1. 突然だが俺は今、非常に困った事態に陥っている… 国民的と呼ばれるアイドルのメンバーに正面から抱きつかれているのだ… しかも身長が低いものだから俺の胸元から上目遣いで見つめられている… 何故こんなことになったのかというと…
2022-05-31 23:10:463. ○○「それでは質問の方をしていきます」 ??「はい!」 とあるテレビ局のスタッフとして働く仁科○○は、後に乃木坂の番組で使う予定の素材を撮るためにメンバーと対峙していた… このご時世ということもあり、密にならないようにと上からの命令を受け、小さなスタジオで二人きりで進行する…
2022-05-31 23:10:544. ○○「与田さんの名前の由来を教えてください」 与田「はい、もともと『すみれ』って名前の予定だったらしいんですけど…」 ご存じの通り、これは乃木坂の冠番組で与田がフィーチャーされた回の素材撮りをしている一場面である…
2022-05-31 23:10:595. 与田の普段の言動が奇想天外すぎるという理由からこの企画が立ち上がった… そして、かく言う○○もそんな与田に魅了されている人間の1人である… 挨拶程度しか交わしたことのない相手と、面と向かって話せていることに○○は喜びを感じていた…
2022-05-31 23:11:036. ○○(仕事とはいえ、あの与田ちゃんとこんな近くで会話できるなんて…) 数台設置された固定カメラに映らないようにする○○だが、それでも間近にいる推しメンに緊張していた… さらに質問の答え次第では… 与田「私、耳動かせるんです!」 と言われればまじまじと耳を見つめ…
2022-05-31 23:11:097. 与田「顎をシャクレられるんです」 と言えば誰にも非難されることなく間近で口元を見つめることもできる… ○○(…可愛いすぎだろっ!) 色々な表情を向ける与田に、既に骨抜きにされてる○○だったが、このあとの質問によって骨どころかハートまで完全に奪われることになってしまう…
2022-05-31 23:11:148. ○○「それでは次の質問です。与田さんが日村さんと勝負して勝てると思うことは何ですか?」 与田「ん~…ケンケン相撲っ!」 ○○「えっ? …ケンケン相撲?」 与田「はいっ! ケンケンしながら手で押すやつです!」 言葉足らずだがいわゆる片足立ちでの手押し相撲のことだ…
2022-05-31 23:11:199. ○○「日村さんとは体格が違いすぎますけど勝てるんですか?」 ○○が疑い半分で聞いてきたことで与田が唇を尖らせた… 与田「むぅ…勝てますよ!ゆうきケンケン相撲で負けたことないんですから!」 ○○(あっ…一人称ゆうきなんだ…かわいい!) 与田の反論を聞きながら思わずにやける○○…
2022-05-31 23:11:2310. 与田「仁科さんにだって勝てるんですから!」 ○○(いや、俺の名前言っちゃってるし…まぁ、ここはカットするからいいけど) ○○「そうですか…じゃあ次の質問いきますね~」 与田「あっ! むぅ…」 ○○に話を受け流され、しばらくいじけた顔の与田だった… 当然オンエアではカット… …
2022-05-31 23:11:2811. しばらく質問を続けていると、いつの間にか与田の機嫌も直っており、なんとか滞りなく素材撮りを終えることができた… ○○「はい、今のが最後の質問でした。お疲れさまでした!」 与田「はぁ~、終わった~」 座っていた椅子の背もたれに体を預ける与田…
