「イッツ・ジャスト・アナザー・ハーリー・バーリー・デイ」

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【イッツ・ジャスト・アナザー・ハーリー・バーリー・デイ】#1 （クトゥルフ神話TRPGシナリオ「それは騒々しく、優雅で、ありふれた日々」リプレイ）

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これだけは最初にはっきりさせておきたい――僕は紳士である、ということを。 それも、なんやかんやですっかり多義的に濫用されるようになった「紳士」じゃあない。本物のジェントルマン、低俗な労働とは生まれながらに無縁の存在、白い肌の下に青い血が流れる身分、そういうことだ。　1

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紳士たる者は優雅でなければならない。冷たく機械的な時間に囚われ、常に急かされているなんてのは無粋な話だ。例えばメイフェアにある僕のフラットでは、寝室に時計を一つも置いていない。毎朝けたたましいベルの音に叩き起こされるなんてナンセンスだ。そうだろう？　2

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「おはようございます、旦那様。午前10時30分でございます」 だってのに、このフラットには僕の美学を解することのできない輩が一人住んでいる。僕の従者だ。僕が頼みもしないのに、こいつは毎朝やる気のない葬儀屋みたいな顔をして、寝室に紅茶と薄いトーストを運んでくる。なんて退屈な目覚めだ。　3

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（今日のロンドンの天気は？　1d6=3「いつものように曇り空に覆われている」）　4

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おいウィルキンス、いやウィルキンソン！　ぼくの許可なくカーテンを開けるな！　どうせ曇ってるのは解ってるんだよ。お前の顔と同程度にいつも通り薄ぼんやりと不幸そうだ。それより朝食にはケジャリーを出してくれるんだろうな？　昨晩確かに言っておいたはずだぞ。はあ、じゃない！　5

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…この男はいつもこうだ。仕えるべき主に向かって何だあの返事は。しかも水差しと洗面器を運んできたらそれきりで、僕の身支度はろくろく手伝いやしない。そりゃあ顔ぐらい自分で洗うさ！　だが、ひげ剃りや髪型のセットぐらいはやってくれても良くないか？　あと靴紐を結ぶのも！　6

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まあ致し方ない。雇用に関する権限の一切を握る父が、どういうわけか知らないが、自邸で一番薄ぼんやりとした従僕を従者に昇進させると決めた以上、僕にはどうしようもないことだ。長男に厳しくするにも限度があると思うんだが、もしかすると僕は実家筋から嫌われているのかもしれない。　7

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いや、そんなことより朝食だ。居間に出向くと、サイドボードの上にはいくつもの銀の大皿に、ハムエッグ、背肉のベーコン、キノコのソテー、燻製ニシン、冷製の鶏肉パイ、それに酢漬けの野菜なんかが山盛りになっている。もちろん新鮮なフルーツもあるし、オレンジジュースのグラスも準備万端だ。　8

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そして何より――ケジャリー！　柔らかな米に絡むクリーミーなソース、カレー粉の刺激、ほっくりした魚の身、口いっぱいに広がる旨味。こんなものが長らく英国に無かっただなんて信じられない。こういう点ではインド人に感謝しないでもないな。あと、コダラの燻製を作ってるスコットランド人にも。　9

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おいウィルキンソン、前にお前が作ったときより格段に上達してるぞ。魚がぱさついてないし、米もしっかり噛みごたえを残してる。玉ねぎの量も適切だ。うちを辞めたら料理人になるのも良いんじゃないか？　…褒めてるんだぞぼくは！　何だその顔は！　あとその返事は！　はあ、じゃない！　10

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（職場での人間関係は？　交渉系技能・APP・SANのどれかで判定） （《信用》50　1d100=49で成功！） （※無職なので職場も何もないため家庭内での人間関係ということにしてあります）　11

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まあ、こんな無味乾燥な男でも一応、僕のことを思って仕えてくれてはいるんだろう。僕を主人として信用しているわけだ。そうだよなウィルキンス？　僕はお前を信じてるからな？　な？　12

