第40回深夜の真剣140字60分一本勝負

しろにった りん @rin_shironitta

サイドテーブルの上、グラスに注がれたシャンゼリゼ。 鼻をくすぐる蜂蜜の香りと、ダウンライトの煌めきに煽られて、深く溺れていく。 吐き気のするほど甘ったるい言葉の愛撫には、わざとらしい喘ぎ声がちょうどいいでしょう。 都合の良い愛の囁きしか聞こえなくなるくらいに、激しい口づけを。

竜虎 @btbticc_org

ドラマーの腕が激しく動き、スネアの上をスティックが細かく跳ねる。ベースの指はリズミカルに弦を弾き、ギタリストはステージの上を縦横無尽に駆けている。ボーカルは、全身で歌っているようだ。 コンサートホールは、美術館だ。音楽は目でも楽しめる。 だから私は、聞こえない耳を恨んだりしない。

RAY/※※※ @growler_ray

世間はよく私へあれこれ言ってくる、ロリコンだの幼女趣味だの鬱陶しい。年の差だけで全てを判断されるなんて、世知辛い世の中 「さなちゃーん！」 「おかえりなさい、凪兎ちゃん」 けど、この輝く笑顔の前にそんなのは無力。罵詈雑言なんて私には聞こえない。この愛1つで私達は無敵なんだから

青い糸 ❁ @aoi_ito_

雨の中、人気の少ない美術館に足を運んだ。壁には美しい作品がずらりと並んでいて、暗めの廊下にライトがゆらゆらと美しい彩を照らす。 作品にはそれぞれ世界観があって 人物の作品では感情や、被写体が細かく写し出されていた。 数々の作品の想いや世界に心を奪われ 私にはもう…雨の音も聞こえない

夢夜 @ruya_reve

貴方の声が聞こえないだけで世界から色が消えたように思える。 モノトーンの世界で愛しい貴方を想い、ひっそり涙を零した。 その名前を唇に乗せる。 ──貴方を愛しています 夜の闇に愛の言葉が吸い込まれた瞬間、ふわりと懐かしいぬくもりに包み込まれた。 「今の言葉……もう一度言って？」

花滝ちかる @chikaru_toka

いつも優しくて、私を可愛がってくれる年上の貴方。 でも、私は貴方の妹じゃないのよ。 そう言ってやりたい。なのに。 ああ、頭の中は真っ白で、脈打つ自分の心臓の音しか聞こえないわ。 「俺から言おうか。好きだよ」 目が覚めるように聞こえた、貴方の声。微笑む貴方。真っ赤になる私。 #140字小説

Altair @_altair_73

伝えるつもりはなかったのに。花火の音でかき消された告白は、君の耳に届いたのかも分からない。僅かに動いた口から紡がれる言の葉も僕には届かない。聞こえない返事は君から伝わる熱と化した。微かに触れた小指は、やがて繋がれて離れない。最後の花が咲き終わったら、もう一度君に好きだと言うよ。

夢夜 @ruya_reve

聞こえないはずの声が聞こえた気がして目を開けた。 透き通った綺麗なその声は俺が生涯でただ1人愛した人のもので。 その名前を呼ぶと、お前はあの頃と変わらない微笑みを浮かべた。 ──行きましょうか 柔らかい唇が俺のそれに触れる。 お前との最期の口づけは、甘く優しく淫らで神聖なものだった。

夢夜 @ruya_reve

美術館に忍び込んだ俺の目的は贋作を盗み出すこと。 お目当ての彫刻のそばに寄った瞬間、懐中電灯の光に目が眩んだ。 「ごきげんよう、怪盗さん」 深みのある甘い声は間違いなく。 「今夜も来てたんだね、探偵さん」 「仕事なので」 「それはご苦労様」 明るさに目が慣れた時、あることに気づいた。

秋月蓮華 @akirenge

「あーあー、きーこーえーなーい」 聞こえているよねと言おうとして僕は言わず、美術館にサボりに行こうとした君を捕まえる。 「締め切り」 「シャンゼリゼ通りとかいきたいけど、美術館見たらやるから」 物書きの君、編集者の僕、僕は 「仕方が無い」 妥協した。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

