第101回深夜の真剣140字60分一本勝負

Yukari（冒険心と行動力の♈️） @yukari_unlimit

目を覚ますと、見慣れない部屋。そうだ、術後は病室変わるって言うてたな…麻酔で動かぬ頭を働かせる。「なかなか起きひんから心配したんやで」普段涙を見せない母が泣いてる。「大丈夫やって…言うたやん…」掠れ声やけど、安心させられたかな。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite #異動

ゆきやまイマ＠鶏林書笈 @keirin_syokyu

@140onewrite 卓上に広げられたみかん色の画仙紙には寄せ書きのように文字が並んでいた。 「何ですか、それ」 生員の背後に来た少年が尋ねた。 「今回の除目で地方に異動になった友人がくれたものだが‥」 「詩ですか？」 「らしいんだが、句がばらばらなので解読出来ないんだ」 「内容を知られたくないのでしょう」

はごろもとびこ＠低浮上気味 @peeUsausa

「これまずい」彼女が袋を床に置いた。捨てろと嫌だを繰り返す。戯れて、キスをして、なし崩しに朝を迎える。そんな土曜が先週まであった。別れようと告げられ、たったいま1Kに帰ってきた。目に入ったのは床に転がるひとつのみかん。パカッと割ってひと房食べる。「まずいな」そう先週、言えていたら。

水城弥生 @mizukiyayoi8484

寒い夜に車を走らせる。正月らしくみかんを隣に置いて。信号で止まった隙に貰った寄せ書きを覗く。「元気で」そんな言葉で彩られた中、僕は一つのメッセージを探す。一番心残りで一緒に連れていきたかった。けど、僕らはまだ若い。「離れてても大好きだよ」彼女のいつもの丸っこい字が僕を安心させた。

RAY/※※※ @growler_ray

寒い冬の日には、コタツに突っ込んで寝っ転がり、ひたすらみかんを食べるのが人にとっての幸福のはずだ 「もー！またゴロゴロして！」 だというのに、こいつはそれが理解できないらしい。みかんでも食べさせれば理解してくれるだろうか 「…ちょっと来て」 「んむっ！？」 みかん味のキス、どうぞ

掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

「長い間、お世話になりました」憎き上司に形だけの謝辞を述べる私の心は、一足先に異動先へと旅立っていた。ありがとう人事！ああ、明日からの勤務が楽しみだ！そう胸を弾ませだ時だった。「いや、俺も一緒に異動するから。これからもヨロシク」淡々と返された上司の言葉に、私の希望は完全に潰えた。

ありしゅ菓🍏 @aryoshka

毎年箱いっぱいのみかんを送ってくれるおじさんが、この世界には存在しない。 僕は１年ごとにあらゆる並行世界を移動している。 周囲から一人ずつ誰かが消える、毎回誰かを失う、結局のところ君だって同じだろう？ はやく、はやく僕に寄せ書きを書いてくれ。次の異動はもうすぐそこだ。

津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

厳しく接したけれど、それなりに愛情も注いだつもりだった。「寄せ書きに一言もないなんて！」色紙を上下左右ひっくり返すもないものはない。まさかみかんの汁で炙り出し？火に当てようとしたところで、給湯室の入口に後輩の姿。「小学生じゃないんだから……。お礼は直接伝えたかったんですよ」って。

秋月蓮華 @akirenge

コンビニの袋に入った大量のミカンを右手に持つ。 「これ、寄せ書き」 バイト先のメンバーが書いてくれたものを受け取る。 彼女は俺の事情を知っている。 「そっちこそ。これ、やらないとな」 「侵略通しの戦いか」 「頑張るよ」 門から移動する。 肩書がバイトから異世界侵略者に変更された。

木月🌷花鳥165委2 @kitobokki

いつもと異なる動きをしている。担当編集もそう言うが、あの作品は僕にとっても特別だ。小学生時代の敗北が原点なのだから。当時、ノートに友人の寄せ書きを集め、小さな雑誌を作っていた。その最後の一冊に『みかん』と書かれたあの小説。ずっと書きたかった続きを書いて僕もようやく完成できたのだ。

くろだあやと 💊療養中💊 @kuroda_ayato

昇進を伴う異動命令が降りたのは先日。一応受けるつもりだけど…… ｢主任ー、俺を置いてっちゃうのかよー？｣ こたつの上のみかんを転がしながら彼が唇を尖らせる。公私共に一緒に過ごしてきた彼と離れるのは心苦しかった。 仕事と恋人、どっちを選ぶ？ そんな悩みが訪れるとは夢にも思わなかったな。

アオツリ @rararaSamhain

「今までお世話になりました‼︎」 悲鳴につられて廊下へ出ると、若い社員が鼻先を駆け抜けた。彼が来た方向を見て思い出す。今日だったか、開かずの部屋の幽霊を異動扱いにしてお祝いをし、除霊するとか、何とか。部屋には寄せ書きと線香が置かれていて、言葉の代わりにと、私も手元のみかんを供えた