めずらしく、本丸軸のお話。 (ちょっと加筆修正したものを、まとめ本に収録)
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めしこ @mogmog_meshiko

燭へし書いてる20↑/まもなく脱走しそう https://t.co/PEdidAAvwW

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「遅い」 それが長谷部くんの口癖だった。 彼はこの本丸の古株で、僕が鍛刀された時には既に、彼はこの本丸の中心にいた。 人の身体を得てまだ右も左も分からない僕の教育を務めたのは、そんな長谷部くんだった。 「まっ、待ってよ、長谷部くん…きみ歩くの早いんだから!」 ↓

2020-01-02 14:33:18
めしこ @mogmog_meshiko

「おまえが遅いだけだ、燭台切。さっさと付いて来ないと置いていくぞ」 いつも彼の後ろを必死に付いて行った。 ぴんっと伸びた背筋、凛としたその佇まい。 後ろから追いかける彼の姿に、僕はいつだって目を奪われていた。 ↓

2020-01-02 14:34:11
めしこ @mogmog_meshiko

「遅い!もっと早くだ!そんなんじゃすぐに間合いに入られるぞ!」 「…くっ!」 数えきれないほど手合せをして、数えきれないほど負けてきた。 格好悪い所を彼に見られるのは、堪ったものじゃなかったけど、戦場で無様な格好を晒すよりはマシだと鍛錬を積んできた。 ↓

2020-01-02 14:34:47
めしこ @mogmog_meshiko

初めて長谷部くんから一本勝ち取った時、「それでも速さは俺のほうが上だけどな」って言った彼の顔は本気で悔しそうで、でもどこかほっとしたような顔もしていて、僕の身体の奥の奥がつきんと痛んだ。 ひと通りのことを一人でこなせるようになると、長谷部くんとの時間は減った。 ↓

2020-01-02 14:35:20
めしこ @mogmog_meshiko

また、胸が痛む。 それなのに、長谷部くんの姿を見かけても胸は痛む。 何だろう、これ。僕、どこか欠陥なのかな。 長谷部くんには相談しづらくて、こっそり主に聞きに行ったら、きょとんとした顔の後に嬉しそうに笑われた。 僕が初めて、長谷部くんへの気持ちに気付いたのはその時だった。 ↓

2020-01-02 14:36:10
めしこ @mogmog_meshiko

早く彼と一緒に戦場に立ちたくて、必死に鍛錬を重ねた。 ようやく彼が部隊長を務める隊に編成されたときに「遅い、待ちくたびれたぞ」って長谷部くんは笑った。 新人と、教育係としてではなく、一緒にいる時間は増えた。 部屋にこもりっきりの彼の仕事を手伝ったり、非番の日に街に連れ出したり。 ↓

2020-01-02 14:38:05
めしこ @mogmog_meshiko

少しでも一緒にいたくて、本丸に帰りがたくって、僕の足取りは随分と遅くなっていて「…遅い。さっさと帰るぞ」って呆れられた。 早くこの思いを告げてしまいたい、心も、身体も繋がりたい。 でも僕はゆっくりと待つことにした。長谷部くんから想われている自信はあったから。 ↓

2020-01-02 14:40:03
めしこ @mogmog_meshiko

それが分かるほどには、僕は長谷部くんのことをずっと見ていたし、それだけの時間を一緒に過ごしてきたから。 いつものように街に出掛けたとき、長谷部くんはどこかそわそわして落ち着かない様子だった。話し掛けても、何だかよそよそしい。 体調が悪いのかな、今日は早く帰った方が良さそうだ。 ↓

2020-01-02 14:40:38
めしこ @mogmog_meshiko

「ね、長谷部くん、そろそろ帰ろうか」 「…え、なんで、時間まだ…」 「きみ、なんか体調が悪そうだから。悪化させてしまったら、みんなにも迷惑が掛かってしまうし、ね?」 帰り道を歩き出そうとしたとき、くんっと引っ張られる感覚。 そちらに目をやると、僕の服を引っ張る長谷部くんの手。 ↓

2020-01-02 14:41:16
めしこ @mogmog_meshiko

視線を上げて顔を向けると、はくはくと口を動かしながら、真っ赤に染まった顔。 「ま、だ…帰りたく、ない…」 僕は長谷部くんの手を取って、ずんずんと歩き出した。 帰り道とは逆方向。初めて街に来た時に、長谷部くんが案内してくれた、大きな桜の木。 ↓

2020-01-02 14:41:52
めしこ @mogmog_meshiko

春になって満開になると、圧巻だぞって教えてくれた。 いつか二人で見に来たいと思っていた。今はまだ、蕾すら出てないけど、花が咲いたら一緒に見に来られるだろうか。 「ちょっ、待て…!」 長谷部くんが、待て、だって。 なんだかおかしくって、嬉しくって恥ずかしくって、 ↓

2020-01-02 14:42:51
めしこ @mogmog_meshiko

僕の頬は緩みっぱなしだ。 でも、ごめん。もう待ってあげられない。 だって僕はずっと待っていたんだよ。きみが自分の気持ちに気付いてくれることを。 僕と同じところまで、来てくれることを。 桜の木の下で、長谷部くんの両手を取って向き合う。 ↓

2020-01-02 14:43:24
めしこ @mogmog_meshiko

長谷部くんはぜんぜんこっちを見てくれなくて、仕方ないから今度は両手で頬を包んで、半ば無理やりにこちらを向かせた。 「やっ、燭台切…ま、待ってくれ…!」 「待たない。もう僕は随分と待ったんだよ。きみより僕の方が自覚したのは、うんと早かったからね」 「…う、あの…」 ↓

2020-01-02 14:43:58
めしこ @mogmog_meshiko

「…僕は、長谷部くんのことが好き。好きだよ」 「…っ…!」 「ねぇ、長谷部くんは?きみの気持ちを聞かせて」 「ま、待ってくれ…」 「待たない。きみが僕にずっと言ってたんだよ、遅いって」 だから、早く聞かせてよ。 でないと僕は今すぐにでも、きみの唇を奪ってしまいそうだから。

2020-01-02 14:44:20
めしこ @mogmog_meshiko

↓これのアンケート結果より 『君の口癖』で燭へしでした! 昨日書いていたモノとの温度差に 風邪を引きそうだぜ😎!!! twitter.com/mogmog_meshiko…

2020-01-02 14:46:28
めしこ @mogmog_meshiko

明けましておめでとうございます! ちょっと短いお話を書きたいので ポチッとお願いします~~🐹🔥 めしこの燭へしへのお題は ・君の口癖 ・年の差 ・幼馴染 ・瞳を閉じていて です。アンケートでみんなが見たいものを聞いてみましょう shindanmaker.com/590587

2020-01-01 01:44:30
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まとめたひと
@mogmog_meshiko

今日も、明日も、燭へし書くよ。