私はPC-9801USが好きである。他の98も好きである。 自分の通っていた学校にはUSがたくさんあった。 当時の感覚でいうとPC-9801シリーズでこんなに小さいのはUV11くらいで(実際はUF/URも小さい)、非常に印象に残る機種だった。
2018-09-01 17:10:58この機種はPC-9801最小機種としては最高のスペックを持っており、ある一定以上の技量があればある程度のパワーアップ余地がある機種なので思うところのある人も多いのではと思う。
2018-09-01 17:11:27FM音源内蔵、メモリも2MBは増設可能、HDDも内蔵可能ととにかくコンパクトに収まる。 部活用にも使われてた機種で音源が載ってるのでFM音源をMMLを鳴らしたりしてた。 FAと比べると動作は重かった(この頃、FAを使っていた)。学校で触っていてそれは感じたけど、でもいずれ欲しいと思わせる機体だった。
2018-09-01 17:12:32まだその頃はSCSI外付けのHDDを使っていたのでHDDを内蔵可能なのも魅力的だった。FAでもHDD内蔵できるって? カゴに入れたアレ、でかいし高いしね…?
2018-09-01 17:14:00んでこのHDDはノート用。 でも実はこんな感じでSCSIで外付けする機器やファイルスロットで接続する機器もあったのだ。ノート用のHDDパックはコネクタの位置違いでUSに使えるものと使えないものがあるけどファイルスロット用のものは両方に対応しているスグレモノ。 pic.twitter.com/H5HfGaeW3N
2018-09-01 17:19:56このHDDパックは比較的CF化しやすいのも今となっては利点。 CF化すると軽いよ、重量が。512MBのCFを使えば良いが、ICCで容量制限も可能。ただしCFは容量制限出来るものと出来ないものがあるので注意が必要。
2018-09-01 17:22:05一定時期までのPC-9800のIDE認識上限は544MBだけど、これを超えた容量を接続すると通常はフリーズして起動しない。USはフリーズしないが544MBを超えた領域にアクセスすると0除算エラーになる。またUSでICCでの容量制限は問題なく出来るのでこの点もUSの良い点。
2018-09-01 17:23:46USをパワーアップするとなると、プレーンなところでは61SIMMの増設。 親ボードなしで1枚内蔵可能。ほかメモリカードとCバスで増設は可能だが速度的に優先されるべきは61SIMM。MS-DOS運用なら3MBでも問題ないんじゃなかろうか。
2018-09-01 17:24:59次いでクロックアップ。 簡単にいうとマザー裏面のチップ抵抗の移動による8MHz系→5MHz系への改造と水晶発振器を31.94MHzから39.3216MHzに交換することでCPUを16MHzから20MHz動作にクロックアップが可能。 比較的簡単でコストも大してかからない。厳密には39.3216MHzだが40MHz代用しても問題ない。
2018-09-01 17:25:37この際に水晶発振器は直接はんだ付けするのではなくソケット化しておくことをオススメする。クロック分離後に水晶交換してさらなるパワーアップ、上限を探るのに直接取り付けては面倒くさい。
2018-09-01 17:26:25この状態まで改造すると+5Vの電圧が5Vに達していると電源投入時に上手く起動しない症状がみられる。理由は不明だが電源入れて少し置く→リセットなどで起動するが確実に一発起動させるには+5V系電圧を4.8V程度に落とす必要がある。これはCPUを交換すると改善されるので386SXと何かあるのかもしれない。
2018-09-01 17:28:04更にクロックを上げるためにはメモリ・CPUと他のクロックを分離する。 ORDER SXCPUというICの78ピンを足上げしてランドに9.8304MHzを入れる。 こうすることでメモリ・CPUとそれ以外のクロックが分離されるので先に交換した水晶発振器を高クロックのものに変えればさらなるパワーアップが可能。 pic.twitter.com/9u65hI3qmF
2018-09-01 17:29:24ラッピングワイヤを使っているが被覆の耐熱性が低く半田ごての熱で簡単に溶けちゃう。パターン断線なんかのジャンパ補修修理には細くて取り回しが効くのでとても便利。
2018-09-01 17:30:49最後にCPUに手を付ける。 CPUアクセラレータが安全だが対応したアクセラレータは殆ど存在しないため入手難易度は高い。そのため、若干難易度が上がるがCPUを直接交換することになる。 QFPの張り替えになるため敷居が高いと感じる人も多いと思うが、実際はいうほど難しくはない。
2018-09-01 17:31:25386SXから交換する候補はCiryx Cx486SLC/Cx486SRx2、TI 486SXLC/486SXLC2、IBM 486SLC2。まぁどれもこれも今どきお店にはあまり売ってない。
2018-09-01 17:32:17ここからは偏見と間違いも多かろうと思う。 Cx486SLC/SRx2はいずれもキャッシュ1KBを内蔵。 SRx2はクロックダブラーでベース20MHz動作時なら40MHz動作するが思ったほどパワーアップしない。 CPUBENCHでは486SX 16MHzのFAにギリギリ勝てる程度。そもそもSRx2は単体で出回ったんだろうか?
