その余裕を崩したい。 (ちょっと加筆修正したものを、まとめ本に収録)
0
めしこ @mogmog_meshiko

燭へし書いてる20↑/まもなく脱走しそう https://t.co/PEdidAAvwW

https://t.co/zJWrL0siJ9

めしこ @mogmog_meshiko

今日も今日とて残業。 特に金曜日は周りもおれ自身も、目一杯に残業するという文化が、あまりにこの会社には根付きすぎている。 家に帰るための電車の中で、頭も身体もへろへろになっているおれの目に付いたのは、メッセージアプリのニュースに出てきたコラムだった。 ↓

2019-10-14 00:29:12
めしこ @mogmog_meshiko

『付き合って数ヶ月、彼氏に飽きられないためには!?』 なぜ、こんな見出しに目がいったのかと言えば、まぁ疲れていたんだろう。そうに違いない。 あとは、その次の文章が、妙に気になったからだ。 『普段、消極的な彼女が積極的になってくれると、思わず余裕なくなりますね(20代男性)』 ↓

2019-10-14 00:30:58
めしこ @mogmog_meshiko

余裕…。長船と付き合い始めて数ヶ月、付き合ってからどころか、付き合う前からおれはあいつの余裕しか見ていない。 いつだって、どんな時だって、おれの数歩先で余裕の笑みを浮かべている。 それが悪いわけではない、むしろそういうあいつを含めて全部好きになったんだ。 ↓

2019-10-14 00:31:58
めしこ @mogmog_meshiko

でも、そんな余裕たっぷりのあいつに、いっぱいいっぱいのおれは相応しいのだろうかと、不安に思わないわけではない。 言ってしまえばシンプルな話、余裕のない長船が見たかった。金曜日夜のおれは、それくらい疲れていた。 付き合う前から、お互いの部屋を行き来していたおれたちは、 ↓

2019-10-14 00:33:00
めしこ @mogmog_meshiko

付き合ってからも、金曜日はどちらかの家に居ることが多かった。 ちなみに今日は長船の家。 というかおれが大体残業だから、必然的に長船の家に入り浸ることが多かった。 リビングのドアを開けると、良い匂いが鼻を抜けて胃をピンポイントで刺激する。 おれは、とにかく疲れていた。 ↓

2019-10-14 00:34:08
めしこ @mogmog_meshiko

空腹と同じくらいの渇きを、本能が訴えていた。 「あ、長谷部くんおかえ…り…っ!?」 ソファでタブレット端末をいじっていた長船に、倒れる勢いで飛び込む。 長船はあのタブレットで、よく小説やレシピ本を読んでいる。 決して小柄ではないはずのおれを、長船はしっかり受け止めた。 ↓

2019-10-14 00:35:34
めしこ @mogmog_meshiko

おれはそのまま長船の首に腕を回して、何か言おうとしている薄く開いたままの唇を、自分のそれでかみつくように塞ぐ。 「っん…んん…!?…ちょ、はせべく…んっ…?」 「…ん、はっ…」 記憶の限り、おれからこんなふうにキスを仕掛けたことは、ない。 ↓

2019-10-14 00:36:13
めしこ @mogmog_meshiko

というか、おれからキスをしたことすら、もしかしたら数えられるくらいかもしれない。 長船の口が薄く開かれているのをいいことに舌を捻じ込むと、拒まれることなくお互いのそれは生々しく絡み始める。 おれは頭の片隅だけでは、冷静だった。 きっとおれは今とんでもないことをしている。 ↓

2019-10-14 00:40:01
めしこ @mogmog_meshiko

疲れている、疲れているからだ。誰にともなく言い訳を並べる。 そして何より、この完璧な男の余裕たっぷりの仮面を剥がしてみたかった。 荒くなる呼吸と、じわじわと上がる体温。 おれの目尻からは悲しくもないのに涙が滲んできて、それが今にも零れそうなのは、おれ自身が誰より分かっていた。 ↓

2019-10-14 00:40:46
めしこ @mogmog_meshiko

二人の間にほとんど距離はないので、目を開いても焦点は微妙に合わない。 ただ、おれの下に長船がいるというのは、なんだか新鮮だった。 唇が離れて、酸素を脳と身体に回すべく必死になる呼吸は慌ただしい。 二人の間の空気は、確実に甘ったるいものになっている。 ↓

