ep2 街の外れにある、小さなカフェ そのカフェのまだ若いマスターから 「来週から新しいバイトの子来るから」 って告げられた時には、誰がこんな未来を予想しただろうか。 #カフェ未知
2020-11-12 22:31:25ep3 はじめまして。高校1年生の佐藤璃果です。 進学する大学が早い段階で決まっていた自分が、このカフェでアルバイトを初めて少し経った4月の終わり 少し前に先輩が1人アルバイトを辞め、僕一人になっていた頃だった #カフェ未知 pic.twitter.com/COit32soX5
2020-11-12 22:31:34ep4 璃:アルバイト経験は無くてここが初めてなので、初めは至らない点も多いと思いますが、よろしくお願いします 最初の印象は、真面目ないい子 そして儚さを持ってるだった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:31:41ep5 案の定僕がおおまかな仕事を教えることになった。 基本的に広いカフェでは無いので、一人ひとりが色んな仕事をこなして行かなければいけなかったので、初めてのアルバイト先にしては難易度ば高いと思う。 現に僕がそうだった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:31:48ep6 それでも彼女は真剣に話を聞き、メモを取り、そして主体的に動いていた 土曜の午前ということもあってかお客さんが少し多く、たくさん実践が出来たということもあってだろうか、初日の昼過ぎにはホールの仕事はかなりできるようになっていた。 #カフェ未知
2020-11-12 22:31:54ep7 ○:璃果ちゃん、休憩しよっか 璃:あ、はい。 ○:お昼時はだいぶすぎちゃったけど、お腹すいたでしょ。なんか食べる? 璃:えっと。 ○:メニューにあるやつならなんでもいいよ、無いやつでも何とか出来そうなものなら。 #カフェ未知
2020-11-12 22:32:02ep8 璃:じゃあ…ジェノベーゼで。 ○:なんか乗せたりする? 璃:えっと…トマトとか乗せてもらってもいいですか…? ○:あー美味しいよね、分かった 璃:ありがとうございます #カフェ未知
2020-11-12 22:32:07ep9 ○:にしても初めてでジェノベーゼって、めずらしいよね 璃:友達にもよく物好きだねって言われます ○:カウンター空いてるし、エプロンだけとって座って待ってて 璃:ありがとうございます #カフェ未知
2020-11-12 22:32:14ep10 しばらくしてできたジェノベーゼを出すと、綺麗に食べ始めた。 調理場をマスターに任せて自分も佐藤さんの隣で頂くことにした。 少し話をしたが、笑顔で美味しいと言って貰えたのが嬉しくて仕方なかった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:32:22ep11 佐藤さんの何回目かのバイトから、少しずつ調理も教え始めた。 家でも料理することはあるようで、練習がてら作る賄いも上出来で、まだまだ種類は少ないものの早い段階でお客さんに提供できるようになった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:32:27ep12 その頃に呼び方が佐藤さんから璃果ちゃんになった ○:璃果ちゃんもさすがにそろそろ慣れてきたでしょ。前よりも笑顔が増えたよ 璃:ほんとですか!早く先輩みたいになんでも出来るようにならないとです! ○:すぐ越えられそうだね なんてたわいのない話が増えたのは嬉しかった #カフェ未知 pic.twitter.com/POTo53Zf7Z
2020-11-12 22:32:36ep13 璃:○○さんそろそろ休憩入ってください。なんでも作りますから! ○:え〜っとじゃあ。ペペロンチーノで 璃:了解ですっ!とびっきり美味しいの作ってあげますね! ○:ありがと、ちゃんとお客さん優先ね 璃:そのくらい分かってますよ〜! #カフェ未知
2020-11-12 22:32:41ep14 気がつけばお互いに賄いを作るようになった。 ○:ん、今日の美味しい 璃:○○さんベーコン好きでしょ?こっそりと増やしときました ○:後ろでマスターが聞いてるけどね? 璃:ええっ! #カフェ未知
