いちごつみのツイステ短歌まとめ

キャラクターごと短歌一覧

リドル・ローズハート
捨てられない写真もあるのとキミに訊くことができない午後のお茶会

エース・トラッポラ
だとしても笑ってなんてやんねーし。鳩の手品が手を振る代わり

デュース・スペード
いつかでは遠すぎるから祈るには早すぎるから走るこの道

ケイト・ダイヤモンド
人のいない写真ばっかり鍵アカに投げる。夜の海みたいだ。

トレイ・クローバー
君のためのイチゴタルトにナパージュをいつか解かれるための魔法を
いつか君が薔薇の迷路を抜け出たら僕はようやく手を振るでしょう

レオナ・キングスカラー
甘やかな思い出もある　さてそれがなんだというのだろう春陰

ジャック・ハウル
遠いから近づいていく思い出のなか逆光をかき分けながら

ラギー・ブッチ
故郷のスラムにはない雪を見てどうしてこんなにさびしいんだろ

アズール・アーシェングロット
それぞれに雪の積もらぬ故郷を抱えて集う二月の部室

フロイド・リーチ
深海の記憶を掠めるようにして雪はふるふる飽きることなく

ジェイド・リーチ
雪ふれば夜も明るい不思議さを踏みしめてゆく寮までの道

カリム・アルアジーム
パレードで迎えにいくからこの夜が明けても二人、旅の続きを
ともだちじゃなくてもいいんだ本当は　呼ばれた名前の数を知ってる

ジャミル・バイパー
明けぬ夜はなくてあけぼの　絶望と呼ぶには淡い諦念の色

ヴィル・シェーンハイト
愛の狩人【ル・シャソゥ・ドゥアムール】の眼は直く　綺麗と美とは異なるイデー

エペル・フェルミエ
武器としてみせる微笑み。かわいいと言わせる相手は自分で選ぶ

ルーク・ハント
見逃してしまわぬように　愛を美を熾を林檎の色づくまでを

イデア・シュラウド
さよならを告げないままの決別を望めど遠く寒雷響く
でも君に攫ってなんて願わない　（ステイルメイトまであと九手）

オルト・シュラウド
永遠から遠い体をお揃いと呼べば兄は淡くほほ笑む
永遠から遠い体を持ち寄って大丈夫ずっと一緒に僕ら

マレウス・ドラコニア
捨てられない記憶もやがて古びゆく廃墟に見上げる臥待の月
願われて墓標となれば滅ぶまで永きこの身を岸に置くべし

シルバー
ありふれた幸いであれ俺を呼ぶちちのみの父の声こそ明かけれ

セベク・ジグボルト
友人の祖母の笑顔のあたたかく故郷の冬よ温くあらんや

リリア・ヴァンルージュ
百年は瞬きのうち瞬きを惜しみ愛しみ千年生きん

監督生
夢オチにしてしまうには騒がしい愛しい魔法のような今日たち

ディア・クロウリー
ゆきずりて互いの地獄の色を知ることもあるらむ　ここは学び舎

モーゼズ・トレイン
学び舎は過ぎゆく子らの思い出をしばし留めて秋の夕映え

？？？
魔法史の始めのように開式を告げてあなたは恩師になりゆく

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★いいなと思った歌がもしあれば、マシュマロで教えていただけたら嬉しいです。
マシュマロ

短歌と振り返りメモ

いちごつみで実際に詠んだ順に並んでいます

トレイ・クローバー

　いちごつみの「いちご（イチゴ）」で詠むならトレイ先輩だなとお出まし願いました。
　これまでトレイ先輩で詠んだのはユニ魔折句一首だけだったのですが、今回二首作ってみてどこか後ろ向きというか自己肯定感の低い短歌を詠ませてしまうんだなぁと実感しました。特にトレイ先輩がリドルに向ける感情を推し量って詠もうとすると、「何もしてやれなかった／してやれないのだろう」というようなところに帰ってきてしまう感じがします。

