ラビさん(@LABI_BLUEPRO)と撮影したシチュエーションSSの本筋関連投稿のアーカイブです。 各キャラの本来の設定と異なる部分もあるので、位置的にはIFやパラレルストーリー。コラボとも言える? min.tの仕様上、ALTを読み取れないためコピペしてます。
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前編

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーー >クリアランス認証 CLEAR >アクセスキーを入力 **** CLEAR >エングラム照合開始...... CLEAR >アーカイブ展開中...(1/3)_ ーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/gxoBi2w0NF

2023-11-25 00:25:51
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画像1:
『撮影者、日時共に不明。両名の軍所属期間に城内小庭園で撮影されたもの』

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーー ... >アーカイブ展開中...(2/3)_ ーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/Sbbe3xIbrB

2023-11-25 11:38:22
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画像1:
『撮影者、日時共に不明。
所属の違いと兵士の数によりそう多くはなかったが、時折城内小庭園にて会話を交わす様子が目撃されていた。
これは他の兵士にも見られるよくある光景だ。
特筆すべき点は無し。』

画像2:
『撮影者、日時共に不明。
談笑の様子。
よく喋りよく笑う奴らだと、救護班や後衛、選抜射手の兵士達は語った。
救護班に厄介になる数が人一倍多い「砕氷」は、他の兵士に比べ救護班連中、特に班を率いていた「死神」と顔なじみになっていたようだ。
他に特筆すべき点は無し。』

画像3:
『【砂漠地域防衛戦線:救護所】撮影者不明
或る日の砂漠での防衛戦の際に撮影されたもの。
防衛戦だというのにいつも通り前線へ突っ込み、腕を負傷した「砕氷」を手当てする「死神」の様子。
最前線で自らも戦いながら救護班を統率する彼は、彼女の無謀な特攻をよく見かけているため、彼女が負傷し担ぎ込まれるたび小言を言っていた。』

『【音声ログ:再生…】』
『「(不明瞭なノイズ)」
 「僕、前にも何度か言ったと思うんだけど…」
 「君本当にいつか、戦線復帰が難しい大怪我するよ?」
 「いやぁ…そうは言ってもですね……痛っ」
 「(会話は続いたが、周囲の話し声にかき消されている)」』
『【再生終了】』

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーー ... >アーカイブ展開中...(3/3) >完了 >/追加検索 >検索範囲を拡大......_ ーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/7d10z0St0X

2023-11-25 19:33:38
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画像1:
『【式典日:城内小庭園】撮影者不明
バーンハルト城で式典が行われる日に撮影されたもの。
表彰も同時に行われ、対象となる一部兵士には専用の制服が貸与された。
特筆すべき点は無し。
__あと、撮影者の記載はもういい。どうせいずれも不明なのだろう。』

画像2:
『【音声ログ:再生…】』
『「__ラビ殿、めちゃくちゃ不満そうな顔ですけど…どうしました?」
 「…僕この服の着心地が苦手なんだよね…首元とかが窮屈で…」
 「式典で着る度に伝えてるんだけどなぁ」
 「ああ…そういうことですか。確かに少々苦しそうな…」
 「私の方は、式典服着るのは今回が初めてですが…その……以前はもっと違うデザインでしたよね?」
 「うーん…」
 「(沈黙)」』
『【再生終了】』

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ... >追加検索結果 >音声ログ:1件 >/再生 『(不明瞭なノイズ)___  では、証言として記録致しますので、もう一度』 『あ、ああ…俺は本当に見たんだ、あの日__』 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/Tlb05DETD5

2023-11-26 11:32:34
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画像1:
『「__俺は本当に見たんだ、あの日…
  今思えばあれは兆候だったのかもな」
 「庭園を歩いていたら、彼を見かけたんだ。いつも誰かしらと楽しそうにしているあの人が、その時は1人でぼんやり佇んでいてさ」
 「少し挨拶しようと声をかけたんだ」
 「その時振り返ったあの人は__」』

