黒猫は今日も偽物を喰らう

ナナシ @darkmoon_souji

@darkmoon_souji ぐだぐだ書いてきましたが、タイトルを無理くり決めた！ 黒猫は今日も偽物を喰らう 決めておきながら、ありそうやなぁと思ってます。

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暑い夏の夜。 むしゃくしゃして、同じ学校のやつとケンカになった、帰り道。 アイスを食べながらいつもとは違う道を行った。 そして、出会ってしまった。

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@darkmoon_souji 夜道を照らす月明かり。 闇に紛れるにしても、その衣装ではかなり目立つ。 「……如月？」 最近巷で噂になっている怪盗。 その特徴とよく似た人物の、仮面の下から現れた素顔は。 ほとんど話したことのないクラスメイトだった。

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@darkmoon_souji 当の本人には「え？誰？」みたいな顔をされた。 同じクラスだというのにその反応はさすがに傷つく。 「お前と同じクラスの井瀬谷だよ……。そんなことよりよ、お前こんな所で何をしている？」 やつは質問に答えなかった。 じっと俺を見つめている。

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@darkmoon_souji 何を考えているかわからない表情だ。 「……その格好は？一体お前は何なんだ？」 回答に期待はしていないが、質問に質問を重ねる。 案の定、やつが答える気配はなかった。 その代わり、 「にゃああぁぁ〜っ！最悪だ！バレたーー！！」 という、声が響き渡った。

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@darkmoon_souji 何だ？今のは。 とても目の前の男が放った台詞とは思えない。 俺はキョロキョロするが、声の主は見当たらない。 気のせいか……？ 「同級生と鉢合わせってどういうことだよ！さっさとずらかるぞ！バレちまったらおしまっ……ふがっ！」 気のせいじゃなかった！

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@darkmoon_souji どこから聞こえるんだ！？ 「ふが！ふがふがふご！」 ふがふが言っている声を追っていると、目の前のやつが何やらしゃがんでいるのが目に入った。 見ると、黒い物体の口を塞いでいるではないか。 その黒い物体というのは。 「……猫？」 いやいやいやいや。

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@darkmoon_souji 井瀬谷くん、井瀬屋にしとこかな… 「井瀬屋の家は何屋だ？」とかいうしょーもないやりとりを思いついてしまったし

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@darkmoon_souji 何屋でもねーわ

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@darkmoon_souji 確かに「にゃー」と最初に聞こえはしたが、後は人間の言葉だったぞ？ この黒い猫が…… 「はぁぁぁぁ！？猫が喋ったァァァ！？」 さすがのやつも、これには「しまった」という顔をした。

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@darkmoon_souji 「猫が喋った？頭がおかしいのか、お前は。なぁ？」 「に、にゃあ〜」 「今更にゃーっつったって遅いわ」 話しかけている時点でアウトだっつーの。 「お前はあれか？噂の怪盗とやらなのか？」 「おい、何だこのヤンキー。すげぇ冷静だぞ」

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@darkmoon_souji 「ヤンキー言うな、猫」 こんな時間に制服でうろついてる俺も俺だが。 「それで？質問の答えは」 「ノーコメントだ」 間髪を入れずにやつは答えた。 挑発的な笑みを浮かべて。 こいつ……関わりがなかったとはいえ、こんなやつだったのか？

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@darkmoon_souji いつも一人で、誰とも話さず、教室の隅っこの席に座っている地味なクラスメイト。 親に捨てられた問題児などと、根も葉もない噂を流されて孤立している。 そんなやつが。 今目の前に強気な表情で立っている。 想像できない姿だ。

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@darkmoon_souji 「今更ノーコメントっつったってこの状況どうすんだよ。クラスメイトに見られたんだぞ」 「おい、ヤンキー。だからなぜそんなにいられるんだ」 猫がうるさい。 にゃーと鳴くのは諦めたらしい。 「認めたくないならそれでいいけどよ。俺、お前に聞きたかったんだ」

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@darkmoon_souji 巷で噂になっている怪盗。 泥棒なのだから有名になるのは当たり前だが、それ以上に。 「なんでお前、偽物ばっか盗むの？」 これまで数々のお宝を、金持ち共から盗んでいった怪盗。 しかし、その品々はどれも偽物。 やつはいつしかこう呼ばれるようになった。

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１ - 20✕✕年 夏 - 黒猫は今日も偽物を喰らう | スキマノベル sukimano.net/ep/1173 #スキマノベル どうせならと、また新しいものを新しい場所で手を出してしまった。 こうして自分で自分の首を絞めていく…。

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@darkmoon_souji あれは夢だったのだろうか。 翌日、俺は眠気のせいもあってボーッとしていた。 つーか土曜日に学校とかだるすぎんだろ…… 教室に入ると、真っ先にやつの姿を探した。 いつも通り、窓際の席に一人である。 俺はやつの席へと近づいていった。

