現代
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Harold Ager🥚 @harold_ager

129.ハロルドのお隣に住むエドワード(ご近所パロ等に) #お題ガチャ #2W1Hガチャ odaibako.net/gacha/130?shar…

2020-11-18 05:19:52
Harold Ager🥚 @harold_ager

人と人との繋がりが薄れつつある世の中では、いちいち隣近所にどんな人物が住んでいてどんな風に過ごしているのかなどと気にする事は少ないだろう。いや、そう思う人が増えたことによって繋がりというものが薄れているのか。 しかしそんな昨今において、俺は隣に住む男のことが妙に気になっていた。

2020-11-18 14:04:30
Harold Ager🥚 @harold_ager

遠くからその姿を見かけたぐらいなので直接顔を合わせたことはなく、話したこともない。彼は隣に住んでいるのが俺だと知りもしないだろう。 普段は部屋を空けることが多いのかドアポストには、デリバリーなどのチラシがこれでもかと言う程に捩じ込まれ溢れ返っていることも少なくない。

2020-11-18 14:09:31
Harold Ager🥚 @harold_ager

彼を見かけたときには大抵赤いシャツだったり胸元を大きく開けていたりだとか、そういう派手な格好をしていることが多いのでまあ遊び人であろうということは想像に難くない。あるいは、そういった職を生業としているのかもしれない。

2020-11-18 14:15:15
Harold Ager🥚 @harold_ager

どうしてそんな彼に興味を惹かれているのかといえば、きっかけはそう、なんでもないようなことだった。 残業を終え疲れきった体でマンションのエレベーターに乗ると、ふわりと香水の香りが鼻についた。嗅いだことのないものであったのだが、そのとき何故か「あ、あの彼の匂いだ」と直感したのだ。

2020-11-18 14:18:41
Harold Ager🥚 @harold_ager

単純なもので一度意識してしまえばそれまでで、自分の部屋を出入りするとき、名前も声も知らぬ彼の部屋のドアをついでにちらりと見やるのが習慣づいてしまっていた。特に何の意味もない行為だとはわかってはいるのだが、郵便物が消えていればああ帰ってきているんだなと苦笑すら浮かんだ。

2020-11-18 14:25:50
Harold Ager🥚 @harold_ager

しかしふと、自分のこういう何気ないつもりの行動もまるで不審者のそれであると気づいた。今の生活環境は気に入っているし、もし誰かに見られて通報などされたり……万が一職場に変な噂が広まろうものなら敵わない。 それから、彼の部屋のドアを見つめることは、止めた。

2020-11-18 14:34:42
Harold Ager🥚 @harold_ager

だが、さすがに今の目の前の状況を見過ごす訳にもいかないだろう。いつもより長い残業を終えて帰宅してみれば、彼の部屋の前にはその当の本人が座り込んでだらりとうなだれているではないか。 エレベーターを降りてすぐに飛び込んできた光景にぴたりと身体が固まって、その場から動けないでいた。

2020-11-18 14:40:13
Harold Ager🥚 @harold_ager

もぞりと彼が僅かに身動ぎしたのにはっとなって、恐る恐る近づいてみる。君、大丈夫か。声を掛けてみればゆっくりと顔を上げた。初めて見た彼の顔は勝手に思い描いていた予想通り端正で、しかし熱でもあるのか頬は赤く軽く汗ばんでいる。

2020-11-18 14:46:36
Harold Ager🥚 @harold_ager

何か言葉を紡ごうとしたらしく動いた口元から声が出ることはなく、代わりに噎せ返りそうな程の酒の匂いがした。随分と飲んでいるようだ。 初対面で失礼なのは承知で額に手を当ててみれば、案の定測るまでもなく熱がある。体調が悪い癖に浴びる程に飲んで、悪化したのだろう。

2020-11-18 14:53:24
Harold Ager🥚 @harold_ager

──と、額に添えた手を掴まれたかと思うとそっと頬擦りされた。息を飲んで、予想などできようもないその行為に何の反応も示せずにいればそれはエスカレートしていって、両の手で包み込まれて……あろうことか、指先へちゅ、ちゅと吸い付いてくるではないか。

2020-11-18 15:09:24
Harold Ager🥚 @harold_ager

気持ちが悪い、などと振り払うことはできなかった。むしろその逆で彼の唇の感触が心地よくて、感じたことのないそれにぴくりぴくりと身体が微かに跳ねた。 これは、つまりそういうことか。俺はなんて馬鹿なんだ。 湧き上がりそうな熱情を抑え込んで、……抑え込んだつもりだった。

2020-11-18 15:17:29
Harold Ager🥚 @harold_ager

握られていた手を返して逆に掴んで、彼が背にした部屋の扉へと縫いつけて──気がつけば彼へと口づけていた。冷静な自分が何をしているんだと抗議してくるが、知ったことではない。彼が何も抵抗してこないのをいいことに(熱に浮かされてそんな力も思考力もないのかもしれない)唇を貪る。

2020-11-18 17:25:57
Harold Ager🥚 @harold_ager

自ら舌を差し出し絡めてきてするりと拘束から抜け出した両腕が俺の首の後ろへと回ってくるものだからもう歯止めがきかない。 誰かに見られたらだとか、病人に何をしているんだとか、そもそも初対面なのにだとか、理性はとうになかった。 まさか自分が彼に対してこんな欲を密かに抱いていたなんて。

2020-11-18 20:00:17
Harold Ager🥚 @harold_ager

唇を離せば目が合った彼はへらりと笑って……そのまま俺の方へと崩れるように倒れ込んだ。そうまできてようやくちゃんとした思考回路が帰ってくる。つくづく俺は馬鹿だ。

2020-11-18 20:07:54
Harold Ager🥚 @harold_ager

声をかけても反応はない。病院へ連れていくべきだろうか。考えているうちに静かな寝息が聞こえてきたので──まあ、大丈夫だろうとやけに楽観的な自分が彼の身体を持ち上げて、自室への扉をがちゃりと開けた。

2020-11-18 20:43:46