五月、休み始めた君。

ロゼ @ROSE_sakamichi

0 昼休み… △:今日も賀喜さん休みだったね □:そうだね。なんか聞いてる？ △:体調悪いとは言われたよ □:私もそれくらいしか聞いてないなぁ △:もう4日来てないし、心配 □:私も心配。GW含めたらもっとだよ。 △:そっか。私、連絡してみよ 俺は、そんな会話に耳をそばだてていた。 pic.twitter.com/zRgn2J5hUo

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1 チャイムが鳴った。 俺は帰る準備をする。今日は早く帰りたい気分だった。理由は特になくて、早く横になりたいなぁとか、そういうなんとなくの気分。 しかし、そんなことを考えれば上手くいかなくなるものだ。教室を出た瞬間、担任に話しかけられた。 担:あ、○○君！間に合って良かったぁ

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2 ○:なんですか先生？ 担:○○君に頼みごとがあってね ○:お断りします 担:ちょっと、内容聞いてからでもいいじゃない ○:だって面倒くさそうだし 担:そんなことないよ。少しだけしか時間かからないからね ○:そうなんですか？ 担:お、聞く気になった？ ○:聞くだけならいいですよ

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3 担:○○君、賀喜さんと最寄り駅一緒だよね？ 胸がドキッとする。これには様々な要因があるから、そんな簡単には説明できない。 ○:そうですね 担:そうだよね。で、お願いっていうのはね、賀喜さんが休んでる間のプリントを届けて欲しいんだよね ○:はい？ 担:ちゃんと住所は教えるからさ

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4 ○:そういうことじゃなくて… 担:もちろん親御さんからはちゃんと許可得てるよ ○:家に行くのはちょっと… 担:最寄り駅同じなんだから、まぁ散歩みたいなものだよ ○:いや、学校来てからでもいいじゃないですか 担:ほら進路希望の紙あったでしょ。あれを早く渡したいの ○:あ〜

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5 担:行ってくれる？ ○:でもやっぱり面倒くさそうだし… 担:飲み物奢ってあげるからさ ○:金で釣るんですか？ 担:それぐらい早く渡したいの。本当だったら親御さんが取りに来て下さると良いんだけどね。○○君にしか頼めないの。ね、お願い そう言って、先生は手を合わせる。

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6 こういう時、俺は断れないタイプだ。 ○:いいですよ 担:ほんと？ありがとう！職員室にプリントまとめてあるから来てもらっていい？ ○:はい それから十数枚のプリントが入ってるファイルを受け取って、コーラを買ってもらい、学校を出た。 面倒事を受けてしまった。賀喜さんと会わないとか…

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7 俺が賀喜さんに会いたくないのは、苦手だからとかいう理由じゃない。気まずいんだ。 賀喜さんは俺の隣りの席に座っている。だから世間話とかはするし、次の授業なんだっけって聞かれたりする。 4月にクラス替えがあってから仲良くなった女子の中で、1番仲が良かった。つまり全然遠い存在じゃない。 pic.twitter.com/P7ScSsxe73

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8 それなのに、賀喜さんが休んだ時にすぐ連絡出来なかった。(まず、あんまり連絡したことなかったけど。) 噂が流れて来たから、体調を崩してるらしいことは知っているけど、それがなかったら未だにモヤモヤしてるんだと思う。 なんて送ったらおかしくないだろう？と考えていたら時間は過ぎていた。

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9 で、今から送るのはもうおかしいか。と思い始めてしまって、という次第だ。 今となって思うことは色々とあるけど、過去を振り返っても無意味だと知っているので、考えないことにしていた。 でも、これから会わなければならない。絶対に賀喜さんは連絡が来なかったことを気にしている。

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10 賀喜さんはそういう人だ。と思っている。 仲がいいアピールをさっきしたけど、本当はあんまり仲が良くないんじゃないか？と思い始めてしまう。それなら俺の予想は外れてしまう。 仲のいい人にしか見せない本当の賀喜さんがいるんじゃないか？そう思った。 考えすぎてしまう、俺の悪い癖だった。

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11 この癖さえなければ、なんの後ろめたさもなく賀喜さんにプリントを渡して、帰ることができたのに。 とりあえず、気にしてるかは別として違和感はあると思う。俺が賀喜さんの立場だったらあると思ったから。 何か手土産とかあった方がいいのかな？いや、お見舞いの品が必要か。

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12 そうやって考えていたら、駅に着いていた。 ここから電車で30分位だ。 まだ色々と考えなきゃいけないことがある。いつもは暇してる時間も、今日は暇になることはなさそうだった。 まだ空いている電車で座って、スマホを開く。とりあえず「お見舞い 女子 友達 高校生」で検索した。

