『おやすみ、また明日。』( yosugara90.booth.pm/items/5688667 )を読みます pic.twitter.com/twi1mrIQZl
2024-04-30 15:04:25つい先日のゲームマーケット合わせでリリースされた新作です。作者はコノエマコトさん――デビュー作『サヨナラドライブ』( yosugara90.booth.pm/items/5410451 )が記憶に新しい、まさしく“新進気鋭”という表現が適したひとですね。
2024-04-30 15:06:55版型はA5、ページ数はPDF版で44。本文は2段組をベースとしつつ、それを外れるページもある、という感じ。 pic.twitter.com/7fBrr750hS
2024-04-30 15:10:22まず表紙のデザインがとてもクール。 カバーイラストも、おそらくはゲームの雰囲気を反映しているのであろう、物静かで落ち着いたテイストのなかに、フェチズムを感じさせる味わいがあります。 pic.twitter.com/sJzQ16sLAo
2024-04-30 15:12:33ページ配分は、 予備説明6ページ キャラクター作成ルール13ページ 進行ルール13ページ くらい(目次より) pic.twitter.com/dyMrysm31m
2024-04-30 15:17:23想定人数は、プレイヤー2名のみ or それに進行役を加えた3名。 一般に、このたぐいのペア系のゲームは、当事者のみで完結するほうが都合のよいケースと、第三者が進行してくれるほうが都合のよいケースがあるので、ここを可変にしたのは適切ですね
2024-04-30 15:20:54再び掌編小説。 今度は巻頭のものからノリとリアリティラインが大きくずらされていて、おそらくゲームがとりあつかえる幅のひろさを提示する意図がある
2024-04-30 15:25:40ふたりのPCをそれぞれ「PC月」「PC星」と呼称するのは面白い。 かつては『シノビガミ』のシナリオにいくらか見られたメソッドですね。このゲームの場合、独自用語の持ち込みを避けつつ、数字の番号を振るようなパターンと違って二者間の序列をなくす効果がある
2024-04-30 15:28:53> ただし、PCの抱える〔心配ごと〕は、この夜で必ず解決するわけではありません。もっとも大切なことは、ふたりで同じ時間をすごし、共に孤独とその悲しみを癒すことなのです。 (p.06より) イシューの在り処(要素のゲーム上の意味づけ)を明文化している。グッド。
2024-04-30 15:30:39〔心配ごと〕を解決しなくていい、というのは、“このゲームの中心が〔心配ごと〕ではない”ことの明示であるとともに、“このゲームが〔心配ごと〕に干渉しない”こともあらわしている。 つまり既存のキャラクターをこのゲームに持ち込んだときに、キャラクターの事情に対する副作用がないということ
2024-04-30 15:34:58p07内「やってはいけないこと」に「R指定が付く展開にすること」があるのがなかなか興味深い 同じ寝床に就く、というゲームのセッティング上、まあまあ自然にそういう展開に向かう余地があると思うのだけど、それを明確に禁じてるのはゲームがまとう雰囲気の統制かな
2024-04-30 15:39:23p08「いつものお決まりのことばたち」 他のゲームにもよく見られる用語定義を、この言い回しでくくったのは上手いかもしれない
2024-04-30 15:40:47対して次ページには「このゲーム特有のことばたち」があって、このなかには“他のゲームにも同じ文言はあるが、意味するところはこのゲームの定めによる”タームが多い。 「いつもお決まり」「このゲーム特有」という区分を用語集にもうけることで、後者の注視を自然に要求しているのがクール。
2024-04-30 15:43:58三たび、掌編小説。今度も異なるノリで、そして複数の舞台設定(状況設定)を連想させるものが束ねられている。ゲームの間口の広さを、静かに掌編を重ねるだけで語っていくのめっちゃクール。
2024-04-30 15:49:31P12以降、「ストーリートーン」「PCの関係性」「世界観」を決めることに言及する段で、ここまで掌編小説ですでに世界のひろがりを示してるおかげで自然と諒解できるようになってるのは構成がうまい
2024-04-30 15:55:14p17 > キャラクターを作成するときにもっとも重要なのは「これからPLがそのPCのRPができるかどうか」です。 ごもっとも
2024-04-30 16:01:45p18、〔心配ごと〕について「このゲームとキャラクターの根幹に関わる要素であるため、ここは時間をかけて慎重に決めてください」とのこと。 こと〔焦燥〕については例示と解説で3ページ半ほども割かれており、「時間をかけて慎重に」の意思が物理的に体現されている……。
2024-04-30 16:05:00他方、〔自分の心配ごと〕〔相手についての心配ごと〕は合わせて3分の1ページほどしかとられておらず、キャラクターに閉じたトピックは細かく言わずともできるだろ、という信頼を感じる
2024-04-30 16:06:30p23内「声を決める」 項目の存在自体がセンスの塊。すくなくとも日本のゲームでキャラクターの声について意識的にとりあつかってるの、自分以外だと初めて見た気すらする。
2024-04-30 16:08:52> どうして声質を決めるのか、疑問に思った方もいるかもしれません。 その理由は、このゲームの情景として、夜の闇の中や暗闇を想定しているからです。暗闇においては、容姿や見た目の特徴よりも、声の情報のほうが優先度が高くなります。 これは前作『サヨナラドライブ』のノウハウでもありますね
