2/1~2/29で1日140字で孫さにを投稿する試みのまとめ 帰りが遅かったり投稿前に寝落ちもあったので翌日翌々日に2~3日分投下したりもしてます ↓顔あり孫さにわ(審神者名:山梔子|さんしし、くちなし) 続きを読む
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藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「主さ、この間孫六に〝可愛い〟って言ってたでしょ」「言ってたわね」先日、作業の手伝いの際に邪魔になるからと前髪を上げさせた時の主の発言。『〝男前〟って言ってくれよ……』嬉しいのか、嬉しくないのか、孫六の複雑そうな表情を見た主の顔に一瞬、小さな女の子の無邪気さが垣間見えた気がした。

2024-02-02 23:51:52
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「もう少しだ、主人」審神者の髪を、咥えていたヘアゴムと慣れた手付きで結い上げる孫六。出来たぞ、と言われ鏡を見ると、左右同じ高さで仕上げられたツインテール髪の審神者が映る。「中々似合ってるじゃないか」「孫六さんもね」先に審神者によって同じ髪型にされていた孫六が鏡の中、苦笑していた。

2024-02-02 23:52:34
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「この量は無理があるだろ──なあ主人、少し手伝ってくれないか」「あなた達からすればほんの少しだけど、わたしの歳の数で良ければ」「よし、それじゃ手を出しな。ひ、ふ、み、よ……何笑ってるんだ」「そんなに一粒一粒大事に数えて寄越されたら……ふふふ。何だか食べるのが勿体ないと思っただけ」

2024-02-03 23:52:40
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

妙な気配を感じる事があるが、その元は分かっている。それが主人が使役してる奴らのもので、夜毎取りのめす俺を好ましく思ってはいないという事も。一度縁側から逆さに覗き込んで『俺も主人に飼われてるようなもんだ、仲良くやろうぜ』と言ってはみたが、返答は唸り声。まだお眼鏡には適わないらしい。

2024-02-05 00:59:52
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「馬だけに」「……あはっ、うふ、ふふふっ!」「!?」「孫六さんって面白いのね!」全くの不意打ちで見た主人の破顔。数刻経った今でも、事あるごとにそれが頭にちらついて離れない。花開く瞬間、ポン、と音がする物があるらしいが、その瞬間に偶然居合わせたような出来事だった。……そうか、これが。

2024-02-07 00:31:37
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「お、風呂上がりか」「ええ」抱き寄せた主人の緩く波打つ黒髪の一房を弄べば、花の匂いが立つ。「ね、今日はしないで……このままおやすみしない?たまには、わたしが孫六さんを温めたいの。駄目かしら」「……主人、お預けは止してくれ」顔を近づけると、窘めるように滑らかな女の指先が唇に触れた。

2024-02-07 00:32:21
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主が笑ったのを見たかと聞かれて、愛想はいつも良いじゃねえかと答えてやりゃあ『いや、そういうのじゃなく〝爆笑〟って感じの』だと。「はァ~~? あのお上品な主が? 無い無い!」「! そうか、無いなら良いんだ」何故か悦に入った奴を見て、兼定と兼元の誼の〝やめとけ〟が喉元まで出かかった。

2024-02-07 00:34:11
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「あら」と、零れた声。その手元を覗き込むと、繕い物をしていた針が真二つに折れていた。「折ったみたい」「古い針が〝折れた〟んじゃないのか」「いいえ。新品でも折ってしまう時があるの」力の加減が分からなくて──そう言いながら、主人は俺を見てやんわり微笑んだ。「孫六さんも、気を付けてね」

2024-02-08 22:50:55
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主人が受けてきた仕事──お上が切り盛りする盛り場の用心棒。入口に案山子の如く立つだけで退屈だが、助平心と期待に鼻の穴を膨らませていた奴らが、まるで葬式帰りのような、或いは体よく愉しんだのが分かる顔で店を後にするのを見送りながら、あぁ、俺も帰って主人を抱きたいもんだと思うのだった。

2024-02-10 00:11:12
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

夜明け前、主人は俺だけ布団に残し勤めに出て行く。「〝三千世界の烏を殺し〟って都々逸の奴にも、似たような事があったのかね」独り言つと、寝ぼけた振りで腕を掴んだ置いてけぼりの俺に〝かわいいひと〟と囁いていった甘い余韻に浸るうち、段々瞼は落ちていき、今度は主人を探して、再び夢の中へと。

