星が輝く空の下には魔法がかかるらしい。月明かりに照らされた海の水面に浮かぶ泡。その泡の一つ一つに世界があっていつしかそれは「泡沫の国」と呼ばれるようになった。「父ちゃん、それは本当なのかい?」まだ六つの息子が問いかける。「確かめに行ってご覧」満月の下、一人の子供が海へ駆け出した。
2019-03-23 22:00:54高名な彼の家には、おびただしい数の五芒星が書かれている。その中で、彼は不思議な力を用い、死者との会話を行う。さぞかし立派な方なのだろうと、村人は彼を崇め、玄関に彼と同じ逆向きの五芒星を書いた。これで安泰だと喜ぶ彼等に、彼は笑顔で告げる。 「五芒星は、反対に書くと悪魔を呼ぶのです」
2019-03-23 22:02:08バッグいっぱいに缶バッチをつけたあの子は目を星のように煌めかせ、泡沫の国の王子様を語る。そんな触れられもしない相手がいいのって、云ってやりたいけど、きれいにデコレートされた目の前の爪にすら手を出せない私に、それを口にする資格はないね。彼女の眸に映る私、今、シャンパンみたいに弾け。
2019-03-23 22:02:26一時帰国した父が異国で買ってきた缶バッチに、見知らぬ島国が描かれていた。不思議なことに、ここには時間が流れる。昼は瑠璃の海、夕方は橙を零した空、夜は白く灯る星。ある日、鈍色を残して島国が消えた。単身赴任先で内戦が始まり、父が帰国したのと同時期に。泡沫の国は今、引き出しの奥で眠る。
2019-03-23 22:04:17○難アニショップ 佑(15)、溜息。手にロボット・マグオンの缶バッチ。 愛「マグオン出ない」 泣く愛(9)の姿。手に魔女・マジカナの缶バッチ。 佑「マジカナ?」 突然、バッチから飛出すマジカナとマグオン。睨み合うが、握手し消える。 愛の前に佑。 佑「交換しよ?」 愛「うん」
2019-03-23 22:05:43「これやる、ウチの店の缶バッチ」 奴がくれたバッチを着けて歩いている。全く懲りない奴だ、始めて走っては閉めて、また次を始めて、つど要所で俺を巻き込む。もしフツーに考えればわりと迷惑。でもそうじゃねぇ。泡沫の国と笑うなら赦さん。星が瞬くように奴も瞬く。俺はそれを手伝う。それだけ。
2019-03-23 22:06:37#深夜の真剣140字60分一本勝負(@140onewrite ) #140字小説 pic.twitter.com/CofysnwGH2
2019-03-23 22:12:29妹みたいな子だよと、貴方が言っているのを聞いてしまったから。 「お兄ちゃん」 こう呼ぶのも、子供みたいな我が侭も、最後にするの。 「あの星を取って頂戴」 「無茶言うなあ。違う物で我慢してくれないかな」 次の日貴方が私に届けてくれたのは、どんな星よりも綺麗なダイヤモンド。 #140字小説
2019-03-23 22:12:49#深夜の真剣140字60分一本勝負(@140onewrite ) #140字小説 pic.twitter.com/O4HfglE5H5
2019-03-23 22:12:59星が瞬く日のどこかに落ちていると噂される泡沫の国への入国証 それはただの汚い缶バッジだった こんな粗末なものが? 不安とあっけなさを感じつつ右手の鞄へ付ける 午前零時にその扉は開くらしい 腕時計とにらめっこする 秒針が私を嘲るかの如く見上げる 刹那 お気に入りだった鞄は忽然と消えた
2019-03-23 22:19:28満開の星空の下で穴を掘っていた僕は手を止める。 十二分に掘れた。 「掘り起こそうね。絶対」 君は抱えたスノードームを、僕は缶バッジを金属容器の箱に入れた。 「行こうか」 「世界を守って、救いにね」 これから、別の星からやってくる化け物と僕らは戦う。 絶対に泡沫の国には、させない。
2019-03-23 22:24:23夢を詰めた風船が割れる 弾け飛んだ宝石と約束、ボクは掴んでいたはずの星を空の海へと返してしまった 鞄に付いてる缶バッジの数だけ、キミを思い出せるよ あぁ、誰も見ていないのだから、この声をキミに渡せたらと叫ぶ 咽び鳴く キミを失った世界に価値を見出すのは、泡沫の夢の確率 覚めない夢の
2019-03-23 22:48:08