ついにやってきた私の結婚式。この花嫁姿のドレスだって、付き合わせた親友の前で何度も選び直したのを覚えている。 にしても、いくら同性の親友だからって、少し見せびらかしすぎたかな。 …ううん、いいんだ。だってもう、あの子とは親友じゃないんだからね。 「さあ、新婦と新婦の入場です!」
2019-06-29 22:01:25雨に濡れた紫陽花に陽光が反射するのが美しい六月の時期。「似合ってるよ」「ありがと」純白の花嫁姿に身を包んだ彼女がはにかむ。ジューンブライドを狙ってプロポーズした甲斐があった。「嬉しい。初めてだもん」「小説の中にいるみたいだね」「あなたのおかげだよ」白い笑顔は彼女によく似合った。
2019-06-29 22:02:11#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) お題 ①ショートカット ②花嫁 ③紫陽花 pic.twitter.com/qpzQlwT5D4
2019-06-29 22:03:02生憎の雨を振り払うように、濡れた傘を回してみる。出さずじまいの返信。君の白い花嫁のドレスは、紫陽花と一緒に滴をはじいているだろう。懐メロの歌詞のように君が帰らない覚悟で遠くに行くのを許すほど、僕らの周りは寛容じゃなかったね。さよなら、ショートカットのように容易い幸せを選んだ君よ。 pic.twitter.com/CdtQaIqlYr
2019-06-29 22:03:396月の花嫁は幸せになる、と言うけれど。ショートはアップにした時に曝される項もなければ耳も年中丸出しで色気の欠片もない、なんて。 「このデコルテとか」 指でなぞるとピクリと肩が跳ね上がる。 「耳が感じやすいって僕以外知らないでしょ?」 サロンで休憩に出されたお菓子は『紫陽花』だった。
2019-06-29 22:05:07純白をまとった君はこの世のものとは思えないほど美しい。 ヴァージンロードを歩く君の視線は祭壇で待つ花婿に注がれていた。 同じ道を歩いていると思っていた時期もあったけれど、君の隣にいるべきなのは彼だと今はわかる。 君は今、世界で一番幸せな花嫁だ。 そして──さようなら、俺の初恋。
2019-06-29 22:06:36──あなたは紫陽花のような人ね そんな言葉が忘れられない。 どういう意味だろう? 「君が浮気性って意味だよ」 「つまり?」 「紫陽花の花言葉には『移り気』『浮気』って意味があるから」 「……僕はみんなが好きなだけだよ」 「それが浮気性に見えるんでしょ」 本当は、僕が本命に臆病なだけ。
2019-06-29 22:07:04ふたりきりの野原で、君の薬指に、白詰草の花を指輪のように飾った。 「プロポーズみたいよ?」 「それで合っているよ」 僕が応えると、君はクスクス笑った。 「いいの?白詰草の花言葉は、私のものになって・約束…そして復讐、なのに」 僕は、いいよと微笑んだ。 未来の花嫁に、命懸けの愛を誓おう。
2019-06-29 22:08:33散る姿を愛でられる桜は それが本望なのかしら 雨降りのせいで人目につかず 働き盛りときれい盛りが手を取って 泥にまみれて消えていき 太陽の季節が来る前に あまり目立たず枯れていく 私はきっとそんな花 ……だと悲観してたのに 気がつけば幸せへのショートカット 今日の私は 虹を見上げる白い花
2019-06-29 22:08:57Windowsが普及する以前、パソコンは一部の技術者しか使えない不便な道具だった。その不便さを補うために長年かけて培われたのがショートカットである。 「こうしてこうすると早いよ」 先人の知恵が成せる業である。 時は矢のように過ぎゆく。紫陽花の季節は一瞬で、捕まえるべき花嫁には前髪しかない。
2019-06-29 22:10:35六月挙式という気取った事をしたのが二十余年前。彼女は、まだあの思い出を嬉しそうに語る。あれ以来髪を短くした彼女にその理由を問うと、私があげた紫陽花モチーフのピアスを見せびらかしたいのだと言われて、苦笑したのも昔。 明日、私達は娘にあのピアスを贈るのだ。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/IrkAMxvvpa
2019-06-29 22:20:42雨中、雨傘を差して転ばないように走って間に合わせて。 急がないと約束に遅れてしまう。 道をショートカット。とにかく間に合わせることを優先したら、 見たことのない紫陽花が咲き乱れる場所に出て、 「わ……」 白無垢に狐面の花嫁の行列が見える。 ああ、そうか。 今は天気雨。 狐の嫁入り、だ。
2019-06-29 22:27:53三十年前あなたの花嫁になった時と、同じ髪型に戻った。少年みたいなショートカット。一番長い時は、背中半分ぐらいまであったのだが、その頃の私達は、最も遠くに居たような気がする。紫陽花の色が変わるように気まぐれな私のこと、よく我慢してくれたなと。白髪の増えたあなたの寝顔をそっと見た。 pic.twitter.com/6cgXGSyAIp
2019-06-29 22:41:11雨模様は落ち着き、紫陽花の花弁に水晶の煌めきが見える。 優しく見下ろす君は、真っさらな無垢のドレスでスツールに腰掛けていた。 僕に気づいて振り向く。 ショートヘアだからと少し残念がった君が愛しくて唇がフライングしそうになる。 人差し指でそっと止められた想い、愛しい微笑みが返ってくる。
2019-06-29 22:43:08#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) お題/ショートカット(短い髪&近道)・花嫁・紫陽花 pic.twitter.com/xOUCYvsfII
2019-06-29 22:56:14