Re:Xaくんっていうオリキャラ書いたらエモい話つけてもらった
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ㇲ​​​​- @su_cxb

──息が切れ切れになるまで走っただろうか。 逃げ隠れた路地裏の壁にもたれながら、揺れる肩を落ち着かせる。 何故こんな真似をしてしまったのか。義賊でもない自分には今の状況が受け止めきれない。 項垂れ沈んだ視界に、こちらの様子を見つめる顔が写る。 製造番号003、本来秘匿されるべき開発機。

2019-10-04 08:05:36
ㇲ​​​​- @su_cxb

開発名 Recipient intelligence:X-type of academic 通称 ───Re:Xa

2019-10-04 08:46:55
ㇲ​​​​- @su_cxb

「マスターを認識できませんでした。」 じぃぃと対象の顔を捉え、少女は淡々とした声で告げる。 感情があると聞いたがその顔には一切の綻びすら感じず、むしろ引き離してしまった事への皮肉ともとれる辛辣さ。 こみ上げる贖罪の言葉と多少の腹立たしさをぐっと飲み込み、青年はあるものを差し出す。

2019-10-07 09:00:38
ㇲ​​​​- @su_cxb

透き通る碧い虹彩は僅かに七色を帯び、こちらの姿を無慈悲に、歪みなく映す。 その姿はまるで物覚えを始めた赤子、いや親の顔を初めて見る雛鳥のようだ。 ───本来のマスターと引き離してしまって、今はどんな感情を覚えているのだろう。 青年は唐突な偽善を悔いつつ、無垢な少女への接し方に悩む。

2019-10-06 09:00:38
ㇲ​​​​- @su_cxb

「──これは...」 対浸透性、セキュリティ上の安全性を高めるため、アンドロイドは給電通信以外の接続口を持たない。殆どは目視や聴取によって外界の認識を行う。 「君のマスターによる委任状だ。急拵えで正式な書簡じゃないが...」 蒼碧の双眼はより煌めきを増し、微かに頷きながら口を開き始める。

2019-10-10 09:00:04
ㇲ​​​​- @su_cxb

「認証しました。言語パックのインストール中です...」 そう唱え、少女は眠るように瞼を下ろす。立ち止まったままの姿は裏路地の中で一際目立つ存在だ。 ──いやいや、それはまずい。 青年が不安を口にする刹那、けたたましいサイレン音が大通りを横切る。 また独り善がりに動かねばならないのか。

2019-10-15 09:01:13
ㇲ​​​​- @su_cxb

再起動。 博士によると開発機は遠隔操作の他、エントリーが比較的容易な部位─人間で云う額上部─に強圧式緊急停止センサを備えるという。 ただでさえ重量のあるヒトガタ、抱いて逃げるのは以ての外。起きてでも歩かねば。 青年は手順通り、あどけなく眠る少女の、際に光る縫合痕に指を指し合わせた。

2019-10-16 09:12:08
ㇲ​​​​- @su_cxb

少女は一度大きく眼を見開き、やがてゆっくりと瞼を下ろしたかと思えば崩れるように座り込んでしまった。 無理矢理止めた事に覚えのない量の冷汗をかく。...が、もう戻れない。眠る少女に手の震えを伝えながらも髪をかき分け、耳を露わにする。 指先に微かな温もりを感じる。ここが意識を繋ぐ接点か。

2019-10-17 09:24:14
ㇲ​​​​- @su_cxb

緊張で五感が鈍り、音も色もない世界は酷く不気味に映る。添えた指先への熱も、自らの鼓動すらも分からない。───白昼夢のような感覚。 ...意識でも流れ込んだのか。肯定か否定か。曇り硝子だった視界は、碧く呼応するように瞬く色彩を捉えた。 「インストールが中断されています。再開しますか?」

2019-10-18 09:00:12
ㇲ​​​​- @su_cxb

「...それは後でいい。今はここを抜けるぞ」 準備に時間を割いたが警邏の目を掻い潜れたのは僥倖であった。 また巡回される前に出なければ。 …なおも無垢な眼差しを向ける少女。今回は多少意思が通じたのか、俯くように頷く。 青年達は規制線を飛び出し、スラム街の外れに構える古い補給地へ向かう。

