大正3年2月、初めて顔を合わせた二人がその後1か月どう過ごしたかが、なんとなく見えてきて、ちょっと、その……死んだので……
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朔太郎通信 @Sakutaro1917

旅人なればぞ 小柴がくれに茜さす、つくつくし 摘まんとしつゝ吐息つく。 まだ春淺くして しんじつは浮びあがらず。 ただ一心に土を掘り 光るつくしを摘まんす。 手は痛めども たゞ一心に土を掘る     (一明館にて) 室生犀星「土筆」 上毛新聞 1914(大正3)年3月4日

2022-03-03 09:11:45
朔太郎通信 @Sakutaro1917

空はかなしき燻し銀 利根もかなしき燻し銀 いちにち座してしんしんと祈らるる。 すみれ光りてたえがたく その紫はひろがりひろがり 日光にいま及ばんと 燻し銀をば破り出づ。       (一明館にて) 室生犀星 「燻し銀」 『上毛新聞』1914(大正3)年3月5日

2022-03-03 09:15:05
朔太郎通信 @Sakutaro1917

利根川も 土手も 崖の樹も 雲雀も 赤城おろしも むくちなる宿のをんなも 庭の金魚も 未見であつた君も 君の書齋も 君がわかす紅茶も すべてすべてわかれなり。 …… —三月九日一明館にて— 室生犀星 「前橋を去る(H氏に送ることば)」 『上毛新聞』1914(大正3)年3月19日

2022-03-09 09:43:57
裏花火 @urahanabi

なぜ朔太郎通信さんが犀星の詩を連投??と思い調べてみて死にました…… 大正3年2月14日(え、バレンタイン)に朔太郎の地元群馬県前橋駅の駅前で待ち合わせをして初めて顔を合わせた朔太郎27歳と犀星24歳。二人は前年より始めた文通一年続いたところ。続きます RT

2022-03-09 10:31:24
裏花火 @urahanabi

朔太郎が犀星の詩を見て惚れこみ熱烈なファンレターを送って文通が開始、有名な話ですがお互いに夢をめちゃくちゃ見ていた二人は顔合わせにがっかりしたと書いています。白皙の美青年を想像していた朔太郎は犀星が鬼瓦みたいに感じられたし、犀星はいけ好かない男だという感想を持つ。(朔太郎は超美形

2022-03-09 10:35:27
裏花火 @urahanabi

ですが、なんとその後利根川近くの旅館一明館に1か月近く犀星は滞在し、朔太郎と親交を深めた。3月下旬、犀星と朔太郎は一緒に東京まで行って大正博覧会を連日見に行っています。……この、ちゃんと会って1か月、旅館滞在中に書いた詩なのですね……

2022-03-09 10:36:50
裏花火 @urahanabi

文通して1年、初めて会って1か月。彼らがすごく意気投合して、犀星もその場を離れがたく、ずるずると1か月近く連宿しました。jomo-news.co.jp/articles/-/691… 2月14日当日から3月9日まで泊ってたのか……(会ったその日から)

2022-03-09 10:42:00
裏花火 @urahanabi

……第一印象で、何だこいつ、とお互い思ったのに、その日から1か月近く、朔太郎紹介の旅館に連泊し、連日詩について語り合ったのかと思うと……こう、……。あの……。で、3月9日じゃあねと別れたはずなのに、またすぐに下旬には一緒に東京博覧会への旅行に行くのね……そう………

2022-03-09 10:47:39
裏花火 @urahanabi

この事実を踏まえて最初の連投された詩を読むとすごく味わい深く。最初の詩の光る土筆を掘り続ける。というのも、朔太郎と詩についての話が白熱し、その中に何か、光る何かを見つけ、それをどうにか得ようと思う気持ちなどが察せられる。春の兆しの土筆に、詩への情熱の何かの兆しを掛けているのかと。

2022-03-09 10:58:09
裏花火 @urahanabi

二つ目の、日光に届かんとするいぶし銀を、破りいずるものも、やはり、朔太郎との連日の熱に浮かされたような詩への思いが、何か、何か彼の中で実を結びそうになっている情景にも思われます。二人の詩人の中に明滅する詩の熱が、いぶし銀を日光のような燦然とした光に晒しているさまが。

2022-03-09 11:01:21
裏花火 @urahanabi

で、三つめは明確にH氏へ、と宿を発つ日を明記して送っているので完全にこれは朔太郎向けなのですが……、二人で多分ともに見た景色、会ったことがなかった君にもう会ったね、という未見の君への別れ、手づから1月に新築した朔太郎の書斎で沸かしてくれた紅茶。(朔太郎は紅茶が好き)(眩暈)

2022-03-09 11:03:40
裏花火 @urahanabi

詩人の濃密すぎる恋の告白にも似た親愛の情を、新聞に!!!!寄稿しちゃう!!!!すごい!!!!!!もちろん後世こんな風に紐解かれるなんて当時の犀星は思いもしませんから、H氏にだけ伝わる秘密の通信ですよね新聞使った…!掲載3月19日、上毛新聞(群馬の地方紙)すごい……

2022-03-09 11:07:29
裏花火 @urahanabi

それで??これが19日に掲載されて?自分のところの地方紙に載った犀星の自分あての詩を読んで、ふふん、と思いつつ、数日後には当然約束済みだった、二人で行く博覧会に向け東京行の汽車に乗る朔太郎、という図なんですよね……

2022-03-09 11:10:49
裏花火 @urahanabi

こうして彼らはその後、お互い結婚しても家族ぐるみで付き合い、死ぬまで、親友であり続けました。犀星は幼くしてお寺に引き取られ、家族と縁の薄かった人ですが、その分友人や自分の家族をすごく大事にしました。朔太郎とは兄弟のように喧嘩をしながら、彼を見送っています。(ここまですべて事実)

2022-03-09 11:17:12