深夜の真剣140字お月見一本勝負2019

花滝ちかる @chikaru_toka

「月が奇麗ですね」 臆病な僕の気持ちは、貴女に伝わっただろうか。 「月は表の顔しか見せないもの。裏側は傷だらけで醜いのよ」 ああ、僕が知らない貴女の方が多いんだ。 それでも。 「僕は、これから出会う貴女の全てを愛します」 貴女はクスリと笑った。 「直球ね。…I love you too」 #140字小説

モモンガ生命体（芳々） @saturn142900

母の惚気話。 「君と一緒に食べるご飯は美味しい、一緒に見る月は美しい」 そうプロポーズされたと。幼児にはピンと来なかった。美味しさも美しさも固定だ。 大人になり恋人が出来た。一緒の帰り道、空には大きな月。驚くほど美しい。そうか、これか。彼女にはどう見えるのかな。 「月が綺麗ですね」

RAY/※※※ @growler_ray

それは何気ない一言のはずです。景色を表す、なんて事ない普通の一言。 幾度となく私は2人で空を見上げ、月を見上げ、そのままの意味でこの言葉を使ってきました。 …でも、今日の言葉は、その意味じゃないです。伝わってほしいな、何度目か分からない、けど初めて言うこの言葉。 「月が綺麗ですね」

空川実栄 @sorakawa_mie

「誤解しないでね」ブランコに座る彼女は空を見上げる。「綺麗だね、お月様」柵に跨る私は、瞬き吹き出した。「心配せずとも」「それはよかった」彼女は笑みを深め、地面を蹴る。ブランコが軋む。「欲しいな」「あげるか？」「遠慮しとく」ブランコで半弧を描く彼女の姿が月に重なる。淡い光が薄れた。

🧡桜🌸 @skr_Renlove

#深夜の真剣140字お月見一本勝負2019 (@140onewrite) お題【月が綺麗ですね】 pic.twitter.com/HAlStQNomc

拡大

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

「あんま泣くなって！」 彼からの想いも寄らないサプライズでどうしようもなくなった感情の波は、涙という形で溢れてしまう。 「参ったな…」 嬉しいよ、だって…コレ… 私は左手の薬指、その輝きをもう一度見つめた。嬉しい… 「あ、おい、見ろよ、月が綺麗だぜ？」 トドメもクリティカルだった…

Altair @_altair_73

部活の帰り道。思いの外日が落ちるのが早くて、秋がもう近くまで来ていることを思い知る。暗がりの中、隣を歩く彼と二人。「ねぇ」不意に鼓膜を揺らした声は少しだけ震えていた。「月が綺麗ですね」俯いたまま続いた言の葉は私の心をも揺らす。月明かりに照らされたのは、彼の気持ちと私の恋心。

藍 @aI_mOOn_fumi

真夜中がただ長いのだ、蛍光灯に色褪せる肌。滑るナイフに変わる秒針。人は声から忘れてく。薄暗がりに目が眩む。真夜中がただ長いのだ。なのにどうして見上げるだろう。明るい月を恋うのだろう。形ある言葉で傷つきたい。優しい嘘を愛したい。今、クレーターは見ない振り、月が綺麗ですね、なんてさ。

Keiko Nagamori @ki_engi

彼女は5時から９時までキヨスクにいる。僕は毎日その時間に間に合うよう家へ帰る。ビールやつまみを買い、ありがとう以外会話はないが僕にとって至福の時だ。今日珍しくレジの横にみたらし団子があるなと手に取ると「月が綺麗ですね。」と彼女が言った。ふいの展開に僕は空を見上げ月と言葉を探した。