2018-09-01 17:32:44Cx486SLCは現在でも500円くらいで購入可能。ローコストで体験できるCPU交換である。ざべや98バリバリチューンには386SXを張り替えた記事もあった。ザベに関しては98パワーアップ改造名人にも再録されているので興味がある方はご一読。
2018-09-01 17:34:34TI 486SXLC/SXLC2はいずれもキャッシュ8KB内蔵。 SXLC2はクロックダブラーを内蔵しており交換でかなりの効果が期待できると思ったが… このCPUを制御できるのはVEM486.EXEくらいだと思うのでVEM486.EXE使用での話だがクロック倍化をオンにした瞬間にフリーズする。実際に試した範囲での再現性は後述。
2018-09-01 17:35:24FDDからの起動時。 クロック倍化した瞬間にフリーズあるいは読み込みが急激に遅くなる。 完全にフリーズしていなければ電源のアジャスタで+5V系電圧を上げると読み込みが再開されるしMAX付近まで上げておけば最初から問題なく起動するようになるが5.4V付近は通常運用としては上げすぎだと思う。
2018-09-01 17:36:03HDDからの起動時。 クロック倍化した瞬間にフリーズする。これは電源電圧を上げても殆ど解消されないがFDDから起動してHDDを使う分には問題がない。 USではHDDもFDDも+5V系で動作しているので+5V系の電流不足の可能性もある。 電流=電圧/抵抗なので電圧を上げれば電流も大きくなりFDDならギリギリOK?
2018-09-01 17:37:02データシート、リファレンスマニュアルによれば386SX 16MHz は220mA。 これに対しTI 486SXLC2 50MHzはTyp640mA-MAX850mA。4倍近いのは流石に無理がありそうだ? +12V系からDCDCコンバータで+5Vを作ってそれをピン上げしたCPUの足に入れても改善されなかったので、関係ない別の要因がある可能性も高い。
2018-09-01 17:37:53+12V系にどれほど余裕があったのか?という話でもあるし電源を疑うなら外部電源も試してみるべきだよね。そもそも後で気づいたが倍化しなくともCLKEPSでクロックを調べると実行するたびに変動しておりクロック周りに障害を発生させる何かがあるのかもしれない。ちなみに複数のUSで試したが同様だった。
2018-09-01 17:39:08また、クロック倍化時はFM音源がおかしくなる(ドライバによる)。 これはVEM486.EXEの/TRAPFMで解消するけどUSとこのCPUとの相性の問題もあると考えている(現時点では)。 加えて後述のIBM 486SLC2と比べて「かなり熱い」。 アチッってなるくらい熱くなるので冷却面も気になるところではある。
2018-09-01 17:40:32実際に張り替えた上での個人的見解は「PC-9801USにTI 486SXLC2を貼り付けるのはあまり推奨しない」である。
2018-09-01 17:41:01んで最終的に結局はIBM 486SLC2になるワケで… 16KBという大きなキャッシュを内蔵し、当然のごとくクロックダブラーも内蔵。 386SX互換CPUとしては最強と言って良い。ただし3.6Vで動作するためそのまま張り替えて5Vを通すと壊れるかもしれない。もしかすると動くかもしれないけど、やめたほうがいい。
2018-09-01 17:41:28電源ピンを全部跳ね上げてそこに空中配線して電源を入れる。 これが微妙にめんどい上に入手性の問題もあってTI 486SXLC2を試したわけだけど最終的にTIもピン上げして電源入れたりしてみたことを考えると端っから素直にIBM 486SLC2を使うべきだった。
2018-09-01 17:43:13ラッピングワイヤで入れてみたが、思っていた以上に電圧減衰していたので(0.4Vくらい落ちてた)のでちょっと太いけど撚線で空中配線。長くしすぎたけど付けた後に切って剥くのが作業しにくかったので長すぎるままである。 pic.twitter.com/Y605Nxknvg
2018-09-01 17:45:17今から試したい方がこのツイートを見ちゃったなら、CPUはCPUアクセラレータから剥がすのが簡単と伝えたい。石単体はeBayなんかでも見つけにくいし海外在庫を持っている業者も個人は相手にしていない。探すのに無駄に時間を食うので中古のCPUアクセラレータから剥がしたほうが安い。
2018-09-01 17:47:05だいたい、こんな感じで仕上げる。CPU剥がすとか貼るとかよりも狭いスペースでどうにかしなきゃならないことこそ難しいのである。配線が美しくないのは深く考えずにいきなりつけ始めたのも理由である。 pic.twitter.com/kHt5ZIfMCy