2019-10-19 09:26:30
ㇲ​​​​- @su_cxb

暁の紫がかった雲を横目に荒地の道を歩む。 尚も少女は親を追う雛鳥のように後ろを尾ける。 外の景観に関心があるのだろうか。頻りに周囲を見渡し、黙々と観察を始めた。 仕方無く手頃な石に腰掛ける。 ──国破れて山河あり。 …民学生時代に習う詩の一節だが、不意に今の心象と重なるように感じる。

2019-10-26 05:00:11
ㇲ​​​​- @su_cxb

瓦礫や廃墟が点在した中、隙間から小さな花が顔を覗く。 その春の訪れを小鳥が祝福するように鳴き始める。 そういえば以来顔を見ない学友は元気にしているのか。不思議な気品を纏う美青年だったが── 丁度日が差し、あちこちに廻る少女の長髪を照らす。艷のある金に郷愁を感じずにはいられなかった。

2019-10-26 05:00:12
ㇲ​​​​- @su_cxb

食糧を探しつつ少女に目をやる。 給油機へ手を触れる仕草。 それを幾度か行い、ある筐体を前に足取りが止む。 車の動力源“電気”を扱う充電台だ。 少女の柔らかな手がプラグに伸びる。 不意にこちらへ振り向くと、色が分かれた2本を差し出した。 どうやら飢えに苦しんでいたのは私だけではないようだ。

2019-11-05 09:00:03
ㇲ​​​​- @su_cxb

町外れにポツンと佇む補給地へ辿り着く。 かつて給油所として人々の交通を支え興隆を極めていたが、今は老朽化が進み閑古鳥が鳴く程に寂れてしまった。 幸いにも各資源の供給ラインは通っているらしく、詰所にも灯りが見える。 ─警ら隊が使った後なのか、乾麺の袋や潰れた缶が無造作に転がっている。

2019-11-05 09:00:02
ㇲ​​​​- @su_cxb

指示された端子部へプラグをあてがう。 刹那、少女の身体は僅かに跳ね上がり息を漏らす。 肩の上下に合わせ明滅していた首元の光も、今度は脈動のように瞬き始める。 思わず眼前に回り込み体調を確認すると、だらりとした体勢のままこちらに首を向けた。 焦点は正常で頬は紅潮している。平気だろうか。

2019-11-19 09:29:44
ㇲ​​​​- @su_cxb

手早く作業を済ませ少女の様子をうかがう。 無機質なケーブルに繋がれ、動きを制限される──事なく、充電台を降りた辺りを呑気にぶらつくばかり。その姿はリードに繋がれた愛犬のようだが、この表現は適当でない。 ...私はこの先どう向き合うのか? 陽は沈み不安の陰りを落す。じきに此処を発つ刻だ。

2019-11-26 08:00:46
ㇲ​​​​- @su_cxb

困窮しない程の食糧を得たので、巡回時間と重ならない内に抜ける。 少女は充電した事で前より快活に足を運ばせる。なおも歩を止め観察する癖は変わらないが。 ─ふと老婆心が湧き、少女が見た物を教える事にした。 どれも民学や従軍時代の知恵知識であるが、少女はもくもくと吸収した…ように見える。

2019-11-26 09:00:04
ㇲ​​​​- @su_cxb

巡回車両の前照灯を避けながら進んでいくうちにすっかり夜になってしまった。 ──日は既に沈み、空は瞬く星々に飾られている。 今日は新月の日。月明かりに照らされ見つかる心配は無い。 内心ほっとする一方、少女は首を傾げ、ブロンドがその顔へ垂れ下がる。 疑問に思うのか、なにか見つけたのか。

2019-11-30 09:09:21
ㇲ​​​​- @su_cxb

少女の目線の先──林道を抜けた地点に小さな灯りが見える。 野営の跡だろうか、僅かな灯火を残す以外は殆ど灰と化しているようである。 先ほど巡回車が“通ったのであれば“、マニュアルに則り消火されている筈だが… そんなことをつゆ知らず、警戒心の無い少女はてくてくと焚き火の近くに歩み寄る。

2019-12-04 09:26:33
ㇲ​​​​- @su_cxb

「まッ待て!」 咄嗟に声を振り絞る。 …しかしこちらの不安は、辺りに響く“鈴“の音色をもって現実味を帯びた。 ──鳴子仕掛け。 本来は野鳥から作物を守る知恵。 草木も風も無いこの地では、夜盗が好んで使うらしいが。 やがて暗闇からぼんやりと紅い光が覗く。それは飢えた獣の眼光か、それとも…

