お題「便箋」「椛」「ATM」
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RAY/※※※ @growler_ray

あなたに送った便箋は、私が作った世界でたった一つの特別なもの。あなたが下手だなんだと散々小馬鹿にしてきたそれを、あなただけに送ったの。 届いてるといいな、読んでくれるといいな。私のあなたへ向けた大切な気持ち。 AIに支配されたこの世で、自由に気持ちを伝えられるのはこれだけだから、ね。

2019-11-09 22:01:12
空川実栄 @sorakawa_mie

彼女は便箋を封筒に入れた。「終わった」「早い」得意げな彼女を前に、私は頬杖をつく。「送り相手の目の前で手紙書くとかさあ」そうぼやくと、彼女は封筒を私の頭に軽く乗せる。「楽しいね」「私は苦しい」「あとで何か奢るからさ」私は顔をしかめ、消し跡の残る便箋に目を凝らした。ごま団子がいい。

2019-11-09 22:01:45
花滝ちかる @chikaru_toka

海外勤務が決まった時、僕を選んでと言えずに恋人と別れた。 季節は巡り、届いたエアメール。ただ白い便箋に、深紅のもみじが挟まれていた。 でも、僕は日本へ向かった。きっと、君なんだ。そしてきっと… 「僕を選んで」 やっと言えた。もみじのような小さな手の、赤ちゃんを抱いた君に。 #140字小説

2019-11-09 22:04:31
宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

燃える様な色を湛える椛(もみじ)の葉をそっと忍ばせ、便箋と共に封をした。 びょう、と風が髪を凪ぐので、私は封筒を持った手で、貴方のくれた髪留めを押さえる。 はしゃぎ声を上げる子供が道を走るよりも風は速く、私は貴方と子供の声に置いていかれた気がした。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/3HABRmtXhb

2019-11-09 22:09:41
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津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

便箋には心を零せなかったから、代わりのものを送ったわ。それだけ云って、彼女は電話を切った。届いた椛は愛らしい赤ん坊の手のようにも、長い爪を持つ悪魔の手のようにも見えた。僕はそれをATMで紙幣と共に預け入れる。どうしたらいいのか分からないまま、思いは口座に貯め込まれていく。

2019-11-09 22:19:07
秋月蓮華 @akirenge

深夜、便箋に手紙を書いて椛を同封する。ポストにいれた。あなたがいるところは紅葉が終わったときいている。私のところは紅葉が始まったばかりで――。 「え?」 帰ろうとしたらATMがショベルカーに襲われてんだけど、つまりは強盗。私のしんみりしていた気持ちを返して! まずは警察に連絡よね。

2019-11-09 22:36:56
秋風もふ @akikaze_mohu

あなたに伝えようとしたことがあったんだよ。あなたの、私に見せない表情を見てしまったんだよ。言葉が見つからなくて、くしゃくしゃにした便箋。封筒には椛の一枚だけ。忘れてくださいとか、会いたくないとかそんな言葉すら書けなかった。消したくない、もう少しだけ手を繋ぎたかっただけ。さよなら。

2019-11-09 22:59:06
松岡 9JIRA @aoarup

○公園   紅葉する公園。教授と人型ロボがベンチに腰掛ける。   教授、缶ビールを飲む。 ロボ「『もみじ』ハ『揉み出づ』ノ動詞ガ変化シテ……」 教授「お前も飲めよ」 ロボ「結構デス」   教授、頬を指す。 教授「俺の顔も椛(もみじ)色たぞ」 ロボ「ソレハ、アセトアルデヒドヲ分解ス……」

2019-11-12 22:28:30