とりヤり時空の白髪従者×治癒令嬢(https://min.togetter.com/phYdzyF)の従者視点
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道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

なんとか、作業区切りついたので、この魔性の従者が貴族令嬢に惚れるまでの話呟きたい。 twitter.com/mitikusatanoi/…

2021-02-06 21:34:27
道草家守@コミック青薔薇2巻5/2発売! @mitikusatanoi

白髪キャラにだめにされたいって話で、友と語った魔力を使えば性欲を覚える中で、平然を装うために貴族の間では「奉仕」の名目で従者に慰めて貰う。そのための見目麗しい従者を雇うのが公然の秘密の中、優秀な美貌の従者×優秀さを買っているからこそ絶対に奉仕させない令嬢の話を思い出した。

2021-01-20 21:43:15
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

まずこの従者は王都にあるスラムギリギリの平民出身だった。娼婦の母親から生まれたが、母親の良いところをすべて兼ね備え、種が良かったのか恐ろしく美しい容貌を持って生まれた。その結果彼の人生は男女から向けられる欲望から己の尊厳を守る戦いだった。

2021-02-06 21:40:20
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

容姿を利用することを覚えるのに時間はかからなかった。 なにせ上目使い一つで婦人は小遣いをくれるのだから。 だが、その対価に自分を組み敷こうとする者もいる。見分けることが尊厳と命を守ることだった。 幸い自分の容姿よりも中身を気に入ってくれる相棒も出来たためそれなりに楽しく成長した。

2021-02-06 21:46:31
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

変わったのは14の時。母が作った借金の肩代りにだまし討ちで貴族の元へ雇われることになった。その名目は従僕。 だが事実は貴族が社会奉仕活動で魔力を使った際に、昂ぶる魔力回路を鎮めるための「奉仕」をする愛玩従者だった。

2021-02-06 22:17:27
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

そこから従者の地獄が始まった。 従者を求めたのはその家の当主の男だった。知りたくもなかった「奉仕」の方法を愛玩従者の同僚から、当主自身から教えこまれる。 美しいから、その美しさを引き立てる小道具として好きでもないヴァイオリンを教えこまれた。 美しさを初めて呪った。

2021-02-06 22:21:57
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

抵抗した従者だが、ある時からぱったりと辞めた。諦めたのではない。当主の言葉に方針を変えたのだ。 「上手にできたら、好きなことをやらせてあげよう」 魂を売り渡す行為だ。 だが、だが。 ここから逃げ出すだけでは同じ事を繰り返す。 己を引き上げる力が必要だ。 従者は雌伏を誓った。

2021-02-06 22:26:15
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

従者は己の牙を研ぎつづけ、そして復讐の機会をねらった。 完璧で従順でうつくしい従者。幸い笑みを浮かべないほうが人形らしくて気に入られたため、気楽だった。 上手に出来たご褒美は、守られる時と守られない時があった。それでも空きを見て使用人の仕事を覚え、当主に連れられ見世物になりながら

2021-02-06 22:31:45
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

上流階級のマナーや暗黙の了解、力関係を把握した。 幸い、当主の寵愛を傘に着て横暴に振る舞う他の愛玩従者と違い、従者は物腰低く使用人と交流していたため、他の使用人は良くしてくれた。 そして、従者は復讐の糸口を見つけた。 当主の奥方に声をかけられたのだ。

2021-02-06 22:37:25
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

この夫婦は仮面夫婦だった。後継を設けたあとは互いに好みの愛人を作り、自由に恋愛を楽しんでいたのだ。 以前から熱い視線を感じていたが、とうとう我慢できなくなったらしい。慈善活動のあとに、しなだれかかられ、寝室に引き込まれるのを、従者は抵抗しなかった。

2021-02-06 22:40:32
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

なにせ愛玩従者とされる際に当主とそれに連なる親族に危害を加えられない呪いがかけられているからだ。 奥方から求められることが重要だった。 この頃には従者の性欲は死に絶えており、奉仕も完全に作業だったが。それでも女は満足のようだった。 従者は女の肌のほうが柔らかいな。程度の感想だった。

