「皆全て自由の主人であり臣下ではない」。 ……良い言葉だ。 魔法使いの嫁 - ヤマザキコレ / 第59話「Slow and sure.I」 | MAGCOMI magcomi.com/episode/108341…
2020-03-20 01:54:38「皆全て自由の主人であり臣下ではない」にはドイツ語でルビが振ってあるのだ。 これの元ネタは恐らくルターの以下の一節なのだ。 「Zum 1.: Ein Christenmensch ist ein freier Herr über alle Dinge und niemand untertan.」 de.wikipedia.org/wiki/Von_der_F…
2020-03-20 01:57:52意味は「クリスチャンはすべてのものの上に立つ自由な主人であり、誰にも従属していない」なのだ。 そして、「クリスチャンはすべてのものに奉仕する僕であり、だれにも従属している」と続くのだ。
2020-03-20 02:00:48ルターが『キリスト者の自由』で著したこの言葉の意味は、クリスチャン(=キリスト教徒)は、誰にも支配を受けない自由な存在であり、そしてあらゆるものへの奉仕者でもある、ということなのだ。自由と献身。当時のキリスト教的な精神を反映した言葉なのだ。
2020-03-20 02:00:55そして今回、ヤマザキコレ先生はルターの言葉を引用するに当たって、クリスチャンを「皆」に変え、後半の一節は引用しなかったのだ。 それには恐らく、当時のキリスト教徒=よき心を持ったすべての人々、というニュアンスがあったこと。また、現代では信仰の内容で人を測らない時代となったこと。
2020-03-20 02:05:09そして、アリスに「自由に生きて欲しい」という願いに、理屈では理解しながらも心が囚われるミハイルへの「『自由』に縛られるべきではない」というメッセージ、という文脈と意図が込められていると思うのだ。
2020-03-20 02:05:17ルターの言葉では「すべてのものに縛られない自由」が謳われていて、けれど魔法使いの嫁では「『自由』に縛られないこと」へのメッセージとして、一部を変えて引用されているのだ。
2020-03-20 02:09:14『自由』とは理想であり、それ故に追い求め過ぎればかえって自縄自縛に陥ることもある。「自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか」という処刑前のロラン夫人の言葉もあるのだ。 時代の変遷を経て、信仰の在り方や意味も変わり、言葉一つを取っても響き方は変わってゆく。
2020-03-20 02:09:47けれどいつの時代も、人は『自由』を希求し続けるのだ。それはおそらく、我々が自由意思を持つ存在であるが故に。己の子に、弟子に、その可能性を妨げられることなく羽ばたかせて欲しいと願うが故に。 良い言葉なのだ。そして、良い引用の仕方だったのだ。 つまりは、良い物語なのだ。
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