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@darkmoon_souji 「……おい」 声をかけると、やつはゆっくりと俺を見た。 「何だ、お前か」という顔をされる。 「昨日の説明は？」 「今ここで話せというのか」 やっぱり夢ではなかった。 「それもそうだな」

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@darkmoon_souji クラスの問題児が、問題児に話しかけている。 俺達はクラスの連中から好奇の目を向けられていた。 ……ここじゃあ駄目だな。 俺は諦めて、自分の席へ向かった。 奇妙な関わりを一度持ってしまうと、なぜ人は他の場所でも行動を共にしてしまうのか。

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メモ 「クリスマスなんて……」 「ん？」 木の下でスマホをいじっていたら、ゆらりと人が目の前に現れた。 「くそくらえじゃーっ！」 「ぎゃあぁぁーっ！？」 背後の木が切り倒され、恐怖やら驚きやらで悲鳴を上げた。 「何やってんだお前ーっ！？」 「クリスマスが……憎い……」

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@darkmoon_souji 「うるせー！」 今度は別の木を切り倒しだす。 「だからやめろっつってんだろーが！」 「ええい、うるさい！ 止めるな！学校内の木を全て切り倒せねば気が済まん！」 「絶対にやめろ！！」 また問題児認定されるじゃねぇか！ 俺まで巻き添えになるんだからな！

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@darkmoon_souji 「……茶番はさておき」 茶番だったのか。 「とは言っても、わりと本気で凜王に色目を使っている女共が許せん」 「ハイハイ。言ってろ」 やっぱりクリスマスは関係ないんだな。 「やつらめ……クリスマスパーティーなんぞおちゃらけた行事に誘いやがって……」

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@darkmoon_souji 「クリスマス……？」 首を傾げる凜王。 あぁ……これは…… 「そんなことも言われたようなないような……」 はい。出た。 お得意の興味のないことはすぐ忘れる。 こいつ、本当に大丈夫か。 「確か断ったかと」 「凜王ー！！」

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@darkmoon_souji 「凜王以外のやつと喋ってもすぐに忘れる」 「その“以外”に俺も含まれてるのか？」 いまさらそうだとしても傷つきやしねぇけどな。 「おい、二人とも。そんな所で何をしているんだ。帰らないのか」 げ。ついに本人来ちゃった。

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@darkmoon_souji 別にクリスマスパーティーはおちゃらけてないと思うけどな…… 「そんなに気に入らないのなら、お前も一緒についていけばいいじゃねぇか。どうせ誘われてんだろ」 「さぁ？」 さぁって……

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@darkmoon_souji 「町を行く、クリスマスに浮かれたくそリア充どもが憎い……」 「お前それ、ただただリア充が憎いだけじゃねぇか」 クリスマス関係ねぇし。 「わかってないな！ クリスマスだからと調子乗る女がいるんだ！」 「クリスマスくらい好きにさせてやれよ……」

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@darkmoon_souji めんどくせぇな。もう。 「で、本音は何だ」 「……」 目をそらしやがった。 やっぱり本音があるんだな。 「……凜王がクラスの女子からクリスマスパーティーに誘われていた」 「……へー」 くそ羨ましいじゃねぇか。 「最近あいつモテるよなー……」

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@darkmoon_souji そもそも、普通にしてればモテる顔してるしな。 今まで目立たないようにしてきたわけだし……ハッ！ 殺気！？ 気配に気がついたとき、俺の隣にある木に斧がトスっと刺さった。 危ねぇだろ！ 殺す気か！ そう叫ぶ前に、俺は胸ぐらを掴まれた。

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@darkmoon_souji 「あぁ、そうだ……貴様と関わったせいで、雌豚共が凜王の魅力に気がつき始めたんだ……全て貴様のせいだ……」 待て待て待て。口が悪すぎだろーが。 雌豚て。 よくそんなことが言えたな。 そして俺のせいにすんじねぇ。

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@darkmoon_souji 「許せん……許してはおけぬ……」 おいおいやめろって。 目が座ってやがる。 そんで、その見た目でその喋り方をされると時代劇でも見てる気分だよ。 「成敗してくれるわ！」 「お前わざとだろ」 斧を振り回すなって。

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@darkmoon_souji 「大体、クリスマスが憎いだか何だか知らねぇが、そんな自然破壊活動を行わなくてもいいだろ！？」 「全ての木がクリスマスツリーに見える……」 木には何の罪もない！ とんだとばっちりじゃねぇか！

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@darkmoon_souji 「わけのわからないことを言ってんじゃねぇぞ！ その斧はどっから持ってきた！？」 「用具室……」 「怒られるから戻してこい！」 校内で斧を振り回すとか、どんな危険人物だよ。 「クレイジーな奴がクレイジーな行動してんじゃねぇよ……退学になんぞ……」