緑間くん 僕らの骨に肉がつき 僕らの肉に皮がつき 僕らの皮に毛が生えて 僕らの目が開くとき 僕らの魂がどのあたりについたのか 本当は誰にも分からないのだ 緑間くん もしかしたら魂は僕らの毛先の端っこに生まれ 何度だって生え替わっているかもしれないことを どうして否定できるだろう
2023-01-31 08:10:33緑間くん うずたかく積み上がる問題を考えこんだって解決はせず いつか取り返しがつかなくなるまでぼんやり眺めたって消えはせず つきまとう不安に怯えたって慣れはせず ただ目の前にあるものを処理していくだけの機械になっても いつか自分の立つ場所から虹が見えることだけを夢見て生きるのだ
2023-02-01 08:07:29緑間くん 硫黄が溶けたような 生ぬるい春の匂いがして 僕らは足を止めるのだ このまま凍えて固まって 溶けないままに永遠を掴み取れそうだった冬が終わり 瞬きの間に春が来る 緑間くん 変わらぬままではいられない命が 生まれて腐り落ちる匂いが 静かに夜明けに滲み出したのだ 緑間くん
2023-02-08 08:08:32緑間くん 何をおそれているのかを言葉にすれば勇気は出るか 何に失望したかを言葉にすれば諦めはつくか 何に傷ついたかを言葉にすれば傷は癒えるか 緑間くん 言葉はほとんど無意味で いっそ真実から遠ざかるばかりなのだ 緑間くん それでも言葉にしないと認められない朝日があったのだ
2023-02-21 08:07:54緑間くん 本当は何にもいらなくて 本当は何にも成し遂げたくなくて 本当は何にも求めたくなくて 本当は何にも繋がりたくなくて 本当は何にも期待したくなくて 本当は 本当はって言っていることが 本当は全部ほしがっていることの証明になってしまうのだと 君は知っているのだ 緑間くん
2023-02-22 08:12:09緑間くん 自分の心は自分にしか見えないから ずっと自分のことが嫌いなのだ 醜く歪んだ自尊心を持て余し 他人を妬むことばかりの ちっぽけな心がいつも視界に映るのだ 自分の心が本当に自分にしか見えないのか ずっと不安で仕方ないのだ 怪物にさえなれなかった矮小な命が 君の目に映らないか
2023-02-24 07:53:55緑間くん 溢れる情念の海に溺れるくらいなら 空っぽな井戸の底でうずくまっている方がマシだろうか 綺麗な水だけ飲んでいたい 美しい泉だけ見ていたい そう願うのは強欲だろうか 緑間くん 泥にまみれても立ち上がる君の姿のその輝きを とっくに乾いた瞳で見つめるのだ
2023-02-28 08:04:43緑間くん 何者にもなりたくないことと 何者にもなれないことに違いはあるか 何も得たくないことと 何も得られないことに違いはあるか 過程に意味があると言うことと 結果主義を謳うことに 本当に違いはあるのか 緑間くん 君はただ一言 人事を尽くしたという過程こそが結果だと言うのだ
2023-03-03 08:04:58緑間くん 間違えっぱなしの人生の救いようの無さは 正解が分からないんじゃなくて 正解が分かるのに選べないせいなのだ 何が正しくて どうすれば救われて 自分を嫌いにならなくて済むのか 分かっているのに動けないのだ 緑間くん 立ち上がればいいだけなのだ その為の足もあるはずなのだ
2023-03-07 08:04:14緑間くん 何をやっても悪夢を見るのは何をやってもうまくいかないからなのか 何をやらなくても悪夢を見るなら せめて何かを為そうと足掻いても 結局全部が裏目に出るような無力感に苛まれるのだ 緑間くん アスファルトに咲く花の何が自身足り得るだろう もうそれは咲くことを成した花なのだ
2023-03-08 08:02:00緑間くん 本当は愛なんて信じてないのだ 緑間くん 本当は愛だって信じてるのだ 緑間くん こんなのどっちだっておんなじ意味なのだ
2023-03-14 08:06:20緑間くん 幸福の在処を探した時 日差しの下を歩く人の影や 線路に無造作に転がる石の一つや 蛍光灯が点いた瞬間に鳴った音や 飛び立った鳥に揺れる電線に 残された気配を思うのだ ただそこにあるものと 残されたものの間に 得難き春の感傷があるのだ 緑間くん
2023-03-15 08:13:36緑間くん 自分の力では如何ともしがたい憂鬱な衝動が襲いかかり 何を成そうとどうせ骨だと 何をせずともどうせ朝だと 僕らの命を脅かすのだ 緑間くん 僕らは複雑になったことを進化と呼んで ただ腹が減ったから食事をするということを忘れ 高等動物だと言い張っているだけなのだけれど
2023-03-27 08:08:38緑間くん やりたいことに優先順位をつけられず 自分が欲しいものすら不確かで 途方に暮れて佇む茫漠とした己の荒野 ここに植えるべき花も分からず たどり着きたい場所も知らず ただ日が昇っては沈むのを眺めるのだ 緑間くん それでもなお美しい世界 この痩せ果てた大地すら美しい世界なのだ
2023-03-28 08:07:03