2019-12-10 09:00:00
ㇲ​​​​- @su_cxb

地を蹴り、急いで駆け寄る。 足下の焚火はとうに消え、僅かな残り香と静寂が支配していた。 なおも固まる少女の肩を掴み、その場から引き剥がすように後ずさる。 やがて紅い瞬きの正体が浮かび上がる… ───刹那。 その視界は一瞬にして白の衝撃に染められ上げ、その姿を見る事は叶わなかった。

2019-12-11 09:00:03
ㇲ​​​​- @su_cxb

「そこまでだッ!三名は手を挙げて投降しろ!」 芯のある声が、張り詰めた夜の空気を駆け抜けていく。 目が慣れたのか、先ほどまで対峙していた影はその輪郭を顕し─どうやら“異形のモノ“らしい─何か呟くも投了の合図を見せる。 こちらも敵意が無いことを示す為、屈みつつ荷物を置いて掌を向けた。

2019-12-12 09:10:58
ㇲ​​​​- @su_cxb

「そこの女も手を挙げろ!さもなくば発砲する!」 怒号の矛先は庇った後ろ─無垢な少女に向く。 しかし少女は首を傾げたままで手を上げようとしない。 抵抗として受け取られたのか、光の先から重装備兵が現れる。 …乾いた静かな音。 目の前の異形が、膝から崩れ落ちた。こちらにも鈍い痛みが走る。

2019-12-14 09:20:00
ㇲ​​​​- @su_cxb

「ッ──あ─ッ!!」 声にならない呻きと共に地に伏せた。 震える神経。まともに動かせない筋肉。 テーザー銃の類いだろうか。 疲労が蓄積したこの身体は再び立ち上がることを許さない。 倒れた視線の先にからくりの少女が見える。 薄れゆく意識の中、手を伸ばす。たとえ矜持が守れなかったとしても。

2019-12-14 09:20:01
ㇲ​​​​- @su_cxb

次回のプレイアブルキャラ

2019-12-16 09:01:53
ㇲ​​​​- @su_cxb

────── 「ぅぅ……ぁ…んぇぇ……?」 痛む身体を起こし、間の抜けた声をあげる。 寝惚けた視界はわずかな日差しを受けゆっくり覚醒していく。 硬く冷たい石床。整然と並んだ鉄の棒。 節々の痺れと鈍い頭痛に悩まされながら、昨日の記憶を揺り起こす。 ─納得いかない。あれは僕の獲物なのに。

2019-12-20 09:12:29
ㇲ​​​​- @su_cxb

床をヒールが鳴らす。見覚えある貌が覗く。 「お前の評判は聞いていたが── 随分手こずらせてくれたな」 諦観にもとれる、溜め息混じりの声。 ──どうも鼻につく。というかムカつく。 「へぇ〜そんなにぼくに逢いたかった?かわいい…♡」 …この女狐。いや、あの組織に捕えられるよりましかなぁ。

2020-01-05 12:40:04
ㇲ​​​​- @su_cxb

「あの二人は重要参考人、ましてやあの組織にとっての機密事項だ。 お前も吐かねばどうなるか…」 揺さぶりを強めていく度に、可憐なフレグランスが周囲に振りまかれていく。 「実はね、あそこで資料、みちゃったんだ…♡ あの子は本来、人に懐かないんだって… そう考えるとゾクゾクしない…?♡」

2020-01-08 09:07:27
ㇲ​​​​- @su_cxb

「…話はそれで終わりか?ならば貴様はこれから─」 瞬間、口に含む血を吐き飛ばしてあげた。 綺麗な貌が、不浄な魔族の血で穢れていく。 「あはぁ…ごめんね♡ その香水くっさぁい匂いに耐えれなくて…」 眼前の女は不快感を顕にするように顔を歪ませた。 そうそう表情変えてリラックスしなきゃ。

