あるいは飯野海運興隆記 ※ツイートつぎはぎ状態で読みにくいですごめんなさい
0
天翔 @Tensyofleet

1928(昭和3)年3月、1隻の特務艦が艦籍を除かれた。給油艦野間である。本艦は、1919年に英国のWar型戦時標準タンカー"War Wazir"を建造中に購入したもの。 ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E… pic.twitter.com/FZZvEZk2Uc

2020-02-16 20:49:12
拡大
天翔 @Tensyofleet

その就役期間は短く、竣工からわずか4年後の1923年に第二・三号主缶の炉筒に亀裂を生じ、その後は予備艦として係留されていたようだ。 野間 jacar.archives.go.jp/das/image/C080…

2020-02-16 20:55:21
天翔 @Tensyofleet

さて、廃艦となった野間は競売に付されることとなった。この入札に、当時海軍との関わりが深かった呉の小さな海運会社が参加を決めた。 除籍特務艦野間廃舩処分の件 jacar.archives.go.jp/das/image/C040…

2020-02-16 21:03:01
天翔 @Tensyofleet

片手で数えられるほどの小型船しか持たない会社である。神棚にお供えをし、丁半を繰り返して決めた入札価格は18万円。 pic.twitter.com/2ieYeGzRUP

2020-02-16 21:06:27
拡大
天翔 @Tensyofleet

そして迎えた入札当日朝、「危ないような気がする」と5千円足して入れたところが、海軍の最低予定価格が18万円。海軍から秘密が漏れたか、と取り調べを受けたが、無実と判明して一週間後に落札が決定したという。

2020-02-16 21:09:27
天翔 @Tensyofleet

落札した野間を播磨造船所で修理し、日本丸と改名して太平洋航路で海軍の重油輸送に当たらせた。入札価格の1割を積む保証金にさえ事欠いたこの海運会社、当時の商号は飯野商事。後のタンカーオペレーターの雄、飯野海運の前身である。 pic.twitter.com/EdL4HC2B5g

2020-02-16 21:13:33
拡大
天翔 @Tensyofleet

さて、修理を頼んだ播磨造船所への支払いも長期の分割とし、その修理費35万円と乗り出し費用10万円を東京海上火災から全額借り入れ、なんとかタンカーを手に入れた飯野商事。運航収支で言うと、採算は取れなかった。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2020-02-17 20:43:04
天翔 @Tensyofleet

1929(昭和4)年7月から5年間の運航収支を見ると、4万5千円の赤字である。そして5年目の1933年5月、日本丸はロサンゼルス南方で座礁沈没してしまう。乗組員が全員救助されたのは幸いであった。

2020-02-17 20:49:49
天翔 @Tensyofleet

加えて、本船に掛けてあった海難保険50万円が下り、代船を新造する建造費260万円の一部に充てることとする。こうして建造されたのが極東丸(10,051総トン,第一次船舶改善助成施設)である。 pic.twitter.com/3o4BoOAruF

2020-02-17 21:05:20
拡大
天翔 @Tensyofleet

この時までに、飯野商事は富士山丸(9,527総トン,18.8ノット)、そして川崎型油槽船の第1船東亜丸(10,052総トン,18.4ノット,第一次船舶改善助成施設)を竣工させていた。 pic.twitter.com/hSN9AII88n

2020-02-17 21:15:39
拡大
拡大
天翔 @Tensyofleet

次いで同社戦前最後の新造タンカーとなった川崎型油槽船の東邦丸(9,997総トン,20.1ノット)を建造し、飯野商事は以上計4隻の最新鋭1万トン級高速油槽船を持つ海運会社に成長した。野間の購入からわずか8年後のことであった。 pic.twitter.com/oC96Y64tZm

2020-02-17 21:23:34
拡大
天翔 @Tensyofleet

たった4隻で?と思われた方、戦前日本の大型タンカーは新旧中古取り交ぜて42隻(+捕鯨母船6隻)しかいないのです。。。

2020-02-17 21:35:06
天翔 @Tensyofleet

さて、飯野商事の建造した油槽船は下記の4隻だが、東亜丸と極東丸は第一次船舶改善助成施設によって、それ以外の2隻は自力で建造した。。。訳ではない. 富士山丸(9,527総トン) 東亜丸(10,052総トン) 極東丸(10,051総トン) 東邦丸(9,997総トン) twitter.com/Tensyofleet/st…

2020-02-24 22:31:12
天翔 @Tensyofleet

時は少し遡り、1929(昭和4)年6月に海軍が公布した優秀船保護政策を受けて、飯野が新船建造を決意して申請をしたのは翌30(昭和5)年4月であった。建造は野間の修理を依頼した播磨造船に決まった。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2020-02-24 22:38:21
天翔 @Tensyofleet