画像2:
『「__恐ろしく、冷たい目をしててさ」
 「信じられないだろ。俺も見間違いか人違いかと思ったよ」
 「すぐに表情は解れたが、彼の振り返り様、目が合ったあの一瞬はまるで…氷のように冷たいナイフを、首元に当てられた気分だった」
 「今までそんな素振りは一切無かったし…あの人のあんな顔を見たのは、後にも先にもその一度だけだ」
 「まあ…これを他のやつらに話しても、あのいつも笑顔のラビ殿が?って言って、誰も信じちゃくれなかったがな__」』

『【再生終了】』

画像3:
「___内緒だよ。」

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー info>このデータには最新版が存在します >最新版をインポート中…… >完了 >離反者「ラビ」および  脱走兵「サツキ」に関する最新ログを表示_ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/nkbg8utgQS

2023-11-26 17:50:38
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彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

「引き続き、並行してこの2件の調査と捜索を行うように。最優先で早急に対処せよとの命令だ」 「それにしても…不可解な点が多いな。」 「特にこの削除された項目は……いや、やめておこう。今の状況で余計な憶測はするべきじゃない。」 >next : ??? #ブルプロSS pic.twitter.com/bgBj8IylQQ

2023-11-26 18:20:40
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彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー Log: ■/■ :[削除済] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/8gr8v9jOlI

2023-11-30 01:26:54
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(※メインストーリー4章の内容を背景に含みます。)

ここ最近の公国は民も兵士も教団や竜族に怯え、軍や騎士団の誇りを遂行することさえ難しい状況。
そんな中、ある日突然除隊し姿を消す兵士がちらほら現れた。
長引く戦いに耐えられない者は常に一定数いるが、あまりにも不自然な失踪が連続して発生している。
さらにこの件は、公国内で身分を問わず起きている現象のようだった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『…今、公国で何が起きているのか、確かめないといけない。
軍も騎士団も、トップがあんな様子で機能不全に陥っているし、このままじゃいずれ公国自体の存続にも関わるだろう。ここまで来るとあの公王様暗殺の件も、何か裏があるんじゃないかって思えてくる。
何が裏で糸を引いているのか…必ず炙り出さなければ。

__けど、この頃監視をつけられている気がする。
僕が裏で行動していることに気が付いて、そろそろ向こうも動き出すつもりなのだろう。
調査は少しずつ進んでいる。だが、幾人もの犠牲を生んでいるこれらの研究計画を推進した黒幕の完全特定には、未だ至っていない。

…僕はまだ、捕まるわけにはいかない。
状況によっては……軍を離れることも考えないと。』

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー Log: ■/■■:[削除済] ■/■■:[削除済] ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #ブルプロSS pic.twitter.com/zqO0UGRh0O

2023-12-02 02:49:35
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(※メインストーリー4章の内容を参考程度に背景に含みます。)

『「…あれ、」

何故か自分が寝ていたのは治療施設のベッドではなく、暗く冷たい部屋の無機質な台の上。身体を起こす。靴は履いたままだ。…そして、

「…見えてる」

先日の交戦時に負傷し、完治は難しいと言われた左の視界が、元通りになっている。
…いや、これは見え過ぎている、が正しいか。あまりに詳細で鮮明すぎる。頭が痛い。

__程なく研究員を名乗る人たちが部屋に入ってきて、尋ねてもいないのに何やらベラベラと語り出した。要約するとこう。

・私は治療施設から拉致られた
・おまけにトチ狂った先行実験の被験者になった
・人間の一部にアバリティア因子を組み込む実験の一環で、私の左目にはよくわからない諸々が仕込まれた
・定期的なメンテナンスを受けないと再び視力を失うか完全なアバリティアになる …等々。教団とかも出てきた。

そして私は軍には戻れず、この場所で被検体として協力してもらうと。最悪中の最悪。
勿論、そんなの願い下げだ。ココじゃろくな死に方はしないだろう。
向こうの扉の奥から聞こえてくる地獄のような唸り声が、それを物語っている。