「これは死後の楽園よ」美術館に飾られた絵画の前、彼女は断言する。「私たちの行けない楽園の絵」「僕たちが悪いことをしたから？」「いいえ、いいことをしなかったから。英雄にならなかったからよ」ならいいよ、今はそれより、君のことを考えていたい。世界の崩壊する音は、まだ、聞こえないでしょ？

水城弥生 @mizukiyayoi8484

美術館に飾られた一枚の絵。一面に広がる緑と色とりどりの花、無限に広がる青い空と所々に浮かぶ白い雲が私の目を魅了する。きっとここは争いがなく銃声も悲鳴も聞こえないのだろうと絵の世界に思いを馳せる。それがシャンゼリゼの絵で戦争で死んだ人の魂の行き場と気づいたのは涙を流してからだった。

青い糸 ❁ @aoi_ito_

道行く人が愉快に何かを口ずさむ。 でも私には、それが何か分からない。 そう、私には小さい頃から耳が聞こえない。でも、私は夢を追って、ここまで来た 皆が名を聞くだけで心を弾ませる リズムを上手く取れるわけでは無いけれど 必死にもがいてここまで来た。 オー、シャンゼリゼ。 ここが私の夢の道

峰庭梟 @sss_books

無力な俺の声なんて、どうせ誰にも聞こえていないだろう、僕はこれまでそう感じながら生きてきた。それは悲しさであると同時に気楽さでもあった。 だけど、君が僕に教えてくれたんだ。 自分の声を聞いていなかったのは、誰よりも自分自身だったってことを。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 / 聞こえない pic.twitter.com/nxbOytmRsH

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∫ MatoP @_Mato_P_

「今度は美術館いこ！」 君ときたフランス旅行。 パリのシャンゼリゼ通りを、君に引っ張られながら小走りで進む。 ずっと一緒にいたけど、全然発展しない関係。 僕の声も、気持ちも、全部彼女には聞こえない。 でも、いいんだ。 君と一緒にいられるんだったら。

くーか @kuhkatzen

はるばる来たぜ東京都美術館。朝一の新幹線で関西から。開館を待つ行列に並んで今か今かと待ちわびる。 ようやく開館。走らずに競歩で向かったその先に彼女が待ってた。 彼女と目が合った。周りの雑音も何も聞こえない、おれと彼女だけの贅沢な時間。 #深夜の真剣140字60分一本勝負

宇津木健太郎@受賞したヨ @KChickenShop

ギャラリィには人が居ない。金魚頭の学芸員は、抜け出したモナリザを探しに行った。この展示の目玉だったのに。明日はピカソの展示に行きましょう。君は云う。愛人が彼を取り合うコメディって聞いたゼ、と答えると、君は明るく嗤った。 夜明けを告げる、閉館の鐘が鳴る。 #深夜の真剣140字60分一本勝負 pic.twitter.com/BLsaGaK7GX

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春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

これが夢だとしても私は… 賑やかな通りでのランチが済むと、大きな美術館で彼とのゆったりした時間… ディナーの席で跪く彼、その手に包まれていた約束の輪… 「10年後、いや未来永劫。君こそが僕のエリュシオンだから」と モナリザが記憶から飛び、周囲の拍手も聞こえない。 「はい」の一言だけ

繭美 @140mayumi

お題/美術館・シャンゼリゼ・聞こえない #深夜の真剣140字60分一本勝負 #140字小説 #140字ss #創作男女 画像はフリーであった、歌川広重です。 pic.twitter.com/G0yocOfQVA

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春日聖奈@二代目 夜 @haruhino37

記憶の片隅にある流行歌。 凱旋門を眺めるその楽園には、人が溢れている。ほんの僅かな時を過ごし、私は通りの先へと歩いて行く。 真夜中のルーブル。 歴史と文化と時が見える場所。 現実から切り離され、雑音はすでに消えた。私が語らうのは物言わぬ宝物達。遥か悠久の先生へと飛ばす歪んだ片思い。