※トレイ先輩（とケイト先輩）のユニ魔折句↓

オルト・シュラウド

　機械には機械のもろさがあるということ。オルトくんの鋼の身体は頑丈だけれど、イデアによるメンテナンスが絶えれば朽ちてしまう脆さを内包していると思っています。
　生身の肉体も機械の身体も、それぞれ等しく永遠から遠いのだろうという想像でした。

ジャミル・バイパー

「明けない夜はない」というのは「どんな絶望にもいつかは光が差す」の謂である場合が多いかと思いますが、夜が明けてしまうことをこそ絶望と感じる場合もあるよねと思っています。ジャミルくんはきっとそういう発想があるタイプ。
　オバブロを経て諦念は投げ捨てたのだろう、投げ捨てていてくれたら、とも思っています。

カリム・アルアジーム

　この歌はいちごつみで作ったものではなく、上のジャミルくんの歌に合わせる形で作ったものです。ジャミルくんが「夜明け」を上のように捉えるのならカリムくんはどうなのだろう、という想像でした。

上から
アズール・アーシェングロット
フロイド・リーチ
ジェイド・リーチ

　オクタヴィネル三人衆で「雪」を詠み分けてみようチャレンジでした。
　とはいえ作風を変えるような器用な真似はできておらず、“三人が雪に触れて心を動かすとして、どういう状況でどういう風に動かすだろう”という想像をした、という程度です。
　あとは「ふるふる」の響きで遊ぶような部分はフロイドっぽさを出せたかな～出せているといいな～と思っています。

ラギー・ブッチ

　思ったことをそのままぱっと差し出すような下の句（どうしてこんなにさびしいんだろ）を、自分だったら推敲で消してしまう手触りだなと思いつつ、ラギーくんらしいような気がして使っています。
「さびしいんだろ（う）」の「う」の欠落はらしい気がしてお気に入りです。

モーゼズ・トレイン

　卒業式後、次の新入生がやってくるまでのとある日のトレイン先生というイメージでした。長い教員生活の中で忘れてしまった思い出と同じように、忘れられない思い出や忘れたくない思い出もあるんだろうなぁと思っています。

　この歌の「あなた」はトレイン先生を想定していますが、視点に関しては具体的に誰とは置いていません。
　歌の出発点としては、卒業式の開式宣言がトレイン先生（副校長相当？）だとして、それが魔法史の授業でおなじみ「授業を始めよう」と同じトーンだったら面白いな～というものでした。
　なので歌の成り立ちとしては、

シチュエーションとして「魔法史の～告げて」が決まる→（主体を決める）→上の句の状況で主体がどう感じるかを下の句に入れる

　という風で、提出したのは比較的「恩師」に素直な、トレイ先輩とかだったらこんな感じかな～という想定で作ったバージョンです。
　なお他のキャラクターだったらのバージョンです↓

魔法史のはじめみたいに開式が宣言されて笑う　笑おう
（ケイト・ダイヤモンド）

開式を告げたる声の懐かしく恩師といふ語は浮かびぬ、ついに
（レオナ・キングスカラー）

リリア・ヴァンルージュ

「百年」の単語を見た瞬間、これはリリア先輩で詠まねばと反射的に作った一首です。6章後編で不穏を匂わせるセリフがありましたが……

ケイト・ダイヤモンド

「鍵」から最初はマジカルキーを連想してどう詠もうかと悩んでいたのですが、「鍵アカ」を閃いてケイト先輩で詠もうと決めました。
　リズムがあんまり短歌っぽくないのですが、その短歌っぽくなさ（リズムに乗りづらく、どこか抑制された印象のある詠み心地）がケイト先輩っぽくできたのではと思っています。