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さて、熱いコーヒーとママレードのプディングで朝食は終わった。世間様はここから出勤というところだが、もちろん僕にその必要はない。いずれはウェストミンスターで赤い長椅子に座る運命とはいえ、今は社会のお役に立てない身の上だ。といって、高貴な者の義務を全く負っていないわけでもない。　13

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紳士の常として、僕もいくつかの倶楽部に所属しているが、そのうちの一つ――博物学愛好家の集まりで、毎月の会報を執筆するという大変名誉な役目があるのだ。ちなみに来月分の原稿はまだ完成していない。そういうわけだから書斎で仕事にかかろう。使い慣れたペンとインク、草稿用の紙、そして――　14

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（今日の仕事の成果は？　職業技能で判定、職場関係が良好ならボーナスダイス、険悪ならペナルティダイス） （《製作（執筆）》50　1d100=76で失敗！） （なおボーナスダイスが無ければ96でファンブルだった模様）　15

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――眼鏡。僕の眼鏡はどこだ？　あれがないと書き物なんてできたもんじゃない。おいウィルキンソン、僕の眼鏡がないぞ！ 「最後にお見かけしたのは書斎のキャビネットの上でございます」？　そこで見つからないからお前に聞いてるんだろう！　そこに無ければ無いですね、じゃないんだよ！　16

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書斎にもなければ居間にもない。やっと見つけたのは寝室のサイドテーブルの足元だった。そういえば昨晩ベッドで本を読んでて…寝る前に眼鏡を外して置いたつもりが、暗かったせいで落としたんだろう。くそ、どうしてウィルキンスは気が付かなかったんだ？　危うく踏み潰すところだったじゃないか！　17

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ああ全く、とんだ時間の浪費だ。馬鹿みたいに探し回っていたせいで、もう昼過ぎだってのに一行たりとも進んでないじゃないか。ウィルキンス、ぼくの帽子とステッキを持て！　本屋と図書館と博物館に行って、ついでに食事もしてくるからな！　18

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午前中はまったく散々だったが、良い本を読み、大自然の驚異に触れ、クロテッドクリームをたっぷり乗せたスコーンを腹に収めれば、自然と僕の心も和んだ。特に最後の一つはてきめんに効いた。濃いミルクの風味、良い小麦の香り、甘酸っぱい苺のジャム。ああ、英国人に生まれて本当に良かった。　19

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着替えるために一旦フラットに戻り、呑気に茶を飲んでいたウィルキンスをどやしつけて夜用の靴と帽子を用意させ、僕は倶楽部へと繰り出した。今晩は進歩派甘党倶楽部――甘いものは女子供だけの食べ物ではないと主張する紳士たちの集い――で、アイスクリームの試食会（この最高の響き！）があるのだ。　20

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会はブルック街の洒落たレストランで開かれる。正装した紳士たちが居並ぶ中、きんと冷えた大皿に載って出てきたのは――果物籠の形をした大きな氷だ。もちろん全てアイスクリームだ。オレンジにレモン、桃に葡萄、パイナップルもあるぞ。後から白いコーヒーのアイスクリームも出る？　素晴らしい！　21

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（出会うNPCの創造 性別：1d2=1　男性 名前：1d50/1d50=02/14　アルフレッド・キャルガリ 年齢：10+1d50=33　33歳 信用：1d3=3　低い 性格：1d20=2　陰気）　22

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仄かにジンジャーワインの風味が効いた、華麗なる果物の饗宴を味わっていると、隣からふと視線を感じた。見れば、僕より一回りほど年上の、陰気臭い顔をした金髪の男が、銀のスプーンを握りしめたまま、何か言いたげにちらちらとこちらを伺っている。が、声は掛けてこない。毎度お決まりだ。　23

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どうしたんだよ、アルフ。人の顔を恨めしげに眺めてないで、一言声を掛けてくればいいじゃないか。君だって倶楽部の仲間だろ？　何？　自分なんかより他の人と喋ってるほうが楽しそうだからって、それがどうした！　「自分の話も聞いてくれよ」ぐらい言えないと、本当に誰も相手にしてくれないぞ！　24

