「それはラブホの話ですか」と彼が云うので蹴り飛ばしてやった。いやほらライトが雲まで届いているでしょう、あれですよ。彼は闇に浮び上がる山頂の建物を指す。確かにギラギラしているけれど。私はため息をつく。光り輝くシャンデリアの下、素敵なディナーなんて遠い夢。なのにあなたがいい、なんて。
2019-11-16 22:01:22濡羽色の髪も白い肌も。仄かに赤味を透かす唇も。 「地味な女だな。化粧くらいすればいいのに」 という同僚の言葉に俺は驚いた。俺の目には、彼女は光り輝くようであるのに。 「あなたは俺限定のかぐや姫か?」 頬を染めた彼女に、俺は我ながら鈍いと苦笑した。 「俺は、あなたが好きだ」 #140字小説
2019-11-16 22:03:56「迷った」「どんまい」缶片手に返すと彼女は唸る。「他人事みたいな」「私案内される側だし」「ぐ」プルタブを引く。かしゅ、と音がして、陽に光り輝くプルタブがくもる。「振り忘れたわ」「それ何」「コンポタ」「あー」でも美味しいよ、本当に。飲んで彼女を見やると、地図とにらめっこをしていた。
2019-11-16 22:08:08ずっと白馬の王子様を夢見ていた。それは言葉通りの意味じゃない。ただ、私を愛してくれる人が欲しかっただけ。「好きだよ」ホテルの前で躊躇う私に囁かれた愛は、驚くほど軽く、苛立ちが滲んでいる。安っぽいネオンに照らされた私の顔は、いま何色に見えているの?あなたの顔は、逆光でよく見えない。
2019-11-16 22:14:50「あなたはいつもそうだよね」 見慣れた癖や言い方を見つけると、私はいつもこう言ってしまう。ずっと一緒に付き添ってきて、何十何百と言い続けても、彼女がテンプレートのような返しを辞めない限り私は言い続ける そう、何年も経って結ばれた今日も、変わらずに 「…いつもそうだよね、"あなた"」
2019-11-16 22:20:55ホテルが見つからず、ネカフェに、と諦めかけた時、蛍のような光が目の前に浮かぶ。ふらふらとついて行った先は、墓地だった。賑やかに酒盛りが行われ、音頭取りは昔のクラスメートだった。デュエットしよう、笑う彼の姿は、みるみるキノコに変わっていった。そうか。今夜はハロウィーンだった。 pic.twitter.com/pYG7jtnmFy
2019-11-16 22:29:49○筆坂の部屋 PCの前、面白動画を見る筆坂。動画の横に白紙のWord文章。 無形の少女の声「そこのあなた」 驚く筆坂。 筆坂「動画の声?」 無形の少女「違う!動画の隣」 少女の声と同じ文字がタイプされる。 無形の少女「休憩も良いけど書きなさい。あなたにしか私は書けないんだから」
2019-11-16 22:40:50アイスホテルというのがあるんですよとかつてあなたはそういった。 私とあなたは敵同士だけれどもどこかしろ馬があった気がするけれども、 「綺麗ですよね」 私の目の前でアイスホテルが大爆発する輝いた氷輝いているあなたの顔。 「何故」 爆破したと問えばあなたは笑う。 「あなたと見たくて」
2019-11-16 22:47:58仕事の帰り道から見ていた、怪しく輝くラブホテルのネオン。 あなたの隣で、こうやって真近で見ると光り輝いて見えるから不思議だ。 「行こうか…。」 握った手から緊張が伝わってくる。 それでも、少しだけ先を歩こうとしてくれる、あなたが愛おしい。 「うん…。」 一言返し、あなたの手を握り直す。
2019-11-16 22:57:21