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ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

#金カ夢 #ogt 前に書いたものの焼き直し再び。夢主は気の強いクールビューティ。しかも難攻不落の城の如き身の固い女だった。社内で気にする男は数あれど、決してなびかないその態度。けれども、そんな彼女にも恋人がいた。同僚のogtである。

2020-08-24 17:38:45
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

それまで夢主は、気の強い自分とは誰も合わないと思っていた。この分だと結婚はできないな、と諦めていたのに、不思議なもので、ogtとは時折喧嘩しながらも、二年ほど続いていた。互いの家に泊まるのも多く、同棲、その先の結婚、という言葉も脳裏にちらつき始めた頃、彼の海外赴任が決まった。

2020-08-24 17:38:45
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

これを機に、何か動きがあるかもと思っていた矢先、彼の部屋の片隅に、小さな小箱を見つける、ogtが所用でコンビニに出掛けた時のこと。どうしても気になって、そっと包装を開くとそこには、夢主の薬指ぴったりの、ダイヤの指輪。息を飲みながら、丁寧に包装を戻し、リボンも元通りにしておいた。

2020-08-24 17:38:46
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

考えてみれば、家具の後ろにそっと隠してあった様子。夢主は元の位置に戻し、その日は素知らぬ顔をして二人過ごした。彼はいつそれを取り出すのだろう?自分に渡すのだろう?と胸ときめかせながら。ところが……。

2020-08-24 17:38:46
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

仕事が忙しくなったのか、ogtとなかなか会えなくなった。SNSも電話も返事が戻るのが遅くなり、同じ会社であるにもかかわらず、ほとんど顔を合わせることもなくなってしまった。彼が赴任先のNYへ行ってしまう日も近い。夢主は焦った。

2020-08-24 17:38:46
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

プロポーズいつするの?いつしてくれるの?もう待てない。焦るあまり、暴走する夢主。ついてこいと言うなら絶対に行くし、慌てて英会話教室にも通い始めた。途中、上司から呼び出され、見合い話を持ちかけられる。速攻で断った。彼女にはogtがいる。もうすぐ、彼女に求婚してくれる男が。「あの噂本当

2020-08-24 17:38:46
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

だったのか。君ら、本当に付き合っていたんだね?でも、確か、彼は常務の娘さんとの縁談が進んでいるはずだよ?…君ら、別れてなかったのかね?」縁談?縁談て?「上手く行けば、赴任前に婚約の運びになるという話だが…」

2020-08-24 17:38:47
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

常務の娘。ものすごい美人で、性格も清楚で、物腰も柔らかい。そばにいて、男の安らぐタイプ。気の強い彼女とは真逆なタイプ。そんな人と彼は出会ってしまったのか。これまで会えなかったのではなく、彼から避けられていたと察して、夢主は絶望した。 あの指輪は、彼の部屋で見つけたあれを、

2020-08-24 17:38:47
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

薬指に嵌めるのは自分ではなかったのだ。

2020-08-24 17:38:48
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

週末、彼の海外赴任へ送別会には参加した。気合いを入れたメイクと装いで夢主も臨む。誰の配慮か、今日の主役から席は遠く離され、なかなか近づけない。せめて最後くらい話をしたい、きちんと関係を精算して欲しい。何とか近づこうとするのに、何故かガードするみたいに、彼の友人たちが

2020-08-24 17:38:48
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

取り囲んでいて、ついにogtは彼女と一言も話すことなく帰ってしまった。夢主は追おうとしたが、酔った同僚たちに絡まれ、店から出た時にはもう、彼の姿はどこにもなかった。彼女は肩を落とし、主賓のいない送別会の続きへ戻った。彼は自分を捨てたのだ。

2020-08-24 17:38:49
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主は荒れた。飲みまくった。(誰か、スマホ忘れてるぞ〜)(これなんか美味しそう)などと、夢主の絶望を知らぬ職場の同僚たちの声を聞きながら、さらに飲みに飲みまくった。周りはその様子に呆れていただろうが、止められなかった。夢主は泣いた。泣きながら叫んだ。「誰でもいい。今日、私の事

2020-08-24 17:38:49
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

持って帰って。テイクアウトしてよ。ぐちゃぐちゃのどろどろにしてちょうだい」もう、何もかもどうでもいい。忘れたかった。彼の顔。彼の声。彼の広い胸。彼のお気に入りのコロンの匂い。今までの思い出の何もかも。部屋から彼のものが消えて、処分しても、一番残る思い出の品は、自分自身だったから。

