ししょーとたちひスピンオフ
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@heyheyhatch

むかしむかしあるところに太郎という青年がいました。太郎は魚が大好きで、こと漁に関しては村中の者が舌を巻くほどでした。毎日海へ出ては魚をとって暮らしておりました。

2021-10-02 13:31:05
@heyheyhatch

太郎には、おちよ という嫁と、3人の子供達がおりました。太郎は怠けずよく働く青年でしたが、あまりに魚が好きなので、おちよは時たま「この人はこんなに魚ばっかり食べて魚になりゃしないだろうか?」と心配になる事がありました。

2021-10-02 13:40:20
@heyheyhatch

ある日、太郎がその日の漁を終えて帰ってくると、村人たちがざわついておりました。「何かあったのかい」太郎が聞くと、「人魚だと」「孫次郎が獲ったんだ」と村人たちが興奮した様子で話しました。

2021-10-02 13:50:42
@heyheyhatch

「人魚だって?」稀に人面の魚が上がることがあるという話は昔から村に伝わっており、太郎も噂は聞いたことがありました。ですが、これまでたくさんの魚を獲ってきた太郎でもさすがに見たことはありませんでした。

2021-10-02 22:40:29
@heyheyhatch

「どんな味がするんだろうナァ。珍しい魚なら食ってみたいな」「何を馬鹿なこと言ってんだよ、村長が天災の前触れだって言ってたぞ」「くわばらくわばら」村人たちが太郎をたしなめました。「その人魚は今どこにあるんだい?」「孫次郎が持って帰ったよ。珍しいから干物にしてお上に献上するらしい」

2021-10-02 22:46:55
@heyheyhatch

その事を聞いた太郎は、家に帰っても人魚のことが気になって仕方がありませんでした。いつもと違う様子の太郎をおちよは心配しましたが、何を聞いても上の空で生返事をするばかり。「どんな姿だろうか?どんな味がするんだろうか?」太郎の頭の中は見たことのない魚のことでいっぱいです。

2021-10-02 22:56:34
@heyheyhatch

夜も人魚のことを考えると眠れません。とうとう太郎は我慢ができなくなり、こっそり家を抜け出して孫次郎の家に忍びこみました。「干物にすると言っていたから外にあるはずだな」太郎の見立て通り、人魚は裏庭に干してありました。「一目見るだけだ」

2021-10-02 23:04:30
@heyheyhatch

人魚を見た太郎はびっくり。想像より小さく、人の顔というよりは猿の顔のようです。体は腕のような長い胸びれがついている以外は普通の魚のようですが、こんな奇妙な生き物は見たことがありません。太郎はすっかり夢中になってしまいました。

2021-10-02 23:19:37
@heyheyhatch

見ているとやはり味が気になってきます。「少しだけならいいだろう」太郎は持っていた小刀で人魚の目立たない部分を少し切り取り、食べました。「なんだこれは!」あまりの美味しさに太郎は仰天しました。「こんな美味い魚食べたことがない」

2021-10-02 23:29:26
@heyheyhatch

ふと気付くと、太郎は人魚をほとんど平らげていました。「しまった。少しだけ味見するつもりだったのに」後悔しても人魚は太郎の腹の中です。「朝になって人魚が骨だけになっていたら村中が大騒ぎになるぞ」焦った太郎は、人魚の骨を海に捨ててしまいました。

2021-10-02 23:46:17
@heyheyhatch

翌朝、人魚が消えた事はちょっとした騒ぎになりましたが、皆すぐに人魚の事は口にしなくなりました。跡形もなくなっていた事が不気味だったのです。自分が食べたのがばれるんじゃないかと内心びくびくしていた太郎は一安心。「孫次郎には悪い事をしたがこのまま黙っていよう」

2021-10-03 00:11:16
@heyheyhatch

それから月日が流れ、村人たちも太郎さえも人魚のことをすっかり忘れてしまった頃、おちよは妙なことに気がつきました。太郎の姿が若いまま変わっていないのです。自分の手の甲は皮膚がたるみシワがあるのに、太郎の手はつるつるです。手だけではなく、顔にもシワひとつありません。

2021-10-03 09:22:44
@heyheyhatch

「あんた何か様子がおかしいよ」おちよが心配しました。「何かの病気なんじゃないかい?」しかし太郎の体は健康そのもの。心当たりもありません。「不思議だなあ」子供たちが大きくなっても太郎の姿は若々しく、ついには子供たちの方が太郎より歳上に見えるようになってしまいました。

2021-10-03 09:33:46
@heyheyhatch

こうなってくるとおちよだけでなく村人たちも心配します。「呪いじゃないか?」「太郎さん、本当に心当たりはないのか」「変なもの食ったとか」そう聞かれて太郎はハッと思い出しました。「そういえば昔人魚を食べたことがある!」「人魚って孫次郎が獲った人面の魚かい?」

2021-10-03 09:37:25
@heyheyhatch

「あれが消えたのは太郎が食ったからだったのか!」「すまない孫次郎。どうしても味が知りたかったんだ」すっかりおじいさんになった孫次郎も、これには呆れ果ててしまいました。「きっとそのせいだ。人魚に呪われたんだ」

2021-10-03 09:45:48
@heyheyhatch

村人たちは知恵を出し合い、医者や陰陽師を呼びましたが、誰にも太郎の呪いは解けませんでした。太郎の孫たちが大人になっても太郎の姿は人魚を食べた時のまま。おちよや孫次郎は死んでしまいました。

2021-10-03 09:50:43
@heyheyhatch

好奇心だけで行動すると、痛い目を見ることがあるのです。太郎はそれを思い知り、後悔しながら呪いを解く方法を探し続けたといいます。おわり

2021-10-03 09:55:33

@heyheyhatch

「人魚の肉を食べた太郎」がお前以外にいてたまるかという話だが、実際めちゃくちゃ脚色されている可能性はある pic.twitter.com/RqN3D7VGEF

2021-10-03 10:04:17
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まとめたひと
金本鉢 @hatchnoe

@heyheyhatch の絵だけを上げるところ/一次創作「ししょーとたちひ」→ min.togetter.com/0XHN0Ho/二次創作は稀です