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13 30分はあっという間に過ぎ、結局ヨーグルトを買っていくことにした。コンビニに寄って、自分用のグミと一緒に買った。 考えすぎてしまうのは俺の悪い癖ではあるけど、ただ今回の話は癖だけでは片付けられない。賀喜さんが可愛いからだ。それが俺の考えすぎを助長していた。 もう少し語っていい？

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14 と言っても語ると長くなるので、1番の思い出を挙げるなら現代文の授業のことだ。 賀喜さんが教科書を忘れてしまって、右隣の男子ではなく、左隣である俺に一緒に見せてくれない？と言ってくれた。机を繋げて一緒に教科書を見た時間は、これまでの人生のどこよりも輝いていた。これは比喩じゃない。

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15 肩が触れそうなんてなかったし、手が触れるなんてもってのほかだったけど、賀喜さんが授業中に「ここだよって」教科書を指さしたり、授業終わりに「ありがとう」って言ってくれるだけで俺は十分だった。 もうその時には恋に落ちていた。賀喜さんと会う。それも担任の言葉にドキッとした理由だ。 pic.twitter.com/8K0uoh7ZWK

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16 俺の家は、駅を出て右に進むとあって、賀喜さんの家は出て左なので、実は全然近くなかったりする。ちなみにそれは住所を見たからわかったことじゃなかったりする。ストーカーした訳じゃない、学校帰りに左の方へ進む賀喜さんを見ただけだ。 ちなみに話しかけなかったのは考えすぎる性格のせい。

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17 自分の家から遠いことを知りながら、担任からのお使いを受けた俺は… つまりそういうことなんだと思う。それくらい好きなんだと思う。 てか、恋に落ちない方がおかしいんだ。 それからイメージトレーニングを始めた。久しぶりの賀喜さん。GWを含めたら11日会っていない。テンパらないためだった。

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18 ガチャ 賀:プリント届けに来てくれたの？ありがとう ○:いえいえ。体調大丈夫？ 賀:うん、大丈夫。明日からは学校行けそう ○:え、本当？良かったよ。でもなら届けに来なくて良かったね 賀:そうだね。でもありがとう ○:うん、じゃあまた明日 賀:またね〜 この会話を何回も頭で繰り返した。 pic.twitter.com/rxA5rwsXe7

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19 我ながら結構いい感じの会話だと思った。明日から学校に来るのは俺の希望的観測だ。 そんなこんなで、賀喜さんの家の前に着いた。インターホンを押そうとした瞬間、出てくるのは賀喜さんなのだろうかと考えた。お母様だったら？お父様だったら？ 考え始めたらキリがない。とりあえず押してみた。

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20 ピンポン 10秒程待つと声が聞こえた。幸い、賀喜さんの声のようだった。 賀:はい。って○○君！？ ○:あの、休みの間のプリントを届けてって言われて 賀:今行くね！ちょっと待ってて とても慌てているように聞こえた。そして賀喜さんはインターホンを切らなかったので、小さく声が聞こえた。

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21 賀:どうしよ… 髪とあ、パジャマ！でも待たせちゃうし…よし、髪だけ直そう 慌てさせてしまった。やっぱり連絡をしておくべきだっただろうか？ でも大丈夫？の連絡を送れていない俺に、届けに行くよの連絡は出来なかった。 1分程して玄関のドアが開く。久しぶりの賀喜さんはやっぱり可愛かった。 pic.twitter.com/JXE8mGyprP

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22 いつもは結んでいる髪も、今日は下ろしている。俺の好みとも相まって最高だっで、見慣れない姿は違う一面のようにも見えた。 賀:ごめん、お待たせ！ ○:全然大丈夫だよ 賀:プリント届けに来てくれたんだよね ○:そうだよ 賀:わざわざごめんね ○:いや、別に家から遠いわけじゃないし

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23 賀:最寄りは一緒でも真反対の方向じゃん ○:え、最寄り一緒なの知ってたの？ 賀:うん、偶然電車から降りるところ見てさ ○:そうだったんだ 賀喜さんに最寄りが一緒なことをバレていたなんて… 知っているなら言ってくれればいいのに。賀喜さんも同じこと思ってるか。てか全然練習通りじゃない。

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24 賀:ま、とりあえず上がってよ ○:え？ 賀:あ、この後なんか予定ある感じ？ ○:ないけど 賀:ならいいじゃん！せっかくだから上がっててよ。ね？ そう言って優しく微笑んだ。そんな笑顔を見せられたら、断れるものも断れなくなる。 ○:じゃあ少しだけ 賀:少しだけじゃ返さないよ pic.twitter.com/GGB2rB43ze