2020-08-24 17:38:49
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

翌朝、知らぬ天井を見ながら目が覚めた。知らぬルームフレグランスの匂い。知らぬベッド……。痛む頭を知らぬ寝床で持ち上げると、自分が何も来ていないことがわかった。ああ、そうだった。昨夜はあれから声をかけてきた男に本当に持ち帰られたのだ。見れば部屋はラブホの一室。 ベッド脇のゴミ箱を

2020-08-24 17:38:50
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

覗いて、相手が避|妊してくれていたことにほっとした。ベッドの中は一人で、シャワールームからは、情事でかいた汗を流しているらしい男の気配。“馬鹿なことをした”一気に正気に返った夢主は、慌てて周りに散らばった服を身につけ、痛む頭を抱えてその場を逃げ去った。

2020-08-24 17:38:50
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

男の顔ははっきり覚えていなかった。選んだのは、多分ぼんやりと、恋人になんとなしに似たタイプだった、そんな気がする。夢主はバッグを探り、ため息をついた。彼の縁談話を聞く前、暴走して買った、ダイヤの付いたネクタイピンがない。行きずりの男にあげてしまったのだ。

2020-08-24 17:38:51
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「彼に逆プロポーズしようと思って買ってたけど、その人、別の人と結婚しちゃうの。今日のお礼に、私と一緒に持って帰って」……夢だと思ってたが、夢ではなかった……給料、三ヶ月分……。酔っていたとはいえ、いろいろとダメだわ……夢主は家に戻ると、夕方まで寝込んだ。

2020-08-24 17:38:51
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

そんなふうに土日を寝込んで、夢主は泣き腫らした顔を化粧とマスクで隠して出社した。しばらく彼を社内で見ることはないだろう。戻るのは1年か、二年…式はいつだろう。もう、彼女を婚約した彼女を連れていくのだろうか…? 切なく思っていると、SNSから、久しぶりに件の男から連絡がきた。

2020-08-24 17:38:51
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

今夜会いたいという内容だった。それでも、別れ話くらいはしてくれるらしい。それとも、“婚約者”に、夢主と付き合っていたことを黙っているように、口止めされるとか…?夢主はOKした。自分も、知らない男と遊んだのだ。お互い様よ、でさっぱり別れよう。込み上げる涙を堪えながら、その日の仕事は

2020-08-24 17:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

いつもの何倍も頑張らなければ正気を保てそうになかった。

2020-08-24 17:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

待ち合わせた場所にレストランに行くと、既にogtは先に着いていて、従業員に案内された。白いテーブルクロスのかかる広い丸テーブルに、スーツ姿の見慣れた姿を見つけた。けれども、近くで見るのは久しぶりだった。忘れかけていた、彼のコロンの匂いに懐かしさのような切ない感情が込み上げた。

2020-08-24 17:38:52
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

夢主は、ここに来たことを早くも後悔していた。一言話せば、涙が溢れそうだった。知らなかった気づかなかった…。自分はこんなにも、彼が好きだったのか。マスクの下で歯を食いしばり、一見何気なく席に着いた。「話って?」別れ話がいよいよくる。備えよ、覚悟せよ、耐えろ、と自分に言い聞かせる。

2020-08-24 17:38:53
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「YESだ」「は?」「YES」「キ|リ|ス|ト?」「違う」以前から、言葉少なで無表情な男だったが、時々こちらが分かっているものと主語やいろんなものを抜いて話すときがあった。「何の話――?」ogtが、胸元のネクタイを、軽く引っ張った。そこには、見覚えのあるダイヤのネクタイピンが、レストランの

2020-08-24 17:38:53
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

灯りに反射して、眩く輝いていた。「YES…」「なんで、なんでそれを?!」それは、この前彼女を抱いた、行きずりの男に勢いで駄賃がわりあげてしまったもの。「なんでって…お前がくれたから」

2020-08-24 17:38:53
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

ogtの、短いながら的確な説明に、夢主は昭和生まれの祖父のように「ぎゃふん」と言いそうだった。あの日、送別会からタクシーで自宅に戻る途中、スマホを忘れたことに気が付いて、送別会をした店に一度戻ったこと。そこで目にしたものは、良かれと思って自分が身を引いたつもりだった恋人が、