2022-05-31 23:11:3312. ○○は固定カメラの録画停止ボタンを押す… 与田「結構たくさん質問ありましたね?」 ○○「そりゃあ与田さんがメインの企画ですから!」 与田「う~ん…ゆうきのメイン企画なんて面白いんだろうか…」 ○○「ふふっ…」
2022-05-31 23:11:3813. 自分の奇想天外さに気づいてない与田を見て○○は思わず笑みを浮かべる… 何を隠そうこの企画を提案したのは○○だった… ○○(これでまた与田ちゃんの可愛さが全国に知れ渡っちゃうなぁ…) 感慨深さを噛み締めるように○○が撮影機材を片付けていると… ツンツン… 腕をつつかれた…
2022-05-31 23:11:4214. ○○「はい?」 ○○が振り返ると隣で与田が腕を回していた… 与田「じゃあ、やりましょうか!」 ○○「…は?」 訳もわからず頭に疑問符を浮かべる○○… ○○「な、なにを?」 与田「ケンケン相撲!」 屈託のない笑顔で与田が言い放った…
2022-05-31 23:11:4715. ○○「えっ!? 俺と…ですか?」 与田「はい! だって○○さん、ゆうきが勝てないって疑ってるから」 ○○「!?」 急な名前呼びに○○の心臓が跳ね上がる… ○○「えっ…い、今名前…」 与田「??…スタッフさんの名前はちゃんと覚えてますよ~」
2022-05-31 23:11:5116. ○○の意としない答えが返ってきて急激にテンションが下がった… ○○(まぁ、他のスタッフも○○って呼んでるし、特に意味はないんだな…) しかし… 与田「あっ、でもフルネームを覚えてるのは○○さんだけですけどね!」 ○○「えっ!?」 アップダウンに心臓が追いつかない…
2022-05-31 23:11:5617. 与田「ほら、そんなことよりケンケン相撲やりましょうよ!」 四股を踏みながらアピールしてくる与田… ○○(ちょっ、スカート…///) 長めのスカートで流石に中までは見えなかったが… ○○「わかりましたよ…」 どんな行動をとるか読めない与田についに○○が折れた…
2022-05-31 23:12:0118. ニコニコ顔で臨戦態勢をとる与田… 手の届く距離ということで与田との距離はわずか数十cm… そして身長差はおよそ30cm… ○○(うわぁ…この距離で上目遣いの与田ちゃんとか…///) もう既にスタッフとしての理性なんて無くなっていた… ……… …… …
2022-05-31 23:12:0619. 与田「はっけよ~い、のこった!」 与田のかけ声と同時に片足をあげる2人… 両手は掌を相手に見せるようにして胸の横辺りへ… ○○(負けたことないって言ってたけど、勝たせてあげた方がいいのかな…) ○○の中で推しへの忖度がチラつき始める…
2022-05-31 23:12:1120. ○○(でも…負けて悔しがる姿も見てみたい…) ○○が葛藤している間、与田は力の入ってない○○の手をペチペチと叩いていた… ○○(よし、与田ちゃんには悪いけど初めての負けを経験してもらおう!) 方針が決まったところで○○の顔つきが変わる…
2022-05-31 23:12:1521. 手押し相撲のセオリーとして、体重を乗せての攻撃は避けられたときのリスクが大きい… できるだけ相手に攻撃をさせてそれを避けるか、タイミングよくそれ以上の力で押し返すというのが低リスクで戦う方法だ… 試しに軽く与田の手を押し返す○○…
2022-05-31 23:12:1922. すると今まで余裕ぶっていた与田の表情が一変した… 与田「むむむ…強いですね…」 ○○を強敵だと認識した与田は、闇雲に手を出さずフェイント等を加え始めた… しかし○○は落ち着きはらった表情を崩さない… ○○(リーチも違いすぎて多分余裕なんだよなぁ…)
