就職決まった結果がコレかよ。
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菅付雅信 @MASAMEGURO

急きょ、ポール・スミスが早稲田大学で講演をする。10月5日18:30に大隈記念講堂にて。しかも無料! pic.twitter.com/TBpwJ9UXfl

2015-09-28 09:01:08
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ふはっ、ポールも同じ時間に講演すんのか。でも、お前らはオレの方に来るだろ? >RT pic.twitter.com/PJ52qO23aK

2015-10-05 02:51:45
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ジャケットに袖を通し、深緑色(ダークグリーン)のネクタイを締める。 赤司Co.,での死闘から4ヶ月余が過ぎた。twitter.com/Entry2Hurt/lis… 針をブッ刺した薬指、伸びた爪は未だ歪だ。元に戻るのは奴が目覚める頃か、それとも、一生歪んだままか。どちらにしろ安い代償だ。

2015-10-05 17:15:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

少し早いが家を出ようとしたところでインターホンが鳴った。宅配便のようだが何か頼んだ覚えはない。モニターを確認後、後ろ手に催涙スプレーを持って戸を開けた。念には念を入れる生活にも慣れっこだ。今までもいつ殺されてもおかしくねぇ生き方をしてきたが、今やマジで無法者共に襲撃されかねない。

2015-10-05 17:20:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

荷物は段ボール1箱。送り主不明の伝票には、品物分類欄の“衣類”に○が付いている。開けてみると中に入っていたのは大量の古着だった。数着のスーツと夏物冬物がごったになった地味な服。その殆どが無印だ。ん? どれも見覚えが…って、全部あの人のじゃねぇか! んなゴミ、被災地でもいらねぇよ!

2015-10-05 17:25:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

チッ、時間食っちまった。棄てんのは帰ってからだ。 これから母校の就活セミナーで講演がある。 行ってきます。

2015-10-05 17:30:18

 
 

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

既に懐かしい大学の最寄り駅から徒歩8分。赤門前に大男が待ち構えるように立っていた。 「久しぶりだな、花宮」 木吉だ。 「やあ、わざわざ出迎えてくれて嬉しいよ」 「今日は死ぬほどじゃないのか?」 オレが舌打ちすると、何がおかしいのか木吉は声を出して笑った。 「元気そうで良かったよ」

2015-10-05 18:00:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「いつまで続ける気だ」 木吉の顔を視界に入れぬよう、すれ違う後輩共に手を降りつつ構内を歩く。 「一生。」 「過去を抱えて生きるのはしんどい。オレはお前を許すことにした」 「赦してくれなんて頼んだ覚えねぇよ」 「いつかでいいさ」 「一生ねぇよ」 「来世でも、もっとずっと先でもいい」

2015-10-05 18:10:10
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「人を欺くことはできても自分を欺くことはできないぞ」 なんでこう誠凛の連中は説教臭ぇんだ。 「その言葉そっくりそのまま返すぜ」 「…そうだな。最初は嫌悪と戦いながらだった。今だって難しい」 頑に(表向きは)友好的に振る舞ってた木吉が認めたことに驚いた。だが、と木吉は言葉を続けた。

2015-10-05 18:15:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「人は過去を乗り越えることができる。この世には、不幸な事実も、許せない人も存在しない。あるのは、不幸と受け止め、許せない心だけだ。花宮、オレがお前の幸福を祈る気持ちは本物だ」 木吉は講堂の扉を開け、中へオレを招き入れた。 「幸せになれよ」

2015-10-05 18:20:05

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

平日だっつーのに講堂は満員。卒業から半年経つが、このオレの人気は衰えていないようだ。 「就活駆け込み特別セミナー最終回、」 ただでさえデケー木吉の声がマイクで拡声され頭に響く。 「今日のゲストは、うちの大学で知らない人はいないだろう、花宮真さ…花宮だ!」 なぜ言い直した。

2015-10-05 18:35:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

司会の木吉を睨みつつ壇上に上がった。 「皆さん、お久しぶりです。昨年度卒業生の花宮真です」 オーディエンスへ微笑みかけつつ席を見渡す。三脚を立てて写真を撮ってる奴が目に入った。もちろん古橋だ。隣に座っているのは原と山崎(瀬戸は来てねぇのか)だ。オレの視線に気付いた原が手を振った。

2015-10-05 18:40:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「画面にある通り、僕は現在、企業に属しておりません」 (ざわ…) 「僕は学生時代、50社から内定をいただきましたが、その全てを辞退しました」 後輩(ガキ)共はさらにざわついた。 「僕にとって就活は将来のために人脈作りの場でしかなかったからです」 んなワケねぇだろ、騙されたんだよ!