2020-01-08 09:18:16
ㇲ​​​​- @su_cxb

──── もう瓶の残りを飲み切ってしまった。 数々の実務経験をこなしたが、これほどまでに胃薬が恋しくなった事は無く。 洗面台に手を着き、鏡に映り込む自らの顔を睨んだ。 ─ああ、“顔に泥を塗られる“とはこの事か。 高鳴る鼓動をかき消すように、無鉄砲な正義感はそのヒールを響かせていく。

2020-01-12 09:44:14
ㇲ​​​​- @su_cxb

軽く咳払いをし、今にも詰まりそうな痞を抑える。 思えば救心薬も揃えるべきだったか。そんなことを考えながら。 ──次は“1人と1体“。 管制室に戻り鍵を入れ替える。が、キーボックスは立て付けが悪くその小窓を開こうとしない。  仕事を邪魔するジャブは、ふつふつと沸く苛立ちへと変換された。

2020-01-25 09:21:23
ㇲ​​​​- @su_cxb

「おい そこの」 隔離された独房には“一人と一体”が礼儀正しく座っていた。 「取調べを行う。二人とも来るがいい」 いかにも温そうな痩駆の男が起き上がり、隣の少女にも促す。 それに応じて虚ろな目の持主も僅かに頷く。 ──マスターと従属のモノ。または、あの企業が創り出した傀儡の被害者。

2020-01-28 09:15:21
ㇲ​​​​- @su_cxb

なんか語りが始まりそう…

2020-01-28 09:22:48
ㇲ​​​​- @su_cxb

「安心しろ こちらもあの組織に加担するつもりは無い」 男の方は毅然とした様子で歩幅を合わせる。が少女は辺りを見回すばかりで落ち着かない。 状況から、内部情報を持つ者はあの淫魔。 そしてこのドロイド─𝘙𝘦𝘤𝘪𝘱𝘪𝘦𝘯𝘵 𝘪𝘯𝘵𝘦𝘭𝘭𝘪𝘨𝘦𝘯𝘤𝘦:𝘟-𝘵𝘺𝘱𝘦 𝘢𝘳𝘵𝘪𝘧𝘪𝘤𝘪𝘢𝘭𝘪𝘵𝘺─

2020-01-29 09:45:02
ㇲ​​​​- @su_cxb

殊にアンドロイドの尋問となると話が変わる。彼等は高度な情報統制が施されており、簡単には口を割らない。 「今まで死ぬ気で培ってきたスキルが使えないなんてな」 皮肉ともとれる独言をこぼしつつデバイスをあやつる。 迷子等でマスターを失ったアンドロイドに用いる、即ち“頭の中を覗く”手法だ。

2020-02-13 10:14:42
ㇲ​​​​- @su_cxb

青年は我関せずと言わんばかりに静観している。 中には耐えかねて自害する輩もいる。憔悴、虚弱で無ければ平気だろう。 プラグを手に取り少女への接続を試みる。 漸く飲み込めたか、一変して拒絶するように取り乱した。 ──ははん。此方に背を向けない。さてはうなじか腰に接続口があるとみた。

2020-02-13 10:14:42
ㇲ​​​​- @su_cxb

「大人しく従わないとその男もどうなるか…お前にも分かる筈だろう」 少女は途端にはっとした表情を浮かべる。そしてこちらをしたたかに見つめた。 ㅤ ㅤ わずかに緋彩を乗せて、輝く蒼碧。 ㅤ ㅤ ささやかな抵抗もすべなくして。 少女は低いくぐもった呻きを漏らながら、その場に小さく縮こまった。

2020-02-18 09:31:31
ㇲ​​​​- @su_cxb

静まり返るのを見るや否や、すぐにうなじを探りプラグを繋いでみせる。 ─ああ。胃がキリキリする。 煮え切った熱が、抑えられぬ発汗とが波のように押し寄せる。 いや、私は、見なければならない。この組織が何をしてきたのかを。

2020-03-05 08:01:08
ㇲ​​​​- @su_cxb

幾つかサムネイル画像を流し見する。 最新の情報に並べ替えると、隣のマスターの顔がよく表示される。あとは風景、旧い街並み、小さな花─── 動画の時間はまばら。 このアンドロイドは自らの意思でログを分類しているのか? 頭を抑えつつ、より深い記憶──研究施設の日付へとスクロールしていく。

