第71回深夜の真剣140字60分一本勝負

はみどり@木製３秒間 @tyaboka1

元号と共に私も一変しようとする説教から逃亡した先で、私服の君は手を鳴らした。 「今世界ができました！」 　夜の悪夢も竦んだ足も、記憶の設定として持たされただけだと。 「なによそれ」 「勇気の魔法？　ね、」 　また、手を鳴らす。新世界では後悔も無意味だ。 「連休明け、学校おいでよ」

宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

｢四月が終わるのかい｣ ｢いいえ。五月が始まるの｣ ｢春が終わったのかい｣ ｢いいえ。夏が始まったの｣ ｢新芽が咲き始めたんだね｣ ｢いいえ。若葉が芽吹き始めたの｣ ｢どうして君は、僕を困惑させるんだい｣ ｢いいえ。私が貴方に惑わされてるの｣ #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/Xc8nQa1uGO

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にゃん @nyan_kotonoha

若葉が緑だなんて思い込んでもらっちゃ困る。 紅葉は秋だなんて決めつけてもらっちゃ困る。 そりゃ緑の若葉は気持ちいいし、秋風吹く夕暮れに紅葉は似合うだろうけど、春と夏の間の紅い若葉だっていいもんよ。 折角の5月1日からの新世界、しばらく紅いままでいるから、めでたいと思って見てやってよ。 pic.twitter.com/6D8keB4AiM

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水城弥生 @mizukiyayoi8484

雨の雫がついた若葉が陽光を反射するのが綺麗に映る頃、彼女は病にかかった。「ごめんね、どこにも行けなくて」四方を白に囲まれた部屋。ベッドの上で散った桜のような苦々しい顔で彼女が言う。「元気になるまで、待つから」そう。今は花火のように綺麗な笑顔になる彼女を待つ、春と夏の間の辛い時期。

KTQ @wholiveo

少子化による労働力不足への対策で、キャッシュレス化が推奨されているとか。滑稽だ。ベビーブームはGHQの操作で収束させられたというのに。この春と夏の間の若葉の頃、5月1日の新世界が幕開けた。キャッシュレスの進んだ海外から大勢が集まる五輪は、吉凶いずれに出るだろうか。号砲の秒読みが進む。

じらこ @jirako

お前、ほんと昔から泣き虫だよね。 で、泣きだすととまらない。 暑苦しいんだよ。 しょうがないよ、だって春と夏の間に生まれたんだから。 たまに冷たいと言われることもあるけど、自分ではよくわかんない。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite )

葵 惟 @LsfRim

「最近春ないよね。寒い日が続いたかと思えばイキナリ暑くなってさぁ…衣替え追いつきやしないっての」 文句を言う君は、ブレザーをとっくに脱ぎ、長袖のシャツを七部丈まで折っている。スカートは言わずもがなだ。 少しだけ汗ばんでいる君に問う。 「じゃあ、今の季節は？」 「春と夏の間じゃない？」

神埼れいฅ白銀色 @Rei_K_nana

強い風が吹いて花弁を巻き込み空へ登り。薄桃色がはらはら舞い散り幻想的な風景を創り出す ｢散りゆく花は美しい､か｡儚さを美しさだと錯覚してるだけだろ、本当は｣ 病室に横たわる君は壊れそうな程に儚く見えた 花弁を奪われた桜はぽつりぽつり若葉を芽吹かせ、それは葉桜と呼ばれる

春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

「わかばちゃーん」 愛娘がとちとちと危うげに歩いてくる。 去年の今日、5月1日、僕達夫婦に新しい時代が始まった。毎日毎日が大変で、僕も妻も泣いたり怒ったり…でも 「たたっ！」 「うん、歩けたねー！」 娘と妻がこちらに笑顔を向けてくる。寒さを忘れたこの春の日、一つ大きくなった愛娘へ…。

大江 道徳 @oe_doutoku

一晩の宿を瑞浪に取る。チェックインして近所の居酒屋へ。一人静かに飲めそうな赤ちょうちんを駅前で探す。あった、そこだ。のれんをくぐる。カウンターだけの居酒屋。冷やで飲める地酒を一合。若葉大いばり青ラベル。ガツンとくる純米酒。 一献の幸せ。#深夜の真剣140字60分一本勝負

RAY/※※※ @growler_ray

「すっかり濡れちゃったね」 「そうね…あーやだやだ」 梅雨ってのは嫌な季節、すぐ雨が降ってくるし、そのせいで濡れるわ寒いわ、ほーんと 「あ、見て！虹…！」 けど、たまにこうやって虹より綺麗なアンタの顔を見れる。だから、この春と夏の間の季節も悪くないかなって、そう思えるのよね

秋月蓮華 @akirenge

春と夏の間、若葉が生き生きとした世界、 「墓場か」 少女は言う。憂いながら。 黒い服の少女は歩く。 開けた場所に女性が二人、楽しそうに話していて、 「五月一日、二人は死んだ。ここは五月一日の新世界。彼女達の世界」 少女は大鎌を出し一振り。壊れる世界。 残されたのは彼女達の居ない世界。

掃き溜めに鶴 @hakidamenoturu

就活対策に取得した自動車免許は技術も自信も伴わず、僕だけが若葉マークが取れていない。何でもそうだ。今なら顧客も「春だしね」と大目に見てくれるが、その後は？春と夏の間で、何かが変わると言うのだろうか？本当に？ 僕はカレンダーから目を背ける。五月一日からの新時代が、ただ怖かった。

Shijimi @PAGvariety

若葉の季節になると憂鬱になる。五月病などと言われ連休のせいにされがちだが、桜が散り、日に日に緑の体積が増えてくる圧迫感がつらい。 活発な人と接するのが苦手なように、彼らの生命力に負けているのかも知れない。 今日も彼らの細胞分裂の音が耳から離れない。