トレイ・クローバー

「いつか」は基本的に未来に目を向ける言葉だと思うのですが、トレイ先輩には後ろ向きに「いつか」を詠んでほしいな～と思って作りました。
「いつか」はデュースくんでも詠ませてもらったので、読み比べてもらうと面白いかもしれません。

リドル・ローズハート

「キミ」はケイトを想定しています。
「キミに訊く／ことができない」の句跨りが、聞きたいけれど聞けないためらいに通じるようで気に入っています。

デュース・スペード

　今まさに走っている真っ最中のデュースくんをすごく眩しく思うし、その眩しさがときどき目に刺さるほどではあるけれど、そういう彼の行く末を見守り続けたいという願望があります。
（2年生や3年生たちはみんな結構すでに選択を終えていて、その選択の結果の上に立っているという印象があるのですが、デュースくんはその選択を今まさにしているのだなという）

イデア・シュラウド

　ちょうど6章中編を読んだタイミングだったので「さよなら」はイデアでつみたいなと思って頑張りました。
　レテの河はイデアに関する記憶すべてを消すわけではないようですが、6章中編で被検体のみんなと楽しくゲームをして思い出を作っている描写が挟まれたところを見ると、記憶（認知）が部分的に残るからセーフとかそういうことでは全然ないんだろうな……やはり一種の決別だろう、と思います。
「望めど遠く寒雷響く」は、想定通りに事が運ばない不穏さの予兆として置いたのですが（メタ的に言えば監督生の乱入があるのでオバブロサイドの思い通りに事が運ぶとは思えない＝レテの河も発動しないのでは？）、「寒雷」をつんでいただいての一首が〈おまえとのいちばん大事な思い出を攫っていってしまえ、寒雷〉だったので息を飲みました。思い出を攫っていかないで……

レオナ・キングスカラー

　結句の「春陰」めちゃくちゃ悩みました。明るすぎず暗すぎずといった単語でしっくりくるものがなかなか見つからず……最初は植物園にありそうな（昼寝をしていて視界に入りそうな樹高の）花を入れようかと思っていたのですが、花の名前だと何であれ華やかになりすぎるし何より自分が花に疎いのでしっくりくるものが分からず……
　レオナさんっぽい口調（文体ではなく）と雰囲気で詠めたのでは……？とひそかに気に入っています。

シルバー

「ありふれた」をつませていただきたいなと思ったのですが、ツイステ各キャラ「ありふれた」を使いそうにないなと苦戦しました。
（特にそれぞれの抱えた屈託や困難を思うと、たとえそこに普遍性があったとしてもその屈託や困難は彼の、彼固有のものだという印象を強く受けるので、ましてや自分で「ありふれた」と言うことはないだろうなあとオバブロ組の方を見つつ）
　そこでウンウン唸っているうちに、「ありふれた幸いであれ（＝自分がいま感じている幸いが他の誰かのもとにも頻繁に訪れるものであるように）」というフレーズを思いつき、これはシルバーくんだなとなって、このフレーズが出てくるのはどういった「幸い」を彼が感じたときだろう……と詰めていきました。
「ちちのみの」は「父」にかかる枕詞はないのかと調べて出てきた単語で、漢字表記は「乳実の」だそうです。育ての母を持たないのであろうシルバーくんには「父のみ（父だけ）」なんだよなぁなど考えながら使いました。

参考
https://kotobank.jp/word/乳実の-2061537

ディア・クロウリー

　学園長視点を想定すると同時に、ナイトレイヴンカレッジやゲーム《ツイステッドワンダーランド》を表す一首という意識で作りました。
（「地獄」の語からはオバブロ組おのおのが置かれた環境を連想したのですが、比喩とはいえ「地獄」の一言で彼らが自身の環境を説明することはないだろうなと思い、オバブロ組で歌を作ることは避けました）
　闇の鏡による選別という一点のみで種族も出自も様々な彼らが短くない時間を共有することになる学園という空間の特殊さと、そこで彼らが出会うことで引き起こされる様々な出来事を思います。