__逃げなければ。
逃げて、その先は……あとで考えよう。時間がない。』

__これは見え過ぎている、が正しいか。

あまりに詳細で鮮明すぎる。頭が痛い__





後編

画像1:
橙に染まっていた孤影の城下は、あと少しもすれば完全に闇に沈むだろう。
回転する足がつまづかないよう気遣うのもやっとだが、とりあえずの目的地はもう目の前。
「もうすぐ…ラウレーベン古戦場に続く廃墟だ」
揺れる草葉の露、瓦礫にうごめく虫、行く手を阻む風に飛ばされる塵。
世界の全てが極彩色の刃となって左目を突き、絶えず脳天を滅多刺しにしている。
「周囲の警戒にリソースを割けない…」
あの日、対向狙撃によって失った左の視界は、余計な手を加えられて再び光を取り戻した。
だが、見えすぎる眼の制御までは、脳に書き加えてもらえなかったらしい。
痛みは増す一方だ。視界もぐらつく。
古戦場に出る前に、休めるといいんだけど。

画像2:
かつて自身が身を置いていた場所の方角から、懐かしい音が聞こえてくる。
苦悶の表情で脂汗を滲ませる、赤く染まった迷彩柄が脳裏をちらつく。
しかし、妙だな。
脇目も振らずこちらに向かってくるものだから、こうして身構えてみたものの。
追手の兵士にしては迂闊すぎる。
気配を消すどころか、意識が散漫になっている。
もちろん、相当の演技派という可能性もあるが…迷っている時間はない。
「足止めさせてもらうよ。多少動けなくなる程度__」
名も顔も分からない一心不乱な軍靴の音を目前に、深く息を吸って。

殺気__に近い、敵意。
「しまっ……!!」
意識の隙を突いた死角からの攻撃に、咄嗟に上体を引き寄せる。
この場で自身に攻撃をしかける相手を思いつく限り列挙、次に取るべき構えを導き出そうとするが…掠った得物を見やると、見覚えのある意匠。
相手は公国軍の兵士、先回りされていたのか…と心の中で舌打ちをする。
それにヘヴィスマッシャー相手に、スペルキャスターが太刀打ちできるのか。
いや、”いつも通り”やればいい。氷魔法、接近、破砕。何度も戦ってきたじゃないか。
それにしても一体誰が、と振り下ろされた玉槌から目線を上げていくと__

「なっ…ラビ殿!?」
「君は…」
互いに、よく知る顔がそこにあった。

相手の一挙手一投足を見逃さず、かつ即座に対応できる間合い。
詰まる呼吸と、得物を振りかざしたがる臆病な神経を鎮め律する。

「…っはは、これはこれは…”死神”様じゃあないですか…」
「まさかこんな場所でお会いするなんて…幸と言うべきか、不幸と言うべきか。」

絞りだした皮肉めいたセリフは、気づかない程わずかに震えていた。
公国軍の”戦場の死神”。サツキが何度も世話になった、前線救護班を率いる兵士。
その彼は眉一つ動かさず、短く息をつく。

「”砕氷”様こそ、こんな所で何を?…まさか上の指示で僕を追ってきたんじゃないよね。」
「できれば、君とは戦いたくないんだけど…」

眼前でなびく青髪に標的を定めたまま、少しだけ迷いの見える声でそう告げる。
“砕氷”。最前線で氷魔法を荒々しく繰り出す戦法からそう呼ばれた、特異な兵士。

彼女は、彼は、何が目的でここにいるのか。
もし自分を追ってきたのであれば、邪魔をするのであれば…
顔馴染みだろうと、叩かなければならない。

「戦いたくないのはこちらも同じで__」
「…待ってください。上の指示?貴方を追って?…どういう意味です」
「どういう意味って、今の公国じゃあ、僕は離反者として…」

発見次第終了、との通達が出ているだろう。
そこに立つ兵士もそれは承知のはずだと考えたところで、ふと最後に見た彼女の姿が頭をよぎった。

「…あれ、そういえば君ってこの間、左目の治療の為に…」

作戦行動中に大怪我をした彼女へ応急処置を施したのは、ラビの救護班だった。
その後は高度医療を受けるために、後方の治療施設に送られたはず。
なぜ今ここに、その彼女が?

