例のあれそれで勢いで書いたやつだけど、気に入っている話。
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めしこ @mogmog_meshiko

燭へし書いてる20↑/まもなく脱走しそう https://t.co/PEdidAAvwW

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⚠️色んな情報を含みます。 何でも許せる人向け燭へしです。 ▽ 本丸を増築するにあたって、礼拝堂を作ると聞いて、少し驚いた。 だって僕たちは、人の形を成しているけど、人ではない。 この本丸に民が集まるわけでもない。 ↓

2020-01-05 22:21:27
めしこ @mogmog_meshiko

それなのに、わざわざ礼拝堂を建てた意味が、その時の僕にはいまいち理解できなかった。 主のためなのかなって思って、聞いてみたことがある。 主は言った。誰かのためになればと思って建てたのだと。 確かに元の主や、時代によっては信仰深い者もいるとは思うけど。 ↓

2020-01-05 22:22:16
めしこ @mogmog_meshiko

なぜこの増築のタイミングで?とやっぱり疑問だった。 礼拝堂の近くにはバラ園も建てられて、畑とはまた違って、花を愛でるという行為を僕は学んだ。 僕たちの本丸はそうして、刀が増え、敷地が広くなり、僕にも特別な関係になる相手が出来たりしていた。 ↓

2020-01-05 22:23:02
めしこ @mogmog_meshiko

バラの香りが一番強く香るのは早朝らしい。 僕は非番の日に、朝早く起きてバラ園を訪れていた。 日が昇っていくにつれて、辺りいっぱいに広がるバラの香りを堪能していると、礼拝堂に入っていく人影。 長谷部くんだった。 彼も今日は非番のはずだ。あの礼拝堂に用がある人なんているんだ。 ↓

2020-01-05 22:28:35
めしこ @mogmog_meshiko

長谷部くんのことだから、掃除でもしてるのかな。 その時は特に気にも留めなかった。 その後も、僕が早朝にバラ園を訪れると、長谷部くんはいつも礼拝堂を訪れていた。 もしかしたら毎日なのかもしれない。 まだ誰も起きて来ない、厨当番も寝ているような、そんな時間。 ↓

2020-01-05 22:29:08
めしこ @mogmog_meshiko

そういえば、彼は頑なに僕の部屋で朝を迎えようとはしない。 どんなに夜が更けようとも必ず自室に帰っていく。 もしかしたら、僕にこのことを知られたくないからかもしれない。 そう考え出したら、なおさら気になって、こっそりと窓から礼拝堂を覗いてみる。 ↓

2020-01-05 22:29:47
めしこ @mogmog_meshiko

たった一人、ぽつんと立った長谷部くんは、両手を組んで静かに目を伏せる。 それは祈りなのか、赦しを乞うているのか。 ふと、思い当たって次の瞬間、僕は礼拝堂の扉を開けていた。 驚いたように長谷部くんが振り返る。 「燭台切…早いな、こんな時間にどうした。しかもこんな…」 ↓

2020-01-05 22:30:20
めしこ @mogmog_meshiko

「長谷部くんこそ、いつも朝早くに礼拝堂でいったい何をしているの?」 「っ…知っていたのか」 「たまたまね。ねぇ、きみは何を祈っているの?それとも何に赦しを乞うているの?」 「…別に、せっかく主がここを建てられたから、俺は…」 一歩、彼に近付く。こつん、と靴の音が高い天井に響いた。 ↓

2020-01-05 22:30:57
めしこ @mogmog_meshiko

「僕ね、この身を得たときに、ただ斬ることができれば良いと思ってた」 「……」 「だってそれが僕たちの本懐だから。でも実際には、斬られれば痛みを伴うし、お腹は空くし、寝ないと動けない。人の身って不便だなとも思った」 「…そうだな」 ↓

2020-01-05 22:31:52
めしこ @mogmog_meshiko

「でも言葉を交わすことが、心を交わすことが、こんなにも温かに感じるなんて知らなかった」 「……」 「愛しいと思うことが、こんなに苦しくて、幸せだなんて、知らなかった」 「っ!」 「ねぇ、長谷部くん。僕たちが気持ちを交わして、心も身体も交わしていることって、 ↓

2020-01-05 22:32:33
めしこ @mogmog_meshiko

そんなにいけないことなのかな」 「…だって、俺たちは…」 「うん、そうだ。僕たちの目的のためには、それは確かに不必要なものなのかもしれない。でも、本当にそうだったら、きっと、心を持ってこの身を宿す必要なんて、そもそもないと思うんだ」 「…っ…」 ↓

2020-01-05 22:33:16
めしこ @mogmog_meshiko

「無駄なことなんて、きっと何一つないんだよ。僕たちに」 「……」 「ねぇ、きみは誰に許してほしいの?主?それとも神様?」 「俺は…」 俯く彼の頬に両手を添えて、僕のほうを向かせる。 今にも泣きそうな顔。 きみも、そんな顔が出来るようになったんだね。 ↓

2020-01-05 22:33:47
めしこ @mogmog_meshiko

「…大丈夫だよ。ここには僕ときみしかいない。神様だってきっとこんな朝早くじゃ、まだ寝てるんじゃないかな?」 「……」 「ね、大丈夫だよ」 「俺は…俺自身に赦してほしいんだ。おまえへの想いを抑えられないことを、おまえを…愛してしまったことを。 ↓

2020-01-05 22:34:27
めしこ @mogmog_meshiko

…それは決して間違ってはいないんだということを」 「…うん」 「赦してほしい。俺にも、おまえにも…っ!」 「うん、大丈夫だよ。それなら僕はきみ以上に、きみに赦しを乞わなくてはならない。僕はこんなにも、きみのことを愛しているのだから」 ↓

2020-01-05 22:35:09
めしこ @mogmog_meshiko

朝日が、ステンドグラス越しに礼拝堂を照らす。 僕たちはその光を浴びながら、何度も口付けを交わした。 なにも悪くない。 僕たちは、ただ僕たちで在るだけだから。 それを罪だというのなら、神様なんて――

2020-01-05 22:35:38
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まとめたひと
@mogmog_meshiko

今日も、明日も、燭へし書くよ。