2021-02-06 22:48:17
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

当主は自分の所有物に対して酷く独占欲を発揮する性質だった。奥方は夫の性質を理解した上で、あてつけのために従者と秘密の関係を続けたのだ。 けれど従者も奥方に悲痛な眼差しを、希う甘い声音で従順にしたがった。遊びのはずだった奥方が心奪われ始めているのを従者は理解した。

2021-02-06 22:52:14
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

ある日。お茶会の手伝いが終わったあと、ご褒美が欲しいという奥方に奉仕をする。 奥方は夢中で気づかなかったが、ふと、視線を感じる。 茂みには見慣れない少女が立ち尽くしていた。 確かお茶会に来ていた令嬢の一人だ。自分が楽器を弾いていたときに間抜けづらを晒してたのを薄っすらと思い出す。

2021-02-06 22:57:44
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

行為を見たことがなかったのだろう、動揺と羞恥に顔を赤らめ衝撃から呆然と立ち尽くしている。そこにあるのは好奇心でも興味でもなく、深く傷ついた色だった。 ふと、自分がどのような顔をしているのか気になった。どうせあと数年で愛玩従者を引き入れる。 貴族など一皮剥けば欲望の獣だと思い直した

2021-02-06 23:02:55
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

すぐに当主が乱入してきた結果、めでたく解雇された。 ただ「間男」だの「卑しい獣が、人間を気取ろうなどと甚だしい」だの罵られたのは甚だ遺憾だった。 そう、仕向けたのは自分だと言うのを忘れてないだろうか。 折り合いが悪かった同僚に思う存分鬱憤を晴らされ、屋敷の外に放り出された。

2021-02-06 23:08:23
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

予定より、放り出されるのが早すぎた。まだ、何者になれるほどの知識がない。しばらくは男娼でもするしかないか。そんな普段なら考えない選択肢が浮かんだ。 華奢で小さな靴が視界に入る。 泣きそうな顔で自分を見ていた令嬢だった。

2021-02-06 23:10:39
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

令嬢は目尻に涙を溜めながら従者の傷を治し始める。珍しい治癒の魔法が使えるらしい。従者は何かを施される時は必ず対価が必要なのだと染み付かされていた。魔法を使うんだ。この令嬢も自分を求めるんだろう。綺麗で上手なペットを。 「…治される代わりに、慰めればいいのか」 令嬢の返事は即座だった

2021-02-06 23:14:23
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「私はあなたに絶対求めません」 涙混じりの断固とした、否定だった。 「嫌なことを、苦痛なことを、お願いしたり、しません」 あの、たった一瞬で。 自分が苦痛だったと、わかってくれたのか。 従者ははじめて、令嬢をまともに見た。ちょうど自分が攫われたくらいの華奢で頼りない少女だった。

2021-02-06 23:17:02
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

令嬢はしどろもどろに、提案してくる。自分は社交が上手くないこと。だから従者にコツを教えて欲しいこと。これから慈善活動をしなければならないが、魔法を使うと体が熱くなって困っていたこと。 「あなたの演奏がまるで寄り添ってくれる、みたいで。だから演奏を聞いていれば大丈夫だと思うの」

2021-02-06 23:20:45
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

普通の従者として側にいて欲しい。そう提案された従者は躊躇った。 この少女も利用すればいいと囁く自分と、それを許容できない自分がせめぎ合っている。 その理由を「どうせこの女も求めるようになるんだろう」という諦観だと思った従者は条件をつけた。 「あんたが俺に奉仕を求めたら、出ていく」

2021-02-06 23:23:26
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

従者がまず知ったのは、令嬢が意外に大胆で頑固なことだった。 ほぼ一人で屋敷の者を説得してのける。なんだ、弁は立つじゃないかと従者は思ったが、それが令嬢の初めてのわがままだと知ったのはもう少しあとのことだ。