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で、用事があるんだろ？　言われなくてもその顔を見れば判るさ。いいや、たとえ君が生来そういう顔の持ち主だったとしても、今日は日来に輪をかけて顔色が悪い。えんどう豆のスープみたいな辛気臭さだ。…何、悩みがあるのか？　重要な問題だからぼくに相談したいって？　そりゃ一体…　25

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（NPCの悩みは？　1d10=2　「大事なひとに贈り物をしたいのだが、何が良いのだろうか」）26

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…はあ、贈り物ねえ。「さる高貴なご婦人」に？　そんな陳腐な表現なんて使わなくてもお察しだよ。許嫁のエレノア・バートレット嬢だろ。君が贈り物をするご婦人なんて、お母上以外に彼女しかいるまい。で、――そうだとしたら一体何を悩むことなんてあるんだ？　君たちは実に良い仲じゃないか。　27

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これでもし相手が女王陛下だとか、煮ても焼いても食えない親戚の伯母さんだとかいうなら別だが、お互い惚れた相手だろう。何を貰ったところで悪くは取られないさ。愛する男が手ずから渡してくれたものを無碍にするようなエレノア嬢だとは、ぼくにはとても思われないね。だから… 何？　自作の詩？　28

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ばかやめろ、…失敬、もとい、良いかアルフ、なるほどぼくは「何を贈ったところで」と言ったが、それには常識的な範囲というか、限度があるということは忘れるな。大体君の詩ってのはあれだろう？「素敵な恋はロールモップスのよう　噛みしめると無限に広がる酸っぱいなんたらかんたら」だろう？　29

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良いか、老婆心から述べさせてもらうが、それだけはやめるんだ。今晩相談してくれて本当によかった。悪いことは言わない、薔薇の花を添えたチョコレートの箱、とかにしておくといい。そうだ、お菓子だよ。甘味に関する知識にかけては、ぼくらは他の紳士たちの遥か上を行ってるわけだろ？　30

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エレノア嬢にふさわしい至高の菓子とは何か、それを考えて贈れば、彼女もどんなに自分のことを思ってくれたか解るだろうさ。そうだ、名案だろう？ …は？　一緒に買い出しについてきてくれ？　どうしてそうなる！？　野郎一人で菓子店に入ったら不審がられそうだって、なら二人でも同じだよ！　31

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胸を張れ胸を！　何のためにこんな倶楽部に入ってるんだ君は！　どこの世界に恋人への贈り物を男友達と買いに行く男がいるんだよ、…ああもう、解った解った、付いて行ってやるさ！　だからそんな審判を受ける亡者みたいな顔をするな！　迫ってくるな！　アイスクリームがただの氷になるだろう！　32

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…ああ全く、えらい目に遭った。しかしアイスクリームは実によかったな。特に桃とミントのやつが、甘さと爽やかさの調和が取れて素晴らしかった。それに白いコーヒー！　見た目通りのまろやかで清純な甘さに、間違いのない苦味と濃いコクが後を引いて…あれは一体どうやって作るんだろうなあ！　33

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ウィルキンスのやつ、レシピを持って帰ったらうちで作ってくれるかなあ… 作ってくれないだろうなあ…絶対に面倒だもんな…あいつに5行程以上ある料理は無理だ…　34

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【続く】

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【イッツ・ジャスト・アナザー・ハーリー・バーリー・デイ】#2 （クトゥルフ神話TRPGシナリオ「それは騒々しく、優雅で、ありふれた日々」リプレイ）

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さて、休日だ。 もとい、僕は労働という苦役から解放された身なので毎日が休日みたいなもんだが、中でも何かしら行動する必要――メアリルボーンのタウンハウスに顔を出してロンドンに来た家族に挨拶するとか、手紙の返事を書くとか――が一切ない、自由時間だけで構成された日だ。…そのはずだった。　01