2020-11-12 22:32:48ep15 マ:璃果ちゃんと給料から引いとこっかな 璃:せめて○○さんのから! ○:なんでだよ マ:冗談だから、その辺は自由にやってよ 璃:もうマスター…。 ○:しょっちゅうマスターに虐められてるよね 璃:ほんとですよ。 #カフェ未知
2020-11-12 22:32:58ep16 マ:○○くん給料減額ね。 ○:ちょっと! 璃:その分を私に ○:おいてめぇ。 璃:てめぇってなんですか! マ:うるさい。 璃・○:すいません #カフェ未知
2020-11-12 22:33:05ep17 こんな感じで、日に日にバイト先のカフェは僕にとって居心地のいい場所になっていった。 大学で何かあっても、カフェにこれば何もかも忘れられるくらいだった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:33:13ep18 少し日がたった正月頃 璃果ちゃんの提案によって、「正月×映え」を意識したスイーツが作られ始めた。 璃果ちゃんが主導となりいくつもの試作を経て辿り着いたのは、抹茶味の門松ケーキだった #カフェ未知
2020-11-12 22:33:22ep19 1/1~1/7までの限定販売だったものの、独特のセンスと細部まで作り込まれていた事で、想像を遥かに上回るヒットとなった。 これを機に隔月で期間限定メニューが開発されるようになった。 客足は指数関数的に増えて言った。 #カフェ未知
2020-11-12 22:33:29ep21 璃:私、こうやって料理とか、スイーツとかを作ってお客さんを笑顔を見るのがすごい嬉しくて。けど自分の腕はまだまだなので…。専門学校とかで勉強しようかなって考えたりしてるんですけど。どうだと思います? #カフェ未知
2020-11-12 22:33:40ep22 ○:どうって言われても難しいし、無責任なことしか言えないけど…。目指したい何かがあるなら僕はそれを全力で応援するよ。 璃:○○さんって、優しいですよね…。 #カフェ未知
2020-11-12 22:33:45ep23 ○:とんだクズ野郎かもよ? 璃:え〜、それはやです。 ○:僕もやだよ 璃:ねぇ先輩…? ○:ん? #カフェ未知
2020-11-12 22:33:50ep25 ○:…うん…。高校生と大学生でしょ…?僕捕まりたくないしなぁ。ちょっとだけ迷惑かも。 璃:ですよね… ○:璃果ちゃんが高校を卒業した後なら…なんて。冗談だよ。ごめん。とんだクズ野郎だったね。 璃:そんなことないですよ。○○先輩は、優しい人です。 #カフェ未知
2020-11-12 22:34:00ep27 そんな話から少し経ってから、璃果ちゃんがバイトを辞めることが決まった。 それと同時に期間限定メニューも終了となることも決まった。 最後は原点の門松ケーキ 期間も前回と同じだった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:34:11ep28 璃:今までありがとうございました。とても貴重な経験を沢山… 1月の終わり頃 最後の挨拶をする君の表情に寂しさはなく、僕なんかよりしっかりと前を見据えていた #カフェ未知
2020-11-12 22:34:15ep29 なぜだか僕が泣けてきて、璃果ちゃんにそれが見つかると 璃:ちょっと○○さん!?なんで泣いてるんですか! って言って君も少しだけ泣いた #カフェ未知
2020-11-12 22:34:20ep30 期間限定メニューの終わりとともに少しづつ客足は減り、店内から賑やかさが無くなっていった そして僕の心にもなんだかぽっかりと穴が空いてしまったみたいだった #カフェ未知
2020-11-12 22:34:30ep31 たまに璃果ちゃんがお店に来ることはあったが、昔よくお昼を共に食べたカウンターの端ではなく、奥の二人がけのテーブル席に、こっちに背中を向けるようにして座っていた。 専門分野について必死に勉強していて、来店と退店のとき以外は基本的に言葉を交わすことは無かった #カフェ未知
2020-11-12 22:34:35ep32 そんなある日偶然あるノートを見つけた。 何度も伝票で見た璃果ちゃんの字で書かれたノート そこにはこれまでのスイーツメニューのレシピ、そして新たなレシピが事細かに書かれていた マスターに一言声をかけ、そのノートを持ち帰らせてもらった #カフェ未知