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25 ○:なにそれ 賀:久しぶりに友達に会ったからテンション上がってるの ○:そういうことね そういうことね。とは言ったものの、この状況を飲み込めていない。とりあえず家に通された。女の子の家なんて小2以来入ったことない。 手汗をかいていた。そして賀喜さんはパジャマ姿でも可愛いと知った。

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26 玄関で靴を脱ぎ、奥に見えるリビングらしき部屋には行かずに2階へ案内される。 賀:ここが私の部屋。飲み物とお菓子取ってくるから少しここで待ってて ○:うん 賀:飲み物、麦茶とオレンジジュースとコーラがあったと思うんだけど、何がいい？ ○:麦茶で 賀:OK！ちょっと待っててね

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27 階段を降りていく音が聞こえた。 賀喜さんの部屋で1人。それもクッションに座るよう促されたから、そこに座ってる。 いや、おかしいおかしい！リビングのつもりだったよ。なんなら家入る予定なかったよ！何この匂い。絶対俺の部屋からはするはずないような匂い。そして可愛いインテリアたち。

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28 俺の部屋にこんな統一感はない。 そしてハンガーにかけられた制服。ぬいぐるみが置いてあるベット。中学の頃であろう写真。全てが俺の心拍数を増やす要因となった。 賀:ちょっと、恥ずかしいから見ないでよ ○:あ、ごめん 賀:○○君は東中でしょ？ ○:うん、賀喜さんは西中か

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29 この町には、端と端に小中学校があるので賀喜さんとは最寄りが一緒でも高校で初めて同じ学校になった。 賀:そうそう。最寄り同じなのに不思議だよね ○:まぁあるあるでしょ 賀:そうだね 小中が同じだったら関係性も違ったのかな？なんてまた考えてしまう。でも今は平然を装うので精一杯だ。

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30 でも、たぶん好きになるのが早くなっただけな気がする。 賀:お菓子選べなかったから全部持ってきちゃった ○:めっちゃあるじゃん お盆にはたくさんのお菓子が綺麗に並んでる。 賀:でもグミがないの。グミもあれば良かったんだけどね ○:え、グミ？ 賀:いつも教室で○○君食べてるじゃん

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31 ○:あ〜。持ってるから大丈夫だよ 何が大丈夫なのかはよく分からない。あと賀喜さんは思ってる以上に俺を見てるらしい。 ○:あ、これ 賀:え、なに？なんでヨーグルト？ ○:体調崩してるんでしょ？噂で聞いたよ。だから身体にいいものをって思って 賀:そういうことね！ありがとう！ pic.twitter.com/maTBIj00G9

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32 ○:なんで学校休んでたの？やっぱり風邪？ 賀:それがね… 地雷を踏んでしまったかもしれない。俺は何をやっているんだ。女友達でさえ、体調が悪いくらいしか教えてもらえてないのに、俺が知っていいわけがなかった。 ○:ごめん、言いたくないなら大丈夫だよ 賀:言いたくないとかじゃないの

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33 賀:言いにくくて… ○:言いにくくても、言わなくて大丈夫だよ？ 賀:いや、言う ○:うん 賀:五月病 ○:ゴガツ病ね 何かある程度重い病気だと瞬時に思った。俺の知らない重めの病気だと。でもどう考えても俺がカタカナでイメージしたところには五月という漢字しか入りそうにない。

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34 ○:五月病ってあの？ 賀:あのってたぶん？ ○:やる気なくなっちゃうやつ？ 賀:うん ○:マジ？ 賀:マジ どんな顔をすればいいのか分からない。それで4日も？とは思ってしまった。気持ちが沈んで休むなんて本当にある話なんだろうか？ 賀:今、たかが五月病で？って思ったでしょ pic.twitter.com/wsbs1eIXtH

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35 顔にもそう出てたらしい。 ○:いや、学校にいる時より元気だし 学校での賀喜さんは、友達と話している時も静かで、穏やかな印象があった。あたふたしないようなイメージだった。だからインターホンを押した時からずっと違和感があった。今日の賀喜さんはなんか元気だ。 賀:それは別の話だよ

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36 ○:じゃあなんで五月病になったの？ なんか心配した気持ちが無駄だったように感じられて、振り回された俺はこれを聞く権利があると思った。 賀:色々だよ ○:色々って例えば？ 賀:友達関係とか ○:見た感じ良好そうだったけど 賀:女の子には難しい色々があるの ○:色々？

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37 賀:○○君には分からない色々 ○:なんか納得いかないなぁ 賀:とにかく女の子のコミュニティは生きていくのが大変なの。五月病になるくらいね ○:まとめようとしてるけど、納得いってないよ？ 賀:しょうがないじゃん。○○君は私が五月病になってる理由分からないんだもん ○:決めつけだろ？