2020-08-24 17:38:54
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

この世の終わりみたいに泣きながら酔い潰れていた。「何とかしなよ。やっぱり、ちゃんと話してやれよ。可哀想だからさ」何故かギラついた様子の周りの男たちから、夢主を庇うように隣で話しかけていたsrisが、ogtを見つけてそう言ったという。「さっきからテイクアウトしてくれってうるさくて」

2020-08-24 17:48:13
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「何を?」「夢主ちゃん。自分から、今晩ぐちゃぐちゃにしてくれとか、好きにしていいとか言うもんだから、他の奴らが…知らん奴らまで、さっきから誰が持ち帰るかで揉めてんの!ogtちゃんのせいだよ!別れるなら、ちゃんとしてあげなよ!」そういうと、逃げるように帰ったという。ogtは恨みがましい

2020-08-24 17:48:14
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

男たちの視線をよそに、夢主を抱えて店を出た。どろどろに酔いつぶれた恋人が、「あなた、私を降った人に似てる」「振ってねぇよ。本人だ」「いい匂い〜あの人の匂い〜」人の話を聞かず、夢主は彼の身体にぐにゃぐにゃと絡みついて離れなかった。

2020-08-24 17:51:40
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

タクシーが捕まらず、断念した彼は近くのラブホに夢主と入った。部屋に着いて一息着いた途端、夢主に襲われた。自暴自棄になった女は恐ろしい。他の男に連れ去られる前で良かった…彼は神と、ついでにsrisに感謝しつつ、久方ぶりの恋人との一夜を過ごした。途中に、ネクタイピンの入った箱を

2020-08-24 18:01:17
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

受け取った。ogtは酷く驚いた。彼女が、自分と結婚したいと思っていたことに。夢主はかつて、難攻不落の城だった。「誰とも付き合わないし、結婚もしない」と言っていた。

2020-08-24 18:01:17
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「あ、あれは、両親がとても仲が悪くて…」夢主が、ogtの話に口を挟んだ。「知ってる」

2020-08-24 18:03:04
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

それでも、付き合いが深く長くなるうち、ogtは夢主もその気になるものと思っていた。…会社の取引先の社長、彼女の上司友人でもある男が、息子の嫁にという縁談を持ちかけたと知るまでは。ogtは片親で、その母も既に亡く、故郷には育ててくれた祖父母がいるだけ。夢主にとっては

2020-08-24 18:15:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

玉の輿である。そして非常にまずいタイミングで、夢主が職場での友人とした与太話で「すごい金持ちがいたら?そっちと結婚するかもよ?」とか言っているのを聞いてしまっていた。俺ではダメか、と思ったのだ。夢主は、気は強いけれど優秀で、仕事もできた。付き合ってみれば、性格も良かった。自分には

2020-08-24 18:15:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

勿体ない女だと思っていたから、彼は…身を引くことにした。海外赴任や、縁談の話は、彼女を忘れる、ちょうど良い機会だった。「…避けてた理由は?」「…お前から、直接別れの言葉を聞くのが怖かった」

2020-08-24 18:15:08
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「そんだけ?」「…それだけ」謎の答えを聞いている間、夢主はサ|ス|ペ|ンス劇|場の探偵のように冷静ではいられなかった。「縁談は……?」「断った。それでもと言われて会ったが、俺が何を見ても夢主に結びつけて話してしまうので呆れられて、向こうから断られた」なにやってんのアナタ……。

2020-08-24 18:20:12
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「それで、YES」「はい?」最大の秘密が、まだ残されていた。

2020-08-24 18:21:35
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

「あの日、やってる最中に」「声が大きい!」「ヤッテルサイチュウニ…」「ちょっと」「…俺と結婚したいと言うから」ogtはポケットから、あの箱を、あの日見つけた可愛らしいラッピングの小箱をポケットから出した。「今度はお前の番だ」と言い添えて。

2020-08-24 18:24:58
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まとめたひと
ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

アホ夢書き。昭和の女で金カ夢の人。腐と夢のいろんなのを見たり書いたり用の垢。最近は本人よりよりほぜ尾が好きになってきた感。いや、今でも推しなのは変わらないんだ……。 まろ marshmallow-qa.com/yumejodego?utm…