南天に、雪吹きつけて、雀鳴く。 返り咲いた法隆寺の八重桜も、それで花が散って行く。 それを、炬燵櫓の中で見ていると、なんとも寂しくなってくる。 そして時は経ち、風は止んだ。 美味しそうな雪がふうわりと降っていて、昨日のことが嘘みたいだ。 庭の池には月が、白く、白く写っていた。
2017-12-30 22:08:13もしも貴方が。私をほんの少し省みてくれたならば。もしも私が。貴方のことをもっと広い心で抱きしめてあげたら。こんな悲しい別離は、無かったかもしれない。もう一度、なんて愚かな願いを口にしたくはないけれど。最初から違う道を選べたのなら、私は貴方とどんな道を歩いたのだろう。
2017-12-30 22:09:42年が明けたらどこへ行こう、ここは評判が良くてね、あそこはね、ってネットを見ながらあちこちの情報を嬉々と語る彼。そんな彼に来年もきっとたくさん世話になる。 「ねぇ、来年もよろしくね。きっとたくさん迷惑かけちゃうけど」 すると彼は少し驚いた顔をして 「こちらこそ」 感謝のキスを頰に。
2017-12-30 22:10:56[あなたは自由です]嬉々として壁の向こうへ走る友人を横目に通達書類を握りつぶした。「ふざけんな」怒りで声が震える。外へ出てしまったら、もう二度と内側へは戻ってこられない。かすかに残っていた自由への憧憬を無理やり押し込める。俺は命が惜しい。政府のモルモットなんかになってやるものか。
2017-12-30 22:13:44#深夜の真剣140字60分一本勝負 あなたはいつだって自由に見えた。 私の親友。 病弱な私と正反対のあなたはいつも輝いていて、見ていると目も眩むようで。 羨ましくて妬ましくて、大好きだった。 「私の分も生きて。」 病で掠れた声で告げる。2人分の重荷を背負わせてしまう私をどうか許して。
2017-12-30 22:15:33僕は、他人の区別がつかない。周囲の人、道行く人、みんな同じだ。誰も彼も、無感動で無意味に僕を通り過ぎる風景の一部でしかない。 そんな彩のない風景に、奇跡のように貴女が現れたんだ。 「どうして私が好きなの?」 「貴女が、誰にも似ていないから」 貴女は、素敵な答えね、と綺麗に笑った。
2017-12-30 22:16:34#深夜の真剣140字60分一本勝負 140文字SS書きの皆様良いお年を〜 pic.twitter.com/iQzEGs13UX
2017-12-30 22:26:17大掃除、自分の部屋を片付けていると、抽斗の隅で一枚の葉書を発見した。今年届いた年賀状だ。 誇れる仲間達と過ごしたこの一年を思い出す。 全力でやった最後の文化祭や転寝しながら聞く授業、友人との夏祭り……。どれもが輝くばかりに美しかった。 思えば、アマリリスの花言葉のような一年だった。
2017-12-30 22:28:46それは突然の衝撃だった。 透明だった世界に色がつくかのように、ラムネ色だった私の青春は弾けて零れ落ちていく。 それだけ君という存在は綺麗で眩しかった。 そこからは努力の連続だ。 周りからはそりゃ驚かれた。 でも、これも一目惚れした人に胸を張って生きていくためだ。 僕は今から変わるんだ。
2017-12-30 22:32:36今日が駄目なら明日でも、と思ってからふと今日が大晦日だということを思い出した。さっき会ったときに「良いお年を」とでも言っておけばよかった。冷えた空気が僕を縮こませる。……今日が駄目なら明日でもいい? そんなわけあるかと身を翻し、目指すは彼女。好きと言わずに来年を迎えてなるものか。
2017-12-30 22:50:10