「…来ちゃった」 (ちょっと加筆修正したものを、まとめ本に収録)
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めしこ @mogmog_meshiko

燭へし書いてる20↑/まもなく脱走しそう https://t.co/PEdidAAvwW

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毎年恒例、気を張り続ける二日間の出張がようやく終わった。 長かった、とにかく長かった、この木曜日と金曜日の二日間。 いくらこの二日間が通常の業務日と言えども、その疲労は通常の比ではない。 この二日間のために、わりと無理矢理に水曜日に締めてきた仕事と、 ↓

2019-10-27 22:04:58
めしこ @mogmog_meshiko

その続きが待っている月曜日を思うと憂鬱で仕方がないが、今は気にしないように必死に頭の端っこに追いやる。 二日目の昼食が終わり、出張の全ての行程が終了して、会社への報告も済ませた。 会社から遥かに離れた県外…京都への出張のため、今日はさすがに直帰だ。 ↓

2019-10-27 22:05:45
めしこ @mogmog_meshiko

会社から貸与されている携帯を鞄に放り込んで、俺は私用の携帯のメッセージアプリを開く。 『いま終わった』 メッセージの送信先は、いつも通りに仕事をしているであろう恋人へ。 俺がこの二日間の出張を憂鬱にしていたことを、恐らく誰よりも知っているのはこの男だ。 ↓

2019-10-27 22:06:30
めしこ @mogmog_meshiko

一応、無事に終わったことを報告しておく。 メッセージはすぐに既読になった。 昼休憩中だろうかと思っていると、携帯の画面は受電画面に変わった。 「もしもし?」 「あ、長谷部くん?急にごめんね、いま大丈夫だった?」 「あぁ、もう解散したから。どうしたんだ?」 ↓

2019-10-27 22:07:12
めしこ @mogmog_meshiko

「もう解散したってことは、これからお土産買いに行くところ?」 「そのつもりだ」 せっかく遠出していても、出張中だとゆっくり土産を見る暇もない。 これも例年のことなので、すべての行程が終わったあとに、会社用と、光忠用にいくつか土産を見繕ってから、新幹線のチケットを取る予定だった。 ↓

2019-10-27 22:07:51
めしこ @mogmog_meshiko

「あのね、実は買ってきてほしいお土産があって…」 わざわざ電話をしてきて、何かと思えば土産のリクエスト。 二日間ずっと張りつめていた緊張が一気に解けた気がして、思わず吹き出した。 電話の向こう、遠く離れた地に居るとんでもなく伊達男の恋人が、不満そうに話を続ける。 ↓

2019-10-27 22:09:08
めしこ @mogmog_meshiko

「ちょっと、笑わないでよ」 「いや、悪い。おかげで気が抜けた。それで、どこにあるんだ?それ」 「えっとね、長谷部くん今どこにいる?」 「新幹線の乗り口。ちょうど取引先を見送ったところだから」 「中央口?」 「あー、そう。中央口」 何かで調べながら、話しているのだろうか。 ↓

2019-10-27 22:10:08
めしこ @mogmog_meshiko

俺がちょうど立っているのは、光忠の言う通り、中央口の新幹線乗り場だった。 「そこの中央口の近くに、大きな百貨店が無いかな?」 ずしりと重い出張鞄を持ち、歩き出す。おそらく勘違いじゃなく、身体が重くて怠い。昨日は遅くまで接待で飲んでいたので、間違いなく原因はそれだ。 ↓

2019-10-27 22:11:02
めしこ @mogmog_meshiko

シメのラーメンまできっちり付き合ったので、まったくもって不健康極まりない。 光忠に知られたらお小言をくらいそうだなと想像していると、どうしようもなく早く家に帰りたくなる。 団体の海外旅行客を避けながら歩くと、有名百貨店の名前が目に入る。 「あぁ、あった」 ↓

2019-10-27 22:11:51
めしこ @mogmog_meshiko

「そこの地下二階にあるお店なんだけどね、京都限定の抹茶味の焼き菓子があるんだ。それ食べてみたいなって思って」 「ふーん、じゃあ買って帰る。会社のやつにはどうするかな」 「八つ橋じゃちょっと、ありきたりな感じがしちゃうよね。美味しいんだけど」 「そうなんだよな」 ↓

2019-10-27 22:13:21
めしこ @mogmog_meshiko

さすがに電話をしながら店に入るわけにはいかない。 さっさと買い物を済ませて、新幹線に乗り込んで帰ろうと、口を開いた時だった。 「「長谷部くん」」  光忠の声が、重なる。俺の携帯から聞こえた声と、反対の耳から聞こえた、声。 ↓

