書きかけ。そのうち。 ちょっとだけ、サイコホラーっぽくするつもり……だった。
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森の☆ハルビエ @hanomorisann

同じような設定ばかり。でも書く。

2019-12-22 03:04:44
森の☆ハルビエ @hanomorisann

その年26歳の夢主は、訳あってアパートで一人暮らし。その二年ほど前に自動車事故にあい、後遺症で、その間のおよそ1年半に過ごした結婚生活と共にその記憶がぽっかり抜けている。さらに感情の起伏もあまりない。事故は、彼女の人間らしさも奪ってしまったかのようだった。

2019-12-22 03:04:44
森の☆ハルビエ @hanomorisann

その事故は、離婚して二日も経たぬ間のできごとらしい。病院で目を覚ますと、覚えのない結婚の末バツイチになっていたという珍事。母曰く、それは就職先で見初められ、向こうから請われて結婚、そして、向こうからの離婚という事実。何それ?さっぱり訳が分からない。ただ、夢主は相手に対して

2019-12-22 03:04:45
森の☆ハルビエ @hanomorisann

愛情があったらしく離婚を拒否し、今は記憶にさえない愛する夫から調停を起こされていた。申し出出たのが向こうからという理由で慰謝料は破格だったらしいが、それも拒否し、とにかくパニックになっていたという。だが、向こうの意思は強く、ついに離婚に応じた矢先だった

2019-12-22 03:04:45
森の☆ハルビエ @hanomorisann

退院後は両親の進める見合い話をことごとく断り、ただひとりになりたくて家を出た。その相手に会いたかった。どんな人だったのだろう。今はこの虚ろな心を掻き乱した人は。かつてこの胸を、おそらく愛で満タンにしていた人は…? 両親は彼の不実さへ怒り、彼女の入院中に持ち物から彼に関わるものを

2019-12-22 03:04:45
森の☆ハルビエ @hanomorisann

すべて捨て去っていたから、写真さえも残っていないのだった。あるのは、時折幻のように心に浮かぶ、思い出の一欠片。広い背中。背が高くて、抱き締められるとちょうど、その心臓の位置に顔を埋められた……。 でも、もう会うことも許されない。彼女と離婚すると、直ぐに別の人と婚約したらしい。

2019-12-22 03:04:45
森の☆ハルビエ @hanomorisann

両親の怒りも、人の親なら当然のことだ。ただわかっているのは、理由が事故であれ離婚であれ、もう自分は元には戻れず、両親の元にいれば心配をかけてしまうだけということ。彼女は自立の名目で両親の援助を断り、自分のアパート近くにある大型スーパーで働きはじめた。

2019-12-22 03:04:46
森の☆ハルビエ @hanomorisann

お答えありがとうございます。  では、ogt編で妄想します。しばらくお待ちを……。

2019-12-22 10:12:05
森の☆ハルビエ @hanomorisann

続き。 仕事帰りの夕方、家路を急ぐ人達に紛れ、道をぼんやりした様子で歩いていた夢主の肩を、後ろから快活に声を掛けて軽く叩いた者がいた。背の高い、顔にカタカナでサの字を描いたような大きな傷跡をつけた若い男。もちろん見覚えは無…いや、知っている。前の職場にいた同僚のsgmtだった

2019-12-24 09:46:58
森の☆ハルビエ @hanomorisann

でも、以前はそんな傷は無かったように思う。「やっぱり夢主さんだった!元気そうで良かった!事故にあったと聞いて心配してたんだよ」傷のことを訊くと、仕事中、営業車で走っていたところを脇見運転のトラックに衝突されたのだという。「幸い、内臓は無事だったけど、外見(そとみ)に