1929(昭和4)年6月、海軍は優秀船保護政策を公布した。後の船舶改善助成施設などに比べて余り知られていないが、載貨重量トン1万トン以上、満船速力14ノット以上のタンカーに積み荷を保証し、また海軍用石油を輸送する場合には、民間よりも有利な運賃を適用するというものである。

2020-02-03 22:05:52
天翔 @Tensyofleet

播磨にそれぞれ1隻と2隻の建造見積もりを取ったところ、2隻の場合は1隻当たり20万円安かった。そこで1隻だけれどもなんとか2隻の単価で、と交渉し、215万5千円で1隻の建造が決まった。

2020-02-24 22:42:09
天翔 @Tensyofleet

契約保証金の30万も半値に値切って15万、残りは6か月後に15万もしくは30万、進水時に15万、受渡時に残額全部の支払いとしてもらい、建造したのが富士山丸である。なお、輸入品の主機MANディーゼル7,200馬力1基の価格は70万円だったようだ。 pic.twitter.com/DPnhFI70rm

2020-02-24 22:45:25
拡大
天翔 @Tensyofleet

建造資金は同29(昭和5)年度に開始された「造船資金貸付補給制度」の適用を申請することとした。余り知られていないが、日本興業銀行が建造資金の融資を行う制度である。

2020-02-24 22:58:13
天翔 @Tensyofleet

しかし、興銀は融資の条件として海軍から永久使用の証明書を取ってこいと言い、一方海軍は出し渋り、なかなか許可が下りない。播磨造船所が海軍に手を回し、なんとか証明書を出させて110万円の融資が決まったのは31(昭和6)年1月のことであった。

2020-02-24 23:02:37
天翔 @Tensyofleet

東邦丸もこの造船資金貸付補給制度を利用し、船価306万5千円のうち200万円の融資をうけて建造された。すでにタンカー事業が順調だったためか、前回ほどのドタバタ騒ぎはなかったようだ。 pic.twitter.com/dO9HF6IQYS

2020-02-24 23:09:11
拡大
天翔 @Tensyofleet

気になることに、東邦丸の融資の返済期限は1946(昭和21)年12月となっている。東邦丸は1943(昭和18)年3月29日に潜水艦により被雷沈没しているが、返済はいつ終わったのだろうか。

2020-02-24 23:11:43
天翔 @Tensyofleet

新造第一船の富士山丸の建造に際しては、播磨造船所に資金繰りの手配まで世話をかけた飯野商事であったが、続く新造船の建造も、当初は播磨に依頼する予定だったようだ。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2020-02-25 21:18:51
天翔 @Tensyofleet

富士山丸は順調に利益を稼ぎ出し、飯野は第二船、第三船の建造を計画する。ところが、詳しい理由は分からないものの、結果として播磨造船所はこの注文を受けなかった。船価が折り合わなかったのか、船台スケジュールの都合がつかなかったのか、あるいは前例に懲りたのか。

2020-02-25 21:23:46
天翔 @Tensyofleet

図面は別の造船所に回され、新船はそこで建造されることになった。この時建造を引き受けたのは川崎神戸造船所、建造されたのが東亜丸。川崎型タンカーの誕生である。 history.navy.mil/content/histor… pic.twitter.com/riSlU6LUOq

2020-02-25 21:29:49
拡大
天翔 @Tensyofleet

そういえば、川崎型油槽船がその名を冠して川崎造船所で建造されることになった経緯であるが、某所には「海軍が飯野に川崎での建造を要請した」と、「飯野が川崎に発注し、そこに海軍からの要求が盛り込まれた」の2説が挙げられている。 jmapps.ne.jp/yamatomuseum/d…

2021-04-04 17:30:44
天翔 @Tensyofleet

当時の海運関係者の手記によれば、「飯野が富士山丸の同型2隻建造を播磨に持ち掛けたが資金で折り合いがつかず、1隻では250万円だが2隻なら220万円、という船価を提示した川崎にその図面を回して建造することになった」らしい。

2021-04-04 17:33:29
天翔 @Tensyofleet

社史にはこの辺りの経緯が記述になく、いずれとも断定できる訳ではないが、「(当時の)飯野ならありそう」と思わせるものがある。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2021-04-04 17:37:39
天翔 @Tensyofleet

川崎型油槽船はどこから来たのか。その因子の継承をたどると、どうやら播磨相生の富士山丸であるらしい。写真は川崎型第1船の東亜丸。 twitter.com/Tensyofleet/st… pic.twitter.com/3GFhiKrElh