2020-11-12 22:34:39ep33 そこから僕の日常が変わった。 大学とバイトのないときはひたすらレシピとにらめっこをし、実際に作ってみては首を傾け、新しいノートにメモを残し改めて作る。 その繰り返しだった。 #カフェ未知
2020-11-12 22:34:43ep34 そのせいで体調を崩してバイトを休ませてもらうこともあったが、そんな日でもスイーツの試作は止めなかった。 数ヶ月続けてようやくあの味に近づいてきた。 僕はレシピのページを1枚めくった #カフェ未知
2020-11-12 22:34:47ep35 とある土曜のお昼すぎ 璃果ちゃんがいつものように来店し、奥のテーブル席に座る 大丈夫だ。これまでしっかりと準備してきたんだ。 緊張の瞬間だった。 ノートなどを片付けて、レジの方へ来た。 ○:璃果ちゃん、ちょっと時間いい? #カフェ未知
2020-11-12 22:34:52ep36 璃:先輩、遅くないですか? ○:しょうがないじゃん。スイーツなんて作ったことないんだから。 璃:そんなんだろうと思って、新作メニューは比較的簡単なやつにしといたんですよ? こいつ、言ってくれるじゃねぇか… #カフェ未知
2020-11-12 22:34:55ep37 璃:先輩のことなんで、これにも1週間くらいかかったんでしょ? ○:もうさ、なんでそんなことまで分かるんよ。 璃:女の勘です ○:お手上げです 璃:でもこれで、期間限定メニュー復活できますね ○:にしてもなんだよこのスイーツ #カフェ未知
2020-11-12 22:35:00ep38 璃:書いてあるでしょ?リアル柿ゼリーです。 ○:独特すぎるって。作りにくいったらありゃしない。 璃:先輩の腕の問題ですよ。 ○:グランドメニューにもスイーツ復活させないとね。 璃:お仕事増えますね。お疲れ様です。 #カフェ未知
2020-11-12 22:35:04ep40 しばらくして、璃果ちゃんの言葉通り期間限定メニューが復活した。 そして店内に賑やかさが戻ってきた。 それと同時に璃果ちゃんが店に足を運ぶ頻度が減った。 #カフェ未知
2020-11-12 22:35:10ep42 ○:どうしました…? マ:まずさ、来年で○○君も大学4年生になるでしょ? ○:そうですね。 マ:進路とかって決めてるの? ○:正直な話、まだ決めかねてるとこも多いというか…。 #カフェ未知
2020-11-13 22:31:27ep44 マ:君の住んでる隣町に、2号店をオープンさせようかと考えてる。時期はちょうど君が大学を卒業した来年4月ごろ。カフェ仲間というか、知り合いがいたんだが。私用で続けられなくなってしまったみたいで。テナントを安く譲ってくれると言うんだよ。 #カフェ未知
2020-11-13 22:31:38ep45 マ:経営とかその辺の話は私に全部任せてくれて構わないし、ある程度好き勝手してもらっても構わない。将来を決めかねてるのなら、一つ案として持っていて欲しい。ただ、テナントを借りるのかどうかの返答もある。申し訳ないがあまり時間も長くは取れない。 #カフェ未知
2020-11-13 22:31:43ep47 それから1週間ほど悩み続けた。 大学にいてもバイトをしていても、マスターの言葉が頭の片隅にあった。 正直長くここのカフェで働いてる身としては、ここを離れてしまうのは寂しかったし、特に夢なんかもなかった自分にとってはいい話ではあった。 #カフェ未知
2020-11-13 22:31:55ep48 しかし、カフェのオーナーというものに対する知識は一切なく、いくらマスターが助けてくれると言っても不安しか無かった。 自分なりに調べたりもした。 両親に相談もした。 ただ、結局のところ最後は自分次第だ。 #カフェ未知
2020-11-13 22:32:00ep49 ○:マスター。この前の話なんですが… マ:あぁ、決まったかい? ○:はい。 僕にやらせてください。 #カフェ未知
2020-11-13 22:32:06ep50 そこからは普段見ることのなかった、マスターの仕事も学び、これまで以上に忙しい日々になった。 この店での3度目の年末年始を今年も何とか無事に終わらせることが出来た。 #カフェ未知
2020-11-13 22:32:16