意識の低い就活生森山の限界

意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

おっと、メールだ。なんだ、笠松は来ないのか。アイツがドタキャンって珍しいな。…体調不良ってウソだろ。「黄瀬には昨日会ってきたから」ってそうゆう問題じゃねーだろ。こうゆうときくらい素直に見送れよ！

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おはよう。今日は説…じゃなくて黄瀬の見送り行ってくる。 http://t.co/j8yV6vaKco http://t.co/LQLQ6a2zMP そーだ、ついでに中村にお礼しねーと。 http://t.co/MAWPJ1DCce http://t.co/Dw54je7eEz

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http://t.co/cyr84ku3m1 笠松の誕生日からもう２ヶ月か… ゴメン、電話だ。 今度は何だよ。今オレ月曜までに提出の履歴書を書いてて忙しいんですけど！

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「もしもし黄瀬？ …台風とカブんなくて助かったな。…今から？ 何時間後に会うだろ。…バスケ？ 何、誰かいんの？ …2人で？ ……はいはい、大人気プレヤー黄瀬涼太選手のお相手をさせていただきますよ！ …わかってるって。笑 …ああ、オレも30分くらいで着くから。お手柔らかに頼むぜ。」

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最後に黄瀬がレクチャーしてくれるってさ。リーグ戦でもうすぐ緑間の大学に当たるからキセキの世代とプレイできるのは正直ありがたい。 バスケできて空港にも行ける格好…黄瀬がいれば女の子寄ってくるから気ぃ抜くわけいかねーし…きょう、何きて 生きていこう。

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盛れてる？ http://t.co/RgXUOZtPdr

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ストバスに何やら眩しいヤツが…！と思ったら黄瀬だった。変装しろ。有名人は顔より先にオーラで分かるってホントだな。久しぶりのナマ黄瀬すげー。なんて考えてしまったオレは黄瀬が後輩だったことを忘れかけているのかもしれない。これじゃ高校時代オレの微々たるイケメン力が霧散したのも仕方ない。

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ハーフラインをピンポイントで叩くドリブルをその場で数回。 球の感触を確かめた後、流れるようにシュート動作に移る。 既視感。緑間のフォームだ。 描かれている美しい放物線をムシして黄瀬が振り向いた。シャフ度だ。 「準備OKっス」 球がコートを跳ねる音でシュートが決まったのに気付いた。

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「待ってたっスよ、森山センパイ」 黄瀬が不適に笑う。ボス部屋の鍵を開けた気分だ。 「緑間っちに挑むならオレを倒してからにするっス」 前言撤回。中ボスらしい。 「黄瀬、お前を倒してオレの失われた彼女を取り戻す…！」 とりあえずノッておいた。 「あ、元々ない物は返せないス」

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黄瀬の冷たい指摘(お前からネタ振ってきたくせに突っ込むなよ！)を黙殺し、オレは勢いのままに上着を脱ぎ捨てた。 「そーいや、ボールは恋人とか言ってたっスね」 黄瀬は転がっていたボールを片手で掬い、それに口付けるように軽くリップ音を立てた。 「来いよ」 わお。黄瀬くんイケメーン。

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黄瀬のファンがじわじわストバスコートに集まってきた。つまり、オレは残念な姿を女の子達に晒すことになる。 「これで10-0じゃないスか！オニーサンもっと頑張ってー!?」 「キセキの世代相手に1on1で勝てるわけねーだろ！」 「だからお前はダメなのだよ」 「そこまでコピーすんのか」

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「その一瞬止まるの！ それがダメなのだよ。オレらと森山センパイくらい実力差あれば見てからで追いつけるんスから」 何気に失礼だな。 「キセキにはトリプルスレットポジションも意味ねーのか…OFの次の動作が分かりにくいんじゃなかったのか…」 「鳥ポジ…？ 火神っち？」 お前プロだよな？

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「にしても黄瀬マメだな。海常スタメン全員と修行編やってんのか」 「森山センパイにだけっスよ」 へ？ 「…何でちょっと照れてんスか」 「…うるさい」

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スタバなう オレが席取ってる間に黄瀬の奴レジで店員さん(かわいい)に声かけられてるし。お嬢さん客席も見て！ こっちも割とイケメンですから！ 黄瀬がオレを顎で指す。店員たんと目が合う。GJ。 「今日ツレいるからゴメンね。(ばちん」本場のウィンク炸裂。 いつからオレはお前の彼女に。

