第36回深夜の真剣140字60分一本勝負

RAY/※※※ @growler_ray

社会という地獄に縛られ、鞭を打たれ、体をボロボロにしながら働く。どれだけ辛くたって苦しくたって、続けなくっちゃならない。 投げ出しやしない、使命感もだけど、何よりも… 「おかえり」 あなたがいるから。家に帰り、この言葉を言われる度に、私は地獄から救われる。いくらでも頑張れる。

竜虎 @btbticc_org

久しぶり、とあちらこちらで声がする。大学卒業以来なので、もう十年はたったか。「おかえり」私は卒業と同時にこの地を離れた友人に手を振った。「俺、地元はここじゃないぞ」友人はそう言ったが、「うん、でもやっぱり、私にとってはおかえり、だよ」それを聞いて、友人ははにかんだ。「…ただいま」

峰庭梟 @sss_books

嵐が去り、女は外へ出て水平線を見つめた。 「行かないで」と願う女を振り払い、男は海へ出たのだ。 男は言った。 「もし俺が死んだら、鴎になって帰ってくる」と。 身勝手な男の言葉を思い出し、女はため息をついた。 「おかえり」 一羽の鴎が、答えるように鳴いた。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/4DK672zqyS

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しろにった りん @rin_shironitta

パイプオルガンが備え付けられた、古くて大きなコンサートホール。複雑な装飾がなされた艶やかな飴色の客席にひとり。 貴方を待っていた。 3年前の約束。海を越え、戻ってきたら1番に聴かせてあげる、と。 やっと耳に届いた、｢ただいま｣を乗せた柔らかな旋律。 さあ、｢おかえり｣を歌に乗せて。

宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

ただいま、と返事の無い部屋に声を掛ける。 喧嘩が原因で先週出ていき、さよなら、って言った君。君の好きなあのコンサートへ行く約束もう忘れないから戻ってきてくれよ。 呟くと、合鍵を使い待っていた彼女が、反省した？ と訊く。 頷く。君は笑う。 ｢おかえりなさい｣ #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/yROfNWOZUF

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水城弥生 @mizukiyayoi8484

その励まされる歌詞と歌声で僕を救ってくれた歌手のコンサートが終わる。夜の会場前は人がたくさんいて、一人で来ているのは僕ぐらいだった。あの人はそう、大切な人を亡くした僕の心に響いた。「ただいま」と言ったら「おかえり」と返してくれる君はもういないけれど、彼を支えに人生を歩んでいく。

青い糸 ❁ @aoi_ito_

貴方の「ただいま」に「おかえり」と返す日々が当たり前だった。 いつもの夜。いつもの薄暗いリビングで、珈琲を注ぎながら貴方を待つ夜。 時計の針は天を仰いで物音1つしない。 椅子に座り2人で笑ったいつかの写真を見つめる。 「ただいま」が無い。当たり前だ。 もう貴方はここにいないのだから

夢夜 @ruya_reve

一人暮らしが長かったせいか、帰宅時の挨拶に慣れない。 それに対して君が返事をしてくれることにも。 だけど、今日は君が生まれた特別な日。 家で待っているはずの君の笑顔を思い浮かべながら家路を急ぐ。 1分1秒が惜しい。 早く会って伝えたい。 愛しい君に、「ただいま」と。

夢夜 @ruya_reve

何かが唇に触れたような気がした。ゆっくり意識が浮上する。 目が覚めた時に真っ先に見えたのは、泣きそうな貴方の顔。 貴方が私の名を呼び、私を強く優しく抱き締めた。 「おかえり」 涙混じりの声でそう言う貴方の背に腕を回す。 ──私は黙って貴方の元から去ったりしませんよ……？

夢夜 @ruya_reve

お前が倒れて今日で3日。 このまま目を覚まさないのかなと思うと怖くなった。 意識のないお前にそっと唇を落とす。 ──ねえ、起きて 長い睫毛が震え、お前が目を覚ました。その名前を呼ぶ。 ──俺の元に帰ってきてくれた お前を強く抱き締める。 「おかえり」 たった四文字に想いを全部込めて。

花滝ちかる @chikaru_toka

本当は、このまま君を離したくないのに。 「そろそろ帰るよ」 玄関に向かった僕の背中を、君の声が追いかけてきた。 「いつか、またね…じゃなくて、行ってらっしゃいって言いたいの」 ああ、僕は不甲斐ないね。君を抱き締めながら、 「じゃあ、僕は君の元に帰って、ただいまって言うよ」 #140字小説

三塚日月 @3_hiduki

#140字小説 #深夜の真剣140字60分一本勝負 #カギ交換 pic.twitter.com/y1nqXI66k8

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ポッキー(山口絢子)@低浮上多し🙇 @sorapoky

ただいま、というと、おかえりと声がした。そうか。今日は君が先に帰っていたんだね。ささやかな宴のあとは、君の弾き語りコンサートだ。観客は私だけ。今夜の歌は、星さえ見えない街の夜に浮かび上がり、私たちは、きっと同じ夢を見る。 ＃深夜の真剣140字60分一本勝負 ＃140字小説 ＃pockynovel pic.twitter.com/KizYzMwQpY

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津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

ぼくは疲れていた。満面の笑みと共に投げかけられた「おかえり」に反応する気力も一切残されていないほど、ぼくは疲れていた。どうして「ただいま」も言ってくれないの、と泣かれても無視を貫きベッドへ直行する。疲れた疲れた疲れた。毎日部屋へ侵入してくるストーカー女に、ぼくは本当に疲れたんだ。

日引 @hibiki_ost

光の降る新緑の中、ヴィオラの旋律はさやけき風となり吹き渡る。脳裏を駆け抜ける景色は貴方との日々。あの日共に見上げた天の川は二人を分かち、それからずっと待っていた、今日この瞬間を。「ただいま」「おかえり」此処は森のコンサート。あの世とこの世を繋ぐ場所。貴方と、再び巡り会う場所。

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

君はまた歌うのかい？ 仮想の現実、観衆がくれるのは奇異の瞳。 歌うことが好きだと言う君に、ボクは何も……。 誰に届くでもない愛の歌はファンの凶刃が切り裂いてゆく。 「おかえり」 ファンがズタボロの君をまた刺し殺す。 「ただいま」 君はまたファンの心を摘み取ってゆく。 その命果てる迄。

にゃん @nyan_kotonoha

#深夜の真剣140字60分一本勝負 #140字小説 #アトリエ部 お題 「ただいま」 「おかえり」 pic.twitter.com/kvoYybwzmT

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秋月蓮華 @akirenge

コンサートホールで彼女は演奏をしていた。急遽、ヴァイオリンの演奏をすることになったのだ。彼は演奏をホールで聴いた。 演奏は終わり、彼はホールを出た。しばらく待つ。 彼女は笑顔で駆け寄ってきた。 「ただいまー。どうだった？」 「おかえり。とてもよかったよ」 #深夜の真剣140字60分一本勝負

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

「突然の引退から二年、彼女の現役復帰が決まりました！」 テロップ良し、キュー出して。 「ファンの悲痛な叫びから二年、彼女の復帰会見が行われました。詰め掛けたファンからの「おかえり」の声に笑顔で「ただいま」と返す彼女。復帰コンサートも予定されており、再始動に期待の声が上がります」

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

私の歌は止まらない…。 この扉の向こうには待っていてくれたファン達がいるから。 届けたい、この声を、そして、気持ちを。 苦い思い出はきっと深く刻まれている。ほら、足だってまだ震えてる。 でも… 「ただいまーっ！」 『『おかえりーー！！！』』 私はまた歌う。 悲劇が待っていたとしても…