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えすてぃ3 @ST_moutsui3

1 「パラレルワールド」という言葉をご存知だろうか。

2021-03-22 20:00:17
えすてぃ3 @ST_moutsui3

2 パラレルワールド(parallel world)とは、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界を指した言葉である。並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われている。

2021-03-22 20:00:37
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3 今から始まるのは、そんな「別の世界」における○○たちの物語―

2021-03-22 20:00:56
えすてぃ3 @ST_moutsui3

4 乃木坂高校1年生、遠藤さくら。 3月のある日の授業中、さくらはチラッと隣の席を見る。 視線の先では、眠たそうな表情をした男子生徒が黒板に書かれた文字を漠然とノートに書き写していた。

2021-03-22 20:02:48
えすてぃ3 @ST_moutsui3

5 その男子生徒の名前は、筒井○○。 さくらは、いつからか○○に恋心を抱いていた。 しかし、勇気が出せなくて想いを伝えることができずにいた。

2021-03-22 20:03:10
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6 さくら:…。 思わず、○○の方をずっと眺めてしまうさくら。 すると視線を感じたのか、○○がさくらの方を向くと、さくらは慌てて目線を逸らす。 pic.twitter.com/7xG20JssFf

2021-03-22 20:04:06
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7 ○○:…遠藤。 さくら:な、なに…? さくら:(こっそり見てたの…バレちゃったかな…。) 声をかけられただけで、内心ビクッとするさくら。

2021-03-22 20:04:25
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8 ○○:…消しゴム貸してくれない? さくら:あ…うん、いいよ。 さくら:(よかった…。) 気づかれていないようで、ホッとするさくら。

2021-03-22 20:04:51
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9 さくら:はい…これ。 ○○の机の上にそっと消しゴムを置く。 ○○:サンキュ。 そう言って○○は消しゴムを使う。 ○○:ほい、ありがと。 消しゴムを差し出す○○。 さくら:うん。

2021-03-22 20:05:15
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10 消しゴムを受け取る時、手と手が触れ合う。 それだけで、ドキッとしてしまう。 こんなことでドキドキしているようでは、告白なんて夢のまた夢。 さくらは、そう感じていた。 ーーー pic.twitter.com/FKABAQCnPM

2021-03-22 20:06:12
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11 それから、数日後。 ○○:明日から春休みかぁ…! 授業も終わり、伸びをする○○。 さくら:なんか、嬉しそうだね。 ○○:逆に嬉しくないのかよ。 さくら:私は…そうでもないかも。 さくら:(学校が休みだと筒井くんに会えないし…。) ○○:ふーん。 不思議そうな○○なのだった。 ーーー

2021-03-22 20:07:06
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12 春休み、初日。 さくら:(筒井くん今何してるのかな…。) 自分の部屋でぼんやりと○○のことを考えるさくら。 さくら:(LINEでも送ってみようかな…。) しかし、いざトーク画面を開いてもそこで指が止まってしまう。 pic.twitter.com/TooTxAzGND

2021-03-22 20:08:24
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13 さくら:(何て送ろう…。) さくら:(こんにちは…とか?いや、それだと変かな。) さくら:(というか、いきなり送ってもいいのかな…?) すっかり迷宮入りしてしまったさくらは、そっと画面を閉じる。

2021-03-22 20:08:48
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14 さくら:(はぁ、だめだな私…。) 溜息をつきながら、カレンダーに目を向ける。 春休みはまだまだ始まったばかり。 さくらは、もう一度溜息をついた。 pic.twitter.com/5DLPuvvZGG

2021-03-22 20:09:32
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15 天気も良かったので、気分転換に外に出ることにした。 土手沿いの道を歩くさくら。 道に沿うように並ぶ桜の木には、少しずつ綺麗な花が咲き始めていた。 さくら:(綺麗だな…。) 桜の木を見ながら歩いていると、不意に声をかけられる。 pic.twitter.com/wTHuQS8psf

2021-03-22 20:11:04
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16 ○○:…遠藤? さくら:へっ…!? 声をかけてきたのは、○○だった。 隣には、見たことのない女の子がいる。 突然の出来事に、困惑するさくら。

2021-03-22 20:11:28
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17 ○○:ああ、えっと…妹の、あやめ。 あやめ:こんにちは。 さくら:こんにちは…! さくら:(よかった、妹か…。) 少し安心するさくら。 pic.twitter.com/Yh6or8Hky6

2021-03-22 20:12:23
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18 ○○:休みの日に会うなんて珍しいね。 さくら:そ、そうだね…!何してたの? ○○:俺はこいつの買い物のお供をさせられて…その帰り。 あやめ:もう!人聞き悪いなぁ…デートって言ってよね。 さくら:(デ、デート!?) pic.twitter.com/bx6pF4fki3

