箱の中に仕舞い込む おろした靴はとっておきの一足だ

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下ろす日が🦈とのデートだなんて なんて幸福な靴なんだろう 浮き足立つ心に深呼吸をひとつ 鞄に、スマホと手帳、それから財布と必要なものを詰め込んで部屋を出る 「おっと…急がなくては」 待ち合わせの場所にはどんな🦈がいるんだろう 楽しみで仕方がない

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慌てて鏡の間から街に向かう 約束の11時にはあと10分ほどある お気に入りの腕時計は、🦈が僕の誕生日にくれたものだ シンプルな文字盤にメンズものにしては少し細めのベルト こーいうのなら普段使いでも🐬のかっこににあうでしょ？ そう言って、僕につけてくれた

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時間を確認したかっただけなのに、余程浮かれているらしい 些細なことで思うのは🦈のことばかりだ 「ふふ」 全く、🦈と恋人になるまでこんな僕は知らなかった どちらかと言えばもう少し冷静にお付き合いを楽しめると思ったのに 愛情深くてまめな🦈のお陰で

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自分自身でも知らなかった僕を引き出されている 兄弟、相棒、そこに恋人という関係性がプラスされたところで さほど変わらないと思っていたというのに 自然と足は早足になる 噴水の前には、周囲よりも頭一個大きな後ろ姿 「🦈、お待たせしま…おや」 その背中に駆け寄って、腕を絡ませたところで

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🦈の体に隠れて、小柄な女性が2人🦈に話しかけているところだった事に気がついた 「あ、🐬、待ってたぁ」 「うっそ！めっちゃイケメンきた！」 「やばぁっ、ねー、一緒にご飯行こうよっ」 きゃぁきゃぁとはしゃぐ女性達を尻目に、🦈はにこにこと僕を見ている

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「失礼…あの」 せめて会話を遮ってしまったことを謝罪しようと、彼女達に声をかけようとした、その時 ぐい、と腕を引き寄せられて 「んっ！」 「今日、誰とデート？」 「🦈と、です」 一瞬僕の唇に触れたのは🦈のそれで 目の前女性2人は呆気に取られてこちらを見つめている

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「そーいうことだから」 「へ、あ、はい」 自分よりも頭１つ以上上からの視線はさぞ怖かっただろうな どうでもいい事を考えながら、僕の腕を引っ張る🦈についていく 「もー」 「🦈」 「今日は俺とデートなんだから他なんて相手しないでよ」 横目で見た🦈はどこか拗ねた顔だ

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映画館に向かう途中、大通りから逸れた脇道で🦈が足を止めた 「🐬」 「はい、🦈」 頭の先から爪先まで じっと、視線を走らせて🦈が笑う 「さっきはちょっとイラッとしたけどぉ、今日の🐬ちょーかっこいいから許してあげる」 うんうん、何度も頷くと 新しいドレスシャツが似合ってるとか

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やっぱりシュッとした格好似合うねだとか 靴も最高、だとか 僕が🦈に見せたかった全部を褒めた後にぎゅっと抱きつく 「今日はいっぱい楽しもうね」 「えぇ、もちろん」 そういえば、今日の🦈はいつもと少し違うスタイルだ 「🦈も、今日も格好いいです」 「んふふ、でしょ？🐬とデートだからさぁ」

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アンクル丈のチェックパンツに、シャツを合わせ、その上からオーバーサイズのニットベスト 足元は形は違うけれど、同じシーズンに購入したブイチップのシューズ 「本当はさ、キャップとか遊ぼうかなーって思ったんだけど、🐬ちょっとフォーマルよりで来ると思ったから」 ちょっと悩んだんだけど

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なんて 「いつものラフな貴方も素敵ですけど、そういう格好の貴方も素敵です」 「惚れ直した？」 「えぇ、それはもう」 手元を見ればお揃いの腕時計 些細なことがうれしくなってしまって、思わず僕から手を繋ぐと 🦈がその手を繋ぎ直す 「今日はこっち」 「そうですね」 指を絡めて