2024-04-30 16:09:43キャラクターシート、一枚に双方が向かい合って記述するようになってて、これがベクターデータで実装されてる(ラスタライズされてない)のちゃんとしてますね
2024-04-30 16:12:13p26 進行をフローチャートめいて示すとともに、(PDFにおいては)各要素の該当ページへのハイパーリンクが提供されている。グッド
2024-04-30 16:14:00p27内「キャラクター紹介」 > PLはお互いに、相手PCの好きなところ・気になるところを1つ以上挙げて、相手PLに伝えてください “他のPCへの関心とその表明”を仕組みとして盛り込んでいる。このゲームがもっぱら二者間でのコミュニケーションをあつかう以上、これはきわめて重要
2024-04-30 16:18:08「宵の口:はじめに」とか「プロローグ:夜のしじまは破られる」とか、ゲーム上の段階をあらわす語にフレーバーを盛りつけてあるの、いいですね。 雰囲気が重要なゲームだから、場の区切りに無味乾燥とした文字列が出てきてはいけない。一方で呼びやすい字句も含めてあって便宜が保たれている
2024-04-30 16:21:08p27内「プロローグのつくりかた」、めっちゃいい あつかえる時空の幅がひろいから決まり文句は用意できなくて、代わりに手引を用意せざるを得ないところ、この手引はあまりにも洗練されている。 これに従って順繰りに書き連ねていけば十分に上等な導入文ができてしまうじゃん…… pic.twitter.com/5ZgESVRoDu
2024-04-30 16:23:51ロールプレイや描写をうまく引き出すには、まずあるていど味と重みのあるテキストで導入するのが非常に重要なわけだけど、それをつくりだすための手引としてこれは上手すぎる
2024-04-30 16:25:16出目の一致を参照すること自体はメカニクスとして新しいわけではないけれども……、 このゲームでダイスを使う理由とダイスがあらわす意味、進行度と連動させる仕掛け、恣意性と偶発性を併せ持った(真の意味での)ロールプレイランダマイザ機能、などがきわめてうつくしく調和している
2024-04-30 16:33:23とくに“ロールプレイに対するランダマイザ”としての建付けがマジで綺麗。ゲーム自体が「眠れない夜」にシチュエーションを限定することで、とりうる乱数の幅にきっちり意味が与えられてて、ダイスという道具を使うことの意義が確立されている。
2024-04-30 16:37:09p34 > このゲームのシーンの切り方としておすすめなのは(眠れるか眠れないかはともかくとして)、PCが目を閉じようとすることです 技術だ……
2024-04-30 16:39:18p34「リコローグ:今は少しだけ前を向いて」 PCごとにゲームをとおして1回だけ心情が変わる機会がある。 既存のゲームでもたまに見られたものと同様のアイディアだけど、このゲームにおいては自然とオチをつけられるのが美味しいですね。(『エネカデット』の「卒業フェイズ」が比較的ちかいか)
2024-04-30 16:47:27p37、「感想戦」の語はいまいちだなァ。(RPGのコンテクストも含めて、俗な使われ方をちょくちょくする語ではあるけれど、)語の本来指すところからすると、このゲームのプレイ後の振り返りとしてはあきらかに不適当
2024-04-30 16:51:32ひととおり読んだところで、組版。 短辺を割る2段組ということと、小口ノドのスペースが不均等であり単ページで読むときに据わりが悪いこと、という二点さえさておけば、およそ理想的といっていい組版です
2024-04-30 16:56:59各要素に野暮ったさがほぼなく(本文のboldだけはちょっとどうかと思う)、それでいて必要なものが必要なだけの存在感を主張している誌面デザインがグッド。 まだ、2段組を基本とはしつつも、ページの内容ごとに局所的な最適化がされている箇所も多く、とてもよく努力されている。
2024-04-30 16:59:50PDFもハイパーリンクなどが充実していて、おおむねちゃんとしています。 ブックマークがあればなおよかった(できればバージョンアップでつけてほしい)
2024-04-30 17:00:53というわけで、『ふたりで眠れない夜を越えるTRPG おやすみ、また明日。』( yosugara90.booth.pm/items/5688667 )読みました。 ルールデザイン、ライティング、書誌構成すべてがよくできている傑作です。とくにルールデザインはきわめて洗練された天才的なそれであり、大いに感動できるところ。
2024-04-30 17:03:13全体をとおして、作者コノエマコトさんのRPG経験がよく反映された(と感じられる)造りになっていて、現実のゲームシーンに対して違和感なくフィットするはず
2024-04-30 17:05:23雰囲気が重要なゲームであり、それを自覚して雰囲気の形成・表現に気をつかっているのもグッドですね。 “このシチュエーションが好きなら、まず間違いなく楽しめる”といっていい出来栄え。ワンイシュー型のRPGの理想形のひとつ、とすら言えるかもしれない。
2024-04-30 17:07:26他方、ルールデザインや書誌構成がクールなのはさっき言ったとおりで、なんならシチュエーション云々をさておきルールブックを読むだけでもとても興味深く楽しい。ルールブックマニアのひとにはぜひ読んでほしい。
2024-04-30 17:08:47