2021-02-06 23:32:03
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

従者を迎え入れるために出された条件も妥当だった。 家に連なる娘に勃たない魔術を受けること。 しかし、令嬢は自らさらに呪いを追加したのだ。自分自身に。 「まだ知り合ったばかりで、信じられないと。思いますから、確実にしましょう」 それは古式に則った契約だ。

2021-02-06 23:37:18
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「望まない行為を強要したら、私の身は焼かれます。あなたの感じた苦痛と同じだけ。 本当は、お互いに望まない愛を育まないための誓いだったらしいのだけど。ちょうどいいでしょう? あなたはきっと私に興味を持たないだろうし」 彼女が無理やり手を握って来たのに驚くと、令嬢の指先が赤くなっていた

2021-02-06 23:43:33
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

赤く焼けた指先を気にもせず、ね?安心でしょう?と可愛らしく笑った令嬢は、今まで自分が遭遇した貴族と違いすぎて、わけがわからなった。 ただ、契約のために必要な魔力を流すために、握ったちいさな手と魔力の感触が残った。

2021-02-06 23:46:39
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

それでも、従者は少女である令嬢に何ができるかと思っていた。自分でまた、隙をぬって学ぶしかないだろうと。 けれどそれも予想が外れた。 ある日、令嬢は従者に願った 「家令さんが人手が足りないって言うから手伝って来てくださいな」 すると、屋敷の家令に徹底的に執事の仕事を仕込まれた。

2021-02-06 23:55:04
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「お嬢様が見込みがあるとおっしゃったのだ。能力を示しなさい」 ずっと欲しくてたまらなかったものだった。 次に令嬢のカヴァネスから、ダンスのレッスンは男役ができるように学ばされた。 社交に交じるための必須事項だった。 さらに令嬢は慈善活動先での勉強に従者を付き合わせた。

2021-02-06 23:55:04
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「お話はとっても面白い人なのだけど、どうしても難しくて。一緒に勉強してくれる人がいたらもっと楽しいと思うの」 令嬢が先生、と言ったのは、引退したかつては大商会の長を勤めていた老人だった。得難い話を幾つも幾つも聞くことができて、従者は貪るように吸収した。

2021-02-06 23:58:10
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

だが、なぜここまでしてくれるのか。 令嬢はあっけらかんと答えた。 「あなたは外に出たいのでしょう?なら、沢山知ってて良いと思ったの。だってあなたはすぐなんでもできてしまうすごい人だもの」 望みを見透かされていた羞恥と、それをすくい取ってくれたことに目も眩むような喜びを感じてしまった

2021-02-07 00:02:11
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

彼女の前では、きれいな鑑賞品でもなく、都合の良いお人形でもなく、下賤で卑しい獣でもない。自分は同じ人間なのだ。 従者が震えるほどの怒りと共に飲み込んだ慟哭を、令嬢は初めから受け入れて肯定してくれたのだ。 5歳以上年下の、幼いと言っても良い少女に。

2021-02-07 09:46:19
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

彼女が妾の子なのは屋敷に来てすぐに知った。使用人にこぞって教えられたし、なにより令嬢が正妻やその子である姉に虐げられている場面に何度も出くわしたのだ。本来ならば一員としても認められない。だが、治癒の魔術が使えたため、姉が拒否した平民への慈善活動を肩代りさせるために呼び寄せたのだ

2021-02-07 09:59:35
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

母は亡くなり、あの家で抑圧されるしかなかった。ならば慈善活動など最低限に、貴族らしく平民に当たれば良い。なのに令嬢は、ゆく先々の教会や治療院で、献身的に治療に当たった。 けして親しさはなかったが、おとぎ話のような騎士が剣を捧げるに相応しい姫君として、気高く慈悲深く彼らに接したのだ

2021-02-07 22:43:18
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「なぜ最低限で済まさないので?」 困惑した従者が聞けば、令嬢は気まずそうに苦笑する。 「鍍金かもしれないけれど、私の振る舞いで苦痛が一時でも紛れるのなら。価値がある思うの」 雲上の人に手を握って温かい言葉をかけてもらえるだけで、救われることがある。 それをよく知っているのだと。