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トレイにどっさり買い込んで黄瀬がレジから戻ってきた。 「…逞しくなったな」 「一人分じゃないスよ。こっちどーぞ」 「あ、ああ…？」 もしや後輩に奢られた!? オレにも面子というものが…フラペチーノおいしい。 「笠松センパイから聞いて。シューカツ長引いて貯金やばいんスよね？」 「」

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「今更っスけど森山センパイお久しぶりっス！」 「今更すぎだろ！」 「そっちは見てたんスよね。試合のとき挨拶できなくてスミマセン、笠松センパイ迎えに行ったりで忙しくて。苦笑」 「世話かけたな。おかげで元気になってて安心した」 いつからだろう、全部黄瀬に持ってかれるようになったのは。

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「いい試合だった。オレの技、使ってくれて嬉しかった。あのとき黄瀬の力になるためにオレは今までバスケやってきたのかもしんねーな…」 憂いを帯びた表情で黄昏れるオレ 「じゃあオレは森山センパイにそう言ってもらうために、この能力を授かったのかもしんないっスね…」 その顔をコピーする黄瀬

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「大げさな。今まで何度も言われてるだろ」 そして、これからもきっと。 「それがないんスよ。磨き上げた技を瞬間でBe mineされたら誰だって嬉しくないス」 黄瀬の人生はオレが思うほどイージーモードではないのかもしれない。でもお前を誇らしく思う奴もいるさ。 「仲間でもない限り？」

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…ところで、さっきから緑色の視線が気になるんだが。ずっとこっちをチラチラ見てくるし、黄瀬の抱き枕を抱えてるし、もしかしなくても黄瀬のストーカー?! 「奢ってもらったし片付くらいオレにやらせろよな」 トレイを片付けるフリをして立ち上がる。不審な男に接近成功。 …緑間真太郎だった。

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「そろそろ緑間っちが来る頃なんスけど…」 「緑間ならさっきから外に立ってるけど…」 慌てて店を出てく黄瀬を店員が名残惜しそうに見つめる。 「スタバで待ち合わせつったらフツー中入って待ってるっしょ！」 「む。普通はオレの家に出向くのだよ」 「緑間っち…高尾クンしか友達いないんスね」

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「意外っス。緑間っち運転するんスね」 「オレの運転ではないのだよ。お前の抱き枕で運勢を補正してるからな」 「…まだじゃんけんやってたんスか！」 「もうリアカーは処分したのだよ」 「あの痛車で送られるのはマジ勘弁」 これがキセキの世代の会話…！ 全く意味がわからん。リアカー #とは

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「森山サンお久しぶりでっす★ 」 高尾チャラい。中身はアレだが見た目は爽やか好青年を意識してるオレ的には、ない。歩く大学デビューだ。 …笠松は高尾は悪くないと言ってたが正直モヤモヤする。 http://t.co/LKCFI4fkBi http://t.co/RnBgjEb5fr

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「へー。高尾クンが送ってくれるんスか。事故んないでよ」 黄瀬の態度はあからさまだ。ここはオレが大人にならねば！ 「久しぶり、高尾。春は当たらなかったから本当に久しぶりだな。去年のリーグは…ブロック違ったし、こうして再び会えたのは運命だと思わないか？」 間違えたああああああ!!!!

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「(ブフォッ)っ〜〜!! 運命wwwwだとw思わないかww思わねっすわーww 今度さ真ちゃんも運命論ナンパに使ってよw」 「運命という言葉は軽々しく使っていいものじゃないのだよ」 「そこかよw …森山サンてかっこいいし面白いすね！」 「かっこいい!? オレが?!」 「そこすかw」

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高尾にかっこいいって言われた。なんだ、高尾いいヤツじゃないか。逆にわりーな、あんな態度の黄瀬わざわざ送りに来てもらって。

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「キセキの世代２人乗せて運転とかチョー緊張すんだけどw これ事故ったらどっかのお妃みてーに伝説になんじゃね？」 「不謹慎なのだよ、高尾」 運転席と助手席は盛り上がっていたが後部座席は静寂に包まれていた。黄瀬は(たまに舌打ちするだけで)一言もしゃべらない。 閑さや暇にしみ入る鷹の声

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黄瀬が構ってくんねーから、ヒマでアイコン変えてるなう。 今日はオフだしスーツ脱いでもいいよね？