2021-03-22 20:13:11
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19 ○○:はいはい、デートね。遠藤は何してたの? さくら:私は…お散歩、かな。 ○○:暇人かよ。 さくら:むぅ…、うるさいなぁ。 ○○:あはは、ごめんごめん。

2021-03-22 20:13:38
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20 あやめ:お兄ちゃん、そろそろ行こ? ○○:ああ、うん。じゃ、またね。 さくら:う、うん…!またね。 あやめに手を引かれながら歩いていく○○を見送るさくら。 さくら:(会えた…!) 本音を言えばもう少し喋りたかったけど、ほんの少し会えただけでもさくらは嬉しくなっていた。 ーーー pic.twitter.com/WUo5bn7dVZ

2021-03-22 20:15:13
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21 翌日。 さくら:(これは、ただのお散歩だから…!) 心の中で自分にそう言い聞かせながら、さくらは前日○○に出会った土手沿いの道を歩いていた。 しかし、そう都合よく毎回出会うはずもない。 さくら:(はぁ、何やってんだろ私…。) 溜息をつきながら、桜の木を見上げるさくらなのだった。

2021-03-22 20:15:37
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22 その後数日間、さくらは同じ道を歩いていた。 満開に向けて日に日に増えていく桜の花びらたちを見ていると少し楽しくなってきていたが、○○に出会うことはなかった。 さくら:(もう…今日で終わりにしよう。) 溜息をつきながら、桜の木を見上げる。

2021-03-22 20:16:45
えすてぃ3 @ST_moutsui3

23 さくら:(満開になったら、また見に来るからね。) 心の中でそう呟き、さくらは家路についた。 ーーー

2021-03-22 20:16:53
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24 時は流れ、春休み最終日。 あやめ:ねー、お兄ちゃん! 部屋でスマホを弄っていた○○の元に、妹のあやめがやってくる。 ○○:なに? あやめ:暇だからお散歩行こう? pic.twitter.com/ECqJj9xOeR

2021-03-22 20:18:19
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25 ○○:俺は忙しいから1人で行ってこいよ。 あやめ:嫌だ!お兄ちゃんと一緒がいいの! ○○:ったく、仕方ないな…。 言葉とは裏腹に満更でもなさそうな○○。 あやめ:ほら、早く準備して! ○○:はいはい。 ーーー

2021-03-22 20:18:36
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26 同じ頃、さくらの家。 ○○とのトーク画面が映し出されたスマホとにらめっこをするさくら。 しかし、やっぱり勇気が出ない。 さくら:(筒井くん…。) 考えれば考えるほど、○○のことで頭がいっぱいになる。 会えない日々が、さくらの気持ちを増幅させていた。

2021-03-22 20:19:12
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27 さくら:…はぁ。 スマホを置き、天井を見上げるさくら。 「―――桜が満開となり、見頃を迎えています。」 なんとなく点いていたテレビがそう伝える。 さくら:(久しぶりに…行ってみようかな。) ーーー pic.twitter.com/JEreFhFFKb

2021-03-22 20:20:18
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28 例の土手沿いの道を歩いていると、あやめのスマホが鳴る。 あやめ:あれ、レイからだ。 電話に出るあやめ。 あやめ:え!今日だっけ!?ごめんすぐ行く! 電話を切ると あやめ:ごめんお兄ちゃん…!今日レイと待ち合わせしてたの忘れてた。 pic.twitter.com/SEocG7JVqX

2021-03-22 20:20:54
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29 ○○:何やってんだよ。早く行かないと。 あやめ:うん…ごめんねお兄ちゃん…! ○○:俺のことはいいから。気をつけてな。 あやめ:うん、ありがと! あやめを見送った○○は、ふと桜の木を見上げる。

2021-03-22 20:21:13
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30 ○○:(どうせ暇だし、ちょっと歩くか。) 満開の桜の花々が、○○の足取りを軽くさせていた。 ーーー

2021-03-22 20:21:36
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31 さくら:(綺麗だなぁ…。) 美しく咲き誇る花々に目を奪われるさくら。 すると、前から1人の女の子が走ってくる。 さくら:え…? その女の子とは、慌ててレイの元へ向かうあやめだった。 あやめはさくらに気づくことなく、あっさりと横を通り過ぎていく。 pic.twitter.com/GrWs2S5oxF

2021-03-22 20:23:41
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32 さくら:(今の子…筒井くんの妹だよね…?) さくら:(もしかしたら…。) 気がついたら、さくらは走り出していた。 ーーー

2021-03-22 20:23:56
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33 しばらく走ると、道の向こうに見覚えのある後ろ姿を見つける。 さくら:(筒井くんだ…!) 何も考えずに走り出したものの、まさか本当に会えるとは思っていなかったさくらは、ドキドキと胸が高鳴る。