2021-04-18 12:29:06
拡大
天翔 @Tensyofleet

値切った上に契約保証金の支払い条件まで緩和してもらった富士山丸の船価は215.5万円であったが、主機はMAN社から70万円で購入した7,200馬力のディーゼルエンジンが載っていた。公試速力18.8ノットは当時日本最速である。 pic.twitter.com/TnJIOpuJMn

2021-04-18 12:38:45
拡大
拡大
天翔 @Tensyofleet

富士山丸はまたそれまでの油槽船とは異なり、日本で初めて油槽の縦通隔壁を2条として、不足気味であった船体の縦強度を強化している。川崎型もこれを受け継いで同じ構造になっている。 (左が富士山丸、右が東亜丸) pic.twitter.com/6j5D5vRN4m

2021-04-18 12:45:17
拡大
拡大
天翔 @Tensyofleet

要目も非常に似通っており、図面を眺めた限りでは、富士山丸の機関室直前の油槽を延長したのが東亜丸(=川崎型)、と言ってよいようだ。 pic.twitter.com/VMxqj7zLz6

2021-04-18 12:49:39
拡大
天翔 @Tensyofleet

一点大きな違いがあるとすれば、富士山丸はヤードポンド法で、東亜丸はメートル法で設計されている、という点だろうか。

2021-04-18 12:52:24
天翔 @Tensyofleet

そういえば富士山丸を建造した播磨造船、契約時点では赤字を覚悟していたらしいのですが、「相当の利益を見ることができた」とのこと。 pic.twitter.com/v2QfHlNJto

2021-04-18 15:17:25
拡大
天翔 @Tensyofleet

戦前の本邦高速油槽船の系譜が見えてくる、かもしれない図。播磨と川崎が同じ図面で建造しており、三菱横浜はどうやらオリジナルっぽい。 pic.twitter.com/f0bnNHnB3F

2021-05-01 20:47:54
拡大
天翔 @Tensyofleet

三井も播磨の系譜らしいが、三井は主機のB&Wディーゼル機関の全長が短くて済むから、その分機関室長さが短いのでは。 awm.gov.au/collection/C25… pic.twitter.com/O3AejiA4zq

2021-05-01 20:53:31
拡大
天翔 @Tensyofleet

日本の所有する民間油槽船48隻(捕鯨母船6隻含む)、うち満載で15ノット以上を発揮可能と考えられるのは、この表の三菱横浜の上から4隻を除いた19隻くらいではなかろうか。

2021-05-01 21:05:26
天翔 @Tensyofleet

雑誌「船の科学」Vol.5-No.10表紙より、油槽船かりほるにあ丸。旧名は極東丸(旭東丸,大八洲丸)、川崎型油槽船。 zousen-shiryoukan.jasnaoe.or.jp/item/genre07/c… pic.twitter.com/Jrdl7f7PKU

2020-04-26 20:16:50
拡大
天翔 @Tensyofleet

マニラ湾で着底状態の極東丸。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2020-04-26 20:17:44
天翔 @Tensyofleet

着底した川崎型油槽船極東丸(旭東丸,大八洲丸)の船尾から船首方向を見たもの。デリックのうち1本だけトラスブームになっている。 fold3.com/image/46950557 pic.twitter.com/4ZawYareiM

2016-01-16 20:41:56
天翔 @Tensyofleet

同雑誌Vol.5-No.9のP10に簡単な復旧工事の解説があるよ

2020-04-26 20:19:35
天翔 @Tensyofleet

かりふぉるにあ丸の復旧工事については、雑誌「船舶」のVol.25-No.11に詳細がある。当初12mの船体延長を行う予定だったものの、ロイドの許可が下りずに引き伸ばしは6mになった。 zousen-shiryoukan.jasnaoe.or.jp/item/genre07/c… pic.twitter.com/eumanAHkiW

2020-04-29 23:04:05
拡大
天翔 @Tensyofleet

改装を行ったのは日立桜島だけれども、機関は一旦陸揚げして製造工場の神戸川崎に送り返して修理、船橋楼も取っ払って新造しているらしい。 pic.twitter.com/1RDQMZGUwX

2020-04-29 23:07:52
拡大
天翔 @Tensyofleet

もはや軽荷の過負荷全力でぶっ飛ばす必要もなくなったので、公試の数字もおとなしい。本船は川崎型油槽船最後の生き残りとして原油輸送に従事し、1964(昭和39)年に解体されている。 pic.twitter.com/70j536ay8G

2020-04-29 23:11:25
拡大