「…ああ、それなら変な奴らの"計画"とやらの実験動物にされそうに…いや、もうされたのか。なので、逃げてきました。」
「ラビ殿こそ、脱走兵である私を捕縛に来たのではないのですか?」

軍の指示で貴方を捕まえるどころか、こちらは軍から逃げてるんですよ。
それを聞いたラビは、考えを巡らせる。

「"計画"、実験……」

聞き覚えしかないフレーズ。
軍を去る前に調べ上げた、黒幕不明の危険な研究。
目の前の彼女は、不幸にもその犠牲者の1人になったわけか。

「…准尉、僕たちはどうやら敵同士じゃないみたいだ。一旦お互いに武器を納めない?」

画像1:
孤影の城下にて偶然出会った追われる者同士は、互いの情報を共有した。
ここに至るまでの経緯の詳細、自分が見聞きしたこと、これからすること。
そして、敵を同じくする顔馴染みの両名は、協力関係を結ぶことにしたのだった。

「…ご苦労様。報告はそれで全部?」

月明かり射す、とある路地裏。昼夜問わず冒険者が往来するこの地で、人目を避けることができるいくつかの場所のひとつだ。

「はい。アステルリーズのバファリア教団関係者には、少なくとも怪しい動きは見られず。
 バーンハルトで起こっていることについて認識している様子もありませんでした。」
「密偵の心得がある君がいて助かったよ。僕が得た情報も合わせると…やっぱり、全て向こうの信者の独断専行か…」

西バーンハルト半島を離れた2人は、各地のバファリア教団の調査を始めた。
“計画”の被害や影響範囲の確認、主導する黒幕の絞り込みを目的としており、ここ数日間は手分けして街を走り回っている。

神殿に潜入していたサツキからの調査報告を聞き終えたラビは、考えを巡らせている。
流し目でぶつぶつと呟きながら情報の整理を続ける青年に、サツキが口を開いた。

画像2:
「ただ、気がかりな話が。近々アステルリーズ港付近で"物資"の搬入があると話している商人がいました。」

ぴた、と動きが止まり、跪いたままこちらを見上げるオッドアイの彼女に目線を向ける。

「商人…"物資"?」
「その商人の身元を調べたところ、登録情報の改竄痕跡が見られました。」
「おそらく、バーンハルト教区の…」

情報をわざわざ改竄してまで…そんなに無関係の人たちを苦しめたいのか。

「…はぁ。よくやるよね、まったく…」

だがそのおかげで、次にやるべきことが決まったわけで。
どこか複雑な気持ちで、準備に取り掛かり始めた。

画像1:
「…この便もハズレです。怪しい人物も動きも無し。」
「そうだね、僕が見た限りでもそれらしい動きは無かった。」

アステルリーズ港のある屋根の上で、
2人は港を出入りする船の乗客乗員、搬入物資に目を光らせていた。

先日手に入れた、怪しい商人と”物資”の情報。
それらを突き止めれば、黒幕に近づけるかもしれない。
今は可能性があるなら賭けるべきだ。

今まで停泊した他の船と同様、平凡に人と貨物を積み終えた船舶は、
夜の底に汽笛を響かせながらゆっくりと白波を立てて進み始めた。

その様子を見送りながら、ラビは隣で港をにらみ続けている人物に声を掛ける。

「…次の便が来るまで、君は一度休むといいよ」

サツキは、はっとしたように何度か目をぱちぱちさせた。
ありがとうございます、と少し目元を緩ませるも、依然として視線は港を向いている。

画像2:
「お気持ちはありがたいですが…戦闘以外じゃこういう時くらいなんですよ、この左目活かせるの」
「忌々しくても、使えるものは存分に使わないと」

左目の制御を自力で身に着けたサツキは、必要な時だけ力を行使することができるようになった。それでもやはり負荷が高いらしく、使いすぎると頭痛以外にも様々な身体症状が現れる。
今のような遠距離からの監視には、もってこいな力ではあるのだが…

「…そう。でも君、また後で頭痛にうなされても知らないよ?」

気休めだろうけど一応、痛み止めを用意しておこうか。
釘を刺された彼女が、うぐ…とバツの悪そうな顔をしているのが、横目に映っていた。

ジリジリと照りつける砂漠の日差しに、オアシスの水面がキラキラと反射する。
露店の賑わいから少し離れたバファリア教団施設の陰に、日焼けと無縁そうな恰好の2人はいた。

「先日の『商人』の情報では、サラムザートに関係者がいるようですが…」
「数日見た限りでは、ここの教区もアステルリーズと同じく、この件には関わっていないみたいだね」