2021-02-07 23:04:08
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

それは従者にも良くわかった。まさに令嬢の一言で救われたのだから。 同時に怒りに似た理不尽さを覚える。これ程身を削っている彼女を、救う者はいないのかと。 自分は騎士ではない。 だが彼女の側に仕えられる。 ならば己が令嬢の望みを叶えよう。 従者は人に仕えたいという感情を、初めて実感した。

2021-02-07 23:07:37
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

令嬢の魔力量は人より多いらしく、慈善活動も、少し顔がほてる程度で済んでいた。従者の弾くヴァイオリンを聴きながら昼寝をすれば直ぐ治まる程度。 彼女をより、癒やすためあれほど嫌いだったヴァイオリンが自然と上達したが。 その日は少々治療が多かった。

2021-02-07 23:12:38
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

彼女が横たわる長椅子の傍らいつも通り楽器に弓を滑らせる。 けれど目を瞑りながらも令嬢のか細くも荒い息遣いが治まらない。 呼吸のたびに、主張し始めた胸が動き、赤く色づいた唇が微かに開いている。 触れれば柔らかそうだ。 従者は己の思考に我にかえる。自分よりもずっと年下の娘に何を考えていた

2021-02-07 23:18:40
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

ただの気の迷いだ。自分の体は反応していない。ようやくいつも通り眠った令嬢へ上掛けをかけてやり部屋を去る。 己の体に微かに違和を覚えた。 まさか、という思いと動揺のまま急いで己の部屋に帰り、ずるずるとへたり込む。 「うそ、だろ………」 己自身が反応していた。

2021-02-07 23:22:09
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

紛れもなく、少女の媚態に反応していたのだ。 どうやら呪いのお陰で、令嬢と一定距離にいる間は反応しなくなるらしい。一瞬違和を覚えたのはそれかと情けなさに泣きそうになりながら納得する。 自分が忠義でも庇護欲などではなく、少女に劣情を抱く感情を覚えたことに嫌悪した。

2021-02-07 23:27:50
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

それでも彼女に仕えないという選択肢はない。 だが自分はいずれ、耐えきれなくなるだろう。 令嬢は家のために嫁ぐ定めだ。その先にまで愛玩従者ごときがついて行けるわけがない。そもそも彼女が幸福になると、思えない。 出来るならば己の手で。 己が彼女に従者で収まらない想いを抱いてると認めた。

2021-02-07 23:32:20
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

令嬢の前では、美しい仮面で本心を隠し、従者は必死で考えた。 慎ましやかな蕾だった令嬢は、大輪の花として咲き誇ろうとしていた。これならば目をつける男が出てくるだろう。 今の自分では、彼女が築き上げた誇りごと守れない。 力が必要だと、従者は決意した。

2021-02-07 23:38:50
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

頼ったのはかつての友人だった。令嬢に仕えるようになってしばらくあと、居場所を調べ上げた彼が接触してきたのだった。 貿易商として成功していた彼は、かつての従者をやたらと気に入っていたため。令嬢に仕える気満々だった従者は断っていたのだ。 その、男に従者は取引を持ちかけた

2021-02-07 23:47:04
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

「働いてやる。見込みよりも利益が出たら俺を役員に引き入れろ。てめえの腕になってやる」 「どういう心境の変化だ」 「欲しい女が出来た。俺が唯一仕えて、誰よりも幸せにしたい女だ」 男は従者の顔に似合わぬ豪快さと思い切りの良さ、何より尊大さを気に入っていた。 その従者が仕えたい女の為に働く

2021-02-07 23:51:09
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

こんなに愉快なことはないだろう。 爆笑した男の快諾を得て、従者の二重生活が始まった。 元々、かなりの自由時間があったため、要領の良い従者は家長や令嬢に怪しまれることなく副業を続けられた。男は気前がよく、従者の助言で設立した新部門の利益をごっそり従者にも手渡してきた。 それは、良い。