2019-10-14 00:41:54
めしこ @mogmog_meshiko

おれの突拍子もない行動は、この男の余裕を剥がしてくれるだろうかと淡い期待をしていると、頬に手を添えられて目尻にキスを落とされる。 ちゅっ、というリップ音と共に拭われた涙。 そして、離された、身体。 「…急に、どうしたの?驚いちゃった。遅くまでお疲れさま。ほら、ご飯にしようよ」 ↓

2019-10-14 00:43:22
めしこ @mogmog_meshiko

この空気で?こんな盛り上がっておいて、ご飯? いや、そりゃ確かにお腹はめちゃくちゃ空いている。デミグラスソースだろうか、美味そうな匂いは魅力的ではある。 でも、ここまでやっても、おれはおまえの余裕の一片も剥がすことが出来ないのか。 何だか虚しくて、今度こそ涙が出そうだった。 ↓

2019-10-14 00:44:17
めしこ @mogmog_meshiko

長船は何事もなかったかのように、エプロンをつけて夕食の準備に取り掛かろうとする。 「あ、そうだ。ご飯の準備しておくから、先にお風呂入ってきなよ」 「…ば…りだ…」 「え?なにか言った?」 「…いつも、おまえは、余裕ばっかりだ!おれがっ、こんなに必死になっても…おまえは余裕で、 ↓

2019-10-14 00:45:01
めしこ @mogmog_meshiko

おればっかり、いっぱいいっぱいでっ…もういい!風呂入ってくるっ…」 恥ずかしいやら、腹立たしいやらで、おれは居ても立ってもいられなくて、風呂に入るべく長船の横を通り過ぎようと、した、が。 「…なっ…」 長船に、腕を掴まれたかと思ったら、先ほどまで居たソファに転がされる。 ↓

2019-10-14 00:45:34
めしこ @mogmog_meshiko

すぐ目の前には長船の顔があって、さっきとは体勢が逆だなと、おれは混乱する頭でそんなことを考えていた。 そして今度はおれの唇が奪われる番だった。 「…んっ…んん…っ…!?」 「…はぁ…っ…だれが、余裕ばっかり、だって…?」 いつの間にか、ワイシャツがスラックスから出されている。 ↓

2019-10-14 00:46:03
めしこ @mogmog_meshiko

そのワイシャツの裾から入り込んだ長船の指が、おれの身体を這う。 熱い、こいつの手はいつも、こんなに熱かっただろうか。 そうだったのか、そうじゃなかったのかも、おれには分からない。 何故ならいつも、それはもう、いっぱいいっぱいだったからだ。 ↓

2019-10-14 00:47:12
めしこ @mogmog_meshiko

今日は、かえって頭が冷静になってしまっているが。 お互いの服越しに感じる熱が、とにかく、あつい。 そこには熱さも、興奮も、確かに感じることが出来て、おれの顔はますます熱くなる。 「…余裕なんて、ぜんぜんないよ…いつもね。でも今日は、長谷部くんが悪いんだからね…」 ↓

2019-10-14 00:48:18
めしこ @mogmog_meshiko

「いやっ…ちょっと、まっ……ん…」 まともに酸素を補給できないままに、再び塞がれる唇。 おれは、うっすらと目を開けて、焦点の合わない視界で必死に長船の表情を見る。 とろりと、欲が揺れた色の瞳と目が合った。 そこには、確かに、余裕なんてきっとない。 ↓

2019-10-14 00:51:45
めしこ @mogmog_meshiko

おれが空腹を満たすのも、汗を流すのも、まだまだ後になりそうだった。 ↓このアンケート結果より twitter.com/mogmog_meshiko… わたしはとても馬鹿なので いっそのこと全部入れたら 楽しいんじゃないかと思い 全部いれることにしました🐹 ありがとうございました!!!

2019-10-14 00:54:58
めしこ @mogmog_meshiko

めしこの燭へしへのお題は ・エプロンをつける ・目尻にキス ・服の中を指が這う ・余裕なんてない です。アンケートでみんなが見たいものを聞いてみましょう shindanmaker.com/590587 🐹コンビニ長谷部くん終わったら書く

2019-10-11 19:32:48
0
まとめたひと
@mogmog_meshiko

今日も、明日も、燭へし書くよ。