2018-09-01 17:52:11秋月の可変DC-DCコンバーターキットを使った。 この方が狭いスペースにスッキリ収められると考えたから。 ヒートシンクに取り付けて、グルーガンで薄いダイソーのアルミ板に固定。 それをポリイミドテープを貼ったボード上にアルミ板についていた両面テープで貼り付けている。
2018-09-01 17:54:37ヒートシンクはDC-DCチップを冷やさなきゃ意味がないが固定する土台として使っているだけなので、そもそもヒートシンクを付ける向きが逆になっている。電位差もあまりないのでそこまで発熱しないと思うが必要なら上に小型のヒートシンクを貼れば良い。
2018-09-01 17:55:55さて、ハードウェア的には取り敢えずこれでOKだがキャッシュ制御はソフトウェアで行う必要がある。 これはどの互換CPUも同じだが、IBM 486SLC2とTI486SXLC2に関してはクロックダブラーもソフトウェアでオンにしないといけない。
2018-09-01 18:14:13フリーソフトで実現する場合、VEM486.EXEが全ての互換CPUに対応している。 Cx486SLC(SRx2)に関してはCPU張替えブームの火付け役だけあって他にもフリーソフトで対応したものはある(Cx486など)が他のCPUは選択肢が少ない。
2018-09-01 18:15:45他の選択肢としてIBM 486SLC2に関してはえらー15氏のERCACHE(vector.co.jp/soft/dl/dos/ga…)がフリーソフトとして挙げられる。これは極めて多機能な優れたソフトなのでPC-9801/21が現役だった時代に触った人も多いのではないだろうか?(自分は後に実装された仮想FDDでゲーム遊ぶソフトくらいに思ってたケド)
2018-09-01 18:19:28ほかにアイオーデータのCPUアクセラレータ付属の「PK486SQ.COM」かメルコのCPUアクセラレータに付属の「BLCACHE.EXE(MELEMM.386)」が使えるがアイオーはDL配布はしておらずメルコのみDL可能(buffalo.jp/download/drive…)。
2018-09-01 18:21:33VEM486.EXEを組み込む場合はこんな感じで組み込む。 DEVICE = A:\MEM\VEM486.EXE /U C+ /I2 /IB /TRAPFM バージョン1.31β13の場合は/CPUオプションがないとキャッシュ関連を弄れないがこのバージョンはVectorで配布されておらず作者HPで配布されていたので入手自体難しかろうと思う。転載禁止だし。
2018-09-01 18:23:5350MHzの水晶発振器使用時でCPUBENCHが57くらい。 これは結構なパワーといえるのだがVEM486.EXEでキャッシュを有効にするとその瞬間にフリーズすることがある。フリーズ後電源を入れ直したりして一度成功するとその後は電源を切って再起動しても暫くは問題なく起動するようになるが環境依存だろうか?
2018-09-01 18:25:33これはIBM486SLC2に張り替えたらコンデンサ追加する、みたいな記述を見つけたので試したほうが良い要素なのかもしれない。取り敢えずめんどいので後回し。
2018-09-01 18:26:34VEM486.EXEの/TRAPFMオプションを使わないとFM音源がおかしくなるドライバがある。 これはTI 486SXLC2でも同様で、単体でウェイトを入れるツールはあまりない。ERCACHEにもこの機能はある。また違うCPUの話だがFA用のアクセラレータなどもジャンパやドライバでI/Oのウェイトを入れるものがあった。
2018-09-01 18:28:32つまり想定外の速度でCPUが動作するとおかしくなるのはFM音源の症状としては定番である。FAは実際FM音源とFDDがおかしくなるからね、ODPとか使うと。
2018-09-01 18:29:14ちなみにBLCACHE.EXEwpCONFIG.SYSに組み込む場合はこんな感じ。 DEVICE = BLCACHE.EXE /S CL:2 CR:03ff RO:0000 PM:10 F0~FFはキャッシュしない設定だがこれはCx486のREADMEやCELLA.DATさんの体験談などからキャッシュしない方が良いと判断したため。
2018-09-01 18:30:30実際、Cx486SRx2でデフォルト設定以外の領域をキャッシュした際にSCSIのMOドライブで書き込みが正常に行えない不具合が出た事があり、深く考えずキャッシュすることは好ましくないと思われる。
2018-09-01 18:31:41おまけ。 IBM 486SLC2搭載のPC-9801USのCPUBENCH結果。 pic.twitter.com/SlnwNSHWLf
2018-09-02 20:15:33