2021-02-07 23:59:15
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

問題は、令嬢と交わした契約だった。 令嬢が従者の意に沿わない行為を強いない近いとして結ばれたものだった。 しかし同時に、令嬢が従者を拒否した場合、従者か焼かれるものなのだ。 従者はもう、令嬢があられもなく求めて来たとしても嬉々として抱くだろう。 だが、従者が意図を以て触れた時。

2021-02-08 00:04:02
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

彼女が受け入れてくれるとは到底思わなかった。 親しみはあるだろう。信頼も。おそらく敬愛も。友愛もあるかも知れない。 だが、それは肌を合わせて熱を溶け合わせるような。従者が望む温度ではない。 そう、触れたときに焼かれでもしたら。 従者は彼女の側には居られない。

2021-02-08 00:09:14
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

このまま、彼女が幸せになってくれたならいい。 そうでなくとも貴族をやめて家を離れ自由に生きることを選んでくれたなら、自分は喜んでその手助けをする。 だが、同時に令嬢が一度負った責任を必ず背負いぬくとも知っていた。 家がなくならない限り、彼女は貴族であり続けるだろう。

2021-02-08 00:14:41
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

従者は。そういうところに惚れてしまったのだ。 ただ、行く宛もわからぬ救いの準備をしながらも仕え続ける。 彼女は相変わらず慈善活動に出て。 従者は音楽で癒やす。 呪いのお陰で欲すら顔に出ないのに心底感謝と恨めしさを同時に覚えながら己を慰める日々。 その膠着は、思わぬ形で破られた。

2021-02-08 00:14:41
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

令嬢が軍病院への慰問のときだった。今回の戦はそれなりに大きく多くの傷病者が王都近くにまで搬送されてきていたため、病院近くの宿に泊まり、数週間に渡った慰問になった。 その初日、いつもよりも多くの人間を治癒した令嬢は、宿へ帰宅するとベッドに倒れ込む。 彼女はオーバーフローを仕掛けていた

2021-02-08 10:02:36
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

普段なら従者が楽器を弾けば聴くのに一向に治まらない。 上気した頬、しっとりと湿る肌、悩ましげな吐息を零す唇。従者にとってはすべてが毒だったが、それよりも彼女の体調を案じた。 だが、しかし、令嬢は従者の演奏を止めさせた。 「もう、下がっていいわ…あとは耐える、から」

2021-02-08 22:14:31
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

切り出されたとき、従者が覚えたのは怒りだった。 快楽も衝動も、過ぎれば苦痛でしかないと従者は知っている。 なに彼女は、それでも従者を頼らないのだ。 たとえ従者との約束を守るためだとしても、信頼されていないのかと悔しさすら感じたのだ。 それは的外れだとわかっていたが。抑えきれなかった

2021-02-08 22:20:18
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

頼らないというのなら、無理矢理にでも頼らせてやる。 たとえ、焼かれても構わない。彼女の心の檻を突き崩してみせよう。 従者は令嬢に一歩踏み出した。 「奉仕の、許しをいただけませんか」 何より、自分には今、彼女を救える技術があるのだから。

2021-02-08 22:20:19
道端家杜@とりヤりコミカライズ開始! @mitikusamoon

夢にまで見た彼女の唇はひどく柔らかく、目も眩むほど甘露だった。 行為を拒否するのは、誰かにいたずらをされた事でもあったのかと懸念したが、彼女はどこまでも無垢だった。 初めての快楽に戸惑いそれを与える従者にすがりついて甘やかに鳴いた。従者は好いた女の媚態は、恐ろしく唆るのだと理解した

2021-02-08 22:26:43
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まとめたひと
道草家守 @mitikusatanoi

小説書き。読みはみちくさやもり。『#龍に恋う 贄の乙女の幸福な身の上』『#青薔薇アンティークの小公女 』『#悪役令嬢は今日も華麗に暗躍する 』FGOとうらぶ明日方舟沼にいる。原神ツイ多め。マシュマロ感想、お仕事の依頼先はリンク先にて。アイコンはヒトエビト様より!