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黄瀬に見せたらシカトされた。 http://t.co/mY580Nm9B4

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「なんスかそれ」 とうとう黄瀬が沈黙を切り裂いた。 「森山センパイはどーでもいんスか」 オレそこ気にしてねーから！ 頼む！ 穏便に日本を発ってくれ！ 「つーか、どの面下げて来てんだよ。アンタのせいで笠松センパイはバスケ辞めたんスけど？」 ルームミラー越しに睨み合う黄瀬と高尾。こわ

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鏡の中の鷹の目が弧を描く。 「どの面、ねぇ。 おもしろそーだから、かにゃ。つかオレ真ちゃんの運転手だし？」 舌打ちしながら黄瀬が運転席を蹴った。人の車になんてことを。 「黄瀬だって何人も蹴落としてきてんしょ？ それが自分の先輩だったら怒んの？ それっておかしく 「おかしいっスよ」

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「おかしいっスよ。でも、大切な人が傷ついてたら、傷つけた奴を怒るし、ソイツが悪くなくても責める。笠松センパイのためならオレは無茶苦茶でいいっス」 本当に理不尽で不条理で無茶苦茶な理由だが、そのおかげで胸のつかえが取れた気がした。

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車内が再び静まり返る。とにかく笠松の話はタブーだ。ここは穏便に好みの女性の話でm 「そういえば笠松さんが言っていたのだよ」 はい、緑間アウトォ！ 「就職が決まったからブランクを取り戻すため秋はバスケに集中する、と」 え？ 決まった？ 夏から就活始めた笠松に、負けたのか……オレは。

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オレが得意の就活自虐ネタを披露して車内の空気が若干和らいだところで空港に着いた。 高尾は“運転手だから”車で待ってるとさ。…それもそうか。

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小堀と一緒に黄瀬の手続きやってやって早川が号泣して中村がそれをあやし…なんて、昔のままの別れを想像してた。正面玄関にはマスコミが張り付いていて、それは叶わないと悟った。あと数mも近づけば見つかるだろう。 「あちゃー。何でこの便ってバレたんスかね。マミリンに話したのがまずかったか」

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「恐らく青峰なのだよ。お前と同じ便で行くと皆に言っていた。…負けた方が勝った方を追いかける約束はどうなったのだよ」 笠松がhttp://t.co/KhhQAQITnrって呆れてたな。 「桃っちが座席前後で取ってくれて、オレの方が数十㎝分早くアメリカ着くからOKっス！」 お、おう。

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「オレは帰るのだよ。巻き込まれるのは御免だ」 「ここで十分っス。緑間っちの文句言いつつ律儀に来てくれるとこ好きっスよ。…黒子っちによろしく」 「…必ず見つけるのだよ」 「緑間っちもこっち来ればいいのに」 「赤司を倒すまでは日本から出る気はないのだよ」 「ホントにそれだけっスかね」

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黄瀬がオレの方に向き直る。 「…森山センパイ、」

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「小堀センパイと早川センパイと中村センパイと、それから笠松センパイに、よろしくっス」 「ああ」 「来てくれたのに…また会えなくて申し訳ないっス」 「ああ」 「またちょくちょく一時帰国するから」 「ああ」 「試合のときも会えなかったし最後にみんなの顔見たのいつだか思い出せなくて…」

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「だから最後に見る海常が森山センパイの泣き顔ってヘンな気分っス」 「うるせっ…」 視界が滲んで目の前の黄瀬が海に浮かんだ月みたいに曖昧だったが、声色からあのときと同じ諦めたような笑顔を想像できた。オレは今も信じてるのに。 最後に黄瀬は耳打ちした。

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「次は森山センパイが、その口説き文句ばっかの辞書で“リベンジ”って単語を引く番っスよ」 オレの返事を待たずに、海常のエースはフラッシュの光の中に消えていった。 http://t.co/KAxk7Gt0cC

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そのあと海常メンバーに連絡を取り、主役のエースがもういないのにオレ達だけで集まっても悪いし意味ねーし解散になった。 高尾についでに帰りも乗せてくと言われたが、途中で緑間がマスコミに見つかり(黄瀬の抱き枕持ってたら目立つだろ)質問攻めになったので、一般人はそっと抜けさせてもらった。

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中村からメールだ。「ES書いたお礼になんか奢ってくれんじゃなかったんですか」…ああ！ すっかり忘れてた。OK、２人で男子会な！