2022-05-31 23:12:2323. 力の差を見せるように○○は与田の手を軽く押し返してみた… 与田「おっとっと…」 腕を振り回しなんとかバランスを保つ与田… ○○(弱い…弱すぎる…) あまりの脆弱さに、負けたことがないという言葉に疑いが生まれてきた…
2022-05-31 23:12:2724. ○○(本当に負けたことないの?) ○○が何度か押し返す度に与田がバランスを崩す… この攻防が数分間続いていた… ○○(流石に足が疲れてきたな…) 最初は勝たせてあげようか悩んでいた○○だったが、ここまできたらそんな思いは1ミリも残っていない…
2022-05-31 23:12:3225. 与田「はぁ…はぁ…」 与田にも疲労の色が見え始める… すると… ○○「そろそろ決めますね?」 ○○の言葉に最後の攻撃が迫ってることを察する与田… 与田「絶対負けないもん」 この数分で話し方が大分フランクなものに変わっていた…
2022-05-31 23:12:3626. ○○が最後の攻撃のために少し腕を引く… 与田は備えるように腕に力を込めた… 先程までの攻防で、○○の攻撃をかわしても○○がバランスを崩さないことはわかっていた… だったら○○の攻撃に合わせてそれ以上の力で押し返せば、○○がバランスを崩すのではと与田は考える…
2022-05-31 23:12:4027. そしてそのときが来た… 今までよりも強い勢いで腕を突き出す○○… 遅れないように与田も○○の掌めがけて思い切り腕を突き出した… パチンという音がスタジオに響き渡ると思ったそのとき… スカッ… 与田「えっ…」
2022-05-31 23:12:4528. 2人の手が触れ合うことは無かった… 手がぶつかる瞬間に○○が両手を外側に広げて与田の手をかわしたのだ… 体重を乗せた攻撃をかわされた与田はバランスを崩して前方に倒れてくる… ○○(よしっ!) その姿を見た○○は勝ちを確信した… しかし…
2022-05-31 23:12:4929. ギュッ ! ○○「へっ!?」 前方に倒れてきた与田がそのまま○○に抱きついた… ○○「ちょっ…与田ちゃん!?」 想定外の事態に思わず普段の呼び方が出てしまう… ○○の声に反応して胸元に埋めていた顔を上げる与田…
2022-05-31 23:12:5430. 与田「へへっ…私の勝ちですね!」 ○○「えっ? いや、今のはバランス崩した与田さんの負けじゃ…」 与田「だって、ゆうき足ついてないもん」 与田に言われて足元を見てみると、確かに片足を上げたまま○○に抱きついている…
2022-05-31 23:12:5931. 一方○○は、抱きついてきた与田を支えるために足が地面についていた… ○○「えっ…ケンケン相撲ってバランス崩した時点で負けじゃないんですか?」 与田「違うよ!足がついたら負けだよ!」 ○○「えぇ…」 確かにこの辺のルールを細かく確認はしていない…
2022-05-31 23:13:0332. なんとか食い下がろうとした○○だったが… ○○(もうケンケン相撲とかどうでもいいかも…与田ちゃんに抱きつかれてる…写真集で何度も見た魅惑のボディが…) もう別のことで頭がいっぱいだった…
2022-05-31 23:13:0833. 与田「○○さん? ゆうきの勝ちですよね?」 真下からくる上目遣いに○○の心臓は落ち着かない… ○○「はい…俺の負けです」 思考がショート寸前の○○はついに敗北宣言をしてしまった… 与田「やったー!!」 ギューーーー!!