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38 賀:違うよ。決めつけなんかじゃない そう言って賀喜さんはクッキーを1枚食べた。俺も1枚貰った。 賀:これ美味しいでしょ ○:うん、めっちゃ美味しい 賀:私のお気に入りのお菓子なんだ ○:どこのやつ？ 賀:駅の裏側にクッキー屋さんあるの知らない？ ○:あそこか。行ったことないな pic.twitter.com/x7FXEaeNSR

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39 賀:行ってみて、他にもたくさんクッキーの種類あるから ○:行ってみる 賀:ちなみに私のバイト先だよ ○:そうなの？ 賀:来るかもっていつもドキドキしながら働いてた ○:ドキドキってなんでだよ 賀:友達に働いてるとこ見られるの恥ずかしくない？ ○:確かにね 賀:1番可能性あるの○○君だし

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40 ○:あ、忘れないうちにこれ 賀:プリントね。ありがとう ○:特に進路希望のやつが大事だってさ。先生に伝えろって言われた 賀:進路か〜。○○君は決まってるの？ ○:坂道大学にしようかなって思ってる 賀:じゃあ私もそうしようかなぁ ○:いや、適当すぎだろ 賀:五月病だからさ

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41 ○:五月病って言えばなんでも解決すると思ってるでしょ 賀:だってやる気出ないんだもん ○:将来を決めることなんだから真面目に考えなって 賀:五月病治ったらね ○:まだ提出まで時間あるしいいと思うけどさ 麦茶が冷たくて美味しい。クッキーともよく合う。 賀:○○君はなんで坂道大なの？

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42 ○:文学の勉強したくてさ 賀:そうなんだ。○○君、現代文の授業だけは真面目に受けてるもんね ○:だけっていらないけどね 賀:だってだけじゃん。他の時間はずっとぼーっとしてるよ ○:いや、真面目な時は真面目だから 賀:その真面目な時全然来ないよ。私が○○君の方、向いた時くらいでしょ？

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43 賀:○○君は人に見られてるって思わないと集中しないからなぁ 俺は賀喜さんに少しでもよく思ってもらおうと、賀喜さんに見られたら真面目に受けている振りをするわけだから、それは違うのだけど、あえて否定しない。 ○:悪かったなぁ 賀:それに気付くくらい私も真面目に聞いてないけどね

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44 ○:ダメじゃん 賀:ふふっ 賀喜さんは、笑う時に少しアゴがしゃくれる。本人がそれをどう思ってるかは知らないけど、俺はすごく可愛いと思う。 ○:賀喜さんは興味あることとかないの？ 賀:うーん、なんだろ。私、得意な科目とかもないしなぁ。私が楽しいって思えることしたいな pic.twitter.com/K0ohRbsDej

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45 賀:って当然か ○:でもそれって大事なことなんじゃない？ 賀:そうだよね。じゃあやっぱり坂道大行こうかな！ ○:ふざけるなよ 賀:至って真面目だよ 賀喜さんは本当に真面目みたいだった。 賀:あ、ヨーグルト！冷蔵庫入れなきゃだ。入れてくるね ○:うん また1人になった。俺は深呼吸した。

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46 少し甘い匂いが鼻を刺激する。改めて俺は女の子の部屋に居るのだと思った。 賀喜さんはサテン生地のパジャマを着ていて、すごく着心地が良さそうに見えた。対する俺は、暑苦しいブレザーを着ていた。脱ぐタイミングを失っていたところもある。 脱いでみたが、ハンガーにかけられない。

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47 だから仕方なく、シワになるのを覚悟で畳んで、カバンの横に置いた。 階段を登ってくる音が聞こえてきて、もう一度深呼吸をすると、賀喜さんが戻ってきた。 賀:ただいま ○:おかえり 賀:ちょっと居心地悪い？ ○:え、なんで？そんなことないと思うけど 逆にそんなわけがない。

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48 でも俺は、それをストレートに言うようなデリカシーのないヤツではない。 賀:お菓子もお茶も減ってないし、私が戻って来た瞬間にこっち向いてたから ○:あ〜 色んな感情の前に、納得が勝ってしまった。なんか賀喜さんは全部知ってるように見える。 賀:ふふっ この笑い方もその印象を強くした。 pic.twitter.com/Hh4E3iHFCx

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49 賀:それとも私を待ちきれなくなっちゃったみたいな？ ○:え？ 賀:いや、なんちゃって！冗談だよ！ ○:うん、そうだよね 賀:ほんと？分かってるならいいけど… そんな自惚れてるタイプじゃないからね、勘違いしないでね そこで、全部知ってそうというのは単なる思い違いだったと俺は気付いた。