夏ももう終わり。セプテンバーさんが去っていく。 秋が直に始まる。少し愁いを覚える秋が来る。 今年の夏は一つの夢を思い描いた。 去年の晩夏のものを使いまわした。 秋の愁いも晩夏の夢も、貴方の笑顔には敵わない。 ただ、記憶の片隅に響く、水音の様な、鈴鐘の様なあのメロディーはなんだっけ。
2018-09-29 22:00:28「すみれ、」君が懐かしいあのメロディーを口ずさむから、私も「セプテンバー」と続けた。通いつめたゲームセンターはとうに閉店して、忘れ去られたゲーム機が硝子の向こうで沈黙している。私たち、遠くまで来ちゃったね。帰り道はないんだね。ねえせめて、またね、はあのときと変わらず交わそうか。
2018-09-29 22:01:02心を閉ざし言葉を失ったという彼女に、周囲は匙を投げた。 でも、僕は偶然知ったんだ。彼女の細い歌声を。 僕はただ彼女の隣にいて、彼女の歌を、話せない心を聞き続けた。長い間、何年も。 彼女が話せるようになっても、僕の奥さんになった今でも、あのメロディーは僕達の宝物なんだ。 #140字小説
2018-09-29 22:01:06子どもの頃の話だ。 公園で友達と遊んでいると、夕方には帰りを促す「夕焼け小焼け」が鳴り出す。 友達と別れ、家に帰っても遊び相手がいない僕は、すぐにゲーム機を出して作中の仲間と遊んでいた。 そういえばそうだ。すっかり忘れていた。 9月の夕方を背に流れるあのメロディーを聞いて思い出した。
2018-09-29 22:02:10あなたは、私のいろんな声一つ一つがメロディーだと言う。喋る声、コケた時の悲鳴、果ては立ち上がる時に出る、漏れる空気のような声でさえもメロディー。 …そういえば、いつだったかあなたは、私の心が一番好きなのは「あのメロディー」って言ってたよね、ねえ教えてよ、それ一体私のどんな声なの?
2018-09-29 22:02:12「セプテンバー・バレンタインって知ってる?」 病床の彼女から訊かれた。 「初めて聞くな」 そう答えると彼女は少しだけ寂しそうに笑った。 14日。 紫のパジャマに白いマニキュアをして彼女は逝ってしまった。 緑色のインクで書かれた手紙を遺して。 ──さよなら ──ありがとう ──……大好き
2018-09-29 22:07:15俺たちが出会ってすぐの頃、お前が歌っていたあのメロディーが聞こえる。 確か……お前のお母さんの国の童謡だっけな。 祈りにも似たそのメロディーがお前の透明な歌声に合っていたことをよく覚えている。 あれから何年経っただろう……? 目を閉じると、お前の微笑みが蘇ってきた。
2018-09-29 22:07:51貴方が歌っていたあのメロディーを思い出してそっと口ずさんでみる。 幼い頃を違う国で過ごした私はこの国の童謡や遊びに疎い。 2つの国にルーツを持つ私を『ハーフ』と呼ぶ人が多い中、貴方はこう言った。 「ダブルなんだね!」 その言葉にどれだけ救われたか、貴方はわからないでしょうね……
2018-09-29 22:08:359月も終わりかけ、もうすぐ10月。 外はやれハロウィンだと浮かれているが、僕はいつも通りゲーム機に向かう。 ゲームをつけたら、いつものメロディ。 いつもおんなじような毎日。 違ったのは、君からのメール。 「明日、屋上で、待ってる」 僕の青春の、ある意味ゲームみたいで、でも少し違うお話。
2018-09-29 22:10:01初夏に出会った友は言う。 「夏が好きだ。だから俺はタイムワープして夏だけを生きている。お前と過ごした夏は特に楽しかった。またお前との夏を楽しもうと思う。」 「…僕はお前と春夏秋冬を過ごしてみたかったよ。」 八月のカレンダーを破りながら、夏に消えた友を思う。
2018-09-29 22:13:24街角で耳にしたあのメロディー。ずっと忘れない。あの頃、互いに好きな歌を交換しあった。時が流れて置き去りになっていたカセットテープ。あなたの文字も色褪せてしまっていた。見つけた気持ちもそのままでまたしまった。あなたは覚えているかしら。今は九月。あの時も九月だった。あの曲の名前も。
2018-09-29 22:14:168bitの音楽。エレクトリックなメロディライン。 ハッキリ覚えているとも。君と僕で沢山遊んだ、あのレトロゲームのメインテーマ。夢中になりすぎて、ずっと頭の中を駆け巡ってた音。思い出のメロディ。 僕らの子供は、どんな曲を心のメロディに宿すだろうか? #140字小説 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/M57PoVuBoN
2018-09-29 22:24:34新しい生活への期待に心踊った3月。 誰にも受け入れられず悪意さえ向けられた4月。 教室に入れなくなった5月。 ゲームの中にしか居場所を見つけられなかった6月。 部屋から一歩も出られなかった7月。 ゲーム機を叩き壊された8月。 訪れなかった9月。 #140字小説
2018-09-29 22:25:07お題/あのメロディー・ゲーム機・セプテンバー #深夜の真剣140字60分一本勝負 #140字小説 #140字ss ♪Say do you remember? pic.twitter.com/quyZrMV6eA
2018-09-29 22:33:54日射しが弱くなるように、愛もいつしか薄れるものだとわかった。この季節に降る雨は、酷く冷たいものだと知った。思いきり泣いてしまった自分には、乾いた別れなんて無理だと悟った。あのメロディー。この言葉。あれからも繰り返し訪れては胸が疼く、あの人に会えなくなった季節。その名はSeptember。 pic.twitter.com/Chh57PtJip
2018-09-29 22:38:14「元カレの事って覚えてる?」 彼女はゲームのコントローラーを置いて向き直る。 「どしたん、急に」 「ごめん、なんか…」 俺にもなぜ言ったか分からない。 …彼女がじっと見つめてくる。 「もう9月、寒いし今日泊まるね」 そう言ってゲームに戻る彼女。 いつものメロディーが優しく聞こえてた。
2018-09-29 22:49:58