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いわゆる恋人繋ぎだ デートにはぴったりだろう 映画館の時間まではまだ少し時間があるから、カフェに立ち寄りお茶にすることにする 「あ、ご飯食べる？」 「そうですね」 「映画館の近くに、マルシェでてんだって、あとでみにいってい？」 BLTサンドをシェアしながら、少し予定を確認して

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映画の開始30分ほど前に映画館へ向かう 事前に🦈がチケットを用意してくれていたおかげで、ほとんど待つこともなく中に入ることができた 「🐬、ポップコーンいる？」 「ドリンクだけで」 「おっけー、先座席行ってて」 「ありがとうございます」 🦈のコードを受け取って、座席に向かう

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指定の席はカップルシートだ 少し大きめのカプセルの中に入って、🦈をまつ間に、スマホの電源を切っておく どうせ急ぎのようもないだろうしこのまま切りっぱなしでもいいかもしれない 面白かったらパンフレットでもかって行こうか つらつらと考えていると、🦈がドリンクを両手にやってきた

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「はい、どーぞ」 「ありがとうございます」 手渡されたのはホットココアだ 甘い香りが、カプセル型のドームの中にふんわりと広がる 「マルシェで昼飯にしよーね」 「ふふ、楽しみです」 わざわざぬるめにしてもらったのだろう ホットココアは猫舌の僕でもちょうどいい

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2人で話しながら映画が始まるのを待っていると しばらくして、辺りが暗くなる ざわざわとしていた周りも水を打ったように静かになって カプセルドームの中は簡易的なプライベート空間だからこれなら気兼ねなく映画を楽しめるだろう そっと、重なった🦈の手に、指を絡める

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「いこ、🐬」 自然と差し出される手を取って、そのままマルシェに向かった 映画館からは歩いて10分程度の場所にある大きな公園で 月に何度か行われているマルシェには、各地からさまざまな種類の店が出店している 飲食店から、骨董店、古本屋に、古着屋もあってなかなか賑やかだ

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「とりあえず、飯かなぁ」 「そうですね」 「じゃぁ、適当に回ろっか」 道々、何店舗かの商品を吟味して購入し 広場に設置してある飲食スペースでご飯を食べる 到着した時間が食事時のピークを過ぎたせいもあるのか 人影はまばらだ 「買い過ぎた？」 「僕、お腹空いてますから平気ですよ」

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テーブルいっぱいに並べられた品物を見て🦈は首を傾げるけど 多分、問題ない量だろう 「じゃぁ、いただきます」 「いただきます」 まずはコブサラダと、ピンチョスを何種類か適当な容器に盛り合わせて 「うん、ドレッシングうまぁい」 「少しスパイスも効いていていいですね」

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ボリュームのあるサラダと胡椒の効いたドレッシングは絶品だった ピンチョスも何かの賞を取ったことのある一品とあって、シンプルだけど素材の味が生きている 「このオリーブいいですね」 「ほんとだ、うまいね」 ただの食事のつもりだったのに 気がつけば使っている調味料だとか

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素材はどこのだろうとか まるでラウンジで限定メニューを考えている時みたいだ 「…ふふ」 「もー、絶対アズールのせいじゃん！」 🦈も、どうやら同じことを考えていたらしい 瞬間、会議のような空気が解け、穏やかなものになった

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「おいしいのあったら、🐙にお土産する？」 「そうですね」 ニコニコ、🦈が言うのにそう答えたけれど 僕は少しだけ残念で 🐙にお土産を買うと言うことは、夕方には寮に戻ると言うことだから 「…」 「🐬？どうかした？」 「いえ、なんでも…どれをお土産にするか考えていただけですよ」

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半分本当で、半分嘘 今はまだデートを楽しめるのだから、満喫しなくては 「ほら、食べましょう？こっちのフレンチフライ、🦈の好きな味付けですよ」 🦈の口元に、摘んだフレンチフライを持っていくと 素直に口を開けてくれる 「ん、本当だ、美味しい」 「でしょう？」

