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ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その1】ここまで来て、ようやく、「RT-PCR解説シリーズ」の最後を終えることができる。ラストは「RNA抽出作業」について語りませう。新コロ検査問題の核心部は、この抽出作業にあると言っても過言ではない。

2020-04-28 07:57:43
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その2】何度も登場して恐縮ではありますが、RNA抽出は全工程の中で、新コロからRNAを抽出するための「第一段階」であります。一本鎖RNAに至るまでの青矢印が、ヘロヘロなのは、この作業がとてつもなく大変で手間暇が掛かることを意味している(つもり)。 pic.twitter.com/V1ZHdFMoKs

2020-04-28 08:02:04
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ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その3】図にすると、新コロが突然RNAに変身しているけれど、現実世界はそんな甘いものじゃござません。新コロからRNAを取り出す(抽出)ためには、メチャクチャ複雑な工程が必要になる。

2020-04-28 08:04:19
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その4】まず最初に、新コロが誇る固いエンベロープ(外殻)を壊さなければならない。専門用語でこの処理を Lysis (溶解) と呼ぶが、一般的には、タンパク質を分解するプロテアーゼ(proteinase)が使われる。タンパク質のハサミで、新コロのエンベロープを破壊する。

2020-04-28 08:08:22
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その5】次に必要となる工程が「除蛋白」であります。ウイルスの破片はもちろん、咽頭拭い液中に含まれる、様々な細胞成分、酵素などもバラバラ殺人事件になるため、「溶解」が終わった後の液中には、分解されたタンパク質が大量のゴミとしてうごめいている。

2020-04-28 08:11:24
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その6】除蛋白が終わると、ようやく「核酸抽出」に入ることができる。ただし、この核酸という言葉が肝でございます。拭い液中に存在する細胞には、多量のDNAが含まれているので、除蛋白完了後の溶液中には、「RNAとDNA」が混在しているのであります。これは困る。

2020-04-28 08:13:24
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その7】という訳で、古典的なRNA抽出方法では、ここでDNAを分解するデオキシ・リボヌクレアーゼ(deoxyribonuclease, DNase)が使われてきた。細胞由来のDNAをハサミでぶった切るのであります。純度の高いDNase (高価)を使えば、RNAは無傷でそのまま残る。

2020-04-28 08:15:24
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その8】最後に、アルコール沈殿法を用いて、遠心操作により、RNAを沈殿させ、これを高純度の水に溶いて、目出度く完成〜〜〜!という訳。とまぁ、ここまで、昔を思い出しながら書くだけで疲れた・・。

2020-04-28 08:16:40
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その9】箇条書きにすれば簡単だが、実際の作業はとてつもなく大変であります。RNA抽出作業のためには、「小指の先ほど」のチューブが使われる(容量1.5mL)。

2020-04-28 08:17:56
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その10】このチューブに検体を移した後、これまで述べてきた処理工程のたんびに、新しいチューブに移していくのであります。これを4〜5回と繰り返す訳でございますので、50検体でも扱う総チューブは軽く200本以上を超える。

2020-04-28 08:19:18
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その11】しかも、全てのチューブには間違えないように「番号をマジック」で手書きしなければならない。この膨大な数のチューブの準備だけでも、吐き気を催す作業・・😭。

2020-04-28 08:20:54
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その12】しかも、既に述べた通り、人間の汗やツバには大量のリボヌクレアーゼが含まれているため、作業には細心の注意が必要。ちょっとでも気を抜けば、確実にRNAは破壊される。

2020-04-28 08:21:51
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その13】その「チューブ地獄」の模様を Reuters 様が記録されていたので拝借(流石👏)。クリーンベンチに置かれた、赤い平らなスタンドに居並んだ、白い小さなプラスチックが「チューブ」であります。写真をよく見るとわかるが、チューブの蓋には番号が書いてある。 pic.twitter.com/uzHsWS8u93

2020-04-28 08:25:38
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ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その14】このチューブの中に、白いオジサンが右手に持っているピペットを使い、検体や反応溶液をひとつずつ、注入していくのであります。ここでもしもチューブを間違えると、即「偽陰性・偽陽性」につながってしまう。その裏では、リボヌクレアーゼとの闘い・・。

2020-04-28 08:28:28
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その15】これはまさに「神経戦」であります。とてもではないが、RNA抽出作業は1日中できるものではない。アタシだったら、廃人まっしぐら間違いナッシング。この過酷な作業を日本全国の衛生研究所などで、臨床検査技師さんが日夜取り組んでいる訳でございます。

2020-04-28 08:31:02
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その16】そりゃ、ある頻度で間違いも発生するでありましょう。人間だもの・・。

2020-04-28 08:31:59
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その17】許される訳ではないけれど、この結果、チューブ操作、ピペット操作の間違いにより、「偽陽性」という悲しい間違いが発生してしまう。

2020-04-28 08:33:38
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その18】偽陽性により、本来は陰性であったお爺ちゃんが入院となり、お骨となって自宅に帰るまで家族は会えなかった・・という、悲しいニュースが何度か流れたことは、皆さまもご存じでありましょう。

2020-04-28 08:34:47
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その19】その背景には、こうした「チューブ地獄」があることを、どうか国民一人一人に知っておいて頂きたいと、アタクシは切に願うのであります。原因がわかれば、対策も打てる。その意味でも、国内メディアよ、どうかしっかり取材してちょーだい・・頼みます🙇

2020-04-28 08:37:38
ドクターにしだ @WataruNishida

【RNA抽出作業はメチャ煩雑&神経戦・その20】最後に、ここに述べたRNA抽出方法は古典的なものであり、現在はQiagenという会社が販売するカラム法により、手順はかなり簡略化されている(今後解説)。ただしその操作中には、回数は減ったと言え、やはり「チューブ地獄」が存在するため、紹介した次第。

2020-04-28 08:41:29