アステルリーズ港を張ったおかげで掴んだ情報は、サラムザート・オアシスに潜伏する関係者について。
”物資”と呼ばれていたのは、法外の薬品の数々。それらを運んでいた「商人」を取り押さえ、彼があっさり情報を吐いてくれた所まではよかった。

だが、いざオアシスを訪れてみれば純粋な信者しか見当たらず、教団員も敬虔な信徒のようなのだ。
偽の情報だった可能性も考えたが…”あの”状況で嘘をつくほど余裕があったとも考えにくい。

「となると潜伏しているバーンハルト教区の教団員が…」

サツキがそう呟くと、ラビは頷いて話を続けた。

「おそらく、アステルリーズから来るはずの"物資"や商人が途絶えて警戒されてる」

こちらの動きはすでに知られていると思った方がいい。
正体が割れているかは定かではないけれど、僕たちのことを消したがっているのは間違いないだろう。あちら側からすれば、極秘情報を知られてしまっているわけだから。

問題は、いつ仕掛けてくるのか。
今日か明日か、昼か夜か。人目のある場所かない場所か、街かフィールドか。

いずれにせよ、準備は整えておいた方がよさそうだ。

「対抗手段を用意しておこう。君も不足している物があれば準備して。」
「了解。日没までに完了させます」

サラムザート・オアシスで小競り合いを繰り広げた数日後。
かつては都だった沈黙の地に、2人は居場所を移していた。

「素手では触らないようにね。これ、けっこう毒性が強いから」
「了解です、採取するのは葉の部分のみでしたよね」
「そう。サラムザートの時に麻痺毒使いきっちゃってさ。この葉も原料になるから、今のうちにここで採っておこうと思ってね」

やわらかな光に照らされながらさわさわと鳴る、
自分たちよりも背の高い新緑を丁寧につみ取っていく。

道は青々とした草花におおわれ、石畳は苔むし、木々が崩れた建物を取り込んでいる。
採集でなくても、この場所は身を隠して一息つくにはちょうどいい。

ぷちぷちと手持ちの枚数を増やしながら、それにしても…とサツキが口を開く。

「毒性学を専攻していたとは聞いてましたけど…あれを見ると改めて、ラビ殿は敵に回したくないですね」

先日のオアシスでの衝突を思いだす。
彼は時と場合によって、特殊なカートリッジを用いている。
今回は麻痺弾だったらしく、食らった相手は直後にばたばたと倒れ込んでいた。

即効性といい、質の高さといい…。
味方であれば心強いが、もし敵だったらと思うと…この人の相手をするのは勘弁願いたい。

そんなことを考えていると、ラビ殿がふっと小さく笑ったのが聞こえた。

「頭半分を吹っ飛ばされかけてるサツキの処置に使われた強力な麻酔、だれが作ったと思ってるのかな?」

こちらから表情はうかがえないものの、どこか冗談めかした声色。

「…その節はたいへんお世話になりました」
「…貴方が味方で助かりましたよ、本当に…」

同じ物でも、毒にも薬にもなるとは…よく言ったものだ。

画像1:
整然と回る歯車が軋み始めたような、僅かな違和感。

「…ラビ殿」
「うん、気付いてる。…追手だ」

画像2:
一気に張り詰める空間。
木々に降り注ぐ雨音にかき消えそうな声量で、2人は最低限の意思疎通を行う。

「ここからなら射撃可能です。やりますか」
「いや、まず色々聞き出さないといけない。サツキ、目くらましと足止めお願いできるかな」

追手の様子が今までと異なる。
新しい情報が手に入るかもしれない。
後処理はどうであれ、無力化が先だ。

画像3:
「了解。いつでも撃てます」
「…行くよ」

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

【 幕間_ねこ 】 「今までの情報を合わせると、黒幕は研究所内に潜んでる可能性が高い。地下水路経由で向かおう」 #ブルプロSS pic.twitter.com/8xFi0A79Pg

2024-02-25 22:04:20
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画像1:
「了解…はあ、またあそこに戻ることになるとは…」

