第53回深夜の真剣140字60分一本勝負

荻野千影 @ChikageOgino

居場所のない立食パーティー 温くなったシャンパンを片手に 形だけの挨拶を繰り返しながら 義務感と面倒くささと社交辞令の 三時間マイナス経過時間 靴選びを間違えた私と慣れないヒールに 心の中で罵詈雑言を浴びせながら 蝋燭を眺めて暇をつぶす せめてピリッとくる 危険そうな男が居ればいいのに

花滝ちかる @chikaru_toka

「あと何回、家族４人でクリスマスを過ごせるのかしら」と、母が言うのを幼い僕は不思議に思っていた。…僕が大人になる前に、僕以外の３人が、事故で逝ってしまうまで。 「クリスマス、ふたりでパーティーしようね！」 無邪気に笑う君と、僕は10年ぶりに、独りじゃないクリスマスイブ。 #140字小説

RAY/※※※ @growler_ray

揺らめく燭台の灯りに照らされ、私はぼんやりと外を見る。暗い部屋からクリスマス色の世間を見るのは、中々に面白くていいものだ。こんな時間をずっと過ごせればいいんだけど… 「おーい！来たよー！」 生憎と私の隣人はクリスマスに染められてしまったようだ。仕方ない、付き合ってやるとしよう

津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

燭台の火が消えるのをこわがって、宴の終わった広間でひとり、あの子はうずくまっている。長く暗い夜を越えるのに、その蝋燭は短すぎる。ねえ、炎が消えたそのときには、どうか窓の外を見上げてよ。濡れた星が一斉に瞬いて、まだ生きていけるほどのうつくしさが世界にあること、君に教えてくれるから。

にゃん @nyan_kotonoha

憧れの彼に誘われた店は高級な寿司屋。どうしよう、サビ抜きじゃないとダメなのに、笑われそうで言えない──当日、ドキドキする私をよそに注文する彼。「…あ、今までのはサビ抜きで」えっ、何で…「知ってたよ。昼飯の時に蕎麦についてたわさびをよけてただろ」自分の迂闊さに一気に顔が熱くなった。

夢夜 @ruya_reve

パーティーを抜け出して月を眺めていた。 凛とした光はいつまでも見ていられる。 この季節特有の清らかに冴え渡った月が深い青の中心から私を見つめている。 ──少し、冷えてきましたね あの喧騒の中に戻りたくはないな……と考えていると、ふわりと温もりに包まれた。 「やっと見つけた」

夢夜 @ruya_reve

パーティーの人混みから想い人を探すのは至難の業だ。 孤独癖のあるお前のことだから外にいる可能性も捨てきれない。 どこにいるんだろう…… ──いた！ 幻想的な美しさに魅入られてしばらく動けない。 だけど……月明かりに照らさせるお前が闇に溶けていきそうで、少しだけ怖かった。

秋月蓮華 @akirenge

クリスマスパーティで燭台型マイクスタンドを持って私はステージの上、 パーティと言えば歌でしょうという事でなんでかバンドを組んで歌う事になって今が本番、歌っていたら落ちる電源。真っ暗闇のパーティ会場。 「あーもう」 停電で、サビが抜けてしまった。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

つぶあんぱん @2222anpan

寿司とチキンとクリスマスケーキと、ちゃぶ台はいつにも増して華やかだ。 私は切り分けたケーキを仏壇に供え、燭台に火を灯した。 サビ抜きだからワサビが欲しい人はこれを使ってね。後ろで姉さんの声がする。 パーティー好きな父さんだからこの日だったのかな。ほら、今年も賑やかだよ。

悠井すみれ @Veilchenfeld

サビ抜きになった寿司は下っ端の俺に押し付けられた。こそげ取られたワサビの塊は余興に使われてる。この中に一個はシャリがワサビでーす、って。加わりたい訳じゃないけど、ボロボロの寿司を貪るのも虚しい。と、鮪が横から攫われる。「悪趣味だよね。飲み直そ？」二人の忘年会なら楽しいだろうか。

繭美 @140mayumi

白猫は来客の毛色を見るなり髭を立てて笑った。 「パーティーに参加できるのは美しい毛色だけ。汚いサビは抜き」 閉まる扉。 「やな感じ」招かれなかったサビ猫は伸びをした。 まぁサビ色の良さがわからないならいい。 燭台の灯ではなく星の瞬きで、聖夜を過ごそう。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/5pP9omaF29

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大江 道徳 @oe_doutoku

子どもたちのパーティーだから、お寿司は玉子が主役。もちろんさび抜き。ちっちゃな手と口の周りにご飯粒をいっぱい付けた笑顔は宝物。お風呂に入って、布団に入って夢の中。寝息を聞きながらパパとママはサンタに変身する。いつかは子どもも変身する方になるんだね。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

蝋燭に照らされた悪魔達が笑う。 では、次の生贄を… 水晶に一人の男が映る。 「あ、俺サビ抜きじゃないと絶対食べられないから頼むよ！」 さぁ使徒よ、生贄を捧げよ… 「来た来た、んじゃ頂きますっと」 ガタッ！ 「がぁっ！ 誰だよ、サビ大量に入れた奴は！」 蝋燭に照らされ悪魔達が笑う。