2021-03-22 20:24:18
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34 さくら:筒井くん…!! さくらが名前を呼ぶと、○○は驚いたように振り返る。 ○○:遠藤…?! ○○の元へ駆け寄るさくら。 さくら:筒井くん…! ○○:どうしたんだよ、そんなに慌てて。 pic.twitter.com/y1UCbzhQMI

2021-03-22 20:25:17
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35 さくら:お散歩してたら筒井くんの姿が見えたから。 ○○:また散歩してたのか、暇人かよ。 さくら:…そうだよ。 そう言って○○を見つめるさくら。 さくら:さっき…筒井くんの妹、見たよ。 ○○:ああ…予定を思い出したみたいで、置いていかれた。 さくら:…そうなんだ。

2021-03-22 20:25:56
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36 ○○:だからさ、俺も…暇してたとこなんだよね。 ○○:一緒に…歩かない? さくら:うん…いいよ。 ーーー

2021-03-22 20:26:05
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37 満開の桜並木の下を歩く2人。 ○○:綺麗だな…。 さくら:…うん。 桜を見上げる○○の横顔を見つめるさくら。 久しぶりに会えたその横顔に、さくらはドキドキしっぱなしだった。 pic.twitter.com/68s2w9yyb9

2021-03-22 20:26:47
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38 ○○:ん? 視線に気づいた○○と目が合う。 ○○:どうしたの? さくら:ううん…なんでもない。 慌てて俯くさくら。 pic.twitter.com/MkB09cnzMy

2021-03-22 20:28:40
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39 ○○:明日から…新学期だね。 さくら:…うん。 ○○:また…一緒のクラスだといいね。 さくら:え……? ○○の言葉に、驚いた様子のさくら。

2021-03-22 20:29:11
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40 ○○:あ、ごめん…嫌だった? さくら:そ、そんなことないよ! ○○:…よかった。なんだかんだ遠藤が1番話しやすいんだよね。 安心したように笑う○○。 その笑顔に、さくらの中で想いが溢れる。

2021-03-22 20:30:05
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41 さくら:(ねぇ、筒井くん…。) さくら:(今の、どういう意味?) さくら:(そんなこと言われたら…期待しちゃうよ?)

2021-03-22 20:30:21
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42 立ち止まるさくら。 ○○:遠藤…? つられて○○も立ち止まる。 さくら:筒井くん…! さくら:大事な話が…あるんだけど。 ○○:…うん。 満開の桜の木の下で、向かい合う2人。 pic.twitter.com/oop4MgPsnP

2021-03-22 20:32:42
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43 さくら:あの…えっと、 いざ○○の顔を見ると緊張して言葉が出ない。 さくら:(ど、どうしよう…!!) 頭の中が真っ白になる。 さくら:その…わ、私… 自分でも信じられないほど、胸の鼓動が大きく、そして速く感じる。

2021-03-22 20:33:22
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44 苦しさを感じ、胸に手を置く。 そんなさくらを、○○は黙って見つめる。 さくら:(どうしよう、待たせちゃってる…早く言わなきゃ…!) さくら:えっと…、、 pic.twitter.com/vNdq7G7Dgk

2021-03-22 20:35:06
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45 もしもフラレたら…そんな考えが頭を過ぎる。 その瞬間、急に怖くなってしまう。 引き返したい、でも、もう引き返せない。 さくらの目に涙が滲む。 pic.twitter.com/mppKd7vPIw

2021-03-22 20:35:52
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46 ○○:…遠藤。 ○○が優しい声で名前を呼ぶ。 ○○:…落ち着いて。 ○○:ゆっくりで、いいから。 ○○:絶対に…大丈夫だから。 そう言って、ニコッと笑う○○。

2021-03-22 20:36:24
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47 さくら:筒井くん…。 一度、大きく深呼吸をすると、肩の力が抜けた気がした。 ○○:がんばれ…。 独り言のように、そう呟く○○。 その言葉に背中を押されたように、さくらは覚悟を決めた。 pic.twitter.com/uXY4gXVZ33

2021-03-22 20:38:35
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48 さくら:ねぇ、筒井くん。 さくら:あなたのことが…大好きです。 さくら:私を…彼女にしてください。

2021-03-22 20:38:53
えすてぃ3 @ST_moutsui3

49 ○○の表情が綻ぶ。 ○○:…うん、よろしく。 さくら:へ…? ○○:俺の彼女に…なってください。 さくら:ほ、ほんとに…? ニッコリと頷く○○。

2021-03-22 20:39:47
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まとめたひと
えすてぃ2 @ST_moutsui2

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