2019-12-24 09:46:59
森の☆ハルビエ @hanomorisann

傷が結構残っちゃって。君も同じ頃に事故に遭ってたとか後で聞いて、驚いちゃったよ」傷だらけになっても、相変わらずsgmtは明るい男だった。「同乗してたhnzw主任も顎がかち割れて、たいへ…」一瞬、何かに気が付いたように言い淀む。「hnzwさん?主任?そんな人、いた?」

2019-12-24 09:46:59
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「あ、ああ…夢主さんが退職してから来た人だから知らないと思うよ…ええと、夢主さん…事故から…記憶障害とか聞いたけど?」「うん。だいぶ良くなったけど、まだ思い出せないことも多くて。事故前の記憶が二年くらい飛んでるの。ちょっとずつ戻って来てるみたいだけど」 「そう、なんだ……」

2019-12-24 09:46:59
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「sgmtくん知らない?私が、結婚してた間のこと。何でもいい。知ってたら教えて欲しいの。相手の人、どんな人だった?名前は?今、元気にしてる?」「…なんでそんなこと。ご両親に聞かされてないの?」 彼女は首を振る。両親の怒りが激しすぎて、いくら相手のことを訊いたところで不機嫌に

2019-12-24 10:50:33
森の☆ハルビエ @hanomorisann

口を噤むだけだったのだ。「ごめん。俺も知らない。でも、どうして会いたいの?……離婚って、向こうからの申し出と聞いてるよ」知ってる、と言いかけたところで、フラッシュバックのように記憶の一部を思い出した。二人で暮らしていたところ。テーブルに置かれた緑色で印字された紙。そして、

2019-12-24 10:50:33
森の☆ハルビエ @hanomorisann

既に片方に名前が書かれた氏名の記入欄。「私、別れない」熱いものが込み上げ、外気に冷えた頬を伝い落ちるのがわかった。「別れるなんて、絶対に嫌!」「…夢主さん?!」気が付くと道端にへたりこんでいた。心臓が激しく鼓動を打ち、走ったわけでもないのに息が切れはじめる。

2019-12-24 10:50:33
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「夢主さん?!」「だ…大丈夫。今ちょっとだけ昔のこと思い出したみたい」sgmtに手を貸してもらって立ち上がる。通行人たちが怪訝な顔をしながら通り過ぎていく。「…みたいだね。今、その時の事だったのかな?口に出てたよ」「…嘘」熱くなった顔に手をやると、指先が濡れていた。「泣いてる…?」

2019-12-24 10:50:33
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「うん。…家はどこ?心配だから送らせてよ」少し顔を青ざめさせていたsgmtの申し出を、夢主は断ったが彼も引かず、ついに押し負けた。結局、sgmtの車に乗せられ、途中にはお互いの近況を話の流れで伝えあった。去年、sgmtが交際していた、彼女の後輩の小蝶辺明日子と結婚したこともその時知った

2019-12-24 10:50:34
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「結婚式に夢主さんも呼びたかったけど、ご両親に、まだ本調子でないから遠慮してくれって言われちゃって」事故後は、過去の全てから両親は夢主を切り離した。「彼」を知っているものから、というのが正しいだろうか。早く忘れて、新しい家庭を作るべきだと何度も言われた。札束で追い払われるような

2019-12-24 10:50:34
森の☆ハルビエ @hanomorisann

仕打ちを受けた男など忘れてしまえと、何度も言われた。「お前と別れて、すぐに別の女と婚約したそうじゃないか。そんな男、忘れたままで良いんだよ」 でも、自分は彼をとても愛していたのだ。何もかも忘れてしまったのに、そんな記憶の欠片が、未だに彼に会いたいと思わせる。

2019-12-24 10:53:01
森の☆ハルビエ @hanomorisann

車の中で、sgmtは言った。「噂だけなら、その人の事は訊いたよ。確かに、あの後、結婚したって」「そう」sgmtの言葉に、夢主は頷いた。どんなに会いたいと思っていても、相手にとってはそれこそ前妻など過去の思い出だろう。胸の中にすきま風の吹くような感覚に夢主はため息をつく。もう諦めなければ…