画像2:
「でも、左目の借りはしっかり返さないと…」

画像3:
「……ラビ殿?」

画像4:
「…かわいいぬいぐるみをお持ちですね」
「猫さん、おしゃべりできるんだって」
「ほう……?」

淀んだ空気が地を這っている。
間違っても居心地がいいとは言えないこの場所は、王立研究所への通過点だ。

「この先も敵は随時撃破。不運な非戦闘員も口封じは忘れないでね」
「了解。ここら一帯はあらかた片づけましたが、やはり守りは厳重なようですね」

いつもの潜入用の装備を身にまとい、武器を構えて背中越しに会話する。

行く手を阻んできた者たちは、ひとり残らず打ち倒してきた。
大半は雇われた傭兵か、その雇い主であるねじ曲がった狂信者たちだ。

こちらの実力を知ってなのか、ある程度力量のある人材を選んでいるようだが…。

「もし研究所や、黒幕の情報を聞き出せそうな奴がいたら押さえよう。ここまで来ればある程度、いわゆる隊長格が居ても不思議じゃないからね」

それを聞いたサツキは驚いて、ラビの方を振り返る。

「それは…私だと対処できるか…」

ここまで善戦できているとはいえ、そのレベルの実力は持ち合わせていない。
自分が相手するには少々実力差が、と言いかけた時。

「大丈夫、僕に任せて」

落ち着いた様子で目線はそのままに、
かつて前線で猛威を振るっていた元救護兵は、そう答えた。

画像1:
身体が痺れて動かせない。呼吸が思うようにできない。
一体何が起きてやがるんだ、確かさっき視界に一瞬、

「苦しそうだね。どう?僕特製の神経毒は」
「即効性持たせるのに苦労したんだよ。じーっくり味わってくれると嬉しいなぁ」

いきなり頭上から声がした。
無理やり視線を上に持ち上げると、マスクを付けた長身の男がこちらを見下ろしている。
…どこかで見たような気もするが、とにかく今の状態はこいつの仕業か!

「…さて、君たちの上官はどこにいるのかな。」
「何も知らないってことはないよね。君、それなりの立場の人でしょ?」

男が表情を変えずにそう尋ねてくる。

 ”誰が教えるか、こんなことをして、タダで済むと思ってるのか、”
 ”神の…ッ裁きが、下るぞ!”

痺れがどんどん進行していく。
まるで死の気配が、這い上がってくるような

「…あー、ご高説はいいからさ……早く言いなよ。そろそろ毒が回り切る。」

 “ッふざけるな ! お前らのような 、不逞のやから に ”

発声が酷く、苦しい。

「……はぁ、どうやらダメみたいだね。次行こうか、サツキ」

 “ま、 待て! 俺を このまま、に しな いよな”
 “俺を たすけろ! ッ、死んじまう !!”

「君を助けて、僕たちに何かメリットは?」

 ” お 前たち など 知った ことか! いいから 解毒を ッ ”

「何を勝手なことを…自分たちは散々人の命を奪っておいて…もういい。」

ガコ、ガチャン、という玉槌特有の音が、地下水路に響き渡る。

こちらを見下ろす鋭い視線。赫い右眼。
圧倒的な実力のヘヴィスマッシャー。薬、毒の知識。

ああ…ああ、 思い出した

コイツは…離反兵の、 “戦場の__…

画像2:
「…君たちの言う神とやらに祈るといいよ。」

彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

- 究明_ドラーヴァ王立研究所 - #ブルプロSS pic.twitter.com/bamZUBMfYg

2024-02-27 19:46:23
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画像1:
/// RAID ///

画像2:
警備の兵士はなぎ倒し、研究者は捕縛。
こちらの安全がある程度確保されたのを確かめ、2人は研究施設内を調べ始めた。

「ここを触ってるのは見たことないですね」
「そっか…これは推測なんだけど__」

画像3:
かつて目覚めて、逃げ出した場所。
二度と来るものかと飛び出したはずなのに、自分から戻って来るとは。

『この台…ここは……』

『…今はあの時とは、違う』

借りは返させてもらうぞ。

画像4:
部屋の隅にあった机の上の箱を開ける。
ぎっしりと敷き詰められた、数々の小瓶。
使われた形跡があるものもちらほら見られる。

「”物資”の中身だった法外の薬品と同じ…」
「やっぱり”計画”に使われていたんですね」

ある程度の予想はついていたが、まさか的中とは。
それにしてもこの薬品…

「…ここにある、ってことは」
「もしかしたら、私も使われてたのかもしれませんね?」

サツキは視線を瓶に落としたまま、どこか呆れたような声でそう呟いた。
表情は読めない。

「…行きましょう。向こうで物音がしました」

画像1:
元々熱心な信者ではなかったが、被検体にされて計画を聞いてからは一切信じなくなった。
いるならば、許されるはずがない。
あんな不条理を、そのままにするはずがない。
だからこそ、