2022-05-31 23:13:1334. ○○「!?」 ○○の敗北宣言を聞いてようやく与田が足を下ろしたと思ったら、今度は今まで以上の力で抱きしめてきた… ○○「よ、与田さん!?///」 与田「ん~?」 とぼけた顔で上目遣いを続ける与田… ○○(絶対わざとやってる…)
2022-05-31 23:13:1835. 与田「○○さん、さっき与田ちゃんって言いましたよね?」 ○○「へっ!?」 唐突な質問に思わず変な声が漏れる… 与田「もしかして、ゆうき推しですか?」 核心を突く問いかけに○○が固まった… ○○(言いたい…言いたいけど…) ○○「い、いえ…スタッフなんで推しとかは…」
2022-05-31 23:13:2336. 先ほど失ったはずの理性を取り戻して明言を避ける○○だが… 与田「え~、本当ですか~?」 ギューーーーーーーー!!!! 与田は疑うように抱きしめる力を強めた… ○○(はぅ…やめてくれ~! これ以上ナニとは言わないが押し付けないでくれ~! 理性がぁ~!) またしても失いかける理性…
2022-05-31 23:13:2838. 与田「ふふっ…やっぱり~!」 望み通りの答えが聞けて満面の笑みを浮かべる与田… ただ抱きついたまま離れようとしない… ○○「あの…与田さん? そろそろ離れてもらわないと…」 どこかへ飛んでいきそうな理性を手繰り寄せ、なんとか言葉を発する○○…
2022-05-31 23:13:3839. 与田「え~! ○○さん、いい匂いするから嫌だ~!」 駄々をこねるように与田は○○の胸元に顔を埋めた… ○○(なんだこの可愛い小動物は…先輩メンバーが与田ちゃんは食べれるって言ってた意味がわかる気がする…)
2022-05-31 23:13:4340. ○○「さっきまで別番組のロケハンで牧場に行ってたんで、いい匂いなんてしないですよ」 与田「牧場!?」 牧場という言葉に反応して目をキラキラさせながら顔を上げる与田… 与田「どこの牧場?」 ○○「千葉です」 与田「ゆうきはその番組に出れる?」
2022-05-31 23:13:4841. ○○「まだ出演者は決まってないですけど、乃木坂の番組じゃないんでまだなんとも…」 与田「え~! 牧場いいな~! ゆうきも行きたいな~!」 おねだりするように○○を見つめる与田… ○○(そんなこと言われてもなぁ…あっ、だったら…) おもむろにスマホを取り出しなにやら操作する○○…
2022-05-31 23:13:5542. そしてとあるサイトを画面に表示して与田に見せた… ○○「これがその牧場です」 与田がスマホを受け取ったことで、長かった拘束から解放される… 少し残念な気もしたけど… ○○「観光施設もありますし、動物とふれあえるコーナーもあるんですよ…」
2022-05-31 23:14:0043. 今日見てきた牧場のオススメポイントを説明していく○○… その間、与田はもう片方の手に自分のスマホを持って、真剣な顔で2台のスマホを操作していた… ○○(自分のスマホでも牧場の情報を見れるようにしてるのかな…) 気にせず○○は説明を続ける…
2022-05-31 23:14:0444. ○○「そんなに遠くないので余裕で日帰りもできますし、1日いても飽きない所なんで是非とも行ってみてください!」 与田の願望を叶えるため、今日ロケハンしてきた牧場のいい所を散々説明して満足げの○○… しかし… 与田「何言ってるんですか? ○○さんも一緒に行くんですよ?」
2022-05-31 23:14:0945. ○○「…は?」 何度目かの思考停止に陥った… 与田「はい、スマホ」 与田が返した○○のスマホの画面には牧場ではなく、LINEのアプリが表示されている… さらに… ○○「ゆうき…」 与田のものと思われる『ゆうき』というアカウントが登録されていた…
2022-05-31 23:14:1346. 与田「スケジュール空いてるとき教えてくださいね!」 そう言って立ち去ろうとする与田… ○○「えっ…えっ!? ちょっ…与田さん!? どういうこと!?」 まさかのトップアイドルとの連絡先交換に完全に○○の頭がショートした… ○○(な、なんで…これって誘えってこと!?)
2022-05-31 23:14:1847. 気づけばスタジオに与田の姿は消えていた… ○○「えぇ…」 茫然自失で立ち尽くす○○… すると… ガチャ ! ○○「!?」 スタジオの扉が少し開き、与田がピョコっと顔だけ出した… 与田「へへっ、忘れてた」 ○○「ん?」
2022-05-31 23:14:2349. ズキューーーーーーーーン !!!! 方言+告白+ウインクで○○のハートは綺麗に撃ち抜かれた… ○○「ふぐぅ…」 散々握手会でやらされたであろう言葉だが、○○を瀕死にさせるには充分すぎる威力… ○○(俺…このまま死んでもいいかも…)
2022-05-31 23:14:3550. 与田としては、与田推しと言った○○へのちょっとしたサービスのつもりだったのかもしれない… ただ… ○○(はぁ…好き…) 間違いなくここにガチ恋勢のファンが生まれたことは言うまでもない… end…
2022-05-31 23:14:41