ep1 窓際の席の1番後ろ 誰もが憧れる席にはその席にすわるに相応しいと言えるような可憐な少女が座っていた 「久保史緒里」 彼女が座る席よりも彼女自信の方がより憧れを集めていたほどの少女 #パラダイムシフト pic.twitter.com/wWvmJ6KD1D
2020-07-14 00:03:00ep2 そして…おそらく彼女は僕のことが嫌いだ。 彼女がよく見せる笑顔を、僕の前だと見せることがない おそらく彼女は僕のことが嫌いだ。 僕が話しかけると、必ず長い間の後に返事をする おそらく彼女は僕のことが嫌いだ。 何せ僕には魅力がない #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:12ep3 対する僕は彼女のことが好きだ。 彼女のことを自然と目で追ってしまう 僕は彼女のことが好きだ。 何気ない仕草ひとつにキュンとしてしまう 僕は彼女のことが好きだ…とおもう。 #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:18ep4 そんな僕達は今、2人で、図書室にいる 僕達以外は誰もいない図書室に 月に一度の図書委員の仕事 書架に並ぶ本を整理しながらも、その隙間からカウンターに座る彼女を盗み見る なかなか難しい丸いふちの眼鏡をかけているその横顔は、虹のように弱々しく逞しかった #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:25ep5 窓の外から聞こえる雨音は、図書室を照らす無機物的な明かりと同様、到底心地よいなんてものでは無かった 彼女はときどき窓の外を見て憂わしげな表情を浮かべた #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:30ep6 書架の整理を終えてカウンターに戻る頃には雨音はさらに勢いを増している 次第に彼女が窓を見る回数が増えていったのがその事実を物語っていた #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:35ep7 彼女の隣の椅子を引き、少し離したところに腰を下ろした。あまり近いのは申し訳ないし、何より僕の心臓に悪い。 ただでさえ僕の鼓動が聞こえそうだと言うのに。 これといってやることの無い僕は彼女と同様、小説の栞を挟んだページを開き、読み進める #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:39ep8 ただ、疲れたからだでは集中することが出来ず、ぼーっと窓にぶつかる雨粒を見ていた 空が光った 2秒経って轟音が鳴り響いた #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:44ep9 2秒の差があった。それなら雷が落ちた地点はここから720m程のところだ。なんてのは雷が落ちる度に考える。 ただ、その計算よりも先に小説を閉じた。栞を挟まず。閉じさせられた。 静かであるべき図書室で、ふたつの椅子がたおれた音が甲高く木霊した。 #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:48ep10 そして何より暖かく柔らかい感触が僕を包んだ 外がこのうるささならば、僕の心の音が聞こえることは無いだろう… ぼくの顔の横では、1粒2粒と雨が降る #パラダイムシフト
2020-07-14 00:03:52ep11 あの日、僕の中で世界が大きく変わった気がする。 今も彼女が雷に弱いかどうか、そんなことを知るのは一人で十分だとは思いませんか? #パラダイムシフト
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