2019-10-27 22:13:53
めしこ @mogmog_meshiko

俺はあまりに驚いて、油が足りていないブリキのおもちゃみたいに、ギシギシという音が聞こえそうな動きで、振り返った。 「みつ、ただ…?」 「…来ちゃった」 照れくさそうに、ふにゃりと笑う。 秋物のロングカーディガンに、スキニーパンツにお気に入りのスエード地の靴。 ↓

2019-10-27 22:14:51
めしこ @mogmog_meshiko

頭のてっぺんから靴の先まで、どこからどう見てもそれは光忠だった。 「な、んで…?」 「昨日、いつも通りに仕事してたんだけど、今日家に帰っても長谷部くんいないんだなって思ったら、何だか寂しくなっちゃって。そういえば有給消化しろって、上司からも言われてたなって、それで」 「それで?」 ↓

2019-10-27 22:16:07
めしこ @mogmog_meshiko

「今日、お休みを貰って…来ちゃった」 そう言う光忠は、どうにもばつが悪そうな顔をして、まるで悪戯がばれて叱られている子供のようで。 何をそんなに不安そうな顔をする必要があるんだろうか。 こんなことをされて嬉しくないやつなど、いるのだろうか。 「そのスーツケースは?」 ↓

2019-10-27 22:16:54
めしこ @mogmog_meshiko

「あ、えっと…せっかく来たならお土産いっぱい買いたいなって。それで長谷部くん、疲れてると思うんだけど、ちょっとだけでも一緒にどこか回れたら嬉しいなって、思って」 さっきまで確かに感じていた疲労は、どこかに飛んで行ってしまった。 今からどこにでも行けそうなほど、俺の身体は軽い。 ↓

2019-10-27 22:18:08
めしこ @mogmog_meshiko

「じゃあどこか行くか、まだ昼回ったばっかりだからな。スーツじゃなければ、今日泊まって色々回っても良かったんだけどな」 二日間の出張、さすがにスーツと一日分の下着しか持ってきていない。 まぁ、今日の午後だけでも観光できれば十分だろうと思っていると ↓

2019-10-27 22:18:55
めしこ @mogmog_meshiko

「…あの、実は、スーツケースの中に、長谷部くんの私服が二日分入っていたりして」 「……」 「いや、あのっ本当に全然、疲れているだろうから…私服持っては来たけど、どこかちょっと回るだけで今日帰れば良いし、土日一緒に家でゆっくり出来れば…」 「…ははっ、おまえ本当に最高だな!」 ↓

2019-10-27 22:20:19
めしこ @mogmog_meshiko

あまりに完璧なエスコートに、俺は思わず光忠に飛びついた。 ふらつくこともなく、しっかりと受け止めてくれる男に敵う気がしない。 言うまでもなく、ここは駅前の往来だが、出張でハイになっているということで、少しだけ大目に見て欲しい。 「どこ行く?清水寺ってまだ工事してるんだったか」 ↓

2019-10-27 22:21:43
めしこ @mogmog_meshiko

「でも確か、上には上がれるんじゃないかな」 まずは、この重苦しいスーツを脱いで私服に着替えよう。 今日泊まるホテルを確保して、荷物を預けたら二人で出掛けよう。 光忠が言っていた限定の焼き菓子は、明日帰り際に買って行くことにしよう。会社のやつらへの土産も少し奮発してやることにする。 ↓

2019-10-27 22:23:33
めしこ @mogmog_meshiko

俺からの幸せのおすそわけだ。 明日の終わりまでたっぷり観光したら二人で家に帰って、日曜日はゆっくりと家で過ごせば、なんて完璧な休日だろうか。 心も身体も、秋晴れのように晴れやかで軽かった。 「あ、そうだ」 「ん?なんだ」 「おかえり、長谷部くん」 「…あぁ、ただいま」 ↓

2019-10-27 22:24:55
めしこ @mogmog_meshiko

お泊まり出張お疲れさま!な長谷部くんの燭へしでした~! 出張行く前にはこんなものを書いていたので、続きのようなそうでもないような🐹↓ twitter.com/mogmog_meshiko…

2019-10-27 22:27:07
めしこ @mogmog_meshiko

明日から泊まりの研修で 荷造りしなきゃなんだけど めちゃくちゃ面倒なので、 出張に行かなきゃいけない 長谷部くんの荷造りの邪魔したり 夜更かし(意味深)させたりして でも翌朝ちゃんと駅まで車で送る 長船光忠の話でもする???

2019-10-23 20:40:08
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まとめたひと
@mogmog_meshiko

今日も、明日も、燭へし書くよ。