2019-12-24 12:02:58
森の☆ハルビエ @hanomorisann

再び、彼女にとって無彩色の、日々変わりない日常が続く。朝起きて、仕事に行き、家に帰り、眠って、また朝起きる……。仕事先の清算場でレジを売っていると、精算台の上に商品の入ったカゴが置かれた。バーコードリーダーを手に商品コードをスキャンし、レジスターのモニターに映る金額と点数を

2019-12-24 12:02:58
森の☆ハルビエ @hanomorisann

機械的に読み上げる。中は食材が主だ。玉ねぎ、人参、鶏肉に……カレー粉、調味料もいくつかある。凝っているな、と思う。最近、カレールーを作るならブロックタイプを買うものだが、この家はルーから作るらしい。自分でも前に挑戦したことがある。その時のものが好評だったので、それからは…

2019-12-24 12:02:58
森の☆ハルビエ @hanomorisann

最近、でなくて普通の間違い…

2019-12-24 12:14:44
森の☆ハルビエ @hanomorisann

本格的なカレーの本を探したりして、オリジナルのルーとかも作ったような気がする。一瞬、手が止まってしまったのか、上から「すみません」と低い声が降りてきた。顔を上げ、視線がまともに合って息を飲む。

2019-12-24 12:45:54
森の☆ハルビエ @hanomorisann

向こうも驚いたように目を見開いている。黒目がちな奥二重の目元、眼窩に添うような特徴的な眉、両側を剃りあげて耳元から残る中心の髪をオールバックにした、個性的だが端正な顔立ちの、二十代後半ほどの男。両側にそれぞれ、頬を斜めに走る縫い傷がある。

2019-12-24 12:45:54
森の☆ハルビエ @hanomorisann

「あ…申しわけありません。お客様」我に返ると、金額を告げる。会社帰りなのか、男はスーツ姿だ。奇妙に思われたのか、恥ずかしくなるくらい夢主の顔を見つめてくる。お釣りを渡すとき、左の薬指に指輪が見えた。「奥様、ルーを粉から作られるんですね」照れ隠しに思わずそんな事を口走って

2019-12-24 12:45:54
森の☆ハルビエ @hanomorisann

しまうと向こうは目を丸くしていた。「いえ、作るのは私です」背が高い。きっと、耳を押し当てれば、ちょうど心臓の音がよく聞こえるはず……。レジ袋に入れられた食材を持って立ち去る彼の後ろ姿をなんとも言えない心持ちで夢主は見送った。

2019-12-24 12:45:55
森の☆ハルビエ @hanomorisann

その夜、久しぶりに夢主は離れていた実家に電話を掛けた。母親は体調や暮らしぶり、誰かそちらで良い人はできそうかと近況を聞きたがるのを遮った。「お願い。一つだけ教えて。あの人に特徴はあった?」途端に、静かになってしまう母親。「例えば……両方の頬に縫い傷があるとか」しばらく沈黙した後、

2019-12-24 13:47:19
森の☆ハルビエ @hanomorisann

母親が吹き出す気配がした。「何を言い出すかと思ったら…。そんな傷無かったわよ。どこのヤクザなのよ?」「母さんたちが、教えてくれないから……」「…もう、別の人と結婚してるのよ。忘れなさい」「忘れたいから、会いたいのよ。どんな人なの?名前は?会えないならせめて知りたいの。お願い――」

2019-12-24 13:47:19
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まとめたひと
森の☆ハルビエ @hanomorisann

旧名もりのはる。昭和生まれの♀。金カム・夢中心だけど雑垢(健全版)。日常あり。金カム垢歓迎、それ以外はブロ解。無言フォローお許しを。金カム垢さんのフォローはなるたけフォロバさせて頂きます🥰 アイコンはみそらーめんさん。最近はほぼタヌキ垢。 (@misokkasuramen)から💓💞