今度デートしない？

ゆーや @yuuya_kdn

『今度デートしない？』アカウントを教えたばかりの義兄からきた最初のメッセージがそれで目をしばたたく。デートとは男女でするもの、膝丸も兄も男ではデートにはならぬ。だがこれは膝丸の気持ちをほぐそうという気遣いか。わかったと返すと即座に笑顔のスタンプが飛んできて、膝丸も思わず微笑した。

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「楽しかったね」そう言って笑った兄の笑顔はまさに花のようで。「あれ。そうでもなかった？」「あ、いや」兄に顔を覗き込まれて慌ててかぶりを振る。「俺も、楽しかった」まるで娘が彼氏にエスコートされるようなこんな「デート」が。はにかんで笑うとよかった、と兄が破顔して、胸がとくりと鳴った。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…

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「動物園なんて子供っぽかったかな」ゲートを出た先のカフェで、兄はさぐる視線で膝丸を見る。「…いや。楽しかった」「本当？」かぶりを振ると兄はぱあっと笑顔になる。「またデートしてくれる？」「もちろんだ」社交辞令ではなく頷いた。遊園地、動物園。次はどこだろうと楽しみにしている己がいた。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…

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「にいさ」「兄者はどう？」呼ぶ半ばで遮られた。「あに、？」「だってきみ、にいさん、っていつもすごく言いづらそうだから」きょとんとした膝丸の目をのぞきこんで兄はにこっと笑う。「きみの性格だと、兄者、が合うんじゃないかと思うんだけど、どう？」「兄、者」呟いてみたらひどくしっくりした。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…

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老いらくの恋、とは言わぬ。子を育て終え自由になった人たちの恋に何の異論があるものか。しかし。「やあ、きみが弟？」突然の弟という立場に戸惑う膝丸に、義兄は朗らかに笑う。「向こうは向こうで楽しくやっているのだし、僕らは僕らで仲よくしようね」その笑みになぜか胸の奥でざわりと波が立った。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…

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「静かでいいね」「そうだな」兄の低い囁きにぎこちなく頷いた。いつもよりも兄との距離が近い気がして、どぎまぎする。「ねえ」「！」するりと、兄の指が膝丸の指の間に絡みついてきた。心臓の跳ねた次の瞬間、引き寄せられ、水槽の影で唇を重ねられていた。くらりと頭の芯が痺れて、背が甘く震えた。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…

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「兄者この箱はどこへ」「弟、これどこへ飾ろう？」一緒に暮らそうと言ったのは兄で、膝丸も異存はなかった。今となっては老親の再婚も膝丸らが一緒になる布石だったかとさえ思う。だが。己は何かを忘れている。そんな気がしてならぬ。時折兄が泣きそうな目をしている理由がどうしても分からなかった。 twitter.com/yuuya_kdn/stat…