2024-02-10 23:20:36
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

万歳、ばんざーいと声を張り上げた後で、主人に酌をさせるお偉方。何故本丸で弥栄の祝宴をと不満げな俺達を宥め賺し、宴の為に雇った綺麗所と給仕して回る主人を離れて見守りつつ、不埒な手が主人の肩や尻に伸びやしないか気が気でならない。警戒すべきはそれではなく、時間遡行軍の襲撃だというのに。

2024-02-11 23:34:36
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

嫋やかな肢体を暴く背徳感と、今この時だけは俺の女だという少しの優越感。「折角脱がせたのに、もう着るのか。まだ裸でいろよ、綺麗だから」俺に背を向け下着の背の金具を留める主人にささめくと、笑って窘められた。「そんな事言って……あなた達も、鎺や目貫が無いと使えないでしょ」「そんな物か」

2024-02-13 00:09:38
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

『今のわたしにはもう、有って無いようなものだから』と、投げて寄越すように教えられた真の名。そんな頓着の無さからか、呼んでみても『それは誰』なんて反応の時もある。「女房の名を知らない亭主があるか。本当に忘れてしまわんよう、毎日呼んでやる」と、戯れに主人を困らせるのが最近の愉しみだ。

2024-02-14 00:27:36
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「バレンタイン、小豆さんに何をプレゼントするの?」「……普段使い向きの物と、チョコ」「わたしはねぇ、褌よ。ちょうど褌の日だし」「!? そんなの貰う側も困るでしょうが!」「困惑してる顔、面白かったわ」「ほらぁ! せめてネクタイとかにしなさいよ!」「あのひと、普段はお着物だからねぇ」

2024-02-14 21:15:25
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「この絵姿、主人か」掲示されたポスターを指す孫六。『あなたも歴史を守ろう!審神者募集中』の文言とともに此方へ微笑みかけるのは、巫女装束姿の審神者だ。「そうよ、モデルをやって欲しいって頼まれてね」「俺の存ぜぬうちに、他の男に主人が嫌らしい目で見られ……」「……変な妬き方をしないの」

2024-02-16 00:43:31
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主と二人きりで話すのは、いつ振りだろうか。俺が想いを打ち明けて『ごめんなさい』と謝罪してくれた時と同じ、耳に残る優しい声に胸は高鳴る。もう終わった恋だと知りながら、『あいつとの仲はどうなんだ』という軽い問いかけすら曖昧にしてしまって、心の中に未だにある言葉を、今日も言えずにいる。

2024-02-16 23:59:06
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主人の書架の中の一番古めかしい一冊。主人の私物だというそれを何度か読ませてくれとせがんでみたが、暖簾に腕押し糠に釘。思い切って主人不在の折、他の本に隠れるように在ったそれをそっと引き抜き頁を捲ると、浅葱色が目に飛び込んでくる。縁は異なもの、と言うが、妙な感慨深さが胸に込み上げた。

2024-02-17 23:59:43
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

日頃出入りしている本丸の主に「あんた、最近ヤニ臭いのよ」と、苦情を申し立てられる。それが自分の留守中、暇さえあれば態々審神者の部屋やその縁側で煙管片手に寛いでいる孫六兼元の所為だと解っているのだが、自分を待つ孫六が指令の犬達と重なって忍び笑いをしてしまい、苦情の主は眉根を寄せた。

2024-02-18 23:59:05
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

湯が沸いた鍋の蒸気、まな板に当たる包丁の小気味良い音、刻んだ葱のにおい。台所の東向きの窓から差し込む朝日に照らされた、黙々と朝餉の支度をこなす主人。「見てないで、少し手伝ってもらえると嬉しいのだけれど」と言って主人が振り向くまで、その背中を黙って後ろで眺めるのが俺の朝の愉しみだ。

2024-02-20 23:58:03
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主人の料理中に、悋気を探っての『俺が浮気したら』の冗談。「そうなったら孫六さんには、もうご飯作ってあげない」という返答に、ぼそぼそした食感の支給の糧食を思い出し俺は慌てた。「……嫌だ」「あら、好きにして良いのに」これから汁の実になる予定の大根。その茎が首のように、すとんと落ちた。