ジャック・ハウル

　一キャラ一首以上は詠むぞという目標でいちごつみをさせていただいていたのですが、このあたりからまだ詠めていないキャラで詠まねばな……と取り組みはじめました。
　ジャックくんはレオナさんと同じ単語で詠んだらどんな違いが出るのかなという思いつきから「思い出」で詠んだのですが、歌の中にもレオナさんが出てくるという……
　デュース／トレイの「いつか」と合わせて見比べると、（3年生……）の念が深まりますね。陸上部1年生コンビはそのまま進んでいって、とも思います。

ルーク・ハント

　つませていただいた歌〈逆光のなかの微笑みいつだって綺麗なものを見逃している〉を見た瞬間、これはルーク先輩でつませていただこうと決めました。ただし、出だしの57があっさり決まった一方で残りはだいぶ苦労しました。
　最後まで候補に残していたパターンをもったいない精神で置いておきます。

見逃してしまわぬように　矢の征くをキミが迎える戴冠式を

イデア・シュラウド

　以前（2021年8月末）にイデア・シュラウドのイメ短歌として河野裕子〈たとへば君　ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか〉を挙げ、「いくらか本気で思ってる印象」「自分で逃げられるとは思わないけれど、誰か、君なら、もしかして。」と書いたのですが、2022年3月末現在もう全然そんな風には思えないなということを「攫って」の語で思い出して詠みました。
　もう一パターン

でも君に攫ってなんて願わない　（どうせいつかは消すやり取りだ）

　というのを考えていて、6章を読んだ感想と照らし合わせるとこちらの方がまとまっているかなと思うのですが、少しでもポジティブな方を＆せっかくのいちごつみなのだから目新しい単語の入っている方をと思って掲出歌を出しました。

エース・トラッポラ

「だとしても」をつませていただくなら初句に置きたいなと思って（接続詞から始まる短歌が格好良くて好きです）、こういう言い方が合うのはエースかなと。
　この歌も例によっていろいろパターンを考えていたのですが、パターンの比較検討の中でエースの解像度が上がったというか、自分がエースをどう考えているのかが少し見えた気がします。たとえば下の句が「手を振る代わりに最後の魔法を」だと格好つけすぎかなとか、上の句は「だとしても笑って見送ったりしねー」より決定稿の方が監督生に直接言っている感じ（ふてくされ感）が出ていいなとか。

　ちなみに完全に余談ですが、MMDツイステのとある動画で監督生との別れに際してデュースが無理して笑顔を浮かべエースが笑っていないのがあまりに解釈一致で、拙歌を作りながらそのことを思い出すなどしていました。

【MMDツイステ】NRC生と監督生でいかないで https://nico.ms/sm37532717

エペル・フェルミエ

　ルーク先輩を〈逆光のなかの微笑みいつだって綺麗なものを見逃している〉からつませていただいて作ろうと決めた流れで、（エペルとヴィル先輩も同じ歌からつめそうだな……いっそポムフィオーレは同じ歌からに揃えるか？）となり、この歌からエペルにつませるなら「微笑み」かな～と決めました。
　自分はエペルの“男らしさ”の捉え方と、エペルの憧れに対するヴィル先輩のNOの突きつけ方それぞれに思うところがあるのですが、エペルが自分の見られ方を把握して上手く使おうとするところは嫌いではないんだよな、ということをこの歌を作りながら考えていました。

　今回のいちごつみのなかで、一番「この機会でなければ作らなかっただろうな……」と感じた歌です。エペルで詠もうというだけでは出てこなかったし、ましてや自分が普段暮らしているだけでは作らない歌でした。

監督生

「夢」をつんで詠むなら監督生だよなぁとまず思いました。
　結句の「今日たち」は少しこだわったところで、「毎日」だと据わりが良すぎるようなさらっと流れてしまう印象があり、あえて避けています。