2020-03-19 09:03:39
ㇲ​​​​- @su_cxb

デバイスに接続するといくつかの機能系に分けられたフォルダの──あった。 アンドロイドが見聞きした情報はここにログとして蓄えられるようだ。 …本来ならこの可視化する技術すら持ち合わせる事など無かった。 皮肉にもあの組織の手を借りる事になるとは思わなかっただろう。

2020-03-19 09:03:39
ㇲ​​​​- @su_cxb

大きくページを下降してみると何も表示されない──黒いサムネイルが、まるで塗りつぶすかのように並ぶ。 その中から、ノイズがかった“ナニか“を映した動画を見つけるのはそう難儀なものではなかった。 これで間違いないだろう。 組織の真相だと、確信めいた自惚をもったままクリックしてみる。

2020-03-20 09:04:49
ㇲ​​​​- @su_cxb

開いた瞬間、悪寒が身体を襲う。 暗くノイズがかった映像のなかに、女性の劈く悲鳴が突き刺さるように聴こえる。 見てはいけない。 そう確信した刹那。視点が鮮明になり始め、否応にも声の主が目に飛び込んできた。

2020-04-02 09:09:27
ㇲ​​​​- @su_cxb

映像は窓から覗き込む形で構成されていた。 そこに佇むのは手術台へ縛り付けた、女性。その声は自分が最も聞く波長──つまり、私のものと酷似している。 嫌だ、嫌だ嫌だいやだ。 下腹部が、今までにない程に疼く。 白い肌に、無慈悲なロボアームが入る。そして一繋ぎの‘’母胎‘’を引き摺り出した。

2020-04-14 09:02:32
ㇲ​​​​- @su_cxb

思えば私も仕事に追われ幸せな暮らしを夢見るばかりで、救いを温かな家庭に求めていたつもりだった。 いつしか女性らしい痛みも無くなり、在るのは自分の劣等感と身を引き裂く苦しみだけ。 ㅤ ──ああ、私は何も成せなかったんだな。 狂気に取り込まれ、‘私’の自我は二度と目覚めることは無かった。

2020-05-08 10:07:42
ㇲ​​​​- @su_cxb

────── そこに今まで尋問を執り行った正義感は無く。 ただ正気を失い、虚ろな目線を下ろす一人の女性が居た。 彼女も哀しき被害者なのか。 目の前の罪悪感と、ただ一つの庇護に板挟みになる空間が息苦しい。 ㅤ ──ッそうだ。 アンドロイドの少女に繋がれたプラグを外し、静かに揺り起こす。

2020-05-13 09:17:01
ㇲ​​​​- @su_cxb

しっとりとした睫毛はゆっくり羽ばたき、鮮やかな彩の水晶が覗く。 しかし少女は後ろめたさを隠せないのか、憂いの面持ちのまま顔を背ける。 私は何も投げかける言葉が無いまま、少女を率いてこの場を離れようとした。 ……?格子戸のロックが、外れている? 引くと金切り音を上げ、道が開かれた。

2020-05-13 09:17:01
ㇲ​​​​- @su_cxb

───未来のある若者二人は離れ、正気の失せた狂女はただ有りもしない救済を待つばかりであった。 たとえ自分を陥れた淫魔を招こうとも… 「楽になっちゃお?」 紅い双眼の持ち主がその目を細める。 未熟な卵が蛇に睨まれるように。 既に手中に嵌った女はただ淫魔の施しを受け入れるしか無かった。

2020-05-27 10:31:31
ㇲ​​​​- @su_cxb

─────── 天気雨。 荒廃した大地にも等しく朝日が差し込み、雨は降り頻る。 どうやら夜に収容された後に一、二日ほど経過したようだ。 くぅ。 何も食べてないことに気づく。 少女を連れ、雨から逃げるように、木陰の元へ腰を下ろした。 取り返した食料を頬張りつつ、今までの出来事を省みる。

2020-05-30 10:51:53
ㇲ​​​​- @su_cxb

食料を切り分けている傍らで、少女は呆然と空を見上げている。 いつの間にか晴れていたのだろう。鮮やかな虹霓が架かっている。 「に…じ……」 その光景を少女は噛み締めるようにつぶやいた。 都市部の煌びやかな蜃気楼とは対を成すような幻影を、造られた瞳は何を思って映し出しているのだろうか。

2020-06-09 10:11:36
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まとめたひと
Re:Xa🐥(リクサ) @Lilly_anell94

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