2024-02-20 23:59:52
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「どうした?」「雨が、気になって」事の最中、縁側に続く明り障子へ視線をそらす主人。俺が昂ぶりに身を任せる間に、外は荒れ模様になっていたらしい。激しい雨音に昔を想起したのか、耐えて無に徹するような、初めて抱いた時と同じ顔。そんなもの忘れてしまえとも言わず、噛み付くように口を吸った。

2024-02-22 00:58:23
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

小春日和の昼寝、懐には猫……なんて趣深い組み合わせも、生憎この本丸では実現しない。野良が敷地に一歩でも入ろうものなら、主人が使役する犬が追っ払ってしまう。那が然しこの犬、俺には全く懐かない。猫どころか犬にも癒しを求める事が出来ないとなれば、主人に埋め合わせをして貰おうじゃないか。

2024-02-22 23:59:50
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主人が帰った夜は必ず、妻問いのつもりで部屋を訪れた。遅疑なく「どうぞ」と招き入れられ、最初却って此方が困惑したのを覚えている。眠らない主人とそうではない俺が話し込み、気付けば朝。うとうとし始めた俺を追出さずご丁寧に布団まで敷いて留め置いた主人の心を、この朝、本気で欲しいと思った。

2024-02-24 00:30:25
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

「報告によると……審神者さんと恋仲になった刀とで企てた、と書いてあるわね」元々は本丸だったという廃墟に、ふたり。折れた刀などは既に片付けられているが、生々しい生活と戦闘の痕跡。「悪いのは、誰かしら」「その答えは、俺達が出すべきじゃない」冀う余り、破滅を望んだのだろうか、それとも。

2024-02-24 23:59:59
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

怜悧な浅葱色の視線と共に流れ落ちる、黒馬の鬣のような髪。跨られているのは、わたしのほうだけれど。顔が近づくと、わたしの視界の左右はこのひとの髪で御簾のように隠され、何だか狭い檻に入れられてしまったような気分。本丸は檻のようなものと思っていたけど、今、このひとの檻は、嫌いではない。

2024-02-26 23:54:01
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

主さん、最近なんか楽しそうだ。言い寄ったのは孫六だと聞いてるし、主さんもそんなにべたべたしない割に、まんざらでもないみたいだ。主さんが孫六と二人で出かけると近侍の加州清光が分かりやすく苛立つから今日はオレが買い物のお伴だけど、時々思う事がある。孫六にやきもきさせたいからかもって。

2024-02-27 00:00:04
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

僕らの食卓が整い、自分の部屋に戻っていく時の主さんは、賑やかな僕らを見守るような優しい顔をしてる。でも、この間は少し違った。孫六さんが「これ、美味いぞ。主人も食え」と、取皿におかずをあれこれ乗せて、主さんに差し出して。「あら、まるで直会ね」あの嬉しそうな弾む笑顔は、初めて見たな。

2024-02-27 23:59:51
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

任務の非日常とそうでない時の切替が必要だから「いくつか趣味があると良いわよ」って主が言っていた。そういえば、あいつの趣味は何だろう。本を懐に入れて何処でも読んでるのを見かけるけど、読書以外だと〝主〟になるのかな。それを本人以外が偶々集まった時話すと、皆顔を見合わせて苦笑していた。

2024-02-28 23:59:39
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

『快楽を感じる体では無い』という前置きの言葉通りに乱れる事は無かったが、主人は俺の求めに至極協力的だった。激しく動くと饗応するかの如く、滑らかで白く透ける様な肌が、俺の浅黒い肌へと食い込むように絡みつく。正体を失わない、覗き込んだ井戸の底にも似た黒い瞳に、この女の強かさを感じた。

2024-02-29 23:59:10
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まとめたひと
藤キ屋🍡🫘🌸 @fj777ya

ようこそ ここは私のお墓 狂気とぼやきのガラパゴス 20⬆️ どなたの地雷にも配慮しません 🔗は取説 小豆長光が夫|小豆さにを自給自足|創作♀審神者 最近は孫さにも好き ポイピクx.gd/SU665 支部x.gd/HlFCb うぇぶぼx.gd/regxw