まぁ、審神者はしぬ
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ななし @m22461722

夜の闇に瞬きも忘れて息を殺した。枕に押し当てた耳にはしんしんと降る雪の音。床を踏む誰かの足音、襖一枚隔てた先の、宗三左文字の寝息。不規則な自分の脈の音。 冬は山場を迎えている。越えれば新しい命が芽吹く春に会える。会えるのだろうか。無性に、悲しくなった。

2020-01-07 21:25:39
ななし @m22461722

わたしだけが置き去りにされる。

2020-01-07 21:25:54
ななし @m22461722

「…宗三、」 恐怖など今更だった。もはや諦めたはずなのに、時々こうして顔を覗き込んで笑う。しかしもう抵抗する気力も無くて、ただ愛刀の名を呼ぶことしか出来ない。聞こえなくても、その音はまるで魔法のように熱を与えてくれる。刹那であろうとも、生きている証を与えてくれる。

2020-01-07 21:28:36
ななし @m22461722

「…どうしました」 暗闇に白い肌、滑らかな桃色の髪が頬を撫でた。ひぅひぅ、と情けなく喉を鳴らすと柔らかい唇が目尻に触れる。擽ったさと切なさに思わず目を伏せ、そうして宗三左文字の香りを思い切り吸い込む。呆れた、しかし安堵の溜め息と抱き寄せた腕の力に涙が止まらない。その優しさが辛い。

2020-01-07 21:32:44
ななし @m22461722

「泣き虫ですね、あなたは」 肩に回した手に力を込め、小さな怨みを込めて、穏やかに眠るその顔を目に焼きつける。日々窶れていく横顔が、細くなる腕が、曇る眼差しが恐ろしい。 また置き去りにされる恐怖に足が竦んで動かない。 「僕は、」

2020-01-07 21:36:33
ななし @m22461722

「置いていかれるのは、嫌です」 「それなのにあなたは、手前勝手に満たされてばかりで、」 「…狡い人ですね、あなた、本当に」 欠けた音を聞いた。あれははたして主のものか、それともー

2020-01-07 21:38:31
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まとめたひと
ななし @m22461722

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