2015-10-05 18:45:03
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「僕達しがない学生が、大企業の重役や社長といった社会的地位の高い人に会える機会はそう多くありません。皆さんには夢がありますか? 人脈を作ることは、その成功を左右する決定的なファクターと言って過言ではないでしょう。本日は皆さんに、この“見えない財産”についてお話ししたいと思います」

2015-10-05 18:50:09
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「人脈とは“見えない財産”です。消費するだけでは財産は増えません。財産を増やすには投資をしなければ〜(中略)〜目先の利益を追うのではなく長い時間かけて大きな花を咲かせるのです」 古橋と目が合った。そろそろポーズに変化がほしい頃か。演台から手を離し、ろくろを回すポーズに切り替えた。

2015-10-05 18:55:06
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「〜つまり、助け合いの輪を広げるのです」 カメラに向かって笑みを作る。死んだ目はシャッターチャンスを逃さなかった。完璧なタイミングでフラッシュの光が放たれた。 「“助ける”と言っても大げさなことではありません。日々誠実に行動していれば自然に人に伝わります。見返りを求めない云々〜」

2015-10-05 19:00:27
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「これは第42代アメリカ大統領ビル・クリントンの言葉で云々〜」 ハァ…オレの話クソ長ぇ。コイツらこんな抽象的な作り話よくマジメに聞いてんな。 「他人を出し抜いたり陥れたりするからこそ成功できると世間では信じられているかも知れません。しかし実際には、成功者ほど常に相手を思いやり〜」

2015-10-05 19:05:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「僕は現在フリーランスとして活動しています。助け合いの輪に入っていれば、属する場所を持たずとも恐るるに足りません。手が空いたとなれば、その情報をどこかで聞きつけた誰かが、“これを機に一緒に仕事していただけませんか”と誘ってくれるからです」 「せやな」

2015-10-05 19:10:09
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

!? 暗がりで顔が見えなくても声だけで心臓が跳ねる。 「言うてることは間違ってへん。ただなぁ、」 階段教室の後ろの扉から一段一段声が降りてきた。何?誰?と会場がざわめく。 「嘘吐きはラフプレーの始まりやでー」 今吉さんじゃね?という声がちらほら聞こえてきた。奴もかなりの有名人だ。

2015-10-05 19:15:02
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

舞台から降りて招かれざる客(サプライズゲスト)へ歩み寄る。 「仕事はどうしたんですか」 社畜、と口の動きだけで悪態をついた。ニート、と即座に返ってくる。 「辞めてきたわ」 「…は?」 「これから人間も辞めたる」 細めた目とは裏腹に腹を据えた声だ。 「今日はお前を迎えにきたんや」

2015-10-05 19:20:08
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ごほん、と今吉はオヤジ臭ぇ咳払いをして背筋を伸ばした。ガラにもなく緊張してんのかゆっくりと口を開く。 「十年間、慎重に選考を重ねました結果、花宮さんを採用させていただきたいと考えています」 頭を下げながら茶封筒を渡された。 「弊社の一員として、二人で一緒に夢を実現しませんか」

2015-10-05 19:25:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

ワケわかんねぇ。 突然の公開スカウトに学生達からは歓声が上がる。戸惑いながらも封筒を受け取った。こんなときどんな顔すればいいかわからない。今吉さんと目を合わせると「開けてみ」と促された。恐る恐る封を開く。中には三つ折りに畳まれた1枚の紙が入っていた。 「これ…」 内定通知書だ。

2015-10-05 19:30:11
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

あの頃のように髪を短くした今吉さんは、ニヤリと口の端を吊り上げた。オレにだけ聞こえる小さな声で付け足す。 「弊社はあなたの悪夢を全力で支援します」 「ふはっ…」 ようやく堕ちてくる気になったか。いいぜ、どこまでも引き摺り下ろしてやる。もう泣いても引き返せねぇから覚悟しろよ。

2015-10-05 19:35:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「で? 返事、聞かせてほしいんやけど」 オレの心を読んだのか、今吉さんはしたり顔で片目を開けた。 「御採用いただき、誠にありがとうございます」 とうに諦めていた──

2015-10-05 19:40:05
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

第一志望からの内定だ。 「はい、」 断る理由はない。 「謹んで内定をお受け致します」

2015-10-05 19:45:04
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「私の持つ能力を最大限に発揮いたしますので、今後とも末永くよろしくお願い申し上げます」 入社を承諾した瞬間、クラッカーの音が鳴り響いた。驚いて音の方を振り返るとニヤついた原の顔があった。それを合図に呼応するように会場が生温かい拍手に包まれる。体中ムシズが走るような妙な感覚だ。

2015-10-05 19:50:07
意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「つか、株式会社ICTって何の会社だよ」 通知書を社長の顔の前でひらひらと振った 「せやなぁ、今吉コンサルティング…」 「登記前に考えとけよ。Tはタクティクスがいいです」 「ま、何でもええわ。お前なら何でもできるやろ」 pic.twitter.com/2YOGytBwj2 「ふはっ、」

2015-10-05 19:55:06
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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

「バァカ、間違ってますよ。“オレ達”だろ」

2015-10-05 20:00:10

 
 
 

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意識の低い就活生だった花宮bot @Entry2Hurt

原作 平林さわこ 『黒子のバスケ -Replace V- ふぞろいのエースたち』 第6G 欺きの"悪童"

2015-10-05 20:10:10