「やあ、ごきげんよう」
「冷たい?そりゃ氷漬けだからなぁ。顔は出てるから会話くらいできるだろう」

罵声。元気なこった。

「なあ お前、私の実験担当だった奴だろ。」
「覚えてるぞ。嬉々として私を痛めつけて苦しめたお前の顔。この手に武器があればと何度思ったことか」

思い出したらしい。本当に実験動物感覚だったんだな。

「まさかお前がお偉いさんだったとは。」
「ほんと…何もかも最悪だった。やっと借りを返せる」

罵声。虚勢。ハッタリ。神だのなんだの。

「…ガタガタうるせえな…」

「サツキ」
「…っと、口が悪かったですね。」
「そうじゃなくて…誰か来る。関係者じゃなさそうだ。僕たちはそろそろ退こう」
「…了解」

「仕方ない、少し眠ってもらおうか。なに、軽く記憶を飛ばして大怪我を負うだけだ。」

どうってことないだろ?と杖を掲げてエングラムを集中させる。
目の前で虚しい抵抗を見せる男は「神よ」と繰り返し必死に救いを乞うている。
こいつらにとっての神は、私にとっては悪魔だった。
そんなの、何の役にも立たないというのに。

神。救いを差し伸べるもの。
もし何人にも存在するのだとすれば、それは。

冷めた目で見据え、標準を定める。

画像2:
「神はいないよ。
 戦場の死神__彼以外には。」

廃墟、瓦礫の山の向こうに望むバーンハルト城が、その煌々とした輝きをぽつりぽつりと消していく。
今日、あの場所では式典が行われるはずだ。

一連の事件は、ある騎士たちによって幕が下ろされた。

あの日、研究所に姿を現したのは4人。
騎士、神託の巫女、亜人の少女、そして1人の冒険者。

彼らが中央にある鋼鉄の扉をくぐるのを見届け、ラビとサツキはその場を去った。
あの扉の先の異様な空気は、常人では耐えられそうにない。

その後、事の顛末を知ったのは、城内に潜伏している際に耳にした、兵士らの会話からだった。関係者は拘束され、2人の嫌疑や終了命令は解除された。もう逃げ隠れする必要は、無くなったのだ。

だが、しぶとく逃げ続けている関係者はまだ存在している。
やるならば、徹底的に。芽は一つ残らず、根本から、刈り取らなければならない。

きっと表舞台では、あの時の__”彼ら”が動いてくれるはず。その陰から真相を探る事にしよう。

「ラビ殿。…軍には、戻らないんですか」
「…まだやることはあるからね。今の立場の方が何かと動きやすいし」

「サツキは戻らないの?」
「私だけここで戻ったとして、部位ごと吹っ飛ばされた私を誰が診るんです?」

戻りたくない訳ではない。
それは2人とも同じだった。

でも、今はまだその時じゃない。

「__そろそろ行こう。船に乗り遅れちゃう」

せっかく軍から離れ、お尋ね者でもなくなったのだ。
アステルリーズに着いたら、まずは開拓局に行こう。

雲間に覗く夜明けの空が、白く輝いている。





彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

【知られることのない、無名の物語】 シチュエーションSS、これにて終幕。 お付き合いいただき、ありがとうございました! (ALT自我注意) アーカイブ: min.togetter.com/SaDgTXI pic.twitter.com/1hHZ5sfpzF

2024-02-29 19:57:58
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まとめたひと
彩月@ぶるぷろ @satsuki_bLpR

彩月@kagemiru のブルプロ垢 コネクトクーポン【JCghdrcyjTMW】(5/7 AM4:00まで) 限界来者 / 自我多たまに絵 // スペキャメイン / 攻略・SS / FRBご自由に〜〜 ポイピク(poipiku.com/9633476/)