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全くアルフのやつ、一体どういう了見で僕を買い物なんぞに付き合わせるんだ？　あいつにだって従者ぐらいいるだろうに、僕である必要がないじゃないか。まあ、ご婦人のことなんて何もわからん従者なのかもしれんが。…うちのウィルキンスもそんな感じだし、どころか僕のことも大して解ってないが。　2

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今だってそうだ。今日は11時に待ち合わせて買い物に行くから、9時には起こしてくれと昨晩言っておいたのに、結局起こしに来やしない。自力で起きられる主人で幸いしたな、ウィルキンソンめ。それで…今は何時だ？　なにしろ僕の寝室に時計なんて野暮なものはない。まあ、廊下には… ……　3

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ウィルキンス！　おいウィルキンス、いやウィルキンソン！　このばか！　もう朝の10時過ぎじゃないか！　どうしてお前は起こしに来ないんだ！　「9時ちょうどにお部屋へ伺いましたが」だと？　伺うだけじゃ駄目なんだ、起こせと言ったんだよぼくは！　「起こしました」じゃない！　4

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「10時30分まで起こすなとの仰せでしたので」じゃないんだよ！　それを押して時間どおりに起こすのが従者の役目だろうが！　ああもう紅茶は要らん！　朝食もだ！　顔を洗ってる間に、服と靴と帽子と杖を全部持ってこい！　返事は「はあ」じゃなくて「はい、旦那様」だウィルキンソン！　5

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二輪馬車の御者に半クラウン握らせたおかげで、待ち合わせ場所のウェリントン・アーチにはなんとか5分前に到着できた。アルフはいつも通り地味な山高帽を被り、いまいち手入れのなってないフロックコートを着て待っていた。今日はここから歩いてハロッズへ行く。贈り物には最適な箔が付くからな。　6

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本当はハロッズの前で直接待ち合わせればいいんだが、例によってアルフがごねたのだ。周りにお洒落な紳士淑女しかいないような場所で5分以上も立っていたくない、とかなんとか。本当に繊細なやつだ。面の皮がクレープでできてるんじゃないだろうか。うちのウィルキンスの爪の垢を分けてやりたい。　7

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よしアルフ、別に待たせてないな？　じゃあ行こう。自分で言い出しといてそんな申し訳のなさそうな顔をするなよ。考えてみれば僕も色々買うべきものがあったんだ。いま仕立ててもらってる秋用の「サック・スーツ」に合わせてステッキヘッドを新調するとか、写真用品の補充とかだな…　8

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（ロンドン市内トラブル表を振る。1d10=10「霧けぶるガス燈の影に、信じられないものを見た気がした。キノコのような頭を生やした翼持つ怪物だ。いや、まさか。あんなもの、錯覚だ」）　9

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しかし、今日もまた「いい天気」だなあ。ロンドンに住んでると、我が国に「快晴」というものがあることを忘れそうになる。僕は基本的に都会暮らしを愛しているが、この点においては田舎が恋しいってものだ。特に今時分なんか風は爽やかで、あんな煙霧とガス燈の代わりに、緑滴る樹々の合間から――　10

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（《目星》成功で、通りすがりのミ＝ゴを目撃してしまう） （《目星》60　1d100=62で失敗！）　11

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――何？　どうしたアルフ。は？　そこのガス燈の陰に化け物がいた？　頭がマメザヤタケみたいで、鋏型の大きな触肢が二本あって、背中から皮膜のある翼が生えてる？　君すごいな観察眼が、じゃなくて、そんな生物がこの世にいるわけないだろう？　自然史博物館の標本を継ぎ接ぎしたみたいな…　12

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良いかいアルフ、ここは現代のロンドンで、さっきハーヴェイ・ニコルズを通り過ぎたところ。水晶宮から恐竜の化石が蘇って脱走してこんな場所に逃げ込んでくる、なんてことはありえないんだ。あの旗が見えるか？　我らが帝国の栄光ある旗だ。ハロッズの天辺だよ。ほら、しっかりしないか…　13