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昼食を取り終えて 少し休憩した後は、もう少しマルシェを回ることになった こう言う雑多な感じは好きだ 沈没船の中で宝探しをしている感覚に似ている 「なんかいいものあるかな」 「骨董店とかもあるみたいですから、色々回ってみましょう」 コーヒーを片手に あいたもう片方は🦈とつなぐ

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骨董店のエリアに向かう途中で、🐙へのお土産をいくつか購入して、そのまま公園の奥まで足を進める 小さな露天がひしめき合ってなかなかの賑わいだ 「あはっ、これすごくね？」 「水飲み鳥ですか」 「こいつ水飲めんの？」 「えぇ、熱機関を利用したおもちゃです」 とぼけた顔のそれをながめたり

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古いレース細工の意匠に感心してみたり 今日の🦈はいつも以上に楽しそうで、なんだかこちらまで嬉しくなってくる アンティークの小細工に夢中な所を邪魔するのも嫌で、🦈の手をほどき、僕も🦈の隣の店を覗くことにした まぁ、万が一迷子になったところで🦈は目立つからすぐにみつかりますし

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最悪、連絡手段もある。 「🦈」 「うん？」 「少しあちらの方を見てきますね」 「はぁい」 少し、離れたところで振り返ると、🦈は何やら楽しげに店主と話をしている どうやら欲しいものが見つかったらしい あの様子だと少し値段交渉をしているのだろう

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「…さて、僕も少し周りましょうか」 軒先はその店の個性があってなかなか興味深い。 熱砂の国のようなエキゾチックなものから、キッチュな小物が所狭しと並んでいるところもある そんな中で僕が目を奪われたのは、ハンドメイドらしきアクセサリーショップだった

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「…」 歪なガラスのアンティークビーズを使って、作られたネックレスや、ブローチ、古い腕時計 凝った意匠の数々は、どこか高貴な風格さえ感じる 店主は、シルバーの髪を綺麗にまとめた高齢の女性だった 「おや、随分と男前なお客さんだ」 「ふふ、ありがとうございます、マダム」

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読んでいた詩集から顔を上げると、僕を見上げて微笑む、美しい笑顔の人だと思う 「何かお探しかい？」 「わかりますか？」 「恋人へのプレゼント」 「当たりです」 いつも、🦈にはもらってばかりだから 何か返したいと思うし、🦈のことだ、何をあげても喜んでくれるのだろうけど

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どうせなら、気に入ってもらえるものがいい そう思ったらなかなかいいものが見つからなくて 結局、今に至る。 「どんなこだい？」 「とても優しくて、強くて、僕のことを誰よりも大切にしてくださる人です」 「おやおや」 「秘密にしてくださいね？」 普段は、あまり言わないけれど

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いつだって、そう思う 「なら、指輪でも贈っておやり」 「指輪、ですか」 「きっと喜ぶよ」 そうだろうか 人間の世界では指輪を贈ることは特別な意味がある 束縛を嫌う🦈を縛ることになりそうで、指輪は選択肢になかった

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悩んでいる僕をよそに、マダムはご自分の鞄を何やら探り出し、小さな宝石箱を取り出した 「ほら、これなんてちょうどいいよ」 「…あぁ、なるほど」 箱の中にあったのは、ひと時代前のおもちゃの指輪だ シンプルなものから、大きなものまで形は様々だけど たしかにこれくらいのプレゼントなら

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気軽に、つけてくれるかもしれない 「アンティークで安物だけどね、本物よりも重くなくていいだろ」 「いくつかはめて見ても？」 「あぁ、いいよ」 僕が入れば、🦈も入らないことはないだろう いくつか手に取って、その中で目を引いたのはシーグリーンの小さな石のついた指輪だった

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ちょうど、似たような石のついたものもある 「マダム、これを頂けますか」 指輪を２つ購入して、店を離れたタイミングでスマホが着信を告げる 「はい」 『お待たせぇ、買い物終わった？』 「はい、🦈は？」 『俺も終わったから合流しよ？』 「はい、じゃぁ、入り口の近くのドリンクスタンドで」